一方ルパンは、“ティアマトの涙”に絡む謎に迫っていきます・・・・・だがそこには、別な勢力の影が・・・・・
突然に始まった、私とルパンの入れ替わり・・・更に、私達の間には5年の時差があった・・・・入れ替わりは、不定期で、2日連続することは無い。トリガーは、夜寝る事。朝になると入れ替わっていて、夜寝るまで、入れ替わりは続く。片方が起きていると入れ替わらないため、ルパンが徹夜で泥棒をしていると、入れ替わりは発生しない。
何故、このような入れ替わりが起こったかは不明だが、私達は、お互いの生活を脅かさないために、幾つかのルールを決めた。
< ルパンへ 禁止事項その1 >
・ お風呂絶対禁止
・ 体は見ない・触らない
・ 下品に笑わない
・ 座るとき脚を開かないように
・ その他の女の子にも触らない
・ 神社の中を徘徊しない
・ 神社や家の物を盗まない
「何だあこりゃ?体に触るなあ?バカにすんじゃねえ!誰が、まだケツの青い小娘の体なんか触るか!俺はノーマルなスケベなんだよ!」
「え?誰がスケベやの?」
気が付くと、四葉が廊下からこちらを見ていた。
「あ・・・いや・・こっちのこと・・・・」
いっけね~、朝、この娘が起こしに来んの忘れてた・・・・・・
< 三葉へ >
・とっつあんに捕まらないようにな!
「え?・・・これだけ?」
「あいつは、いつでも規格外だからな・・・特に引っ掻き回されて、困るような事もねーんだよ!」
私は、次元さんと2人、アジトのリビングで寛いでいる。
次元さんは雑誌を読みながら、昼間からウィスキーを飲んでいる。
「あ・・あの・・・次元さん?」
「ん?・・・何だ?」
「昼間から、遊んでていいんですか?お仕事は?・・・・」
「お仕事ったって・・・・俺達の仕事は、泥棒だぜ・・・」
「じゃ・・・じゃあ、泥棒・・・しないんですか?」
「真昼間に、泥棒するか?普通?」
「あ・・・空き巣とか・・・・」
「やりたいのか?」
「い・・・いえ・・・・・」
「じゃあ、大人しくしてろよ!」
「は・・・はい・・・・」
別に、悪い事したい訳じゃないけど・・・・せっかくルパンになってるのに、毎日これじゃつまんない・・・・・
「ん?」
急に、次元さんの手が止まった・・・・
「伏せろ!」
次元さんは、私に飛び掛かり、床の上に伏せさせる・・・・次の瞬間!
「きゃあああああああっ!」
突然、窓から銃撃が飛び込んで来る。窓ガラス、家具が割れ、壁に穴が開く。
「出るぞ!」
一旦銃撃が止んだところで、次元さんは私の手を引き、部屋を出る。出たと同時に、また銃撃が来る。
例によって裏口を出て、非常階段を駆け降りる。降りた先の車に飛び乗り、猛スピードで走り出す。すると、後ろから、これも猛スピードで、追いかけて来る車が一台・・・・
「な・・何なんですか?」
「同業者だよ!この間、同じ獲物を狙って、俺らに先を越されたから、逆恨みってやつだ!」
「きゃあああああっ!」
後ろの車が、銃を乱射して来た。車の横を、銃撃が霞める。
「お前!銃は撃てるか?」
「う・・・撃てるわけないでしょっ!」
両手で頭を抱えながら、悲鳴のような声で答える。
「じゃあ、しっかり捕まってろっ!」
次元さんは、更にアクセルを踏み込み、スピードを上げる。
「きゃあああっ!ぶ・・ぶつかるっ!」
前を走る車にぶつかりそうになるが、次元さんは、それを巧みに交わし、疾走する。しかし、後ろの車も、速度を上げてピッタリ付いて来る。相変わらず、銃撃も止まない。
その時、銃撃が、前方を走るトラックのタイヤに当たる。トラックが横転し道が塞がれてしまう。
「きゃああああああっ!」
「ちいっ!」
次元さんは、目いっぱいハンドルを切る。車はガードレールを突き破り、崖の斜面を下り始める。追って来た車は、トラックに衝突する。
助かった・・・と思ったのも束の間、車は崖を下りきったところで、木にぶつかって止まってしまう。前方が拉げて、もう動きそうにない。
「降りろ!」
次元さんに言われて、慌てて車を降りると・・・・
「きゃっ!」
また銃撃が来る。崖の上から、銃を乱射しながら、2人組の男が降りて来る。
「走れ!」
「は・・はいっ!」
私は、全速力で林の中へ逃げ込む。次元さんは、残って応戦している。一目散に林を駆け抜けると、その先は岩場で、更にその先は海だった・・・・に・・逃げ場がない!
すると、後ろから、林を駆け抜ける足音が聞こえて来る。男は2人居た、もう1人が私を追って来たんだ!でも、逃げ場は無い・・・・・とりあえず、目の前の大きな岩の後ろに隠れる。隠れたと同時くらいに、また銃撃が来た。
「・・・・・・・」
恐怖で、もう声も出ない・・・な・・なんとかしなきゃ・・・ふと、胸のあたりの硬い感触に気付く・・・触ってみると・・・銃だ・・・・でも、使った事が無い・・・使えるとも思えない・・・だけど・・・撃たなきゃ・・・殺される!
意を決し、私は、懐から拳銃を取り出し、持とうとするが・・・・
「あっ・・・・」
手が震えていたため、掴み損ねて落としてしまう。拳銃は勢い良く、横の方に転がっていってしまう・・・
「?!」
突然、背後に人の気配がしたので振り向くと、私を追って来た男が、拳銃をこちらに向けて立っている。
「へへ・・・年貢の納め時だな!ルパン!」
も・・・もうだめっ!
頭を抱えて蹲る・・・私、これで死んじゃうの?・・・あ・・でも、この体ルパンだから、ルパンが死んじゃうの?・・・じゃあ、私はどうなるの?・・・・・あ・・・あれ?・・中々撃たれないけど・・・・・
顔を恐る恐る上げると、私を狙っていた男は、白目をむいている・・・そして、そのまま倒れる・・・・な・・・何が起こったの?
良く見ると、男の後ろに人影が・・・・黒髪で、羽織袴を着て、手に日本刀を持っている。
「何をやっている?・・・ルパン?」
こ・・・この人も・・ルパンの仲間?
すると、林の方から、次元さんが駆け付ける。
「おお、五ェ門・・・いいところに来てくれたな・・・・」
何だか知らないけど、た・・・助かった・・・でも・・・・
前言撤回!・・・平凡な日常でいい・・・ま・・毎日がこんなんじゃ・・・・とてもじゃないけど、身が持たないわ!・・・・・
学校に行く途中、いつものように、三葉の父親が町営駐車場の敷地内で演説をしている。その横には、これもいつものように、勅使河原建設社員の応援団がいる訳だが・・・・
「ねえ、テッシー、何か、人数増えてない?」
「ああ、あいつらな・・・何でも、三葉の父さんの古い知り合いらしくてな、最近うちの会社に入ったんや・・・親父は、人手が増えて助かった言うとるが・・・・俺は、何か好きになれんのや・・・・」
「へえ・・・古い知り合いねえ・・・・・」
夜、勅使河原建設の敷地内に、新しく建てられた独身寮・・・・元々地元の人間しか居なかったので、寮等は不要だったのだが、三葉の父の紹介で新しく入った社員達の為に、役場からの援助で急遽建てられた。
その寮の前に、ひとりの男が現れる。三葉の父、宮水としきだ。としきは、寮の中に入って行く・・・・すると、もうひとり、寮に近づく人影があった・・・・・ジャージ姿に身を包んだ、三葉(ルパン)だった。
三葉は、器用に雨樋を伝って、屋根の上に上がる。そして、屋根の一部を剥がし、中に入って行く・・・・屋根裏を、徘徊する三葉・・・・ある部屋の上まで来て、耳を澄ませる・・・・・
『・・・・やはり、宮水神社の宝物庫の奥だろう・・・・』
『あの男からは、何も聞き出せなかったのですか?』
『流石に、風魔一の使い手と言われた男だ、どんな拷問にも、口を割らなかった。』
『決行はいつに?』
『宮水神社の祭典の日が良かろう・・・・彗星の最接近も有り、住民の目がそっちに向いて都合が良い・・・・・』
屋根裏で聞いていた三葉は、怪訝な顔をする。
・・・・・風魔だと?・・・・・・
家に戻って来た俺は、また雨樋を伝って上に上がり、2階の窓から自分の部屋に入る。、夜中に、女子高生がひとりで出歩くのは不審に思われるので、出る時も窓から出て行った。
部屋に入って、窓を閉めようとした時・・・・・
「何しとんの?お姉ちゃん?」
振り向くと、四葉がこちらを見ていた。
「何で、窓から入って来たりしとんの?」
やべ・・・そこ、見られてたの?
「また何か、変なもんに感化されたの?ルパンとか・・・」
「え?・・・な・・・何で、ルパン?」
お・・俺がルパンだと、見破ったのか?超能力者か?この娘は?
「この間、テレビでルパンのニュースやっとった時、大声あげてたやないの・・・・“参上!ルパン三世!”なんて、ノートにも書いてたし・・・・」
ああ・・・そういう事ね・・・・・
「そ・・・そうなの・・・私も、ルパンみたいになりたくて・・・ふひひひひひひ!」
「・・・何やの?その下品な笑い?」
いっけね~っ!また、やっちまった・・・・・
“ティアマトの涙”を狙う、謎の組織“風魔”とは?・・・・・
何故、三葉の父が、その組織と繋がっているのか?・・・・・・
そして、ルパンとなり、銭形だけで無く、同業者からも狙われる三葉の運命は?・・・・