ルパンの方は、5年の時差にも気付きます。それだけでは無く、糸守に隠された秘密にも気付いて行きます・・・・・・
俺は、自分の体で目覚め、リビングに入る。いつものように、次元がソファーに座って煙草を吹かしている。
「よう、今朝は、ルパンのようだな?」
「そう言うってことは、入れ替わりを信じたってか?」
「ああ、流石に、あれは芝居には見えねえからな・・・・」
「三葉と、何か話したか?」
「糸守って田舎町に、住んでるって事と、婆さんに、古武術を叩き込まれてるって事くらいだな・・・・あとは、こっちの事を、色々聞かれただけだ。」
「そうか・・・・じゃあ、付いて来な!」
「え?・・・何処に?」
「糸守だよ!」
俺は、車に次元を乗せ、ハイウェイをかっ飛ばす。
「三葉に、会いに行くのか?」
「・・・会えるのならな・・・・」
「はあ?何言ってんだ、お前?」
長野で中央道を降りてからは、山道を疾走する。1時間近く走って、廃校となった学校の前に止まり、車を降りる。
「何だよ?ここは・・・本当に、人が住んでんのか?」
俺は、どんどん先を歩き、校庭の方へ向かう。
「お・・おい!」
次元は、慌てて俺に付いて来る。校庭の端まで行ったところで、次元に言う。
「見な!」
「何?」
そこには、瓢箪状に円が2つ重なった形の大きな湖と、瓦礫の山と化した廃墟があった。
「な・・・何だよ?この廃墟は?」
「これが、糸守だよ!」
「な・・何だと?」
「ティアマト彗星って知ってるか?」
「あ・・ああ、確か、何年か前に、地球に最接近したってやつだな。」
「5年前さ・・・ただ、彗星は再接近した際に一部が分裂して、その破片が日本のある町に墜ちた・・・・・」
「え?・・・それが?」
「この糸守町だ!」
「な・・・何てこった・・・・」
「次元、“ティアマト”って聞いて、他に何か思い出さねえか?」
「はあ?・・・・ティアマト・・・・・て、おい、あれか?」
「そう、“ティアマトの涙”、1000年以上前、彗星の落下の時に一緒に地上に墜ちたと言われている、涙の形をした巨大な宝石・・・・・」
「でも、あれは半ば、伝説のように伝えられているだけだぞ!彗星が墜ちたってのも、確かな記録はねえし、そもそも何処におちたのか・・・・・て、まさか?」
「そう、ここに墜ちたんだよ!1200年前、地球に最接近したティアマト彗星は、5年前と同じように一部が分裂し、糸守に墜ちた・・・・・その時に、一緒に地上に墜ちたのが“ティアマトの涙”・・・・以来、“ティアマトの涙”はこの地に隠され、代々宮水家によって、護られて来た・・・・・・」
「で・・・でもよお・・・・今は、ただの廃墟じゃねえか?」
「5年前に、また彗星が墜ちたからな。」
「じゃあ、ティアマトの涙は・・・・・」
「湖の底・・・・とても、探せたもんじゃねえだろうな・・・・」
次元は、少しの間考え込む・・・そして、思い出したように言う。
「おい、待て!糸守がもう無いのに、何で、お前は三葉と入れ替わってんだ?・・・・三葉は生きてて、別な場所に住んでんのか?」
「いんや、三葉も5年前に死んでるよ・・・俺が入れ替わってるのも、糸守に居る三葉さ。」
「何だよそれ!訳分かんねえぞ!死んだ人間と、どうやって入れ替わるんだよ?」
「だからよ・・・・俺は、5年前の三葉と入れ替わってんだよ!」
「な・・・何だと?」
俺達は糸守を離れ、ハイウェイを東京に戻って走っていた。
「・・・代々宮水家がお宝を護って・・・それで古武術か、じゃあ、三葉もそれを護ってんのか?」
「いや・・・多分三葉は、まだ何も知らねえよ・・・・婆さんが、“お前にはまだ早い”とか言ってたからな。成人でもしたら、伝えるつもりなんじゃねえか?」
「んじゃ、その婆さんが?」
「ああ、あの婆さん、唯の婆さんじゃねえ・・・・・」
「それで・・・お宝を、奪うつもりか?」
「さあな?・・・・奪ったところで、こっちに持って来れねえしな・・・・・」
「だよな・・・・」
「それに・・・何か、周りがきな臭いんだよな?」
俺の言葉を聞き、次元は呆れたように、腕を頭の後ろで組む。
「やれやれ・・・また、始まりやがった・・・直ぐに、厄介ごとに首を突っ込みたがりやがる・・・・」
「あ・・そうだ、次元・・・5年のズレは構わねえが、彗星落下の事や、宝石の事は、まだ三葉には言うなよ!」
「ん?・・・何でだ?」
「いきなり、“自分がもうすぐ死ぬ”とか聞きゃあパニくるだろうし、糸守に戻って、大騒ぎし兼ねねえしな!」
「別に、いいじゃねえか・・・そうすりゃ、早く避難もできて、住民も助かるんじゃねえのか?」
「誰が信じるんだよ?5年後に行って、見てきましたなんて言ってよ・・・・」
「そりゃまあ・・・そうか・・・・」
「それに、代々家宝として“ティアマトの涙”を護ってるとなりゃ、逃げないで宝石と心中なんて・・・やり兼ねんからな、あの婆さん・・・・」
「じゃあ、どうすんだよ?」
「それを、これから考えるんだよ!」
今朝は、自分の体で目が覚める。
この数日で、いろんな事がありすぎて、頭が混乱している・・・・・私は、あのルパン三世と入れ替わっている・・・でも、どうしてそんな事が起こるのか?・・・・・入れ替わりは、朝起きた時。入れ替わると、1日はずっとそのまま・・・・
着替えて、下に降りる。入れ替わりの事を考えながら、朝食を食べていると、テレビから、ニュースが流れてくる・・・・・
『昨夜、パリのルーブル美術館より、特別展示していた秘宝“シンカイの瞳”が、ルパン三世により盗まれました・・・・』
「・・・ええ~っ?」
「な・・なんや?どうしたん、お姉ちゃん?」
いきなり大声をあげたので、四葉もお婆ちゃんも驚く。
「あ・・うん・・・ごめん・・・な・・何でもないんよ・・・・」
さ・・昨夜って・・昨夜は、あたしがルパンになってたのよ・・・盗みなんてやってないし・・・・だいたい、パリになんか居なかった・・・東京に居たわよ・・・・・ど・・どういう事?私が入れ替わってたのは、本当のルパンじゃないの?・・・それとも、パリに現れた方が偽者?・・・・・
サヤちん達と学校に行く途中、また、お父さんが、町営駐車場の敷地内で演説をしている。更に、例の3人組が、道の前方に居る・・・・やだな・・・また、何か嫌味を言われるのか?・・・・・と思ったら、彼らは少しこちらを見たが、何も言わずに行ってしまった。どうしたんだろう?・・・・
「はは・・流石に、昨日のが応えたみたいやな。」
テッシーが言う。
「え?何?昨日のって?」
「何言ってんの?・・・三葉昨日、あの連中を、言いくるめてまったやない・・・こっちは、ハラハラもんやったけど・・・・」
ええっ?何?それ・・・・知らない・・・・
「私、何か言ったの?」
「覚えとらんの?」
サヤちんに詳しく聞くと、こんな事があったようだ・・・・・
―――― 美術の授業中、あの3人組が、私の方を見ながら、呟いていた。
「・・・だから、町政なんて助成金をどう配るかだけやで、誰がやったって同じや!」
「・・・でも、それで生活してる子もおるしな・・・・・」
それを聞いていた私が、急に立ち上がり、3人のところへ歩み寄って言った。
「ほ~っ!じゃあ、あんた達は、誰のお金で生活してんの?」
「はあ?」
「その若さで、自分で生計立ててんですか?立派ですねえ・・・・」
「な・・何言ってんのよ!」
「親のスネ齧ってるだけの奴が、偉そうな事言ってんじゃないよ!」
「な・・・何を・・・」
「町政は、誰がやっても同じ?じゃあ、あんたできんの?」
「な・・・何で俺が・・・・」
「大人の事情を知りもしないで、一人前の口聞いてんじゃねえよ!言いたいことがあったら、町長に直接言いな!それもできねえ癖に、陰でこそこそ言ってんじゃねえ!」
3人組は、もう何も言えなくなって、黙り込んでしまった。 ――――
そ・・そんな事が・・・・ルパン・・・私を、庇ってくれたんだ・・・・
少し、嬉しい気分になり、駐車場の前を通り過ぎる。
「あれ?そういえば、最近三葉のお父さん、三葉に声かえへんね。」
ん?・・・言われてみれば、確かに・・・・前は、“胸張って歩かんか!”とか、うっとおしかったけど・・・・・
学校が終わり、家に帰ると、急にお婆ちゃんに呼ばれた。
神社の裏の、離れに呼び出された。
「三葉、私に何か、隠しておることは無いか?」
え?な・・・何?まさか、入れ替わりに気付いて・・・・て、そんな訳無いか・・・・
「な・・・何も、隠しとらんよ・・・何で、そんな事聞くん?」
すると、お婆ちゃんは無言で、じっと私を見つめている・・・・・
「そうか・・・なら、ええわ・・・・但し、開かずの間には、今後近づいたらあかんよ。」
あ・・開かずの間?・・・何?それ?・・・・ルパン、まさか、私になってる時に、家の中あっちこっち徘徊してるの・・・・ひょっとして、何か盗もうとして・・・・
「ええか?」
「は・・はい!」
とりあえず、変に疑われても困るので、素直に返事を返した。
三葉も、時間のズレに気付いていきます。
更に、宮水神社には、とんでもない秘密が・・・・・
隠された宝石を巡って、物語はどう展開していくのか?
勝手に設定を変えちゃってますが、やはりルパンが出るのならお宝が出ないと・・・・