一方ルパンは、三葉になっても直ぐに順応して、田舎で自由奔放に過ごします。しかし、一夜明けると・・・・何故か牢屋の中に・・・・・
俺は、アジトの部屋に入る。次元が、ソファーに腰掛け、足をテーブルの上に投げ出して、煙草を吹かしている。
「よう!お帰り・・・・随分遅かったな。」
「冗談じゃねえぞ!目が覚めたら、刑務所の中なんてよ!」
俺は、次元の向かい側のソファーに腰掛け、煙草を吹かす。
「で?何を、仕込んで来たんだ?何か、狙いがあったんだろ?」
「何もねえよ!」
「ん?・・・・じゃあ、何でわざわざ、銭形に捕まったんだ?」
「それなんだがな・・・・おい、次元、昨日の俺の様子、詳しく聞かせてくれ。」
「ん?・・・何言ってんだ?お前・・・・」
俺は、次元から、昨日の俺の様子を詳しく聞いた・・・・それで、確信した。俺は昨日、あの三葉という娘と入れ替わっていた・・・・何故?そんな事が起こった?また、何故?一晩で元に戻った?
「おい、ルパン、いったい何があったんだ?」
「次元、俺が、何を言っても信じるか?」
「ん?・・ん~っ・・・まあ、内容にもよるが・・・・」
「じゃ、言わねえ!」
「おい、そりゃねえだろ!分かった!信じるから・・・話して!なっ!」
「昨日の俺は、俺じゃねえ!」
「え?」
「どっかの女と、入れ替わってたんだよ!」
「な・・何だと?」
俺は、昨日俺が三葉という娘になって、田舎の町で体験した事を話した。
「お前・・・頭、大丈夫か?」
「何だよ?信じるって、言わなかったか?」
「いや、確かに言ったが・・・いくらなんでも、そりゃあねえだろ!」
「分かった。」
俺は、ソファーから立ち上がり、ドアに向かう。
「お・・おい!何処行くんだよ?」
「ちょっと調べ物・・・・あ、そうだ!今は、信じらんねえかもしんねえが、近い内に、また同じ事があるかもしんねえからな!」
「はあ?」
そう言って、俺は部屋を出て行く。
俺は、図書館で、昔の新聞を引っ掻き回していた。
あった!ティアマト彗星・・・・何々、彗星は地球に最接近した際に、一部が割れ、岐阜県の糸守町に落下・・・・・町は廃墟となり、住民の1/3が巻き込まれ亡くなった・・・・
彗星が落下したのは・・・・5年前!
俺は次に、糸守の資料を探す・・・・“一夜にして水に沈んだ郷・糸守町”という本を見つけ、中を見る・・・・そこには、彗星落下前の糸守の写真が載っている・・・・間違い無い、俺が昨日居た町は、ここだ!という事は、俺は、5年前の糸守の娘と入れ替わっていたのか?・・・・何故?・・・・・まてよ・・・・“ティアマト”って名称、前にどっかで聞いたことがある・・・・・そうだ、あれだ・・・・・
「ん・・・んんっ・・・・・」
はっとして、飛び起きる・・・じ・・自分の部屋・・・独房じゃ無い。か・・体も、自分の体だ・・・・よ・・良かった~、やっぱり夢だったんだ!
で・・でも、夢だとしても最悪よ!変なおじさんになったと思ったら、いきなり逮捕されて、あとは、一日中拘束着で縛られて・・・何度も、変な警部さんに弄られて・・・セクハラよ、あのじじい!
「どうしたん?お姉ちゃん?」
気が付くと、部屋の襖が開いていて、四葉が私を見ていた。
「ううん、何でもあらへんよ。変な夢見ただけ・・・・」
そう、夢よね。妙に、リアルだったけど・・・・・
私は、着替えようと立ち上がる・・・ふと、机の上に、ノートが開かれて置いてあるのに気付く。何だろうと思って、その開いたページを覗き込むと・・・・
『参上!ルパン三世!』
え?な・・・何?これ?
朝食を終え、学校に向かいながら、私は考える。
あれは、私の字じゃ無かった・・・・四葉の悪戯でも無い・・・じゃあ、誰があんなこと書いたの?・・・・・昨日のあれは、夢じゃ無かったの?私が、ルパンになってた・・・・じゃあ、ルパンが私になって・・・そんな、ばかな・・・・・
「三葉~っ!」
後ろから、サヤちんの声がする。振り返ると、テッシーとサヤちんが、いつものように自転車に2人乗りして近づいて来る。
「おはよう!サヤちん、テッシー。」
「おはよう!今日は、普通やね。」
「え?どういうこと?」
「だって、昨日は、変な笑い方するし・・・・」
「髪も、侍やったしな。」
侍?何それ?・・・・それに、変な笑い方って?
学校に着いて、サヤちんが突然、問題集を出して聞いてくる。
「ねえ三葉、昨日のこの問題、良く解らへんからもう一度教えて。」
「え?こ・・・こんな問題、私かて解らんよ。」
「うそ!昨日は、黒板でみんなの前で、あっという間に解いたやん!」
「え~っ?な・・・何?それ?」
家に帰って、例のノートを見ながら考える。
やっぱり、私、昨日の記憶が無い・・・・今日、サヤちん達に聞いた事は、全く覚えが無いし、とても私の行動とは思えない・・・・そして、昨日の夢は、妙に生々しく覚えてる・・・・もしかして、私、本当にルパンと・・・・・
「ん・・・んんっ・・・・・」
な・・何だろう・・・か・・体が、う・・・動かない・・・・え?
気が付くと、私は、ベッドの上で縛られていた・・・な・・・何で縛られてるの?・・・て・・・ここ、何処?何か、派手な飾りつけのベッドで、部屋の明かりはピンク色・・・ま・・・まさか?ラブホテル?・・・・こ・・・このランニングとサルマタ、股間の違和感、ま・・・また、ルパンになってるの?でも、何で縛られて・・・・この間の続き?だけど、格好が違うし・・・独房じゃ無いし・・・・
良く見ると、壁に貼り紙がしてあった。そこには・・・・・
“ごめんね、ルパン・・・ダイヤ、ありがとう! 不二子”
な・・・何なのよ~!これ~っ!
すると、ドアが開き、髭面で帽子を被った男が入って来る。よ・・・良かった、この人はルパンの仲間だ。
「おいおい、何やってんだ、ルパン!また、不二子にやられたのか?懲りねえなあ、お前も・・・」
「た・・・助けて!おじさん!」
「お・・・おじさん?何言ってんだ?ルパン・・・」
「だから、私は、ルパンやないの!」
「はあ?・・・・まさか、三葉だって言うんじゃねえよな?」
「え?おじさん、何で私の名前知ってんの?」
「ま・・・まじか?・・・ほんとに・・・入れ替わってる?」
その後、私は縄を解いてもらい、服を着て、その人と話をした。
「じゃあ、あんたは本当に、糸守って町に住む女の子なのか?」
「そうやよ、おじさん。」
「おい、おじさんは止めてくれ。俺には、次元大介って名前があるんだ。」
「は・・はい、次元さん。」
その時、また、外からパトカーのサイレン音が聞こえてきた。
「や・・やばい!また、銭形だ!・・・・おい、逃げるぞ!」
「は・・はい!」
私は、次元さんに付いて、非常階段を駆け降りる。裏の路地に出た所で、次元さんが言う。
「俺が、できるだけ引き付けるから、その間に、全速力で反対側に走れ!」
「は・・はい!」
そう言って、次元さんは拳銃を取り出し、警官隊の方へ走って行く。それを見送ってから、私は反対側へ走り出す。しかし、T字路になっている所を曲がったところで・・・・
「ルパ~ン!逮捕だあっ!」
で・・・出た!セクハラ警部・・・・
「神妙に、お縄を頂戴しろ!」
手錠を振り上げて、銭形警部は私に襲い掛かって来る。
「はっ!」
私は体を反転させて姿勢を低くし、右の肘を彼の鳩尾に叩き込む。
「うげっ!」
怯んだところでまた体を反転させ、今度は右足で彼の金的を蹴り上げる。
「ぐはっ!」
完全に体勢が崩れたところで、襟首を掴み、屈んで背中に相手を乗せ、前の地面に向けて投げつける。
「うぎゃあああああっ!」
地面に思い切り叩きつけられ、さしものセクハラ警部も気を失った。そこへ、駆け付けて来た次元さんが驚嘆の声をあげる。
「や・・・やるじゃねえか、どこで覚えたんだ?そんな技・・・」
「お婆ちゃんに・・・幼い頃から、古武術を叩き込まれてるんです。」
「とにかく、今の内だ、ずらかるぞ!」
「はい!」
私達は、急いでその場から走り去る。少し離れたところに、車が停めてあり、それに乗って走り出す。運転しているのは、もちろん次元さん。
「で・・・でも、この体・・・凄いですね・・・」
「ん?・・・何が?」
「細身で、華奢そうなのに・・・中身はがっちりしていて、俊敏性があって、力もある・・・私が、長年掛けて身に付けた体術を、想う通りに実践できる・・・・・」
「まあ、俺達の仕事は、いつも命懸けだからな・・・・ひ弱な体じゃ生き抜けねえよ・・・」
「あの・・・どうして、泥棒なんかやってるんですか?」
「はあ?・・・・どうしてって、言われてもなあ・・・・・そうだな、退屈な日常に飽き飽きしたからかな?」
「ふうん・・・・・」
何となく、その気持ちは、分かるような気がした・・・・・・
あまりにも環境が違いすぎるので、2人とも、1回の入れ替わりで気付いてしまいました。
やられてばかりじゃ三葉が可哀想なので、今回は三葉にも見せ場を作りました。
入れ替わっても冷静なルパンは、早くも、事に真相に近づいていきます・・・・