朝、目が覚めて、直ぐに体の異変に気付く・・・・何か、体が妙に軽い・・・・それと、胸のあたりが何か重い・・・・・・
目を開け、起き上がると・・・・なんだあ?俺の部屋じゃねえぞ・・・しかも・・・・これは、女の部屋じゃねえのか?・・・・昨夜は、夜這いなんてやってねえぞ・・・
と、胸のあたりを触ると、妙な感触が・・・おっほ~・・・き・・気持ちいい・・・でも、まだまだお子様だな、俺の相手じゃ・・・・・
「何しとんね?お姉ちゃん?自分の胸が、そんなに珍しいん?」
気が付くと、右手の襖が開いていて、そこにひとりの幼女が立っていた。
「お・・・お姉ちゃん?」
俺は、自分を指さして聞く。
「他に誰がおんねん!ご・は・ん!」
そう叫んで、幼女は乱暴に襖を閉めて、下に降りて行った。
お・・・俺がお姉ちゃん?何を言ってるんだ、あの幼女は?こんなおじさんをつかまえて・・・・・・
と、その時、目の前にある姿見に、俺の姿が映った
「な・・・なんだあ?」
お・・・女になってる・・・それも・・・高校生くらいじゃねえのか?ま・・・まさか、変装したまま眠っちまったか?
俺は、顔の皮をひっぱる・・・・
「いって~!」
自分の顔だ・・・胸だって、さっき触って、ちゃんと感触があった・・・・て、ことは・・・・ほ・・・本当に女になってる?
「お姉ちゃん、おそいっ!」
「おお・・・わりい、わりい・・・」
状況が分からないので、とりあえず壁に掛かってた制服を着て、下に降りた。しばらくは、この女を演じてみっか!その内、何か分かるだろう。
食卓に着くと、さっきの妹と、もうひとり婆さんが居る・・・・この家は、女だけの3人家族か?それも、父親と母親は居ないのか・・・・
朝飯を食べていると、テレビからニュースが流れてくる。
『1200年に一度という彗星の来訪が、いよいよ一月後に迫っています・・・・』
彗星?一月後?・・・・変だな?そんな話、知らねえぞ?
俺は、テレビの画面を見る。そこには“ティアマト彗星、1ヶ月後には肉眼でも”の文字が・・・・ティアマト?・・・待てよ、この言葉、どっかで・・・・・
「お姉ちゃん!はよう食べんと、学校遅れるよ!」
「あ・・ああ・・・わりい、わりい・・・」
「・・・何か、さっきら、言葉遣い変やよ・・・・」
いっけねえ・・・今は、女の子だった・・・・・
とりあえず、今は女子高生なので、学校に向かう。部屋にあった持ち物等から、今の俺は、“宮水三葉”という女の子になっている事は分かった。しかし、ここは日本のどの辺だ~?随分と田舎に飛ばされたもんだ・・・・
途中で妹と別れ、しばらくひとりで歩いていると・・・
「三葉ーっ!」
何か、後ろから、呼ぶ声がした。振り向くと、自転車に2人乗りした男女が、こっちに向かって来る。
「おはよう!三葉!」
「ああ、おはよう!」
一応、挨拶を返しておく。この娘の友達か?でも、名前がわかんねえな・・・・
「あら?三葉、その頭・・・どうしたん?」
女の方が、俺の髪を見て聞いて来る。何か、おかしいのか?長いから、部屋に置いてあった組紐で纏めただけだが・・・・
「いつもみたいに結ってないやん!」
「それじゃ、まるで侍みたいやな!」
侍?よせやい、五ェ門じゃあるまいし・・・・まあ、髪くらい、とぼけておけばいいか?
「いやあ、時間が無かったんで、うひひひひひひ・・・」
「な・・なんやの?その下品な笑い方・・・・」
あちゃ~!また、やっちまった・・・・
その後の会話で、男の方が“テッシー”、女の方が“早耶香”と呼ばれていた。俺も、そう呼んでおけばいいだろう・・・・
『 ――― そしてなによりも!』
突然、拡声器の野太い声が耳に飛び込んで来る。声のする方を見ると、町営駐車場の敷地内で、誰かが演説をしている。その男の上半身に、“現職・宮水としき”のたすきが掛かっている。更に、後ろには横断幕も掲げている。どうやら、町長選の演説のようだ・・・・宮水?・・・この娘と同じ苗字だな・・・・
「おう、宮水。」
その時、前に居て演説を見ていた高校生の男が、声をかけてきた。
「町長と土建屋は、仲がいいね、その子供たちも癒着しとるな。それ、親のいいつけでつるんどるの?」
その男の隣の女が言う。何やら、嫌味を言ってるみたいだが、意味が良く分かんねえな?ん?土建屋?
俺は、演説している男の横を見る。“勅使河原建設”と書かれたワゴン車の前に、同じ作業服を着た数人がいる。その連中は、“宮水としき応援団”と書かれたたすきをしている。
勅使河原 ― てしがわら ― てし ― テッシー・・・そうか!あの連中、この娘とテッシーの親か・・・・ん?この娘、父親は健在じゃねえか・・・・じゃあ、何で一緒に暮らして無いんだ?
―――― その時、演説をしている、宮水としきと目が合った・・・・だが、その目は、親が娘を見る目とは思えない、異様な殺気が感じられた・・・・何だ?この男は・・・・・
俺は、学校なんかまともに行った事がねえ。だから、初めての学園生活は、楽しいことばかり・・・・・なんてことは全然ねえ!・・・退屈だ、早く終わんねえかな~っ・・・・
「宮水さん!」
何て呆けてたら、指されちまった・・・・
「この問題、解いてみなさい!」
何だよ・・・ペナルティか?仕方ねえな・・・・・
俺は、前に出て、ものの数秒で黒板に回答を書く。
「せ・・正解です・・・宜しい・・・・戻りなさい・・・・」
俺は、済ました顔で席に戻る。周りからは、驚嘆の声があがっている・・・・
学校の問題なんて物は、最初から答えが用意されている。そんな物は、謎でも何でもねえ・・・・俺に問題を出すなら、答えを誰も知らない謎を持って来い!
「す・・すごいやない、三葉!」
席に戻ると、早耶香が感心して言ってくる。
「まあ、それ程でも・・あるかな?ふひひひひひひひ!」
「宮水さん!」
いっけね~、またやっちまった・・・・笑い声だけは、注意しないとな・・・・
夜は、八畳ほどの作業部屋で組紐作りをやった・・・・そんなの、やったこたあねえが、目の前で婆さんが同じ事をやっている。それを目で追い、真似て手を動かす。かちんかちんと、重り玉がぶつかり合い、糸が組まれていく・・・・慣れてくると、もうお手本が無くてもできるようになる・・・ふほほ、面白れえ!学校なんかより、こっちの方が何倍も面白れえや!
「お姉ちゃん?何、にやにやしてん?」
「ん?・・・ああ、何でもない、何でもない・・・・」
組紐作業が終わり、道具を片付けに裏手の宝物庫の方へ行く。何やら、入り組んだ構造になっており、適当に歩いていたら迷ってしまった。ふと、先が見えない長い廊下を見つけ、興味本位で奥まで進んでみる。すると、奥に扉が見えてくる。近づいてみると、大きな南京錠が掛けられて扉は閉ざされており、更に注連縄が掛けられている。
・・・・・何だ?この扉は?・・・この奥に、何があるんだ?・・・・・
「そこは、まだ、お前には早い。」
気が付くと、真後ろに婆さんが居た・・・・何だ?この婆さん、いつの間に・・・全く、気配を感じなかったような・・・・
「時が来たら話す・・・今は、忘れなや・・・」
そう言って、婆さんは行ってしまった。
「ん・・・んんっ・・・・・」
な・・・どこ?ここ・・・・・・
私は、見たこともない、部屋のベッドで目が覚める。もしかして・・・・これも夢?
ふと、体にも違和感を感じる。喉が妙に重い、視線を体に落としてみると・・・・胸が・・・無い?・・・逆に下半身には・・・・何かある?ええ~~っ?
そ・・それに・・・この格好何?ランニングにサルマタって・・・何で、こんなオジンくさい格好で寝てるの?
起き上がって、鏡を探す・・・・ようやく見つけて、覗き込む・・・・・
「ええ~っ?」
な・・何なの?この顔・・・頭は刈り上げで、ひょろ長い顔で・・・しかも、完全におじさん!・・・・どうせなら、もっと恰好いいイケメンに・・・・・
って、そうじゃなくて!何で、私が男に?・・・・・ん?・・・そういえば・・・この顔、どっかで見た事あるような・・・・
「おい!ルパン!」
突然、そう叫んで、髭面の帽子を深く被った男が、部屋に入って来た。
ルパン?・・・そ・・そうだ、この顔・・・新聞で何度も見た!ルパン・・・ルパン三世!
え~っ?わ・・私、ルパンになってるの?
「何呆けてるんだ!銭形だよ!急いでずらかるぞ!」
髭面の男がそう言うと、外から、パトカーのサイレンが聞こえてくる。
え?私が今、ルパンってことは・・・逮捕されちゃう?
「おい!何やってんだ、早くしろ!」
「う・・・うん!」
私は、慌てて服を着て、その男に付いて行く。裏口から出て、階段を駆け降り、裏の路地に停めてある車に乗り込む・・・・って・・・私、車の運転なんて、できないけど・・・・
「おい、何やってんだ!早く出せ!」
「え・・・えっと・・どうやって、動かせばええの?」
「はあ?何言ってんだ?お前・・・・」
「ルパ~ン!」
その時、背後から大声が聞こえる。狭い路地に、パトカーが突っ込んで来る。
「やべえ!銭形だ!」
そのパトカーは真っ直ぐこっちに、全く減速せずに突っ込んで来る。でも、私は、動かし方が分からないので硬直している。
「もう駄目だ!飛び降りろ!」
そう言って、髭面男は、車を飛び出す・・・・でも、私は、動けなかった・・・・
轟音と共に、パトカーは私の乗った車に衝突・・・・その衝撃で、私は車の外に放り出された・・・・・
「ルパ~ン!逮捕だあっ!」
茶色いコートを着た男が、パトカーから飛び出して来て、私を捕らえる。
私は、後ろ手に手錠を掛けられてしまう・・・・・
「はっはっはっ、とうとう逮捕したぞ!ルパ~ン!」
あ~ん・・・わ・・私、ルパンじゃ無いんですけど・・・・・
ルパンとなった三葉が、銭形に連行されていくのを、遠くのビルの屋上から、次元が首を傾げながら眺めていた。
「どうなってやがんだ?・・・変だぞ、ルパンの奴・・・・」
私は、拘束着に着替えさせられ、体の自由を封じられた状態で、独房に入れられていた。
すると、独房の扉にある小さな窓が開き、さっき、私を逮捕した男が顔を出す。
「ルパン、逃げようとしても無駄だぞ!わしが、徹夜で監視しているからな!」
「だ・・だから、私はルパンや無いって、言ってるでしょ!」
「馬鹿め!そんな古臭い手で、わしが騙せると思うか!」
そう言って、男は窓を閉めて行ってしまう。
え~ん!何なの?この夢・・・・お願いだから、早く覚めて~っ!
勢いで書いてしまいました。
三葉の入れ替わりの相手は、“同い年の東京のイケメン男性”のルールすらぶち壊してしまいました・・・・・・
でも、できるだけ、他の人が考えないような入れ替わりじゃないと面白くないし、自分が熟知しているアニメじゃないと、細かいセリフ回しやストーリー構成ができないので・・・・・
さて、ルパンになるやいなや、いきなり銭形警部に逮捕されてしまった、三葉の運命や如何に・・・・・