日常が崩壊した世界で。   作:葉月雅也

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今回は探索回です。
次回、チートすれすれキャラとの対戦です。
そして、500文字くらいまで、作者の欲望と睡魔が暴走した結果です。
すみません、ごめんなさい。
更に途中で視点が変わり、再び戻ります。
わかりにくいとは思いますが……すみません。


『ゼロ』と『エンドレス』

「お嬢様、時雨様、起きてください。朝です」

 

 

由美に起こされ、2人は揃って起床する。窓ガラスに血や半透明の液体が付いている点から推測して、ここで戦闘が起きたのが目に見える。時雨は一度背伸びをする。

 

 

「おはよう、お兄ちゃん。朝御飯は……」

「後ろのトランクから適当に食べるよ」

 

 

夏奈は微笑み車の後方に周り、くるみと話しているようだ。くるみの表情から余り良い話では無さそうだ。時雨は毛布を、まだ寝ぼけているほのかの頭に被せる。ほのかは少しオタオタしたが、直ぐに立ち上がり毛布を肩からかけ、外に出た。

 

 

「思ったより寒いわね」

「冬が近づているからな」

 

 

乾パンをくわえながら時雨は呟いた。そんな時雨の肩を叩き、夏奈はあることを耳打ちした。時雨はくわえていた乾パンを落としそうになる。

 

 

「マジで言っているのか!?」

「異変が起きて、初日の朝の約束。夕飯を奢ってくれるってやつ。あれ無しで良いから……ね?」

「……俺、死んだだろ」

 

 

ほのかを見つけた時雨は少し顔を赤くさせながらくわた乾パンでポッキーゲームのようにほのかの口元に運んだ。ほのかは一瞬ドキッとしたような表情を見せたが、直ぐに真顔に戻り、時雨がくわえていた乾パンを人差し指と中指で摘まみ、自分の口の中に入れた。

 

 

「夏奈? 話があるんだけど?」

「お、お兄ちゃん。今日はどうするの?」

 

 

SOSを時雨に向けて放つ夏奈だったが、時雨は淡々と今日の予定を話始めた。

 

 

「ここから、武器と最低限の食料を持って研究所内に侵入する。ゾンビ騒動の関連資料を持ち出し、国会に出す。それが俺達が出来る最後の抵抗だ」

「そうね、一刻も早く普通の生活に戻りたいわ」

 

 

ここにきて初めて、ほのかが本音を漏らした。研究所までは片道40分くらいかかる計算だった。

 

 

 

 

 

 

「ふう、危なかった……」

 

 

時と場所は変わる。声変わりは済んでいるが、とても爽やかな声で少年は空を眺めている。彼の自慢の髪型も度重なる戦闘で、ぐちゃぐちゃになっていた。少年は駐車場そ横断して、駐車場の入り口付近に(たたず)んだ、車を捕まえるためにだ。その時1台の車がすぐ横を通り過ぎていった。彼は手を振り車を止めた。

 

 

「君は?」

「……加藤錬です!」

「私は相川瞳。知っているよね?」

 

 

錬は頷き、現状簡単にだが説明した。全て聞き終えた瞳は錬に後ろに乗るように言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「着いた。ここで間違いない」

 

 

時雨が指を指した先には確かにファールゼード社の社印が小さくだが描かれていた。扉は引き戸で時雨は戸を引き、中に侵入した。それに続いて、ほのか、くるみ、由美、夏奈の順番で侵入した。

 

 

「これってタブレットだよな」

 

 

時雨は落ちていたタブレットを拾い上げ、電源がつかないか試した。電源ボタンを数秒長押しするとシステムが起動した。中にはシンプルな機能しかなく、ゲームなどのアプリケーションはインストールされていなかった。けれども、そこから今回のゾンビ騒動に繋がる情報は何も得られなかった。

 

 

「時雨様、この研究所ですが現在のフロアが第一研究室、地下に第二、第三と続くようです」

「そうか……。片っ端か調べていくか?」

「それが、一番早いでしょう。急がば回れと言いますし」

 

 

壁に大きく第一研究室と書かれているフロアの探索を開始した。第一研究室はどうやら風邪薬などの市販薬の調合や研究をしているフロアのようだった。特に目立ったものも無く、そこまで荒らされた痕跡もなかった。

 

 

「何も無いわね」

「そう言えば階段も無いな。どうやって下に下りるんだ?」

「兄貴……こ、これって……」

 

 

廊下のような場所に出ると、そこには壁を指差して、くるみが震えていた。

 

 

「あら、階段あったじゃない」

「ほのか……。今回見るべき場所はそこじゃない……」

「あら」

 

 

壁には何かで引っ掻いたような傷と首より上が無い白衣の男性と壁にはトマトを叩きつけたような血痕が残されていた。

 

 

「……。お兄ちゃん」

「不味いな。得体の知れない生物が徘徊している。しかも第一研究室に痕跡があるのに、居ないってことは……」

「階段を使える。フロア間の移動が出来るってことね」

 

 

ほのかだけは冷静さを失わなかった。錬のように周りに流されない人が1人でもいないとメンバー全員が不安に堕ち、普通の判断も出来なくなる。だから、ほのかは冷静沈着に言葉を発した。

 

 

「行きましょ。まだあと2つもフロアが残っているのよ?」

「そうだな。行こう。でもその前に……」

 

 

時雨は死体と化した研究員の数を数えた。そして時雨を先頭に階段を降りていった。壁には第二研究室と書かれている。

 

 

「ここが第二研究室……」

「そうですね。植物園のような感じですね」

 

 

机の上に置かれていた紙の束を夏奈は持ち上げ、目を通していく。その目に不安が隠せない。

 

 

「ここは……生物の成長を変える……実験をしている……部屋……」

「だから、いつでも野菜の価格が変わらないわけか。良いことじゃないか?」

「……本当にいいのかな……それで」

「これって……」

 

 

くるみが見つけた資料には『食虫植物の強化』と書かれていた。具体的な内容な食虫植物を改良して人間を食す生物を作り出すというものだった。

 

 

「あいつら、何を考えているんだ?」

「わからないわね。彼らは普通の人間じゃないもの」

 

 

ほのかは呆れたように両手を開いた。時雨は急に机を蹴り倒した。

 

 

「コイツら……ふざけている……」

 

 

そう言って時雨は階段を目掛けて走り出した。ほのか達もそれに続いて階段を駆け降りた。壁には今までと同様に第三研究室と書かれている。

 

 

「ここは?」

 

 

他のフロアに比べて闇に包まれていた。ただ、一番このフロアに血痕が残されている。ここで、多くの命が散っていたと推測できる。くるみは照明をつけるためのスイッチを手探りで探す。その時、何か液体に触れる様な感じがした。

 

 

「あった……。これがスイッチだ!」

 

 

くるみはスイッチを押し、照明をつけると自身の手が赤く染まってる事に驚いた。どうやら先ほど触れたのは自殺した研究員のようだった。感染はしなかったものの、生き延びれる気がしなかったのが自殺の原因と近くに落ちていた遺書に書かれていた。

 

 

「くるみ、何しているの? 奥に進むわよ」

「は、はい」

 

 

時雨はこの時、肌寒さを感じた。しかし、エアコンはこの近くにはない。時雨は首をかしげる。

 

 

「……嫌な予感がするわね……」

「ああ、寒気がするぜ……」

 

 

時雨達は慎重に歩み続けた。冬場にも関わらず、首筋には時折汗が流れ落ちる。

 

 

「お兄ちゃん……。変な足音聞こえない?」

「聞こえないぞ? 気のせいじゃないか?」

「うーん……そっか」

 

 

机の上に置かれていたファイルを取り、時雨はパラパラとページをめくった。この研究室ではウイルスや軍事目的の薬物の生成が目的らしい。

 

 

「今回のゾンビ騒動の原因もここだろう」

「お兄ちゃん、レポートによるとウイルス事態は冷気に弱かったみたいで数日で消滅したみたい。ゾンビが増えたのって多分、噛まれることによる連鎖で増えたんだと思うよ」

「そうなると、ウイルスは何だったんだ……」

 

 

ふと、くるみは1台だけパソコンの画面が完全にシャットダウンされていないのを見つける。駆け寄ってキーボードで入力し始めると、無数の数字の羅列が画面上に現れる。

 

 

「……」

 

 

しかし中々画面は動かない。

 

 

「あった。ウイルスの名前は『ゼロ』。元々は筋肉増強剤で実験の失敗で触れた者を数時間後に殺害し、その後動く死体へと変化させる液体状のウイルス……」

「お嬢様、このようなものも。くるみ様が見つけ出した資料と合わせてご覧ください」

「……研究員の日誌のようね」

 

 

○月×日

筋肉増強剤の『ゼロ』の試作品が完成した。名前は筋肉痛がなくなる、そこから『ゼロ』にしようと決まった。この薬で我が国の戦力は大幅に向上するだろう。

 

○月△日

『ゼロ』の進化は素晴らしいものだった。研究を開始した段階では不可能と思われていたのだが、これは素晴らしい。

 

×月○日

同時進行で進められている不眠不休で動けるようになる薬は失敗に終わった。被験者は全員死亡した。しかし、ここから新たな可能性を見い出すことが出来た。

 

△月×日

結果からいうと我々は新たな知識を得た。だが、そこまでの過程は失敗である。不眠不休で動けるようになる薬、これを仮に『エンドレス』としよう。『ゼロ』と『エンドレス』が研究員のミスで混ざってしまった。しかし、これが新たな発見となる。筋力を強化しつつ不眠不休で動けるようになる液体が誕生したからだ。

 

△月□日

『ゼロ』と混ざった『エンドレス』は効果が薄くなっていた。よって名前は『ゼロ』のままでいくことになった。『ゼロ』の進化は止まらない

 

□月□日

『ゼロ』を注入した被験者に何も問題は起きていない。これから濃度を変更してみて、『ゼロ』の力が最大限に発揮することが出来るようにしたい。

 

 

「戦争の為の薬か……」

「最初のうちは成功しているように見えたのね。続きを読むわ」

 

 

◇月▽日

我々は、とんでもないものに没頭していたようだ。『ゼロ』は夢のような薬品ではない。悪魔の物だ。我々はこの事を公表するつもりはない。ただ、隠す。隠蔽するのだ。幸いにも、『ゼロ』は冷気に弱い。凍らせると何が起こるか解らないため、冷蔵庫程度の温度を保つようにする。

 

▽月□日

被験者Aの様子がおかしい。急に鉄格子を叩いたり、噛みついたりしている。より一層隔離をしなければならない。

 

▽月○□日

被験者Aを無事、隔離することに成功した。目は何処を見ているのか定かではない。『ゼロ』は危険だ。

 

☆月○日

『ゼロ』を保管している冷蔵庫が故障して、研究員の肘が当たり『ゼロ』がこぼれたらしい。『ゼロ』は無色無臭の液体のため気付かず、拭き取ろうとして感染したらしい。我々もお仕舞いだ。

 

☆月□日

誰でもいい、この事実を明るみに出してくれ。そしてファールゼード社を倒産させるんだ。未来ある少年少女を守るためにも名前も知らない君に、これを託す。

 

 

「日誌はここで終わっているわ」

 

 

聞き終わった夏奈は震えだしている。そして(かろ)うじて動く口を必死に動かし、自身が思っていることを声にした。

 

 

「被験者Aは隔離されているが、殺されてはいない。感染した研究員も殺されてはいない。それって、この建物内に原液を浴びたゾンビが居るってことでしょ……?」

「可能性は高いな。色々不味いぞ……。くるみ! そのパソコンから研究員の人数を計算出来るか?」

「わからない、けどやってみる。」

 

くるみは画面と再び、にらめっこを再開した。

 

 

「お兄ちゃん、なんで人数を調べているの?」

「所属している研究員の数から、ここまで来る途中で見た死体の数を引けば活動しているゾンビの数が分かるんじゃないって思ったからな」

「判ったよ、兄貴。研究員20名、各フロアの責任者6名。計26名」

「ここに来るまでに見かけた死体の数は……25人……」

「あと1体……徘徊している……」




はい、あとがきです。補足の説明も入れておきますね。それでも解らなかったら……メッセージで送ってください。くれぐれも、感想に『わけわかんねーよ』とかは、やめてくださいね。


さて、まずは『ゼロ』についてですね。これはあくまでもオリジナルのウイルス(薬品)ですので多分、存在しないと思います。仮に存在していても、それとこれは別物です。全く関係ないです。
あとは現在の生存者の数ですかね……。この物語で出てくる国の人口は1億3000万人です。その内、5000万人は生存者です。ゾンビの数は8000万体です。それが国中に点在しているわけです。

……結局、説明雑でしたね……。すみません。

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