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さぁ……
ついに、キュイが異世界に復活しました……!
しかし、この復活には秘密があるみたいで……?
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キュイがフェアリーバードの姿で「復活」を果たしました。
これからは、キュイと直接話す事も出来るし、アカリと一緒にキュイも直接闘う事が出来るんです!
しかし、アカリは目に涙を浮かべながら、心の中ではこうも考えてしまうのです……
『髪フゥ♡でフェアリーバードの意識を完全に支配してからテイムする』
というアイデアを思い付いた時は、本当に上手く行くのか、アカリも半信半疑でした。
しかし、本当にこうも上手く行くなんて……
何か……
「この復活には“裏”がある……
そう、アカリ様はお考えなのですか?」
そう、キュイは言いました。
ドキぃッ……!
キュイは、ココロの中を読めるの……?
それに……
フェアリーバードですよ……?
……鳥ですよ?
あの嘴(クチバシ)で、よくまともに喋れますねぇ……?
アカリは喉(のど)までこの言葉が出かかりましたが、何とか呑み込みました。
「ま、確かに“復活”というよりはフェアリーバードの肉体を借りる“憑依”なので、正解に言うと、『表の世界』と『階層世界』とを行き来する感じになりますね。」
「そうですよね。
フェアリーバードで“憑依”するには、事前動作として髪フゥ♡の“気“で意識を完全に支配しておく必要がありますからね。
……逆に言うと、何らかの理由で髪フゥ♡をかけた人が意識を失い、
この場合ですとワタシが意識を失い、“気“が途切れてしまえばキュイさんはそれ以上フェアリーバードの中には留まれなくなる、って事も言えるんじゃないですか?」
「そうなんですよ。
でも、その場合アカリ様が意識を失ったり、万が一フェアリーバードが“昇天”したりしたとしても、再び『階層世界』に戻るだけでワタシ自身がこの世界からいなくなってしまう事はありませんのでご安心下さいね……」
要は、“消滅する”という事態は無さそうだ、という事ですね。
「だったらじゃあ……
ワタシが意識を失ったらアウトって事は……
夜、ワタシが眠りについて『階層世界』へ行く度にキュイのフェアリーバードへの“復活”はリセットされるって……事ですか?」
「いえいえ、そもそも眠りについたら『階層世界』へ行けているって時点で、アカリ様とワタシとの“意識の繋がり”はずっと繋がったままでいるんですよ。
むしろ、眠っても『階層世界』に行けないって“事態”が起きた時の方がヤバいですね……」
そして、キュイは嬉しそうにフェアリーバードの嘴をカチカチ鳴らしながら、
「しかし、アカリ様もワタシの“復活”にフェアリーバードを使って頂けるなんて、かなり先を見据えておられますねぇ……」
えっ、『かなり先を見据えて』ですって……?
どういう事なんでしょうか……?
「あれ、“復活”にフェアリーバードを利用したのってたまたまだったんですかぁ?
じゃあ……そう思った理由を1つずつ説明しましょう!」
キュイは、フェアリーバードのつぶらな瞳でアカリをじ……っと見ながら、
「アカリ様、ワタシ、何に見えます?
ワタシが大きくなったら、何になると思います……?」
アカリはしばらく、ん……と考えました。
そして、困った顔をしてキュイに向かってブンブン首を振りました。
「実はね、フェアリーバードが成長すると、ある“伝説のモンスター”になるんですよ。
……一体、何だと思います?
たぶんアカリ様でも、姿は見た事がなくても、名前くらいは聞いた事があると思いますよ……」
キュイはフェアリーバードの嘴をカチカチさせながら聞いて来ます。
しかし、女の子のアカリには見当も付きません。
「アカリ様、ビックリしないで下さいね……
実は、フェアリーバードとはあの“火の鳥”で有名な……
『霊鳥』フェニックスのヒナ鳥なんです!」
えっ、ウソでしょ……
そんなスゴい鳥だったんですね……
でも、何でキュイは“火の鳥”を知ってるんでしょうか……?
まさか、お母さんの影響なんでしょうか……?
「……あ、そうだ、思い出しました!」
キュイ、こちらの思惑は全く関係無しに話を進めるんですね……
「アカリ様、先ほど『階層世界』で話しそびれた事がありました。
フェアリーバードを使っての“復活”の理由と大いに関係ありますので、改めて説明しますね……」
そして、先ほど『階層世界』にいた時に説明出来なかった事を、キュイはフェアリーバードの姿で話し始めたのです。
「アカリ様、この異世界には5つの大陸があり、
『妖精王』『天使王』『古龍王』『獣猛王』『仁人王』『地塊王』『死鬼王』
という、7つの世界に君臨する『7世界の王』と呼ばれた者達が存在します。
アカリ様、アナタはこの異世界に来たら『7世界の王』を全員探し出して、全ての王から“資質の譲渡”を受けなければなりません。
ただし、素直に“資質の譲渡”に応じる王がいれば、力ずくで屈服させ、“資質の譲渡”に応じさせなければならない王もいるので、注意が必要です。」
そして、キュイは話を続けます。
「もしもアカリ様が無事に7人の王から“資質の譲渡”を全て受ける事が出来たなら……
その時にはアカリ様の行く先に何らかの『天界』への道が照らされるハズです。」
……タカコ様、奇しくも同じ“運命の道”を娘のアカリ様も歩む事になりそうです。
タカコ様、アカリ様を見守ってあげてて下さいね……
キュイは目を閉じました。
そして、かつて母上のタカコ様と冒険した日々を思い返していたのでした。
……『天界』への道、それはお父さんの居場所に通じる道。
ワタシ、必ずお父さんに会いに行くからね……
アカリは目を閉じました。
そして、先ほど『階層世界』にてキュイを通して父との会話を思い出して、まだ見ぬ父への愛慕の想いを募らせていたのでした。
……前振りはココまでにして、いよいよ本題へと迫る事にします。
「今回の旅の目的をハッキリと理解出来た時、フェアリーバードをテイムしておくとイイ事がある理由が、更に“2つ”も生まれるんですよ!」
キュイはフェアリーバードの両方の羽根を広げながら、
「まず、理由の1つ目として……
冒険を進めると、『7世界の王』の1人に出会う為、この異世界のどこかにある幻獣達が住む里を訪れる必要が出て来ます。
しかし、その為には、同じ幻獣の力を借りないと永久に不可能なのです。」
キュイはフェアリーバードの胸をグッと張って、
「しかし、アカリ様にはフェアリーバードであるワタシがいます。
フェアリーバードが進化すると『霊鳥』フェニックスになりますし、フェニックスとは、火の精霊を宿した“幻獣”でもあるんですから!」
“幻獣”とは、火、水、土、風の4大精霊を宿して具現化させた姿。
そんな彼らに護られた里がどこかにあるらしいのです。
確かに、その時にはキュイの助けが必要になりますよね……
「そして、理由の2つ目として……
最終地点としてアカリ様が目指している『天界』は、前にも言った通り“大天使”、“女神”、“魔神”の3神を始めとする、限られた種族しか足を踏み入れる事が許されない『禁断の地』です。
……しかし、例外的に足を踏み入れる事が許された種族がいるんです。
そう、その種族こそがフェニックスを初めとする『霊鳥』の種族なのです。」
どうして?とアカリは不思議そうな顔をします。
「何故なら、『霊鳥』の種族は、実は3神の“乗り物”として昔から活躍していたからなのです。」
ここぞとばかりに、キュイは言葉を強調しています。
「だからこそ、ワタシがアカリ様にフェアリーバードの姿で『復活』してもらえた事で……
将来『天界』に行く際には、『霊鳥』フェニックスとしてアカリ様と一緒に行く事が出来るんです。」
キュイは語尾をより強めます!
「この先、冒険を進めていく上で、進化した『霊鳥』フェニックスの力が必要不可欠になるんです!」
アカリはニッコリと微笑んで、コクンと頷きました。
「これからもヨロシクね、キュイ……」
「こちらも宜しくお願いします、アカリ様!」
アカリはキュイの顔をキュッと優しくハグしてあげたのでした……