女神さま、きぐるみ着るとスゴいんですっ♪   作:きぐるみん

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13縫. ミント団の本当の姿

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長老さんの薦めで、アカリ達は北の漁村へ……

そこで、ミント団の真実を知る事になるのです。

果たして、その真実とは……?

 

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長老さんにどうするか問われた、幾多の選択肢。

これから先の行動指針を決める重要な1つをその中から選ぶ為、アカリはいちから見つめ直す事にしました。

 

 

まず、ピント団について思った事……

 

テイムぐるみを着ている人、すなわち戦力として数えていいキュルミーは数えるほどしかいません。

なのに、なぜミント団と対等に闘えるのでしょう?

その秘密を長老さんはまだ明かしていません。

何か、疚(やま)しい事を隠しているのではないでしょうか?

例えば、武器の横流しみたいな事を平気でする「死の商人」みたいな連中と手を組んでいたりとか……

 

考え過ぎだといいのですが……もしもピント団がそんな人たちだったとしたら、きぐるみひとつで闘う『きぐるみ道』の風上にも置けません。

もしもその通りなら、早めにピント団とは袂(たもと)を分かつ決断をつけた方が身の為です。

 

しかし、まだ確証も何も得ていない状態の時から疑ってかかると真実も霧の向こうに霞(かす)んで見えなくなってしまいます。

ここは、もう少し慎重に行動すべきだ、とアカリは判断しました。

 

 

次に、ミント団について思った事……

 

長老さんの話ですと……ミント団はグループごとの小隊を数多く組織し、命令系統の統制がよく取れている、との事です。

しかし、世界規模の大組織だと聞いています。

活動の為の資金源はどうしているのでしょうか?

何か“黒い事”に手を染めていそうなニオイがプンプンするんですけど……

 

考え過ぎだといいのですが……もしもミント団がこの異世界中のあらゆる町や村で金品強奪を繰り返す様な“野盗集団”なら、あらゆる町や村へ行く度にミント団との衝突は避けられなくなります。

もしもその通りなら、ミント団には接触しないでおく方向で模索した方がいいかも知れません。

 

しかし、今の時点での推測では、なぜピント団とミント団が争わなければならないのか……その“接点”が全然見えて来ないんです。

 

 

そこで、ミント団に関する情報を聞き出してみる事にしました。

 

「ねぇ長老さん、ミント団ってどういう組織なんですか?」

「う……ん、そなたに口で説明するより実際に見てもらった方がいいじゃろ。

ここから北に少し行った所にミント団の“なわばり”の村のひとつとなっておる小さな漁村があるから、くれぐれも見つからん様にこっそり行ってそなたの目で確かめて来るがええ。

『自分の進むべき道』を決めるのは、それからでもいいんじゃからの!!!」

「分かりました、長老さん……行って自分の目で確かめて来ます。」

「行きますか、アカリ様!」

 

 

そして、アカリは『かぐら座』の弾き子の皆さんにも声をかけました。

 

「皆さん、短い間でしたけどお世話になりました!」

「いいよいいよ、私達も旅のお方と一緒にいたお陰で楽しい旅が出来たんですから!

最後に旅のお方、もし宜しければお名前をお聞かせ願えませんか?」

「ワタシはアカリって言います!」

 

リーダーのお姉さんはまぁ!と嬉しそうな顔をして、

 

「アカリさんも、気を付けて行ってらっしゃいね。

大丈夫です、またきっと別の町でまたアカリさんとお会い出来る様な気がしますわ……」

 

そう言って、みんなで手を振って見送ってくれました。

思わず涙が出そうになりました……これも「一期一会」ですね。

その後、アカリとキュイは長老さんにあいさつをしてさっそく北の漁村に向かう事にしました。

 

 

「……しかし長老、『あの事』をあの子達に言わなくても良かったのですか?」

「ワシはな、敢えて言わなかったんじゃ。

もし『あの事』を言えば、あの子達は本来の偵察の目的を忘れて脇目も振らず助けに行くじゃろう。

しかし、それでは“本質”を見誤ってしまうからの。

ワシがあの子達に知ってもらいたいのは、“本質”なんじゃよ……」

 

 

アカリとキュイは、ものの1刻も径たずに北の漁村に到着しました。

 

「キュイ、漁村に着きましたよ。」

「ホント、寂(さび)れた村ですね……」

「長老さんは、この村で何を見させたいんでしょう?」

「取り合えず、この村をグルッと見て回りましょう。」

 

村を散策していると……何か村の中央でトラブルがあった様です。

乾物らしきものを屋台で売り捌(さば)いていた男の人を囲う様に、3~4人の男達が詰め寄って何やら大声で捲(まく)し立てています。

 

「キュイ、見えますか?

あそこに“緑の兎ステッカー”が見えますよ……」

 

……あっ、男達はみんな首に例のレインボーマフラーを巻いています!

 

はい、これであの男達はミント団の団員で決まりですね……

 

相変わらず大声で捲し立てていたので、会話の内容を聞き取ってみる事にします。

 

 

「おい、乾物商!」

「は、ハイィィッッッ!」

「オマエの依頼で乾物の横流しルートを潰したのにまだ成功報酬を貰ってねぇんだよなぁ!」

「確か乾物って高値で取引されてるんだよなぁ、だからすぐ払えるだよな……ピンハネは許さねえぜぇ?」

「『裏の世界』でのやり取りは裏の世界に生きるオレ達ミント団の独壇場なんだよ、特に今回の様な“シマのツブシ合い”はなぁ!」

「うぅ……分かった、払いますよ……」

 

 

会話の内容から察するに……

 

ミント団って、“野盗集団”とかそんなチンケなレベルの群れではないです!

『裏の世界』への依頼に身体を張る代わりに“みかじめ料”を要求する、裏の世界を牛耳る「黒幕(フィクサー)」業を一手に引き受ける世界組織、それがミント団の正体だったのです!

 

 

アカリは思わずブルルッと身体が震えました。

アカリとキュイはそっとその場から立ち退きました。

すると後ろを向いたキュイが、フェアリーバードの嘴(くちばし)でアカリのキュイぐるみの耳をカプッと加えてクイクイ引っ張ります。

 

「ど……どうしたんです、キュイ?」

「アカリ様、あの建物を見てみて下さい……」

 

アカリがそちらの方に振り向くと、ミント団の男達2人がその建物の前で、これでもかってくらい左右をキョロキョロキョロ……と見回して細心の注意を払って中へ入りました。

 

「アカリ様、あからさまに怪しくないですか……?」

 

キュイはニヤリと笑います。

 

「絶対に何かありそうですね……!」

「行っちゃいましょうよ……」

 

アカリとキュイはお互いに目と目を合わせて同時に頷きました。

 

そして、いつもの通り村の外でひなたぼっこをしていたオオトカゲを捕まえ、頭をナデナデしながら

 

「今日はアナタに偵察をお願いしますね♪……髪フゥ♡」

 

と気で精神を支配した偵察トカゲを先に建物の中に放ちました。

キョロ……キョロ……と辺りを窺(うかが)いながら、偵察トカゲは階段を降りて行きました。

目を閉じて、アカリは気の繋がった偵察トカゲの目を通して中の様子を感じ取ります。

 

「どうやら大丈夫そうですね……さぁキュイ、中に入りましょう♪」

 

 

そして、ミント団の男達を追いかける様に2人も建物の中に入って行ったのです……

建物の中には、何があるのでしょうか……?


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