古明地さとりは覚り妖怪である   作:鹿尾菜

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depth.169妖精大戦争 上

ずっと部屋にこもっていると世間の情報が遮断されて世捨て人のような感覚になる。

まあそんなものは感覚だから実際はどうかわからない。

それに業務をしていれば自然と閉ざされた空間でもいろんな情報が入ってくる。

まあその大半は地底の話なのだけれども。

それと地上には一応霊夢に私のことを伝えるなという緘口令を出させてもらっている。理由はもちろん伝えていない。それに人の口に戸は立てられないので

一部妖怪や妖精から存在が露呈しかかっている。

ただそういう妖怪はそもそも意思疎通が無理な存在だったりするので霊夢に漏れる心配はあまりしなくていい。

問題は妖精の方なのだけれど、妖精の言うことなので霊夢も真には受け止めず私に擬態した存在がいると確定させた程度だ。それがどこにいて何をしているのかまではわからないようだ。

 

警戒はしているけれどそこまで問題にすることはなさそうだ。幸い変装していればバレることはなかったので頻繁に会わなければこれからもバレることはないだろう。

ただ問題はそれだけではない。

 

旧都の業務を行うついでにそれとなく探りを入れていた紅魔館の方で動きがあったらしい。

月に行くロケット計画がここに来て大々的に報じられるようになった。

それに使用するロケットも殆どが完成したとの事だ。

まあそれくらいなら問題はないのですけれど……絶対あの馬鹿私も巻き込む可能性がある。

 

というのも、昨日紫が私のところに来て気になる事を伝えてきたからだ。なんでも月の住人は原理不明の望遠鏡で私をずっと監視しているらしい。

ただ実際のところは監視ではなく興味本位で見ているといった意味合いが強いのだとか。

一体全体どうしたらそんな情報を入手できるのやら。もしかして紫は月とコンタクトをとったんですか?

 

「あくまでも予想よ。それに望遠鏡については十年前向こうから手紙で送られてきたの。さとり、貴女の動向を観測する目的で使用しているから幻想郷自体に害を与えるつもりはないってね」

 

と言っていたが本当なのだろうか……もう絶対それ信用できない。むしろ私を監視する名目で幻想郷がまた何かしないように監視したりでもしているのだろうか。

あるいはそれらを使い幻想郷移住計画が実行するとか。ありえそうだから怖い。

 

そういえば地上はもう冬でしたね。たまには家の方にも顔を出しますか。

丁度手元の作業も終わったので席を立つ。ほぼ同じタイミングで扉がノックされた。

偶然ではなく待っていたようですね。

「……お茶お持ちしました」

エコーが入ってくる。メイド服も今では完全に馴染んでいてもうメイド妖精と言っても過言ではない。

「ありがと…そろそろ地上に一回戻るから後何かあったらよろしくね」

そう伝えたら急に顔を輝かせた。なんだそんなに私がいるの嫌だったんですか?いやそうじゃないですね……

「三ヶ月間こもりっぱなしで心配してたんですよ。最低限体洗う以外寝ているのか寝ていないのかもわからないですし」

 

「寝てないですね」

もうかれこれ三十徹です。それでも眠くならないし疲労も感じないから問題はないと思いたい…

っていうかもう年明け近いのですけれど……

そういえば来てましたね。お餅買う予算とかお酒とか…あとはしめ飾りや門松制作費まで来ていましたね。

意識の外だったので忘れていました。

 

 

 

廊下を歩いていると角でばったり鬼の四天王2人に出くわした。

「なんださとりじゃねえか久しぶりだな」

久しぶりですね勇儀さん。

「よっす!」

 

「よっす」

 

「なんだその会話…お前らいつの間にそんな仲になったんだ?」

 

萃香さん暇になるとしょっちゅう執務室に入り込んできて色々とこちらに絡んできましたからね。まあそんな事をしていれば自然とこうなりますよ。

でも書類手伝うって言ったのに字読むのに疲れるって…やっぱり鬼は根本的に書類仕事向いてませんよね。

ええ、絶対力で解決するタイプです。

 

「今から風呂か?」

 

「いえ、一度家に帰って…年越しの準備でもしようかと思います」

 

「準備って今日30日だぞ」

え……それほんとですか?やばくないですか?

 

「……気づいてよかった」

 

「ほんとだよ多分このまま仕事してたら年越してたっていう珍事が起きかねないぞ」

いやそれは流石に無いですよね勇儀さん。そうなる前に誰か止めるんですよね?前だってたまに止めに入ってたじゃないですか。

 

え…なんでその…もうワーカーホリック治ったんだから止めなくてもいいだろみたいな目で見てるんですか?仕方ないじゃないですかワーカーホリックなんで仕事してないと落ち着かないんですよ。

家に帰れば多少は収まりますけれど……

 

「なあさとりあんた私が来た時いつも仕事してたけれど…寝てた?」

萃香さん真夜中でもたまに来ましたよねえ。酔っ払った状態で来ないで欲しかったのですけれど……

 

「一ヶ月ほど前に寝た記憶はありますよ」

珍しく頭痛だったので三時間寝てました。ただそれだけ……

 

「さとり、今からあんたの家についていく。寝るまで監視だ」

 

「ついでに年越しもやっちゃおうか」

 

え…なんですかそれ私の同意なしですか?って勇儀さんなんで私の首根っこ掴むんですか。猫じゃないですよ。まあ変装では猫ですけれど……

抗議するものの聞き入れてはもらえずそのまま門を通って家に運ばれた。

流石に鬼相手に抵抗することはできませんし。

 

 

「ということです年明けに飲ませろと叫んで言うことを聞かない鬼まで一緒に来たのですけれど…」

「「なにがということ⁈」」

お空とお燐が総ツッコミだけれどそこまでだろうか?基本的に鬼は避酒飲んで暴れるイメージでしょ。今更酒の一つや二つ問題ないですよ。

「別にいいんじゃないかな?家広いしたまにはね」

こいしだけは平常だった。まあこれくらいじゃ驚かなくなったあたりもうなれたのだろう。

でも彼女の言う通りたまには酒盛りしても良い。私は飲めませんけれどね。

一応果物を発酵させた酒…ワインとかそういうものだったらなんとかなるのですが…

 

「いやそれ以前にさとり寝てなかったのかい⁈」

え⁇ああ……寝ていませんね。でも眠くならないんですから仕方がないじゃないですか。

「ええまあ……」

多少効率が落ちるけれどそれは少し休憩すれば問題なくなりますから休憩と仕事を交互に繰り返せば問題はないんですよ。

「アホでしょ!今布団用意しますから寝てください!」

お燐どうしてそんなに怒るのよ。後みんな一斉に頷かないで。これじゃあ私が悪いみたいじゃない。

え?私が悪いだろって?仕事しただけなのに……

そんな大げさな……

「さとり様寝てないの?寝ないと体に悪いですよ」

お空が私の手を握って布団に引っ張った。

「仕方がない寝ますか……」

 

「手のひら返し早すぎる」

だってお空にそんなお願いの仕方されたら断れないんですよ。なまじ純粋だから余計に……

 

 

 

 

 

意識が睡眠状態から覚醒。確か布団に入ってからの記憶がないので寝たのはそのあたりだろう。

眠ってから6時間ほどだろうか…

まだ周囲は明るい。

 

 

「あ、お姉ちゃん起きた?」

体を起こせば隣にはこいしが座っていて何かを服の下に隠していた。なにを隠したのだろうか……まあいいや。

「ええ…どれ程寝てました?」

体感時間では6時間と行ったところだろうか…

「6時間くらいかな」

じゃあまだ日付は変わっていないですね。

 

「……新年明けましてとはならなかったようね」

まだ三十一日ですらないのだからそりゃそうかと思ってしまう。

「まあそうなったら私が起こすからさ」

そう、じゃあ安心して寝ることができるわ。

ただ…二度寝させようとするのはやめなさい。

 

 

誰かが玄関の戸を叩いている。

私が出ると言ってこいしより先に部屋を出る。後ろからこいしも来ているようだ。

そういえば……見れば皆がやったのだろうか簡素ながらも門松とかしめ飾り付いてますね。いない間にご苦労さんです。

 

「ねえねえ。おでん作りすぎちゃったんだけど…」

 

ミスティアさんだった。

その後ろにはいつもの屋台が止まっていて、景気の良い湯気を雪の中にあげていた。

「ああ…まあいいですよ。勇儀さん達もいますけれど」

 

そこまで言いかけて後を追うように誰かが来た。年末だというのによく来訪客が来ますねえ。

そっとミスティアの後ろを覗けば、そこには見慣れた赤い外套と和服の妖精と、水色と青の寒色の着物を着た氷精がいた。

「折角ですし来ました」

 

「来てやったぞ!最強のあたいに感謝するんだな!」

大ちゃんとチルノちゃんまで…いや、私の家に向かうミスティアさんを見つけてついてきたといったところでしょうか。

なんだか結構な数集まりましたね……宴会でもやる気なんですか?

「……年越しっていつもこんなでしたっけ⁇」

 

「んー?だいたい家族だけって場合が多いよね」

 

「たまにはいいじゃないですか。それにこういうときくらいしかお酒飲んで楽できる日ないんですから」

ミスティアはわかる。それはわかるのだけれど……まあ他の方たちも自由気ままなのは昔からですから別にいいのですけれど。

 

「まあお酒はみんなで飲むのが良いですからね」

ねえちょっと…ミスティアさんお酒飲みたいだけなんじゃ……

「でも今日30日ですよね?年越しは明日なような…」

年越し前日から呑んだくれるのは鬼だけにしてくださいよ。

「二夜連続だよ」

絶対年越しで寝落ちする確定なのですけれど…

「……今日はお酒ダメです。明日からにしてください」

でももう鬼2人はお酒飲んじゃっているんですけれどね。意味がないというかなんというか……逆にこの2人は酒をここで止めたら禁断症状で暴れだしそう。

「あたいお酒飲んだことないんだけれど」

まあ妖精はあまりお酒飲まないらしいですからね。

「チルノちゃんは飲まない方がいいと思うよ」

大ちゃんその発言は…もしかして飲んだことあるんですか?

なんだか見た目からしてアウトな気がするのですけれど……

まあ妖精に年齢なんて関係ないですからね。

「なんだあ?2人とも酒はダメなのか?じゃあ私が酒の飲み方指導してやるよ」

話に夢中になっていた私は背後から近づく勇儀さんに気づかなかった。

私は彼女に首根っこをまた捕まれ、吊り上げられる。

「酔いづらい酒の飲み方だから安心しな」

 

「まあ貴女の酒の飲み方は参考になるでしょうね」

実際鬼は酒の専門家ですから。飲む方の……

 

 

 

 

 

「で……こうなったと…」

 

時刻は三十一日の朝方。あれだけお酒を飲むなと言ったのに結局みんな飲み始め気づけば大半は酔いつぶれて寝ているか酔っ払い対応で疲れて寝てしまっている状況だった。

 

まあ夕方あたりに起きれば年越しくらいは迎えられますね。それまでに片付けますか……

もう鬼と酒が絡んだらろくな事にならないです。

 

おつまみとかが載っていたお皿を片付け、部屋の隅に綺麗にまとめられた空の酒瓶を一気に処分する。

なんでこう…ちゃんと栓を抜かないで瓶口を切断するかなあ…分別が大変なんですよこれ。

「んー?頭痛い…」

あらから片付けを終えて部屋の空気を入れ替えるために換気をしようか考えていると、普段よりずいぶんおとなしい声が聞こえてきた。

「あ、チルノちゃん起きました?片付けはやっておくので寝ていていいですよ」

 

「ああそう……いや、私も手伝うわ」

一人称があたいではない……そういえば声も少しばかり大人びているような…

「あーそれが本来の貴女ですか?」

振り返ればそこには一回りほど大きくなったチルノがいた。服がきついのか結構パッツンパッツンになってしまっている。

「違う。ただ成長しただけよ…」

 

「原因は……」

 

「寒波。だからレティも似たような状況かもね。あとお酒ね……普段の意思が弱まると自己防御の一環でこうなっちゃうのよ」

顔色があまり良くないからこれ以上は話しかけない方が良いだろう。多分あれは二日酔いだ。

だけれど酒を飲むと大人ってなんだかなあ……

 

「……蜆の味噌汁ならありますよ…」

味噌汁だから気休めだろうけれどないよりはマシでしょう。

「もらうわ……」

 

 

 

台所から蜆の味噌汁を取ってくる。片付けをしながら温めておいた甲斐がありました。

「ちなみにそれどのくらい続くんですか?」

 

「さあ?前になった時は一ヶ月続いたわ」

ああ…じゃあ冬はしばらくそのままでしょうね。

「それよりさあココ部屋暑いんだけれど……」

氷精らしく暑いのがダメなのか必死に冷ましている姿を見ていたら睨まれた。

「開けたら寒いですよ」

 

「私は氷の妖精よ」

 

「ヘル?」

 

「下半身が腐ったやつじゃん。あいつ嫌い……」

あ、嫌いなんだ……

 

「クロセル?」

 

「悪魔と一緒にしないで」

元天使じゃないですか。

 

「じゃあジャックフロスト」

 

「あんな垂らしと一緒にしないで」

ええ…垂らしなんですか?なんか意外です。

 

 

 

 

「んー……」

ようやくこっちの身体にも慣れてきた。冬の合間の家であるかまくらが少し窮屈であったがひとまわり大きいものに作り直して対処。ただそれだけではなく着ている服がきつくなってしまったのは痛い。

だからこの体にはなりたくない。ああイヤダイヤダ……

 

なんかよくわからない頃の私が日課にしている池の氷漬けもほどほどに岸辺に腰を下ろす。意外とこれ疲れる。

と言うかどうしてこんなことしないといけないんだ…全く理解できない。

やめちゃおうかなあ……

あ、いや私氷の妖精だわ…湖凍りつかせないといけないじゃん。

何妖精の存在否定しちゃってるんだか。

 

 

さて続きをやろっと……

体に降り積もった雪をはたき落としていると、背後で何かが吹き飛ぶ轟音と衝撃波が背中を押した。

やや遅れて巻き上げられた雪が降りかかる。せっかくはたき落したのに意味がないじゃん。

 

「何……」

 

振り返ればさっきまであったはずの私のかまくらは綺麗に消えていて、そこの場所だけ雪が吹き飛ばされ地面が見えていた。

敵襲……

 

木の上で物音がした。

見上げればそこには1人の妖精が立っていた。多分そいつがやったのだろう。

「あーっはっは‼︎チルノ久しぶりね!」

なんかめっちゃ高笑いしているし。

確かサニーとかいう妖精だったな……下の名前はなんだっけ?正直妖精としかわからない。私も妖精だけれどね!

「えっと…妖精トリオ?」

 

「何よそれ‼︎名前わからないの⁈」

ごめんわからん‼︎私がそこまで記憶力は良くないんだ!天才だけれどね!

「いや…サニーはわかるけれど他2人がどうしても」

いやここにはいないんだけれどどうしてもそっち思い出さないといけないような気がして……

「ルナチャイルド!」

 

「スターサファイア!」

サニーの立っている木の裏から2人が飛び出してきた。

ああ…やっと思い出した。って隠れてたんかい‼︎

 

「私の家を破壊しておいて一体どう言うつもり?」

 

「私たちは貴女に勧誘に来たのよ‼︎」

かんゆう?ああ、勧誘ね。一体どう言うことだろう?遊びに誘うなら家を壊すなんてことしなくてもいくらだって相手してあげるのに。

「なんで家壊したの…」

 

「いやなんか…普通に言っても聞いてくれないじゃない?だから武力制圧というか…そんな感じ」

 

「……あっそ…勝手にすれば」

前までの私なら絶対あの挑発に乗っていたけれど今の私はそんな気はしない。

なんだろうね…物事を冷静に見れるようになったからかな。

「連れないわねチルノ。あんた大人びてるからっていい気にならない事よ!」

 

「いや……いま湖の氷漬けやっているの」

まさかこれが言い訳にできるなんてね。ついさっきの私に自慢してやりたいわ。

「うぐぐ……従わないんだったら戦いなさいよ!それで白黒つけてやるわ!」

 

「面倒だから後でね」

まあ家を壊されたのだからそれの落とし前くらいはつけさせてもらうわ。でもそれは今ではない。

「うぎーー‼︎」

 

「だからさ…今のチルノちゃんじゃ無理って言ったじゃん」

ああ…ルナチャはわかってたのね。まあ御愁傷様。

「こう言う時は大ちゃんを先に手中に収めないと…」

 

「あ?今なんて言った?」

 

「ほら乗ってきた」

 

「大ちゃんから先に勧誘しにいくわ。そしたら貴女もやってくれる」

んー大ちゃんも同じだと思うんだけれど…あ、そっか…じゃあおんなじように大ちゃんとも戦おうとする。大ちゃんにとっては敵。なら私にとっても敵。

「上等よ。凍らせ終わったらすぐに行くわ。氷漬けにされたカエルのオブジェの隣に飾ってあげるから」

 

「あのールナチャさん?流石にあれはまずいんじゃ…」

サニーどうして怖気付いているの?

 

 

 

 

 

冬になると半分くらいの妖精は寝ている。それは冬が生物にとっての睡眠期間であり強いて言えば地球自体の睡眠とも呼べるものだから。

だけれど例外だって多い。例えば私のような少し役割が違う妖精だったりチルノちゃんやレティさんのような冬を司る場合はむしろ冬に暴れる。

だから別に1人ってわけじゃないよ。ぼっちで寂しいんじゃないから!

ただ…予定が合わないとぼっちだからそれはそれで辛いかなあ……

「いたいた‼︎大妖精!」

背後から声をかけられた。誰か遊びにきたのかな?でもその割には人の家の窓を割って入ってきているような……

 

「えっと……入り口はあっちなんだけれど」

うーん…それ掃除するの私なんですけれど。困ったなあ……

「私の入り口よ!」

そんな横暴な…

サニーちゃんひどいよなんでこんなことするのさ。せめて窓くらい開けて入ってきてよ。

 

そう思っていたら天井が軋み始めた。なんだろう?誰か乗っているのかな…

「はいはい、ちょっと失礼」

 

「お邪魔しまーす‼︎」

ねええええ‼︎なんでスターちゃんとルナちゃんも玄関から入らないの⁈なんで屋根に穴空けるのかなああ‼︎

「ふふふ…勧誘に来たの!貴女で三十人目よ!」

 

「え?勧誘ですか?」

 

「そうよ!妖精を出来るだけ集めて一緒に強大な敵に立ち向かうの!」

 

「理由は……」

いきなり勧誘ってなんでしょうか?

 

「実はね……」

 

サニーが言うには強大な敵に妖精たちが力を合わせて戦争を起こす初夢を見て、それを正夢にすべく妖精を統括しているのだとか。ただその過程で時々こうなってしまうのだとか。

 

やり方が絶対間違っているよ……窓ガラスを割るなんて……

「……何回休みにします?」

 

「え……?」

 

「人の窓を壊すと言うことは勧誘ではなくただの宣戦布告ですよ?ですがこちらの方が確かに力で統括するのであれば確実ですね」

ええ…宣戦布告してその場で戦って…勝てば配下に組み込める…効率は悪いですけれど同時に強くなれますよ。

「あ、や、やっぱり謝るわ。だからお願い一緒に戦ってくれる?」

 

「ふーん?じゃあ窓の弁償してくれる?」

 

「いえそのなんというか……」

 

「あらあらお可愛いこと」

 

「分かったわよ!窓くらい直すわよ‼︎」

 

良かったです。でしたら一緒に戦いましょうか。でも戦争と言うのですからそれなりのところを狙うのでしょう?ワクワクします。

 

 

 

 

 

 

 

玄関の戸が思いっきり開けられる音がした。

誰か来たのだろうか……

 

新しくスペルカードを作っていたものの一度中断させ玄関の方に向かう。

そこには私より少し小さい少女達が玄関に立っていた。

雪の中を飛んできたからだろうか肩や頭には雪が降り積もっている。サニー、ルナチャ、スターだった。

どうしたのだろう?彼女達が来るのは珍しいですね。

「すいませーん!エコーちゃんいます?」

サニーが玄関に来た私に聞いてきた。エコー?ああ、今は地霊殿の方にいるはずですけれど……

「あの子に何か用ですか?」

 

「勧誘しに来たわ!」

勧誘?ああ……そういえばそんな時期だった。そっか…今年だったのか。

わかりました…じゃあちょっと待っててくださいね。

 

「サニー流石にそれは……」

表情の変わらない私が怖いらしいスターがサニーに注意を促す。

「大丈夫!私に任せて」

いや別に私は怒っているわけじゃないですよ。

 

「ああ…なら呼んできますね。でもその前に上がってお茶でもどうです?」

ずっと玄関で立ちっぱなしと言うのもアレでしょう?

「和菓子は?」

 

「もちろんありますよ」

 

「仕方ないわねえ…じゃあちゃんとエコー呼んできて!」

 

「はいはい……」

 

「お、お邪魔します」

 

「お邪魔しまーす」

礼儀正しい子達ですね。

なんだか近所の子供が遊びに来たって感じです。

 

 

有線電話を使いますか……

 

にとりさんが開発した有線電話。実態はただの電報を送る機械です。

直径8ミリの電線が本線二本予備線一本の計三本収められたケーブルを私が使う空間転移用の門を通して直接地霊殿に通している。

 

勿論電報なので入力側はモールス符号で打ち込まないといけない。

ただし出力側は符号と合致する文字を映し出すだけなのでタイプライターを改造したものと連動で文字を打ち出してくれる。

 

入力側も同じように文字で入れれば良いのにと思うのは私だけだろうか……

一応電話もあるのだけれどあれも有線ですしいまは故障している。

真空管がお陀仏になってしまったのだとか。それも電話交換所のものがだ。

 

 

少ししエコーからてすぐ行くと返信が来た。

ならもう少しすれば来ますね。

 

三人のところに戻ると、出されたお菓子はすでに半分が消えていた。

「和菓子美味しい!」

 

「ほんとだ!美味しいね!」

 

「暖かい…これは本を読める環境だ…」

こたつに潜った三人は当初の目的を完全に忘れたかのようにのんびりしていた。

私もそこに入ろうかどうか悩んだのですが…お茶のおかわりを頼まれてしまったので諦めます。

 

 

 

 

お茶を汲んで再び部屋に戻ってみれば、エコーちゃんと入れ違いだったらしくご相談の真っ最中だった。

「参加してくれる?」

 

「具体性がなさすぎてほぼ無理です。そもそも強大な敵が何かすらわからないのですが……」

 

「それはまあ…考えるわよ」

 

エコーはなまじ頭の回転早いですからねえ……

それに実際異変を起こしかけましたからその辺よく知っています。

 

「それと数を集めても使い方を間違えればただの案山子ですよね?そこらへんの運用計画とか色々準備でできているのなら考えても良いのですが…」

 

「う…その、なんというか…」

何も考えていないんですか……いやまあ…何をするにもまずは数集めないといけないですからねえ。

「もう諦めたらサニー…」

 

あーこれは…助け船でも出してあげましょうか。せっかくですし……

「地霊殿のほうだったら私がなんとかしておくから参加してみたら?」

 

「ですが……」

 

「それに計画性がないなら貴女が計画を作っちゃえばいいのよ。できるでしょ」

実際死霊妖精を操り地底で大暴れしたんだから…必要なら私も手伝うわよ。面白そうですし。

「……わかりました。そのかわりちゃんと指示には従ってください」

え……リーダーはエコーなの?なんかもうそう言う流れなんですけれど……

「私達がリーダーよ‼︎」

あ…そこだけは譲れないんですね。まあいいです。あ、ご飯食べていきます?そろそろ夕食の用意とかもありますから…四人増えたって変わらないですよ。

なんです?その拝むポーズは?

 

いやだからそんな拝まれても……それに雪も結構降ってきていますから今日は泊まっていきなさい。そうでもしないと夜と雪のコンボじゃまともに歩けないわよ。

「それと…さとりさんも手伝ってください」

 

「私もですか?まあいいですけれど……」

流石に手伝えばと言ってしまったのだからここで私が断るなんてできやしない。仕方がないです……ほどほどに手伝いましょうか。

 

 

 

 

 

 

三人がいなくなり、壊れたかまくらとなんか無性にムカついてきたから作った氷のオブジェだけが残されていた空間に他人の声が木霊した。

「ねえねえ、なんか面白そうなことになっているね」

今日は来訪客が多いんだなあ。明けましておめでとうの挨拶はもう遅いと思うんだけれど…

「貴女…いつから来ていたの?」

 

「んー最初からかなあ…面白そうだったから全部見ちゃった」

はいはいどうせ面白い基準でしょうね。でもこっちだって真剣なのよ。面白そうとか言う理由だと怒りたいわ。

でもそれは我慢。ここでまた喧嘩売っても得策じゃないわ。

「それで…貴女は何がしたいの?」

彼女は私の問いに笑いながらも答えてくれた。

「せっかく面白そうな事始まりそうなんだから私も楽しませてよ」

つまりは交ぜろということだ。あのう…これ妖精同士の内輪揉めなんだけれど…首突っ込んで欲しくはないんだよなあ。でも言っても言うことなんて聞かないだろうし私だって普段だったら見境なく首突っ込むわよ。

「つまり参加するのね……」

 

「もちろんチルノの味方なのだー」

一応味方なのね。でもどう考えても味方というより攻撃はしないし援護もしない中立な立場になりそう。実際私だって誰かと協力して戦うってのは苦手なんだよね。

「……良いわ。じゃチーム結成ね」

連携は取れないだろうしこっちも取る気は無いけれど。

「ありがと」

 

「そういや貴女…大人びてない?」

普段の私と大して変わらない見た目だったのだけれど今は私と同じで結構成長している。主に胸あたりが…なんでだろう。なんであんなに差がついているんだろう。

「封印解けちゃったからなあ…仕方がないよ」

 

「あっそう……その割には秋頃まで子供っぽかったけれど?」

 

「力だって集まる時と集まらない時があるじゃん。そういうことだよ」

そうやって笑っているけれど全然目は笑っていない。なんか信用できないなあ……大ちゃんの方にも声かけるかなあ…

「へえ……じゃあ私と同じってわけだね」

 

「そーなのかー」




チルノ(半覚醒)
大妖精(ちょっとやばい)
エコー(デデンデンデデン)

一心不乱の大戦争を!

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