この次が鬼門だ!
「サトシ、どうしたんだろう」
「セレナ、大丈夫?」
いきなりあんな逃げるようにして去られたら、いくらなんでも傷つくんじゃないか、そう思ってセレナに声をかける女子二人。
「うん、大丈夫。ねぇ、ちょっと聞いてもいい?」
「何?」
「そっちでのサトシって、どんな生活をしてたの?」
ポフレを作りながら、マオとスイレンはサトシが来てからのことをセレナに話した。一つの場所に長く止まるという、今までにない生活だが、そこには多くの出会いと冒険があった。サトシを中心に、様々な出来事を経験して来た彼女たち。その話をセレナは興味深そうに聞いていた。
「ほんと、サトシってすごいよね。スクール内に隠れファンクラブがあるって噂だし」
「ポケモンにも、年下にも優しいから」
いつの間にかサトシの人柄や人間関係についてばかり話す二人の様子に、セレナが笑顔で爆弾を落とした。
「そんなサトシのことが、好きなんでしょ?」
「「えっ?」」
「「えぇ〜!?」」
少し離れたところから驚きながらも声を出さなかったマーマネと、おいおいって顔をするカキが見ている。幸いハナコは今はキッチンにはいなかったが。
「そそそ、それはその、サトシは確かに優しいしふとした時に大人っぽいところもあるし、いつも美味しいってあたしの手料理とか食べてくれて嬉しいけど、だからって、その、好きとか」
「ち、違うよ。その、アシマリとの夢、笑わないで応援してくれたこととか、ホウとスイとも仲良くしてくれてるとことか、感謝してることいっぱい、だけど」
顔を赤くして否定の言葉を並べる二人。その様子を優しそうな笑顔を浮かべながら、セレナが暴走しそうな二人を止める。
「落ち着いて、二人とも。私もその気持ち、よくわかるから」
「え?」
「もしかして、セレナも?」
「うん。私もサトシのことが好きなの」
「ええっ〜!?」
「セ、セレナは、サトシのどんな所が好きなの?」
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少しあたりを探したリーリエは、木陰に腰掛け、少しぼーっとしているサトシを見つけた。
「サトシ、大丈夫ですか?」
「あ、リーリエか。うん、大丈夫だよ」
「体調が悪い、わけではなさそうですね。どこかセレナに対して、いつものサトシと違う気がしましたけど」
「あぁ、まぁ。その、なんていうか。ちょっとどう接したらいいのか、わからないんだ」
そんな事をサトシが言ったことに、リーリエは驚きを隠せない。誰に対しても明るく、真っ直ぐに向かい合うサトシ。そのサトシが誰かとの接し方で悩むというのは、想像できなかった。
「何かあったのですか?」
「あー、えーっと」
「良かったら、話して見ていただけませんか?わたくしも、サトシの力になりたいんです」
その提案に驚くサトシ。相談するにしても、母親あたりにでもしようかと思っていたからだ。けれど、真剣なリーリエのその様子に、サトシは正直に話してみることにした。
「セレナとはカロス地方を一緒に旅してたって話だよな?」
「はい。アローラに来る前のことですよね?」
「あぁ。それでカロス地方を旅し終わった後、お別れした時に、えーっと、」
少し言葉を詰まらせるサトシ。当時のことを思い出して照れくさいのか、無意識のうちに頬を指でかいている。
「その、キス、されたんだ」
「……………」
「……………」
「……………はっ!え、ええっ!?その、あのキスですか!?」
「他にどのキスがあるのか知らないけど、うんまぁね」
「では、セレナはサトシの事が好きだったのですか?」
「俺もそれまで全然わかってなかったんだけど、多分そうだったんじゃないかと思う。された時も、なんだかよくわかってなかったし、後でママに教えてもらってやっと気づいたし」
サトシは鈍感なのではないかと前々から思っていたが、本格的にそうらしい。キスされることの意味や、そこに込められた気持ちもよくわかっていなかったとなると、これはかなりの難題なのではないだろうか。
「それで、サトシは、その、どう思ってるのですか?その、セレナのこと」
次回多分長くなるのでしばらくお待ちください、はい