でも忙しくて映画館まで行ける気がしない
夜、夕食や風呂を済ませたサトシたちは皆集まっていた。サトシの思い出話を聞くために。
「というわけで、早速サトシが旅に出た時の思い出、聞かせてよ」
「ん?あぁ。もうだいぶん前のことなんだよなぁ。10歳になった年に旅に出たんだ」
「最初のポケモンは?」
「確かこの地方ではフシギダネ、ゼニガメ、ヒトカゲから選ばれるのですよね?ですが、フシギダネもゼニガメもいましたね」
「どっちが先だったの?」
「実は、俺の最初のポケモンってピカチュウなんだ」
「えっ、ピカチュウが?でもピカチュウは気難しいところもあるから、初心者には向かないんだけどなぁ」
流石にマーマネ、でんきタイプに詳しく疑問を感じた。そもそも
「実はポケモンをもらう日、俺寝坊しちゃったんだ」
「「「「えぇっ!?」」」」
「おいおい」
「それで、俺以外に3人旅に出るトレーナーがいたんだけどさ、みんな先に出ちゃったから3匹ともがいなかったんだよね」
「もぅ、サトシらしいというかなんというか」
「今でも時々寝坊しますしね」
「あははは。でさ、その時にオーキド博士が残ってるって言ってくれたボールに入ってたのがピカチュウなんだ」
今でも思い出す。パジャマのままの自分、ボールから溢れた眩しい光、そしてそこで出会い、今尚相棒として共にいるその黄色い姿。
「最初はピカチュウも俺のいうこと聞いてくれなくてさ、何度も電撃を浴びせられたよ。な?」
「ピーカチュ」
たははーとでも言わんばかりに前足で後頭部をかくピカチュウ。今こうして彼の方にずっと乗っているその様子からは、仲が悪かった時があったなんてとても想像できなかった。
「そんなに仲悪かったの?」
「握手もしてくれなかったし、初めてのポケモンゲットに挑戦しようとした時も全然協力しようとしてくれなかったんだよなぁ」
「ピカチュウ、反抗期みたいだね」
「しょうがないと思うよ。さっきも言ったけど、ピカチュウは気難しいからね〜」
「それでは、どうやって今のような関係になったのですか?」
リーリエの疑問にサトシは方に乗っているピカチュウを見る。二人とも懐かしい思い出に想いを馳せ、少し嬉しそうだった。
「俺さ、初日にポケモンをゲットしてみせる!って感じに意気込んでてさ、ピカチュウが協力してくれないなら一人でもって。そしたら、オニスズメを怒らせちゃって」
ポッポと同じく、カントー地方を代表する鳥ポケモンのオニスズメ。しかしポッポと違い、気性が荒いことで知られている。そのオニスズメを怒らせてしまったのだ。
「二人でオニスズメの群れから逃げることになったんだ。けど、ピカチュウはだいぶ傷ついてしまったんだ。俺の行動のせいで。二人揃って、ボロボロになって。それでもピカチュウだけは守ってやりたいって、そう思ったんだ」
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全くボールに入ろうとしないピカチュウの前に、サトシはボールを置いた。その中ならピカチュウは無事でいられるからと。そしてオニスズメの群れの前に、ピカチュウをかばうように立った。
『俺をなんだと思っているんだ!!俺はマサラタウンのサトシ!!世界一のポケモンマスターになるんだぞ!! こんなところで負けてたまるか!!かかってこい!!みんなまとめてゲットしてやる!!』
その頃のサトシは、無知で無謀な少年だったかもしれない。でもその頃から変わらないもの、それはポケモンへの愛情。その愛情が、その覚悟が、勇気が、ピカチュウを動かした。サトシの体を駆け上がり、サトシの前、オニスズメの群れへ突っ込むピカチュウ。その身体に雷が落ちると、強力な電気技が発動し、群れを吹き飛ばした。
朝、そのあと気絶してしまった彼らはほぼ同時に目を覚ました。ボロボロの体のまま見つめ合うサトシとピカチュウ。自然と笑みが浮かぶ。
何かの気配を感じ空を見上げた二人。大きなポケモン、虹色の輝きを纏いながら優雅に飛ぶその姿に二人は見とれた。そのポケモンが通った後には二人の出だしを祝福するかのような美しい虹が空にかかっていた。
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「こうして、俺たちの旅が始まったんだ」
サトシの話に皆引き込まれていた。ポケモントレーナーとして、一人で旅に出ることをまだ経験していない彼らにとって、サトシの始まりは驚くことが多かった。
「そういえば、最後に現れた大きな鳥のポケモンって?」
「カントーでしたらオニドリルやピジョットあたりではないでしょうか。もちろん他のポケモンの可能性も否めませんけど」
「虹色の輝きっていうのがよくわからないんだけど」
『そんな技や現象、ピジョットやオニドリルのデータには載ってないロト』
あぁでもないこうでもないと考えるクラスメートを眺めながら、サトシは答えた。
「あれはさ、ホウオウってポケモンだったんだ」
「ホウオウ?」
『ホウオウ、にじいろポケモン。ほのお・ひこうタイプ。人を常に見守り、七色に光り輝く姿を持つ。ホウオウの通った後には虹が掛かると言われている』
「わたくし、本で読んだことがあります!確かジョウト地方で主に知られている伝説のポケモンでエンテイ、ライコウ、スイクンの三体を蘇らせ、使者として人間を監視させたと言われています。それに、本当に心優しい人間の前にしか現れないとも」
「その伝説のポケモンを、旅の初日から見たというのか?」
「すっごいね、サトシ」
「そうかな?でもあの時、まるで応援してもらっているみたいな気がしてさ。いつかちゃんと出会えるといいなって思ってるんだ」
こうして、修学旅行1日目は過ぎていった。サトシの知らなかったすごい部分を見て、大いに刺激を受けた彼ら。しかしそれはまだ序の口。本当のびっくりはまだまだここからだった。
あの時のホウオウ、本当に謎のポケモンでしたからね〜
今年の映画ではどこまで活躍してくれるのかな
楽しみだなぁ