お昼の時間、それぞれがポケモン達との触れ合いを経て、研究所まで戻って来た。楽しそうに生き生きしているサトシ達と、あまりの驚愕に疲れが見えるマオ達。まるで逆の表情をしていた。カキは涼しげだったが、他の二人は本当にげっそりしていたのだ。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
「な、なんとかね」
「僕、もう疲れちゃったよ」
よほど衝撃を受けたようだった。その様子に無理もないか、とケンジは苦笑していた。強さの探求に余念がないのは前からだったが、カロスリーグでの後輩達の活躍を見て、彼らもジッとしていられなかったのだ。
その地方で出会い、その旅の間だけで、彼らはあれだけの力をつけ、リーグでその猛威を振るった。メガアブソルを一騎打ちで倒した実力者ルチャブル。炎を纏い加速し続け、ジム戦でも活躍してきたファイアロー。何度技を受けても倒れることなく、それを力にすることができるヌメルゴン。卵から孵ってから僅かな時間しか経っていないとは思えない力をつけていたオンバーン。そしてサトシとの絆が深まれば深まるほどその力が増していき、誰も知らない高みへ行けるとまで予言されたゲッコウガ。
シンオウリーグの時とも違い、本当に彼らだけの力で勝ち上がり、あと少しのところまで辿り着いたのだ。結果は準優勝ではあったが、それでも今までで一番の成績だった。その結果が、それを成し遂げた彼らの存在が、彼の他のポケモン達に火をつけたのだ。
ケンジが博士達と一緒に見ていたあのリーグ戦を思い出していると、彼らの前にオーキド博士が食材を並べていた。ニンジン、ジャガイモ、玉ねぎなどなど。もうこの時点でなんとなく想像できるとは思うが、博士は笑顔で彼らに告げた。
「今日のお昼は君たち自身で用意して見なさい。シチューのための材料や器具は用意してある」
「えっ、俺たちでですか?」
「サトシ、お前さんはいろんなところを旅して来たから知っておると思うが、必ずいつも料理が用意されるわけではないじゃろ?これもまた経験じゃよ」
頷くサトシたち。特にサトシは最近少しずつ教えてもらっていることもあり、練習にもなると意気込んでいた。それなりに料理をする女性陣も一緒に料理をするのが楽しみみたいで、すでに材料や器具の確認、手順をああでもないこうでもないと相談していた。
えっ?男性陣はどうしたかって?彼らの表情を見れば一目瞭然ですよ。全く乗り気ではありません。
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「こうして包丁を固定して、っと」
「サトシやるじゃん!」
「うん。うまいうまい」
「これも特訓の成果かな。リーリエの教え方上手だし」
「サトシが頑張ってるからですよ」
「じゃあじゃあ、今度はあたしが教えてあげよっか?アイナ食堂の看板娘、マオちゃんが直々に」
「私も教えられるよ。よく妹のために作ることもあるし」
「いいな。またこうやってみんなで作るのも、楽しそうだ!」
今までのサトシからはとても想像できない光景である。ポケモンと直接関係のない、料理の話題で盛り上がっているのだ。これには少し離れて様子を見ていたオーキド博士もケンジもびっくりしていた。
「サトシも成長しとるんじゃのう」
「僕と旅してた頃からも、それなりに経ちますからね。いろんな旅の中で、思うとこがあったんでしょう」
「うむ。良いことじゃな。しかしあのサトシが自分から料理を教わろうとするとはのぉ」
「みんなびっくりしますね」
一方カキとマーマネは火起こし担当だった。と言ってもカキのバクガメスのおかげでそれはすぐに済み、先程サトシたちの切った野菜を炒めていたところだ。
「あー、お腹すいたよ〜」
「我慢しろ。全員そうなんだからな」
火の加減を見ながら、カキは先程見たポケモンたちのことを考えていた。全員が歴戦の猛者ともいえる風格と、それに見合うだけの実力を持っていることははたから見ていてはっきりとわかった。あれ程にまで鍛えられているポケモンたち。世界にはまだまだ自分の到底届かない場所があるのを痛感する。
考え込みすぎてご飯の方が少し焦げてしまったのだが、みんなが笑って美味しく食べられたので、結果オーライとしよう。
皆さんは料理しますか?
あっ、答えなくてもおけです。アンケートではないので。
ちなみに作者はたまにしかしませんね。1人で食べるのに力入れて作るのはめんどくさい。