リーリエのロコン既にいる設定ですので
朝、起床予定時刻より早く目が覚めてしまったリーリエは、まだ眠っているマオやスイレンをおこさないように着替えてそっと部屋を抜け出した。まだ日が昇る前、少し暗い空が広がっていた。ぶるるっと体が震える。常夏のアローラ地方と違い、カントーの朝は空気が冷たい。上着を持ってくればよかったと少し思いながら、リーリエは宿舎の周囲を散歩することにした。ほぅ、と息を吐くと、それが白いことに驚く。昨日はあんなに暖かかったのに。
ザッ ザッ ザッ ザッ
草を踏みしめる音が後ろから聞こえる。規則的なそれはだんだんと近づいてきているようだ。
まさか、野生のポケモン!?
バッと振り返るリーリエ。しかしそこにいたのは野生のポケモンではなかった。
「あれ、リーリエ?おはよう」
「さ、サトシ・・・どうしたんですかこんなに早くに?」
「あぁ。昨日から楽しみにしてたら目が覚めたから、早朝ジョギングでもしようかなって。リーリエは?」
「わたくしも、目が覚めてしまったので、少し散歩をと思って」
「そっか」
リーリエに合わせるようにペースを落とすサトシ。横に並んで歩くサトシを見て、リーリエは疑問に思った。
「あの、ジョギングをするのでは?」
「ああ、もう十分走ったかなって・・・あ~運動したらあっつい」
寝巻代わりにしていたジャージの上着を脱ぐサトシ。サトシにしては珍しく、中のシャツは長袖だった。アローラ地方出身のカキたちはもちろん、サトシも向こうの気候にすっかり慣れてしまったため、カントーは少し肌寒いのだ。すっとジャージの上着をサトシはリーリエに差し出した。
「えっ?」
「寒そうだし、これ羽織っておけば?俺、使っちゃったけど、そんなに汗はかいてないはずだし」
「で、ですが、それではサトシが寒いのでは?」
「さっきまでのジョギングで十分。それにもうそろそろ日も昇るし」
ん、と手に持たされるそのジャージをしばし見つめたあと、リーリエはサトシの言葉に甘えることにし、そのジャージの袖に腕を通した。さっきまで運動していたサトシが使っていたからだろう、そのジャージはぽかぽかとして、暖かかった。
「おっ、ほら。朝日だ!」
サトシが指をさす方を向いたリーリエの目に入ったのは、明るくて暖かい日差しだった。その朝日の方向へ、ポケモンが飛んでいくのが見えた。それも一、二羽ではなく、群れで飛んでいるようだった。その先頭にいるポケモンの長く伸びる毛が、日の光を受けて黄金に輝いているように見えた。
「あれは、ポッポの群れですね!ということは先頭のポケモンは群れのリーダーでしょうか?」
「・・・あぁ。そうだな」
隣を見ると、サトシがどこか懐かしそうな目でその群れを眺めていた。前にも見たことがあるのだろうか。今度、サトシの旅の話をもっと聞いてみたい。そう思ったリーリエだった。
「そろそろ戻ろうぜ。おなか減ってきた~」
「そうですね。しっかり食べて、今日も一日、頑張りましょう!」
「ははっ、がんばリーリエ!って感じだな」
「な、なんですかそれは!?変な名前付けないでください!」
「あはは、ごめんごめん!」
追いかけっこをするように、二人は宿舎へ戻っていった。二人の表情は、楽しげなものだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはよう諸君!昨日はよく眠れたかな?今日から本格的に修学旅行の始まりじゃのう。今日の予定を説明するぞ。この後、少しばかりカントーとアローラ地方で異なる姿を持つポケモン、リージョンフォルムを持つポケモンを紹介、その後二グループに分かれて、ポケモンたちの観察に移ってもらうぞ」
朝食を食べ、着替えなどを済ませたサトシたちは、オーキド研究所に着いていた。研究所内では狭いとのことで既に敷地内の庭に出ていた。博士より、今日の予定が説明される。
「では、早速あってもらおうかの」
博士が行くつかのボールを投げると、中から数匹のポケモンたちが出てきた。
「ここにいるのはディグダ、ガラガラ、サンド、ナッシー、ライチュウ、ベトベトン、そしてロコンじゃ」
一体一体指を指し紹介するオーキド博士。と、ここでベトベトンがサトシに対して、強烈なのしかかりを食らわせていた。
「サ、サトシ!?」
「こ、これはやばいんじゃないの?」
「ここは俺が!」
慌てるアローラ組。サトシを助けようとカキはボールを手に取る。
「いやいや、安心しなさい。あのベトベトンはサトシのポケモンじゃよ。あれはベトベトンなりのスキンシップじゃ」
「あれが!?」
衝撃を受けるアローラ組。あれはどう見てもポケモンに襲われているようにしか見えないのだ。がしかし、
「ははっ、久しぶりだなベトベトン!元気そうでよかったよ」
当の本人がとてもいい笑顔で戯れているようなので、本当なのだろう。サトシへの挨拶を終えたベトベトンは他のポケモンたちと同様に、みんなの前に並んだ。
「カキもガラガラ持ってたよね?」
「あぁ。だがこっちとはタイプも違うみたいだな」
「ナッシーって本当にこのくらいの大きさなんだ?」
「ベトベトンの色も一色だけなんだね」
積極的に関わりに行く他と違い、リーリエは少し離れた場所から観察していた。そんな彼女の足元にカントーのロコンが歩み寄った。突然ではなかったために驚きはしなかったが、少し身構えてしまうリーリエだった。
「コォン?」
「ロコン、でしたね。アローラと違って赤い体でタイプはほのおタイプ。全然印象が違いますね」
「俺はどっちのロコンも好きだけどな」
いつの間に戻ってきていたのかサトシが隣に立っていた。
「シロンと合わせて見たらどうだ?仲良くなれるかもしれないぜ」
「そ、そうですね。では、」
そう言ってリーリエはボールの中から自身のパートナーであるシロンを出してあげた。白い体毛を持ったロコンを見て、カントーのロコンも驚いたようだった。二匹のロコンはゆっくりと近づき、お互いの匂いを確認しているかのように鼻を近づけ合う。
同族だと認識したのだろうか、二匹は今楽しげに走り回っていた。
「仲良くなれたみたいだな」
「そうですね。とても楽しそうです」
その後、他のポケモンたちとも触れ合いをした後、彼らはそれぞれ研究所の庭へと戻って行った。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
フィールドに出かける前に、サトシたちはオーキド博士による最終確認を行っていた。
「それでは、諸君らにはこれから二つのグループで別々に行動してもらう。とはいえ、ポケモンたちがたくさんおる中、百パーセント安心でもない。それになにぶん敷地が大きくて、迷子になるおそれもある。なので、わしの方で皆のサポーターを用意した」
「サポーター?」
「研究所のどなたかでしょうか」
オーキド博士に呼ばれ、研究所から出てきたのは一人の人間と一匹のポケモンだった。人間の方は緑の服にオレンジのバンダナ、スケッチブックを片手に持っていた。
「ケンジ!」
「サトシ、久しぶりだね」
オレンジ諸島を共に旅した仲間、ケンジだった。再会を喜び合う彼ら。自分と旅をした時よりも成長している友人とその今の仲間たちを見て、ケンジは感心していた。こんなにも大人数でいるのにも関わらず、みんながサトシを中心に思っているのだと。後から来た彼は輪からはじくどころか、いまや彼がその中心にいることに。一通り自己紹介を済ませた彼らの注目は彼の足元、一緒に出てきたポケモンに向かった。緑の模様のある体、背中には大きな緑色の蕾を持つそのポケモンは、ピカチュウと再会を喜んでいた。
「久しぶりだな、フシギダネ」
「ダネダネ!」
屈み込みフシギダネの頭を撫でるサトシ。フシギダネはつるのムチを伸ばし、サトシの腕に絡めた。
「サトシ。この子、知り合いなの?」
「あぁ。フシギダネは俺のポケモンなんだ。カントーを旅した時からの」
「ダネフシッ!」
「このフシギダネは、ここの研究所に預けられておるポケモンたちのまとめ役もしてくれておるんじゃ。案内役にはピッタリなんじゃよ。ケンジはここで助手をしてくれておる。また、ポケモンウォッチャーという、ポケモンの生態を観察する立場でもあるからみんなにとって助けとなってくれるじゃろう。それでは班分けだが、もう決まっておるかの?」
「はい!俺はリーリエとスイレンと一緒です」
「あたしはカキとマーマネとの班です」
「ふむふむなるほど。ではサトシの班はフシギダネと、マオくんの班はケンジと一緒に行動してもらおうかの。それで構わないかな?」
「僕は構いませんよ。フシギダネは?」
「ダネッ!」
「では決まりじゃの。お昼の時間は13時からじゃから、それまでには研究所に戻ってくるんじゃぞ。時間はたっぷり4時間もある。実りある時間になることを祈っとるよ」
「じゃあみんな。早速行ってくるといい。ただし、時間を守ることと、野生のポケモンには注意するんだぞ。解散!」
ククイ博士のその一声で、サトシ班とマオ班はそれぞれ別々の方向へ歩き始めた。
ちなみにこれの班わけはpixivで行われたアンケートによります
決して作者が三ヒロインの中で1人を推してるわけじゃありません
ホントダヨー