あと、ポケモンリアルタイムで見れないな〜
リーリエと一緒に住んでるなら、こんなこともあります!
その日の夜、授業でアローラ地方にいるポケモン、リージョンフォルムについての勉強をしたり、朝のポケモンとの競争を目撃した年下の生徒たちにいろいろ聞かれたりと、忙しい初日を過ごしたサトシ。授業でアローラ地方のナッシーと触れ合ったが、そのしっぽに弾き飛ばされてしまうという事故もあった。もっとも、サトシ本人は特にダメージを負った様子もなく、それがクラスメートたちを驚かせることになったが。そして今はまさに夕飯時、
「どうぞ」
「おぉっ!うまそ~!いっただっきま~す」
「お、今日はリーリエの手作りアローラプレートか。この地方じゃ代表的な家庭料理だな。ほら、ピカチュウたちにはこれを」
「アンアン!」
「ピカッチュウ!」
サトシたちの座っているテーブルから少し離れた場所に、ピカチュウと博士のポケモン、イワンコのフーズが用意された。ピカチュウも満足そうな顔を浮かべている。
「うまい!これ、サイコーだよ!」
「そ、そうですか。よかったです」
「サトシはおいしそうに食べるなぁ。じゃあ俺も」
「ピカチュウ、そっちもうまいか?」
「ピカ、ピカチュウ!」
満面の笑みでピカチュウは答える。口元にフーズが少しついてしまっているのを気づいていない様子を見ると、夢中で食べているのだろう。
「そのポケモンフーズも、リーリエが考えて作ったんだぜ」
「そうなのか?」
「バランスのいいフーズや木の実の組み合わせを、いろいろと考えた結果です」
「本当にポケモンに詳しいんだな、リーリエって。ごちそう様!」
「いや、早いな!?」
「だって、すっごくおいしかったんですよ!な、ピカチュウ」
「ピカ」
「ピカチュウたちも、もう食べ終わったんですか?」
空っぽのお皿を前に、満足げに息を吐くサトシ。その横へ同じくフーズを間食したピカチュウとイワンコがやってきた。
「ピカチュウも、すっかりイワンコと仲良くなったみたいだな」
「イワンコ人懐っこいし、すっごくいい子ですから」
「それでも、こんなに早く警戒心を解くのは珍しいと思いますけど」
食べ終わったサトシはお皿を流しに持っていき、自分の分だけでもと思い洗った。そして手を拭いた後、ピカチュウたちのほうへ向かった。
「おいで、イワンコ」
「アン!」
「よ~しよしよし」
サトシが呼ぶと、イワンコはすぐに駆け寄り、その腕の中に飛び込んだ。確かにイワンコはポケモンの中でもなつきやすい部類ではあるが、それは基本的には自身のトレーナーにはそうでも、他の人に対してはすぐにはなつかない。しかしどうだろう。今のサトシとイワンコの姿は、まるでトレーナーとポケモンのようだ。と、急にサトシが笑顔のまま痛がり出した。
「いてててて」
「ん?」
「もしかして・・・」
次にイワンコはピカチュウに駆け寄り、首周りをこすりつけるようにじゃれた。サトシ同様、ピカチュウも笑顔だったが、どこか痛がっているようだった。
「確かイワンコが、首の周りの岩をこすりつけるのは仲間同士のあいさつです。一種の愛情表現ということですね。イワンコは、よっぽどサトシとピカチュウを気に入ったんですね」
「なんだか、羨ましくなっちゃうな~」
「そうなのか、イワンコ?」
「アンアン!」
サトシの言葉にこたえるようにイワンコは再びサトシにすり寄った。
「ごちそう様です。博士、先ほどのお話なのですが、」
「ん?あぁ、了解と伝えておいてくれたかい?」
「はい、問題ありません。準備はばっちりです」
「そうか、それは楽しみだ」
そんなサトシを眺めながら、リーリエと博士は何やら打ち合わせをしていた。二人とも、楽しそうな表情を浮かべて。
同時刻、アイナ食堂にて四人の人間が集まっていた。
「博士からもオッケーもらったし、頑張ろう!」
「プログラム・ラン!だね」
「おう」
「うん!」
「リーリエは明日早めに出るって言ってたし、ばれないといいんだけど」
「大丈夫。リーリエはしっかりしてるから」
「そうだな。そんなへまはしないだろう」
「えへへっ、楽しみだね。じゃあ計画通り、明日はよろしく!」
「「「おー!」」」
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翌朝、
「わぁ~!遅刻遅刻!なんでリーリエも博士も出る前に声かけてくれなかったんだろう」
転校二日目にして早速遅刻の危機に瀕しているサトシ。とはいえ、今もゲッコウガとピカチュウと一緒に全力疾走しているため、心配はあまりないが。そのままスピードを落とすことなくサトシが校門をくぐると、
パァン! パァン!
両側から突然クラッカーがなり、さらには目の前でアシマリの作り出した水のバルーンが破裂した。
「な、なんだ!?」
驚いているサトシの前に、校門の両側の陰からクラスメートたちが出てきた。
「「「アローラサプラーイズ!」」」
声をそろえてマオ、スイレン、リーリエの三人が笑顔でサトシに駆け寄った。少し遅れてカキとマーマネもサトシの前に来た。
「驚いてるようだな」
「え?当ったり前だろ。それよりサプライズって?」
サトシの疑問にこたえるべく、この企画の立案者であり、まとめ役も担ったマオが一歩前へ出た。
「今日はね、サトシのサプライズ歓迎会を開くことにしたんだ!今のは、最初のサプライズね」
「サプライズ歓迎会?もしかして、リーリエと博士が先にいなくなっていたのって」
「はい。この企画の準備のためにです。もちろん、サトシにばれないように気を付けなければなりませんでしたが」
「そうだったのか~。みんなありがとな」
「ふふ~ん。お礼を言うのはまだ早いよ。言ったでしょ、さっきのは最初のサプライズだって」
「そういえば・・・」
待ってましたと言わんばかりのどや顔で、次にマーマネがサトシの前に立った。
「2番目のサプライズはこの僕、マーマネとトゲデマルからの挑戦状だ!」
「挑戦って、もしかしてポケモンバトルか?受けて立つぜ、マーマネ!ってあれ?」
挑戦と聞いて熱くなったサトシだったが、すぐに疑問符を浮かべた表情になった。校庭に大量の風船が置いてあったからだ。
「・・・なんだこれ?」
「は~い!これは、『先に風船を全部割ったチームが勝ち』ゲーム!」
「・・・へ?」
「あっ、風船を割るのは、人間でもポケモンでも構わないからね」
「よくわかんないけど、とりあえず風船を割ればいいんだな?よーし、やろうぜ、ピカチュウ!」
「それじゃあ、始めるぞ。位置について、よーい、スタート!」
審判を務めるカキの声で両チームの風船割が始まった。ところがサトシとピカチュウは思っていたよりも固い風船に、苦戦していた。それに対するマーマネ・トゲデマルコンビは、トゲデマルの体質をうまく活用して順調に進んでいた。
「サトシもピカチュウも、頑張って!」
「ゴーゴー!」
「コウガ!」
「ポケモンの技、使ってもいいんですよ」
勝負を見守っているスイレンやマオ、ゲッコウガがサトシの応援をした。リーリエからのアドバイスを受けたサトシは、ピカチュウに10万ボルトで風船を割るように指示した。が、トゲデマルの特性はひらいしん。ピカチュウの電気を吸収したトゲデマルは、その電気を自身の技に変えて風船を割り始めた。
「すごいぜ、トゲデマル・・・っと、感心してる場合じゃなかった。こうなったら、ピカチュウ!連続でアイアンテール!」
「ピカ!チュー、ピッカァ!」
即座に戦法を変えて風船をいくつか割ることに成功したサトシとピカチュウ。しかし最初から順調に風船を割っていたマーマネたちには追い付けず、負けてしまった。
「このバトル、マーマネ&トゲデマルの勝ち!」
「はぁ~、負けちゃったか。でも、ポケモンの特徴をうまく使ってたな・・・」
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続いてサトシにサプライズバトルを挑むのは、
「サトシ。今度はわたしとアシマリとのバトルです」
「今度はスイレンか。よーし、次はどんなバトルだ?」
「スイミングとランニングを合わせた競技、ポケモンアクアスロンだよ」
「へぇ~。面白そうだな!どうするゲッコウガ?お前が行くか?」
そうサトシが問いかけると、ゲッコウガは自分を指さし、ピカチュウを指さし、アシマリを指さした。
「もしかして、三人でレースがしたいのか?」
「コウガ!」
「流石にゲッコウガが勝つんじゃないか?陸上でも水中でも、かなりの速さで動けるだろうし」
「じゃあ、ゲッコウガにはハンデをつけるってことでいいかな?」
「コウガ!」
「それでは、参ります。位置について、用意、スタートです!」
ゲッコウガはハンデのためにスタート地点に残り、ピカチュウとアシマリが飛び出した。序盤は陸上のためピカチュウがリードしていた。そしてピカチュウが先にプールに飛び込んだ時、ゲッコウガがスタートを切った。
「よしいいぞ、ピカチュウ!このままゴールだ!」
「そううまくいくかな?」
ゲッコウガよりも先にアシマリはプールに飛び込んだ。陸上ではピカチュウのほうが速かったが、水中では圧倒的にアシマリのほうが速い。あっという間にピカチュウを追い抜いた。
「アシマリ、すっごく速い」
「アシマリは水の中を時速40キロで泳ぐことができるんですよ」
「そうなのか?」
「アシマリ、もうひと息だよ!」
スイレンの応援を受け、アシマリが無事にゴール・・・となると誰もが思っていた。が、
「シャマ!?」
「うそ!?」
最初にゴールテープを切ったのは、後ろから追い上げてきたゲッコウガだった。それだけならまだいい。ゲッコウガは明らかに経験豊富だし、陸上でも水中でも速く動けるポケモンだ。だが、一番驚いている原因はというとゲッコウガが泳いでいなかったという点だろう。
ゲッコウガは、水面を走り抜けたのだ。
覚えているだろうか。ケロマツの頃、でんこうせっかを習得するために特訓したときに、彼はかげぶんしんを習得した。その特訓の一つに、素早く走ることで水の上を走るというものがあった。昔取ったなんとやら、さらに進化を重ねて彼のスピードはあのころとは比べ物にならないくらいに上がっている。水の上を走ることなど、造作もなかった。
結果として1位ゲッコウガ、2位アシマリ、そして最後にピカチュウとなった。また負けてしまったことに残念そうな表情をしていたピカチュウだったが、サトシに体をやさしく拭いてもらい、ねぎらいの言葉をかけられて、うれしそうな表情になった。
「それにしても、すごかったねゲッコウガ」
「ゲッコウガはスピードが自慢だからな。でも、アシマリも水のレースだったらゲッコウガでも負けてたかもな~。本当に泳ぐの速くてびっくりしたぜ」
きっとそれが本心からの言葉だからだろう。嫌味もかけらも感じさせないその言葉は、すとんとアシマリとスイレンの胸に届いた。惜しくも負けてしまい、悔しそうなアシマリだったが、サトシの言葉ですぐに元気になった。スイレンは腕の中にいるアシマリを見て、少しはにかみながらサトシに笑顔を向けた。
「ありがとう、サトシ」
「アシャマ!」
ところで、XY&Z編ではゲッコウガとほぼ同スピードで走れるようになったサトシ。ということはもしや・・・彼も・・・
おっとっと!
サンペイがショックを受けるかもしれないので、これ以上は想像にお任せします。笑
これからもよろしくお願いしま~す!