XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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早くカントーに繋げたくて、頑張っちゃった
そしたら前回の約半分の量になってしまった……
いや、前回が長すぎたんだ

というわけで、レース回ですが……無理です。あれの描写無理!

なので肝心のレース部分が短くて、他に色々と付け足してます


爆走!独走!激走!暴走?デンヂムシレース!

ポケモンスクールの昼休み。校庭では、何やら不思議な光景が。

 

「ほら、マーマネ。走れ走れ!」

「も、もう無理……はぁっはぁっ」

「手を引いてやるから、もう少し頑張れ」

「ヂヂ」

『みんなファイトロトー!』

 

サトシ達ボーイズが校庭を走っている。その側には車のようなものに乗り込んだデンヂムシが並走している。明らかに疲れ果てているマーマネを除き、みんな何やらやる気満々モードで、心なしか背景に炎が見えるような気がしてくる。

 

 

何故こんな状況になったのかというと、ことは数日前にさかのぼる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「「デンヂムシレース?」」

 

朝の教室でサトシとカキの声がハモる。二人はマーマネの発明品のプロジェクションを覗き込んでいる。そこには専用の車に乗ったデンヂムシ達が激しいレースを繰り広げている。

 

「そう。毎年公式の大会が開かれるんだ。僕もデンヂムシをゲットしたら、絶対参加したいと思ってたんだ。でも、出場するには三人一組のチームを組まないといけないんだ。カキ、サトシ。僕と一緒にデンヂムシレースに出てくれない?」

 

やけにやる気満々なマーマネの様子に、サトシとカキが視線を交わす。言葉はなくても、二人とも同じことを考えていた。

 

「もちろんだぜ、マーマネ」

「ただし!やるからには優勝を狙っていくぞ」

「うん!」

 

盛り上がる、もとい気持ちが燃え上がる男子三人を少し離れた場所からガールズが見ている。

 

「なんかいいよね、男子のああいうノリ」

「三人とも、とても楽しそうです」

「でも、ちょっと暑苦しい、かも」

「「確かに……」」

 

三人のやる気が外に漏れ出ているのか、やたらと教室が暑く感じる。我慢の限界を迎えたシロンによって氷漬けにされるまで、三人のやる気は燃え上がり続けるのだった。

 

 

そうして、サトシ達の特訓が始まった。

 

まず役割分担。司令塔のディレクターにマーマネ、メカニック担当を日頃から牧場でも細かい作業を行うカキが引き受け、サトシはレースの時にデンヂムシと一緒に走るサポートランナーをサトシが引き受けることとなった。それぞれの得意な分野で支え合う、まさにピッタリのチームが出来上がった。

 

さて、いざ試運転を始めたのはいいものの、マーマネのデンヂムシはおっとりな性格のため、最初の頃はスピードが出なかった。それを見たサトシ、みんなで走ろうと提案し、以来ここ数日はトレーニングの一環として続けるようになったのだった。

 

 

「ふぅ〜。いよいよ明日だな、本番」

「これだけ準備したんだ。優勝できるに決まってるさ」

「うん。二人とも、ありがとね」

「おいおい。まだ早いんじゃないか?」

「そうだよ。明日、絶対に優勝しようぜ」

「うん!」

 

ガッチリと手を重ね合う三人。おっとりなデンヂムシもやる気に燃えている。本番に向けてしっかりと休憩を取るため、サトシ達は早めに特訓を切り上げ、帰ることにした。

 

 

 

夜、ククイ博士の家。サトシとリーリエがソファに座りながら話をしている。

 

「いよいよ明日ですね、デンヂムシレース」

「あぁ!絶対に優勝してやるぜ!」

「明日、わたくしもマオとスイレンと一緒に応援に行きますね」

「サンキュー。ん〜、燃えてきた!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、メレメレ島でも最大のアリーナには、大勢の人が集まっていた。まるでポケモンリーグのような賑わいだ、なんてサトシは思う。しかし今日の目玉はリーグ戦ではない。

 

『まもなく、デンヂムシレースが始まります!エントリー登録を済ませていない方は、速やかに受付までお越しください』

 

そう。これだけの人がデンヂムシレースのために集まっているのだ。参加者としてはもちろん、観客としてきた人も大勢いる。既に受付を済ませ、サトシ達三人は辺りの様子を見ている。

 

「あれが出場者達か……」

 

カキの視線の先にはいくつものチームが既に並んでいる。何度も出場経験があるのだろう、ベテランの雰囲気を感じさせるチームも数チームいる。なかなか強そうなライバル達に、根っからの挑戦好きなサトシの胸が知らず識らずのうちに踊る。

 

 

 

「おーい、サトシ、カキ、マーマネ!」

 

アリーナの入り口から聞こえる声に、サトシ達が振り向くと、マオ、スイレン、リーリエの三人がちょうど来たところらしい。手を振りながら近づいてくるマオたちに、サトシ達も手を振り返す。

 

「応援に来たよ。三人とも、頑張ってね」

「当然、狙うは優勝だ!」

「うんうん。ファイト、ファイト」

「このために特訓して来たんだ。きっと優勝できるさ」

 

「残念だけど、それは無理だね」

 

急に声をかけられ、マーマネ達が振り向くと、いかにもおぼっちゃまという出で立ち、具体的にいうと某国民的アニメのマザコン坊やが成長した感じの少年と、その取り巻きらしき三人組が近づいてくる。

 

「そんな平凡なデンヂムシで優勝だなんて、ちゃんちゃらおかしいね」

「兄貴のデンヂムシの前じゃ、歯が立たないっすから」

「そうなんだな」

 

 

「優勝最有力候補の登場か……」

「チーム赤い流星。今年も出場するのか……」

 

あちこちからひそひそ声が聞こえてくる。他のチームの視線は、現れたお坊ちゃんのチームに釘付けになっている。

 

「なるほどな、お前達が最有力候補ってわけか」

「ふっ、候補?違うね。僕が優勝するのは、決められたことなんだよ!」

 

仰々しい動きとともに、取り巻きの持っていた布を取り払う。その布の下から現れたのは、真っ赤なボディのデンヂムシカー、そして乗っているのも赤い身体のデンヂムシ。

 

「僕のパパが手を尽くして探し出した、最高のデンヂムシさ。臆病逃げ足、最速の僕のデンヂムシに、平凡なデンヂムシが勝てるはずないじゃないか」

 

勝ち誇るように笑うお坊ちゃん。しかし、他のチームはその言葉を裏付けるだけの実績もあるため、反論できずにいる。実際彼らは、前回のレースでは圧倒的だったのだから。

 

「やって見ないとわからないじゃないか!」

 

お坊ちゃんの笑いが止まる。彼のことをしっかりと見ているのは、マーマネだった。

 

「君のデンヂムシがどんなにすごいかなんて、僕は知らない。確かに特別かもしれない。でもだからと言って、僕のデンヂムシが勝てない理由にはならないよ!」

「……チッ。口だけは達者だな。いいだろう、レースで決着つけてやるよ」

「後で吠え面かいても知らないっすから」

 

遠ざかるチーム赤い流星。改めて気合いを入れ直すマーマネとデンヂムシ。ポンとマーマネの肩に何かが乗せられる。サトシの手だ。

 

「かっこよかったぜ、マーマネ」

「ああ。お前のいう通りだ。このレースで、あいつらに見せてやろうぜ。お前のデンヂムシの力を」

「うん。あんなのには、絶対負けられないもんね」

 

「じゃあ、あたし達は客席から見てるね」

「頑張って」

「応援してますから」

 

「おう」「うん」「ああ」

 

手を振って別れるサトシたち。改めて気を引き締めるマーマネ。

 

今、アリーナへの選手入場口の扉が開いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『さぁいよいよ始まります!全国のデンヂムシファンの皆様にお届け、第25回コケコカップの開催です!』

 

デンヂムシレースのルールはいたってシンプル。途中にある障害物や特殊なコースを切り抜けながら、一周するだけ。ポケモンの技による妨害は厳禁。タイヤ交換はピットでのみ可能。

 

今回の障害物は、ガントルの岩のフィールド、スナバァの砂漠のフィールド、そしてポワルンの街のフィールド。どんな障害があるのかわからないが、サトシはむしろワクワクしていた。

 

「僕は司令塔に行くよ」

「俺はピットで待ってるぞ、サトシ」

「任せとけ!頑張ろうな、デンヂムシ」

「ヂヂ!」

 

やる気まんまんなデンヂムシとともにスタートラインに並ぶサトシ。間も無くレース開始の時間だ。

 

『それでは、位置について!』

 

スタートランプが点滅する。赤、赤、赤……青!

 

『さぁ、各チーム一斉にスタートだ!』

 

頭一つ飛び出したのはやはりチーム赤い流星。その後を追うように、他のチームが追いかける。その中にはサトシたちの姿も。

 

『おっと!なんとここでアクシデント発生!デンヂムシカーが次々と衝突していく!』

 

20近くあった参戦チームも、なんと序盤の方で一気にリタイアが出てくる。運良く切り抜けられたのはトップの赤い流星とサトシたちを含め、半分も残っていない。

 

観客席の方では、マオたちがほっと胸をなでおろす。

 

「よかったぁ〜。いきなりリタイアにならなくて」

「おっとりな性格だったのが幸いでしたね。他の皆様は気の毒ですが……」

「真剣勝負。仕方ないよ」

「そうだね。サトシたち、優勝できるといいね」

「うん」

「はい」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

マーマネの作戦にカキによるサポート。それらを存分に活かしながら、サトシとデンヂムシは次々と障害物を乗り越えていく。そして最終フィールドでは、遂に2位まで登りつめたのだった。

 

トップを走るのは赤い流星。先ほどの砂漠のフィールドで大幅に体力を消耗しているが、それでも気力でなんとか持ちこたえている。

 

サトシたちとほぼ横並びに競うのはチームエレキプリンセス。今大会唯一の全員女子のチームだが、他のチームに全く譲らずにここまで残っている。

 

 

最後の障害となるのは天候を操るポワルン。と、その姿が変わっていく。あられを降らせ、コースを凍らせていくポワルン。タイヤの交換はピットでなければできないため、選手たちもデンヂムシカーも細心の注意を払って走り抜けようとしている。

 

ところが……

 

「っ、危ない!」

『これは!?エレキプリンセスのデンヂムシカー、コントロールを失ってしまったようだ!』

 

突然のスリップに対応できず、エレキプリンセスのデンヂムシカーがコースをずれてしまう。コースを仕切る壁に向かってそのまま突っ込もうとしてしまうデンヂムシカー。エレキプリンセスのサポートランナーは追いつけず、どうすることもできずにいる。スタート付近とは比べ物にならないスピードでのクラッシュ。誰もがデンヂムシの大怪我を予想した。

 

「がっ!」

「「サトシ!?」」

 

『な、なんと!?エレキプリンセスのデンヂムシカーを救ったのは、マーマネラボのサポートランナー、サトシ選手だ!』

 

間一髪、素早く体を壁とデンヂムシカーの間に滑り込ませ、体全体でその衝撃を受け止めたサトシ。そのおかげで、車体の方はダメージを負ったが、デンヂムシには大きな怪我はなさそうだ。しかしサトシがその場にかがみ込んだまま動かない。

 

慌てて駆け寄るマーマネラボとエレキプリンセスのメンバーたち。観客席の方では、マオたちも心配そうにしている。

 

「サトシっ、大丈夫か?」

「ってて。ああ、大丈夫大丈夫。デンヂムシ、お前はどうだ?」

「ヂヂ!」

 

一瞬顔をしかめながらもなんでもないと首を振るサトシ。痛がるどころか、腕の中にいるデンヂムシの方を気にかけている。

 

「ごめんなさい、私たちのデンヂムシのために……」

「いいって。怪我したら大変だもんな」

「それ、かなりブーメランだぞ」

「えっ?」

 

「サトシ!カキ!」

 

コースの方から声がする。いつの間に司令塔から降りてきたのか、マーマネがお腹で氷を滑りながら近づいてくる……いや、ペン◯ンかよというツッコミはともかく、サトシはカキに肩を貸してもらいながら立ち上がる。

 

「マーマネ、っ!」

「サトシは無理しないで!ここからは、僕が行くから。二人はゴールで待ってて!」

「わかった。頼むぞ、マーマネ」

「ってて。待ってるぜ」

 

笑顔でマーマネに親指を立てるサトシ。二人を見送ってからマーマネは思考を巡らす。今現在トップの赤い流星チームは、最後の坂道を登れずにいる。氷で滑って動けないのだ。仮に追いついたとしても、自分たちも同じことになるだろう。何か考えなければ。

 

(考えろ、考えるんだマーマネ!)

 

(こういう時、サトシならどうする?)

 

(バトルの時、ポケモンの特徴を活かした行動をとることが多い。それはきっとこのレースにだって活かせる!)

 

(考えろ。滑らなくなる方法……タイヤに滑り止めのような機能があれば……あっ)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

赤い流星チームのリーダーはイラついていた。

 

トップにいるとはいえ、全く進むことができないのだ。今のタイヤでは、この凍った坂を登れない。かといってタイヤ交換もルール上できない。

 

「くそっ。さっさと登れって!」

 

デンヂムシも頑張ろうとしているが、完全に体力を使い果してしまっていて、登るだけの力が出せずにいる。

 

と、地団駄を踏んでいる彼らの横を何かが通り過ぎて坂を登っていく。信じられないものを見るように、赤い流星のメンバーの目が見開かれる。

 

 

坂を駆け上って行くのは、なんとマーマネとそのデンヂムシだった。タイヤ交換ができないこの状況で一体何をしたのか。

 

「な、どうなってやがる!?なんでこの坂を!?」

 

「ふっふっふ。これもチームメイトのおかげさ!」

 

そういうマーマネの靴と、デンヂムシカーのタイヤには、白い絹のようなものが巻き付けられている。

 

『これは驚き!チームマーマネラボ、デンヂムシの糸をうまく使い、氷のフィールドを駆け抜けている!』

 

マーマネが考え付いたのは、デンヂムシの吐く糸のことだった。粘着性抜群のそれを、滑り止めの代わりとして、タイヤや靴に付けることで、氷のフィールドでも滑らないようにしたのだ。

 

慌てて同様の指示をデンヂムシに出すお坊ちゃん。しかし既に疲れ果てているデンヂムシにはそんな気力も残されていない。

 

ゴールに向かって一直線に走るマーマネとデンヂムシ。今、ゴールラインを、二人がこえた。

 

『決まったぁぁぁ!優勝は、チームマーマネラボ!』

 

「いやったぁ〜!」

「ヂヂ!」

 

デンヂムシを抱き上げ、飛び跳ねるように喜ぶマーマネ。サトシとカキが拳を合わせ、客席ではマオたちが喜び合っている。

 

「やったな、マーマネ」

「うん。カキとサトシのおかげだよ」

「いや。今日のMVPは間違いなくお前だろ」

「かっこよかったぜ、マーマネ」

 

胸になんだか熱いものがこみ上げてくるのを、マーマネは感じた。密かに、マーマネは二人に憧れていたのだ。バトルの時やスポーツの時に、この二人はいつも驚きの活躍をしていた。そんな二人のことが、どこか羨ましかった。でも、そんな二人と一緒に何かを達成できたこと、それは自分に大きな自信をくれた、かもしれない。

 

 

見事に一位を勝ち取ったマーマネたち。表彰台の上で、彼らが三人揃ってデンヂムシを抱き上げている姿は、まさに理想のチームのようだった。

 

こうしてまた、新たな絆を結んだサトシたち。次なる挑戦は、一体どんなものなのか?

 

 

 

余談だが、後で改めてお礼とお詫びを言いにきたエレキプリンセスの三人から何やら不穏な感じをガールズが感じ取ったりしなかったりだったとか……

 

…………… To be continued

 




気になるニュースを見つけて、俺たちは島の調査を始めることに

あちこち巡っていた時に、俺がたどり着いたのは戦の遺跡

そこにいたのはグラジオと……

次回
『強さの誓い。唸れ新たなZ技!』
みんなもポケモン、ゲットだぜ!

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