XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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さて今回から、アーカラ島編ですね

以前から、本編にもゲストポケモンで過去の呼んでほしいみたいな意見があったので、今回試しに呼んでみちゃいました

気になるそのポケモンは、本編にて
ではでは、どうぞ〜


アーカラ島の島クイーン

その日の朝、サトシとリーリエは、いつもより少し重いカバンを持って、スクールへと向かっていた。

 

「いよいよだな、アーカラ島」

「はい!わたくしも、新しいポケモンとの出会いが、とても楽しみです」

「俺も燃えてきた!大試練にも、早く挑戦したいぜ」

 

そう。この日から、サトシたち6人は、アーカラ島での課外授業のため、しばらくメレメレ島を離れることとなっているのだ。一応集合してから向かうことになっているため、アーカラ島に住んでいるカキも、一度こちらに来ることになっている。

 

ワクワクしているトレーナーたちの側では、ポケモンたちも楽しみにしているようだ。残念ながら、今日はリュックに入れないモクローと、気まぐれなニャビー以外は、ボールから出ている。

 

はしゃぐイワンコを落ち着かせるゲッコウガ。シロンとロコン姉弟も、仲良くやっているのを見ると、何だかほっこりする。パートナー交換以来、時々トレーニングに参加するようになったシロンは、今ではすっかりサトシのポケモンたちとも、サトシ本人とも大の仲良しになっている。

 

「サトシの大試練挑戦、うまくいくといいですね!」

「サンキュー。リーリエも、いろんなポケモンと仲良くなれるといいな」

 

 

余談だが、現在ピカチュウはというと、リーリエの腕の中に納まっている。余程他のポケモンに触れたことが嬉しかったのか、最近はシロンとピカチュウで、抱き抱える割合が半々程になっていた。それではシロンが寂しいのでは、とも思えるが、そういう時は大抵サトシに構ってアピールをしに行くので、案外問題はなかった。

 

 

まぁ、最近はこういうこともあり、サトシの隠れファンクラブからは、リーリエが一歩リードしている!と分析されているらしい。しかし、そんなことは全然知らずにいる二人は、今日も仲良く、校門をくぐったのだった……

 

 

 

 

が、やはり何事もなく1日が始まる、なんてことは許されないようだ。

 

「コウッ?コウガッ!」

 

最初に反応したのはゲッコウガだった。何かが凄い勢いで向かってきているような音が聞こえるような気がした。次に気づいたのはサトシとピカチュウ。はっとして横を見ると、何やら興奮したケンタロスが、かなりのスピードでこちらに向かって来ていた。

 

一度興奮したケンタロスに、前に障害物があるかないか、人がいるかいないかは関係ない。そのことをよく知ってるサトシは、ゲッコウガに目配せをする。片方の腕でリーリエの肩を抱き、そのまま思いっきり前に跳んだ。隣では、イワンコ、シロン、ロコンを抱えたゲッコウガも同様に跳んでいる。

 

その咄嗟の行動によって、無事にケンタロスの突進をかわすことに成功するサトシたち。しかし興奮したケンタロスは、そのまま校舎めがけて突っ込もうとしていた。

 

「ケンタロス、危ない!」

 

サトシが叫ぶものの、声は聞こえていない。校舎にぶつかる!そう思ったところへ、空からリザードンが降り立ち、ケンタロスを止めた。その後からカキたちが走って来る。

 

「よし、そのまま押さえ込んでくれ、リザードン」

「サトシ、リーリエ、大丈夫?」

「わたくしは平気です」

「俺も無事だ。サンキュー、ゲッコウガ」

「なぁ、ケンタロスはどうしたんだ?」

「カキのリザードンが着地したのに驚いて興奮しちゃったみたい」

 

鼻息荒く、リザードンを押すケンタロス。リザードンも歯を食いしばり、全力をかけて止めようとしている。

 

「そうだマオ!アママイコの香りで「コウッ、ゲッコウ!」、どうした、ゲッコウガ?」

 

今度は上空を見るゲッコウガ。ケンタロスとリザードンの間に入るように、一体のポケモンが飛び込んで来た。四足歩行でスマートな体躯、キリッとした顔立ちに力強い眼差し。サトシのイワンコが目をキラキラさせながら見つめるその相手は、

 

「あれって、真昼の姿のルガルガン、だよな?」

「このルガルガン……もしかして」

 

カキが何かに気づいたその時、

 

「アローラ〜」

 

どこか明るく、呑気な感じの女性の声が聞こえて来る。スクールでは見たことのない女性。褐色の肌に、短めの髪。いくつかのアクセサリーを身につけ、その中には一つ、キラリと輝くZクリスタルのはめられたZリングが。

 

「そんなに怒らないの、ね?」

 

優しくケンタロスを撫でる女性は、突然その鼻先に、そっとキスをした。驚く周囲だったが、ケンタロスはすっかり機嫌が良くなったようで、女性に撫でられ、気持ちよさそうに目を細めていた。

 

「あの人、凄いな」

「うん、かっこいい!」

「ケンタロスがあんな表情しているの、サトシ以外では初めて見ました……」

「誰なのかな?」

「スクールの人じゃ、ないみたい」

 

「ライチさん!」

 

他のみんなが首をかしげる中、カキが嬉しそうな声を上げる。

 

「あら、カキ!」

 

カキの知り合いらしき女性は、両手を広げ、カキを抱きしめる。タケシなら感激して涙流してそうだなぁ、なんてサトシは思うが、当のカキは照れくさいのか、呆れているのか。苦笑気味に、なんとか会話を続ける。

 

「お、お久しぶりです」

「ホント、久しぶりね。大試練以来だったかしら?なんだか少したくましくなったわね〜」

 

うんうん、とカキの成長を喜ぶ女性。彼女もZリングを持っていることから、彼女も強いトレーナーであることは間違いない。

 

「なぁ、カキ。この人は知り合いなのか?」

「あぁ、紹介する。ライチさん、こちら俺のポケモンスクールのクラスメートたちです。みんな、この人はライチさん。アーカラ島の島クイーンだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ネッコアラがチャイムを鳴らす。一先ず教室に移動したサトシたちは、ククイ博士の話に耳を傾けていた。博士の隣にはライチが立っている。

 

「さて、今日からアーカラ島での課外授業が始まる。それにあたって、特別講師として、ライチさんに来てもらったんだ。じゃあ、出発前に少し話を聞いておこうか。ライチさん、お願いします」

「オッケー。みんな、改めてよろしくね。私はライチ、アーカラ島の島クイーンで、今日からみんなの先生よ。これからみんなでアーカラ島に移るわけだけど、みんなはどんなことを楽しみにしてるのかしら?カキから順番に軽い自己紹介と一緒に、教えてくれる?」

 

ハラさんの時も感じたが、サトシは、島キングや島クイーンに選ばれる人は、何か特別なオーラを持っているような気がした。他のトレーナーとは違う何か。それもまた、島巡りの中で、わかることなのだろうか。

 

「俺はアーカラ島の魅力を、みんなに知ってもらいたいと思ってる。それに、みんなを通じて、また新しい気づきがあればいいな」

「マオです。この子はアママイコ。あたしが楽しみなのはお料理とか食材かな?アーカラ島って自然の恵みが豊富だって聞いてるから、どんなものがあるのか楽しみです!」

「スイレンです。仲良しのアシマリ。私はみずポケモンとの出会い。すっごいみずポケモンがいるって、聞いたことある。会ってみたい、すごく!」

「僕はマーマネ。で、こっちはトゲデマル。僕はやっぱり、でんきタイプのポケモンかな。あと、美味しいスイーツとかもあれば食べてみたいかも」

「わたくしはリーリエと申します。この子はパートナーのシロン。わたくしは、やはり新しいポケモンたちとの出会いでしょうか。もっと多くのポケモンと仲良くなりたいです」

 

一人一人が思いを語る中、ライチは楽しそうにそのことを聞いている。カキ以外は初めて会う相手だけど、特に緊張するでもなく、みんないつも通り、博士にするみたいに接している。それだけライチが、親しみやすい人ということなのだろうか。

 

「うんうん。みんな楽しそうでよろしい。じゃあ最後は君ね」

「はい。俺はカントーのマサラタウンから来た、サトシです。こっちは相棒のピカチュウ。今、島巡りに挑戦しているので、試練や大試練に挑みたいです」

「あら?それってZリングね。とすると、ハラさんの試練はクリアしたのかしら?」

「はい」

「やるわね、サトシ君。君の大試練への挑戦、楽しみにしてるわ」

「もちろんです!」

 

心底楽しみにしているように笑うライチとサトシ。その時に、サトシ以外はライチを身近に感じる理由が、なんとなくだけどわかったような気がした。似てるのだ、この二人。見た目ではなく、雰囲気とも言えるものが。

 

「じゃあ、折角だからお近づきの印に、っとと、わわっ!?」

「ライチさん!?」

 

懐に手を入れ、一歩踏み出したかと思うと、ガクッとライチの身体が揺れる。そのまま前に倒れこみ、派手な音とともに転んでしまった。

 

 

……………(−_−;)

 

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

一番席が近いサトシが慌てて駆け寄る。差し出されたサトシの手を掴み、立ち上がるライチ。とりあえず怪我はないようだ。まぁ、ぶつけたらしい鼻のあたりは少し赤くなっているが。

 

「大丈夫、大丈夫。ありがとう、サトシ君」

「いえ」

「さてと、気を取り直してっと。お近づきの印に、みんなにお土産を持って来たの」

 

先ほど手にとっていた袋を取り出すライチ。教卓にみんなを招き、袋を広げる。中に入っていたのは、様々な鉱石や、小さいながらも宝石を使用しているアクセサリー。

 

「みんな好きなのを一つ選んでいいわよ」

「流石、ライチさん」

「素敵です!」

「綺麗」

「うん。海の中みたい!」

「これ、どんな石を使ってるんだろう?」

 

みんなが色鮮やかなブレスレットやネックレス、ピアスなどのアクセサリーを手に取る中、サトシが手を伸ばしたのは、キーチェーンだった。付いているのは無色透明な鉱石玉。ダイヤモンドカットされているそれは、しかしながら他と比べるとどうしても地味に見える。

 

「サトシはそれにするの?」

「あぁ」

「でも、他にもいろんな色のとか、綺麗な石を使ってるのもあるのに」

「俺は、これがいいんだ。だってさ、こうして、日の光にかざしてみると……」

 

サトシが教室の端、ベランダの方へ向かう。そこで日の光に向けて、貰った鉱石をかざしてみる。白い光を浴びたそれが発したのは、同じ白い光ではなかった。

 

「わぁっ」

「……綺麗」

 

キラキラと光を浴びた鉱石は、7色の光、虹色に煌めいていた。角度を変えると、見える光が変わり、一つの鉱石で様々な色が楽しめる。無色透明で地味どころか、それは、彼らが貰ったものの中でも、最も色鮮やかなものに見えた。

 

「気に入った?」

「はいっ、とても」

「実はこれ、全部私の手作りなの。島ではアクセサリーショップをやってるのよ」

「そうなんですか?」

「それを気に入ってくれる人がいてくれて嬉しいわ。どうしてもパッと見、地味だから。その特徴、知ってたの?」

「はい。昔ママが、ガラス玉とかで似たようなことをしていて」

「そうなの?」

「はい。俺、これにして良かったと思ってます。俺にとって、虹は、すごく特別なものなので」

「へ〜。今度詳しく聞かせて貰ってもいい?」

「はい!」

 

やはりどこか似ているのだろう。早速二人は波長が合っているようだ。あっという間に仲良くなっている。

 

 

「じゃあ、みんなとお近づきになれたし、早速アーカラ島へ、レッツ、」———ドンッ

「ゴ〜……」(> <)

 

教室から出ようとしたライチが、誰かにぶつかる。それは丁度入って来たオーキド校長だった。

 

「あら、校長先生、お久しぶりです」

「いやいや、今回は我々のお願いを聞いてくださり、ありがとうございます。ところでこれは提案なのですが、アーカラ島に向かう前に、彼らのポケモンのことを知るのはいかがかナットレイ?」

「いかがかナットレイ……何それ……ふふっ、最高。あははは、はははは」

 

……………(−_−;)

 

ウケてる。校長先生のポケモンギャグに、お腹を抱えて大笑いしている。オルオル選手といい、ライチといい、ポケモンスクールに関係している大人は、みんなこれの虜になるのだろうか……自分に視線が集まるのを感じ、苦笑するしかないククイ博士だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

存分に笑ったライチに連れられ、サトシたちはスクールの中庭に来ていた。みんなのボールからポケモンを出し、ライチに紹介する。

 

「わあっ!いい、凄くいい。どの子もとてもいい表情してるわね」

 

一体一体と目線を合わせて話しかけるライチに、ポケモンたちも心を開いているようだ。気まぐれなニャビーや、人見知りのシロンまでもが、すぐに笑顔を向けている。

 

「すごい……まるでみんなライチさんのポケモンみたい」

「うん。かっこいい!」

「島キングや島クイーンの中でも、ライチさんは特別だからな。ポケモンに対する愛情はわからないが、ポケモンからの愛情は、間違いなくライチさんが一番だ。俺のバクガメスも、初対面で心を許しきっていたからな」

「でも、やっぱり似てるよね」

「ええ、似ています」

 

彼らの脳裏に浮かんだのはいいけどサトシ……ではなく、一度だけ会った彼の母だった。彼女も同じように、ポケモンたちに慕われる女性だった。もちろん、サトシも似ているといえば似ているのだ。実際今も、

 

「よろしくな、ルガルガン」

「ガウッ!」

 

ライチのパートナー、ルガルガンの頭を撫でている。ルガルガンもキリッとしていた表情を崩し、気持ち良さそうだ。お返しとばかりにサトシの頬を舐めるルガルガン。その様子に、流石のライチも驚いていた。

 

「珍しいわね〜、ルガルガン。あなたがこんなすぐに誰かに心を許すなんて」

「ガウッ」

「サトシ君は、何か特別な魅力でもあるのかしら?」

「そんな、ライチさんこそ。ニャビーとか普段はもっとツンツンしてるのに」

 

なんだか盛り上がる二人。さっきから度々二人だけで盛り上がるので、他のみんなはやや置いてけぼり気味である。まぁ、でもそれが嫌とかそういうのではなく、

 

『本当に色々と、この二人は似てるなぁ』

 

なんてことを考えていた。

 

「ねぇ、みんなのポケモンたちのこと、もっと教えてくれない?出会いのこととか、進化してる子はその時のこととか」

 

眠っているモクローを抱き上げながら、ライチはみんなの方を向いた。モクローからはお日様の匂いがすると言っていたライチ。気に入ったのか、また顔を擦り付けている。

 

「俺のポケモンについては、ライチさんはもう知ってるからな」

「じゃあはいはい!あたしから行くね!」

 

マオとアママイコとの話から、順番にみんなが話し始めた。一体一体との思い出を聴きながら、ライチはそのポケモンを抱き上げ、顔を見て話しかけた。最後はサトシでモクロー、イワンコ、ロコンと来て、今ニャビーの説明が終わったところだった。

 

ムーランドとのエピソードを聞いたライチは、涙を流しながらニャビーを抱きしめた。

 

「良かったね、ニャビー。サトシ君のような、優しいトレーナーの元に来れて」

「ニャブ」

 

 

差し出されたハンカチで涙を拭うライチ。それを見たスイレンはポツリと、

 

「忙しい人……転んで、笑って、泣いて……」

「でも、あたしは好きだなぁ。なんか、そういう人、憧れちゃうかも」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、折角みんながポケモンのことを教えてくれたし、私からもアーカラ島のこと、話しちゃお!」

 

出発前の軽い予習、と言ったところだろうか。ロトムが録画を開始し、ライチが話し始めた。

 

「アーカラ島の特徴は、何といっても豊かな自然の恵み。ヴェラ火山の神聖な炎に見守られ、人もポケモンも、きのみなどの植物も強く育つと言われているわ。大自然の恵みへの感謝と、その力強さへの恐れ。それらを持って、私たちは生きている。じゃあここで問題。アーカラ島の

守り神のポケモンのこと、知ってるかな?」

 

真っ先に手をあげたのはサトシだった。それもそのはず、彼にとっては忘れられない出会いでも会ったのだから。

 

「カプ・テテフ、ですよね」

「正解!命の守り神とも言われるカプ・テテフ。その振りまく輝く鱗粉に触れると、たちまち元気になるとも言われてるわ」

「そっか!だからあの時、傷が癒えたのか」

「?サトシ君はもしかして、カプ・テテフに会ったことがあるの?」

「はい、一度だけですけど」

「一度だけでも凄いわよ。私だって、まだそんなに会ったことはないのに」

「ライチさん、サトシはメレメレ島の守り神、カプ・コケコとも何度か出会い、バトルしたことがあるのです」

「カプ・コケコとバトル?ほんとに?」

 

驚いて目を見開くライチ。カプ・コケコは確かに好奇心旺盛な守り神だと聞かされていたが、そう何度も同じトレーナーの前に現れることや、バトルを挑むことなんて、少なくとも古い書物でしか読んだことがない。

 

「本当ですよ、ライチさん。俺たちもそのおかげで、何度もカプ・コケコを見ています」

「サトシのZリングとデンキZも、カプ・コケコに貰ったものだしね」

「Zリングを、守り神が?」

 

目の前に座り込む少年を改めて見てみる。13歳にしては、時折見せる雰囲気は子供のそれだった。ポケモンが大好きでたまらない、そんな感情が伝わってくる。しかし、また別の側面があるのもわかった。年相応どころか、どこか大人びた雰囲気を、彼は虹について話してた時に見せた。

 

不思議な少年だ、そう思った。メレメレ島のカプ・コケコ、そしてアーカラ島のカプ・テテフ。二つの島の守り神と出会い、片方からはバトルを挑まれるほどに注目されている。

 

「……楽しみね」

「?ライチさん?」

 

「ううん。何でもないの。また会えるといいわね」

「はい」

「みんなにはこの課外授業で、カプ・テテフの息吹に触れて欲しい。命とは何なのか。私たち人間とポケモンが出会うことで、何が生まれるのか。パートナー同士だけに生まれる何かを、感じ取って欲しい」

 

ライチの言葉は、深い問いかけにも聞こえた。みんながそのことについて考える中、サトシはいつだったか、金髪の美しいチャンピオンが自分に言ったことを、思い出していた。

 

『全ての命は別の命と出会い何かを生み出す』

 

自分と、そしてあの激戦を繰り広げたライバルと。自分たちの出会いがきっかけとなり、今の自分の手持ちにいる、あの猛火の子が本当の強さを手に入れた。自分がいて、あいつがいて、初めて成し遂げられたこと、そう自分は思っている。

 

自分がここでモクローと、

 

イワンコと、

 

ロコンと、

 

ニャビーと、

 

ロトムと、

 

カキと、

 

マーマネと、

 

マオと、

 

スイレンと、

 

リーリエと。

 

出会ったことは一体何を生むのだろうか。

 

 

「さぁみんな!アーカラ島へ、行くわよ!」

 

ライチに連れられ、スクールを後にしたサトシたち。いよいよ、新しい島での冒険が、始まろうとしている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

みんなを出迎えたのは、一隻のクルーザー。これに乗ってアーカラ島まで向かうようだ。

 

「さぁ、みんな乗って乗って!って、うわわぁっ!?」

 

派手な音を立ててこけるライチ。乗り込もうとした時に、躓いてしまったらしい。どうやらライチ、かなりのドジっ子属性もちのようだ。

 

「だ、大丈夫、大丈夫。あははは」

 

「忙しい人……真面目に話して、こけて笑って」

「うん。かっこいいよ」

「……どこが?」

 

そんなやりとりを挟みながら、博士を含む全員が、無事に乗り込んだ。見送りに来てくれたオーキド校長に手を振りながら、サトシたちを乗せたクルーザーは、出発した。

 

 

空ライドポケモンに乗って、アーカラ島まで飛んだことのあるカキ、サトシ、そしてマーマネ。海から行くのはそれよりも速度は落ちるものの、心地の良い旅になるように感じた。

 

途中、キャモメの群れに餌をあげてみたり、アーカラ島の観光ガイドにカキの牧場が紹介されているのをマーマネが見つけたり(因みに載っているカキの表情を見て、マオとマーマネが吹き出してしまったのはここだけの話)、なかなか有意義な時間を過ごせていた。

 

と、スイレンが海面から飛び出した何かを見つけたようだ。すぐ様向かってみるサトシたち。海面から飛び出し、大きく宙に舞ったのは、美しい色を持つ、ハクリューだった。それも一体だけではなく、複数体で。

 

ハクリューたちは、まるで出迎えてくれているかのように、飛び出しては潜りを繰り返す。その中の一体が、今までで一番高く飛び、声をあげた。それに反応するように、雲が広まり、雨が降り始める。

 

「わぁお」

「あまごいだ」

「これ、ハクリューがやったの?」

「ふふっ、課外授業はもう始まってるわよ。海のポケモンに、触れ合って触れ合って!」

 

ハクリューを初めに、サメハダー、ドククラゲなどの群れが、クルーザーの近くを泳ぐ。向こうの岩場では、ヤドンにシェルダーが噛みつき、ヤドランに進化していた。

 

それぞれのポケモンを指差しながら紹介するスイレン。流石みずタイプのことは詳しい。

 

「ケイコウオ、メノクラゲ、ネオラント、ラブカス、サニーゴ、シェルダー。あっ、ルギア!」

「えっ」「ルギア!?」「ほんとか!?」

 

慌ててスイレンの指差す方を見る男子たち。しかしそこには何もいない。

 

「もぉ〜男子信じてるし……んなわきゃないでしょ」

「でした」

「「「えぇ〜」」」

 

がっくりと肩を落とす男子。クスクス笑うスイレンとリーリエ、呆れ顔のマオ。こんなところに伝説のポケモンがそんなあっさり見つかったら、それこそ問題だ。サトシたちも結局は笑って流せる程度のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、スイレンの指差した方向。実はこのあたりは一気に深さが増しているのだ。そのずっと下の方、深層海流の流れる場所で、焦っているポケモンが一体。

 

(……気づかれたか?)

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

更にみずポケモンがいないか、探すことしばし、事件が起きた。

 

身を乗り出したライチが船の手すりを越えて、海に落ちてしまった。確かにある意味事件ではあるが、これはもうサトシたちも慣れて来たので、事件扱いはされなかった。本人も割とピンピンしていたし。

 

正確には、サトシがライチの誘いに乗って、一緒に泳ぎ始めた時に起きたのだ。船からは見えていない場所、岩場の陰に、挟まって動けなくなっていたホエルコを見つけたのだ。

 

助けようとするサトシとライチ。しかしどういうわけか、押しても引いてもビクともしない。引っ張った勢いで水に顔が潜るライチ。よく見ると、少し離れた場所から、こちらを見ているポケモンがいた。慌てて浮上するライチ。

 

「サトシ君、一旦離れて!」

「ライチさん?」

「ここはハギギシリのナワバリみたい。サイコパワーを受けたら、厄介だわ」

「サイコパワー?わかりました」

 

急いで近くに来ていたクルーザーの元へ泳ぐ二人。一先ず作戦を考えるために、みんなを集めた。このままでは、ホエルコが溺れてしまう。なんとかして、あの岩から引き離さなければ。

 

「でも、押しても引いても、動きそうになかった。どうすれば……」

「私に考えがあるわ。ルガルガン、お願い」

 

ルガルガンはいわタイプ、つまり水に弱い。一体何ができるのだろうか、そうみんなが思ったが、次の瞬間には驚かされるだけだった。飛び出したルガルガンは、高速でホエルコが囚われている岩場へ突撃し、それを粉砕してみせたのだった。全く水にひるむことなく、危なげもなくクルーザーに着地して見せるルガルガン。

 

「すごいスピード」

「やっぱりかっこいいよ。ライチさんも、ルガルガンも」

「ホエルコは?」

 

岩場が崩れた際の煙が晴れる。ホエルコは岩に当たることもなく、無事のようだ。

 

 

 

 

と思った瞬間、その体が沈んだ。

 

「しまった!ハギギシリのサイコパワーで泳げなくなってたのね!」

「ホエルコ!」

 

一瞬動揺したライチの横を二つの影が飛び出したを一つはサトシ、もう一つはゲッコウガだ。二人はすぐさまホエルコの救出に向かったようだ。すぐに追いかけようとしたライチたちだったが、怒ったハギギシリに足止めされてしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ホエルコを追って潜るサトシとゲッコウガ。なんとか追いつき、体を押し上げようとするものの、二人だけでは力が足りない。

 

(くそっ、今シンクロしたとしても、流石にホエルコをこのまま押し上げていけるかどうか……ん?)

 

ふと、サトシの耳に、何かが聞こえて来た。どこか懐かしいメロディのような……

 

と、サトシたちの下から、渦を巻く海流が登って来た。それはホエルコの体の真下、まるで押し上げるかのように登っていく。チャンスだと思ったサトシは、その海流の力を借りながら、なんとか海面を目指した。

 

まただ。また聞こえた。どこで聞いたのだったろう、この音色を……

 

 

「プハッ!ライチさん!」

「サトシ君!大丈夫!?」

「はい!でも、このままじゃ、ホエルコが!」

「わかったわ。みんな、ホエルコを支えて!」

「はい!」

「うん!」

「わかりました!」

「ええっ、ぼ、僕も!?」

「わたくし、お薬を持って来ます!」

 

次々と飛び込むクラスメートたち。ホエルコを浮かばせるために、周りを取り囲んで、体を支える。その様子を見ていたかのように、渦を巻く海流も、彼らが支え出した時には、止まっていた。

 

「ホエー!ホエー!」

「ホエルコ、大丈夫よ」

「心配するな。絶対に助けてやるから。な!」

 

興奮気味だったホエルコを優しく撫でながら話しかけるサトシとライチ。幸か不幸か、ホエルコの視界に入ったのは、この二人だった。少しずつ、おとなしくなるホエルコ。どうやら信頼してくれたようだ。

 

「ライチさん、お薬です!」

「ありがとう!ホエルコ、真似してね?」

 

薬を飲み込むふりをするライチ。それを真似てホエルコが大きく口を開く。その中に薬を放り込むと、サイコパワーによって動けなくなっていたホエルコの体が自由になった。

 

「もう大丈夫だからね。よく頑張ったわ、ホエルコ」

 

心から安堵したような声を出すライチ。ホエルコの方も、元気になったようで、お礼をするように一鳴きした。

 

 

ホエルコを見送ったサトシたちは、クルーザーに戻り、改めてアーカラ島を目指して進んだ。

 

 

「サトシ君、今日は大活躍だったわね」

「そんな。ライチさんこそ、ホエルコをすぐに大人しくさせて。すごいかっこよかったですよ」

「ありがとう。あ、そういえば、サトシ君。あなた、どうやってホエルコを海面まで連れて来たの?ゲッコウガと一緒だったとはいえ、あのホエルコを二人だけで運ぶなんて」

「実は、海流に助けられたんです」

「カイリュー?」

「いや、渦を巻く海流が、ホエルコを押し上げてくれたんです。まるで、俺たちを助けてくれた見たでした」

「そんなことが?ポケモンの仕業かしらね?」

 

「やっぱりさっきのハクリューかな?」

「そうかもね。でも、そんなすごいパワーを持ってるなら、特別なハクリューなのかも」

『この辺りにはミロカロスやギャラドスもいることがあるロト』

「でも、きっといいポケモンなんだね。会って見たいなぁ、その海流を作り出したポケモンに」

 

みんながその話で盛り上がる中、サトシは一人、先ほど聞こえたメロディを思い出していた。

 

「♪〜♩〜」

 

気がつけば、そのメロディを口笛で吹いていた。それはとても小さくて、話し込んでいるみんなには聞こえなかったみたいだ。でも、ポケモンたちは、その音色に反応した。まるで、その曲が何か特別な意味を持っているかのように。

 

海、メロディ、海流、そしてポケモン……

 

「もしかして……いや、そんなまさか」

 

2度も旅の先で、自分を助けてくれたあの白い姿が思い浮かぶ。1度目は世界の命運をかけて。2度目は小さな友を守るために。

 

幻であることを、この星のために願った、心正しく、力強いあのポケモン。あれから、見守ってくれていたのだろうか。

 

「また、助けてくれたんだな」

 

夕日が沈む中、あたりが暗くなり始める。見えにくくなった海から、一体のポケモンが顔を覗かせる。暗くなった海では、その姿を見ることはできなかった。しかしそのポケモンはクルーザー、いや、正確にはサトシを見ていた。

 

「♪〜♩〜」

 

サトシの口ずさんでいたのと、同じメロディが聞こえてくる。ハッとしてその方向を向いたサトシは、一つの長い尾が、海に潜るのを見つけた。今度はみんなにも聞こえたようで、みんな辺りを見渡していたが、サトシは今見たことは秘密にしておこう、そう決めたのだった。

 

「♪〜♩〜」

 

再びその音色を口ずさむサトシ。アーカラ島冒険の前に、またすごい出来事に巻き込まれてしまった。おそらく、冒険していれば、更にいろんな出来事もあるだろう。でも、やっぱりワクワクしている。

 

「よろしく、アーカラ島。よろしく、カプ・テテフ……ありがとな……」

「えっ?サトシ。最後なんて誰かにお礼言ってたみたいだけど?」

「……なんでもない。ちょっと海流を起こしてくれたあいつにな」

「あいつ?」

 

 

(また会おう……我が操り人よ……)

 

 

 

こうして、サトシたちはぶじにアーカラ島に辿り着いた。宿泊先のポケモンセンターについた彼らは、少し遅い夕飯を取り、次の日からの授業に備えるのだった。

 

 

余談だが、やはりアローラ地方でも、ジョーイさんはほとんど同じ顔の人たちばかりのようだ。

 

もうわけがわからないよ




というわけで、今回ガチでゲスト風に登場(?)してもらいました〜
他にも懐かしい所にいくつか触れてますけどねぇ

まぁ、なんとなく変えすぎた感ありますけど、許してね〜
特にアシマリ

もしかしたらこんな感じでなら、度々登場するかもです笑

ではでは、シーユー、ネックストターイム

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