所々雑になってしまったのですが、堪忍ですよ〜( ;∀;)
あと、微妙に手を加えたところとかあるので、ご容赦
ポケベースというスポーツを知っているだろうか。ポケモンと人間とが一緒になって野球をするという、なんとも迫力とスリルのあるスポーツだ。ポケモンの特徴をうまく生かした戦法、トレーナーとパートナーだけでなく、チーム全体で見せる協力プレーなど、ポケモンバトルとは全く異なるものの、サトシたちの世界では人気が高いものだ。
昨晩、コイキングスとエレブーズの試合を見たサトシは、白熱の試合を見れて大いに盛り上がっていた。バトルは異なる戦略に作戦。何より人間とポケモンが共に参加するという時点で、サトシはやって見たいと感じていた。もっとも、サトシだけでなく、それはクラスメート全員がそうだったようで、その日の教室は試合の話で持ちきりだった。
「昨日の試合、すごい盛り上がったな」
「ええ。あんな風に、ポケモンと人間とが協力し合いながら競い合う。ポケモンバトルとはまた別の魅力がありますね」
「あの逆転ホームランを決めたオルオル選手って、アローラ地方出身なんだって!」
「地元の人が活躍してると、なんだか僕まで嬉しくなっちゃうよ」
「あのカビゴンも、なかなか面白い奴だったな。あぁ、なんだか俺もポケベース、やって見たくなるなぁ」
丁度その時チャイムが鳴り、ククイ博士が教室に入って来る。すぐさま席に着くサトシたちはしっかりと挨拶をする。何やらククイ博士が面白そうな表情をしているのが気になるが、授業の時間となり、サトシたちもなんとなく姿勢を正した。
「アローラ。みんな、昨日のポケベースは見たか?」
「「「「「「はい」」」」」」
「その様子じゃ、みんなも大盛り上がりだったみたいだな。そんなみんなのために、今日は特別な課外授業を用意した」
「課外授業ですか?」
「どんなことするんですか?」
「それじゃあ、特別講師を紹介しよう。入って来ていいぞ」
博士が入り口へ声をかける。呼ばれて現れたその人を見て、サトシたちは驚きの声をあげた。赤いキャップに、ユニホームを着たその人と、その後ろにいる体の大きいポケモン。彼らはまさしく、今さっきまでサトシたちが噂をしていた人たちだったのだから。
「アローラ、みんな。ポケベースチーム、コイキングス所属のオルオルだ。こっちは相棒のカビゴン。よろしく」
「「「「「「うっそぉー!?」」」」」」
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パートナーを伴って現れたオルオル選手。なんとこのポケモンスクールの卒業生だというのだから驚きだ。ククイ博士とオーキド校長が、せっかくだからと呼んでくれたようだ。しかしながら、なぜ校長のポケモンギャグまで覚えてしまったのやら……
数分後、しっかりと着替えたサトシたちは、スクールの校庭へと集合していた。オルオル選手による、ポケベース特別講座の始まりである。
「いいかい。ポケベースで必要な動きは四つだけ。投げる、取る、打つ、そして走る。走ることはもうみんなは日頃から機会はあるかもしれないけど、残りの三つはどうかな?」
「俺、ポケモンをゲットするときとかに、モンスターボールを投げてますけど」
「そうだね。そういう機会が多い子は既に投げやすいフォームが出来上がってるかもしれない。じゃあ他の子はそのフォームを覚えるところからだね。その後は打つ時のフォーム、取る時のコツ。練習することはたくさんあるけど、みんな、頑張っていこう」
「「「「「「はい!」」」」」」
オルオル選手の指導の下、サトシたちのポケベース体験が始まった。投げることに関しては、さすがのサトシ。オルオル選手も認める程の精度、速さ、フォームだったため、リーリエとマーマネのやや運動苦手組の指導を任されることになる。
何やらリーリエにフォームを教えるときに視線を感じたサトシだったが……本人は特に気にすることもなく、約2名若干不満そうではあった。
ポケモン達もトレーナーと一緒に出来るスポーツに、大いに盛り上がり、それぞれの特徴を活かしたトレーニングをしている。
そして……
「それでは、これから二チームに別れて、模擬試合をやってみよう。ルールはスリーベース式、サトシ君とカキ君とでチーム分けをして、試合をしてみよう」
ついに念願のポケベースの試合を始めることになるのだった。
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プレイボール、実況をロトム、解説にククイ博士とオルオル選手の二人を迎え、サトシチームとカキチームの試合が始まろうとしている。
ちなみにチームの別れかたは、
サトシ
ピカチュウ
スイレン
アシマリ
マーマネ
トゲデマル
カキ
バクガメス
マオ
アママイコ
リーリエ
シロン
というふうになっている。ちなみに他のポケモン達は副審を務めたり、応援に徹するようだ。
一番バッターのサトシがボックスに立ち、ピッチャーのカキを見据える。初っ端から両チームのエース対決である。
「行くぞ、サトシ。勝負だ!」
「望むところだぜ、カキ!」
火花を散らす両者。カキが大きく振りかぶり、第1球を投げる体勢に入る。
「ダイナミック、フルフレイム、ボール!」
自身の得意とするZ技をアレンジした掛け声とともに、投げられるボールは、キャッチャーのバクガメスに向って行く。
ボール目掛けてバットを全力で振るサトシ。しかしそのバットは空を切り、ボールはミットに吸い込まれた。
「ストラーイク!」
審判役のストライクの声が響く。改めてバットを構え直すサトシ。続く第二球はサトシの顔と同じ高さを通過する。完全なボールにサトシは前を見つめ直す……と
「ス、スス、ス、ストラーイク!」
後ろからストライクの声。
『どう見てもボールロト!』
「まぁ、ストライクだからな」
「ストライクですしね」
ずっコケるサトシ達。どこか申し訳なさそうに頭をかくストライクを見ていると、流石に責める気にもなれず、サトシは笑いながら試合続行を促した。その目が自信ありげなものに変わったことに、相棒を除き、誰一人として気づくこともなかったが。
「さぁ来い、カキ!」
「よし、行くぞ!」
再び投げられるボール。少しカーブ気味なその打球はしかし、ミットに収まることはなかった。
キィン
やや高めの衝撃音とともに宙に上がるボール、走り出すサトシ。やや高いループを描きながらボールは落ち始める。その落下地点でリーリエが待ち構える。
「この打球の弧の描き方からみて、この位置で確実に取れるはずです!で、ですが……やっぱりちょっと怖いです!」
最初は自信満々なドヤ顔だったのに、最後は頭を抱え、丸くなってしまうリーリエ。ボールはグローブにあたり跳ね上がる。未だうずくまったままのリーリエでは取れない、そう思いサトシは一塁のベースを踏んだ。が、
「コォン」
「ナイスだ、シロン!」
「ありがとう、シロン」
パートナーを助けるべく、シロンがすぐ近くまで接近していたのだ。グローブで跳ね上がったボールが地面につくより先に、シロンがボールをキャッチした。チームメートを見事にカバーした上でのアウト。シロンはポケベースのセンスもあるようだ。
「やるなぁ、シロン。よぉし、次こそは決めてやる!次はピカチュウだよな?行って来い!」
「ピッカァ!」
そこからは白熱した試合模様となりだした。尻尾や頭の葉をを器用に操りボールを飛ばすピカチュウにアママイコ、バルーンを活用するアシマリ、転がるスピードが脅威なトゲデマル、ホームベースを鉄壁の守備で守るバクガメス。シロン以外のポケモン達も大活躍である。
もちろんトレーナー達も負けていられないと張り切っている。いつもは走るのが嫌いなマーマネも、全力で走っている……速度はお察しください。
意外や意外、スイレンにはポケベースのセンスがあるようで、サトシチームのエースとして大活躍している。打ってよし、守ってよし。思わずオルオル選手もびっくりである。
「やるなぁスイレン、スッゲェ楽しそう」
「うん。ポケベース、楽しい!」
「何かコツとかあるないかな?もっとちゃんと打ちたいんだけど、」
「うーん、私は釣りの時をイメージしてるけど……サトシも何か得意なこと、イメージしたらいいと思う」
「得意なこと?」
「そう。その動きとか、仕草とか。イメージしたら、きっと出来る」
「そうなのか?」
コツを教えてもらおうとスイレンに話しかけるサトシ。自然と距離が近くなる二人を見て、苦笑しているマーマネに、何やらさらに張り切っているのが二人いるようだ。
「サトシ君……モテモテですね」
「本人は自覚がないのが、またなんともね」
「将来有望なトレーナーみたいですね。どんな大人になるのか、楽しみです」
「あぁ、俺もだ」
そして9回の表、スイレンの教えを活かしたサトシが3塁に辿り着くものの、その後のピカチュウとアシマリがアウトになってしまう。点差は一点。ここで逆転しなければならないというプレッシャーの中、スイレンが見事にやってのけたのだった。
「必殺、一本釣り打法!」
大きく振り抜かれたバットは、正確にカキの投げたボールを捉え、気持ちのいい音とともにボールが飛ばされる。スクールの外にまで届いてしまったほどの場外ホームラン。落ち込むカキをよそに、サトシとスイレンがホームベースを踏む。
「すごいぜスイレン!」
「イェーイ」
飛び上がってハイタッチを交わす二人。そこへマーマネ達も混じり、気合いを入れ直す。一方カキチームの人間組は皆悔しがっている…理由は微妙に異なるが。
渾身の一球をあっさりと打たれたことに落ち込むカキに、同じチームに入れなかったことを残念がる女子二人。カキの肩に手をおき、ドンマイとでも言いたそうなバクガメスに、首をかしげるシロンとアママイコ。もう色々とバラバラである。
結局その後すぐにチェンジすることになったものの、サトシチームは相手のチームを完全に抑え、結果として勝つことができたのだった。最後に一礼をし、特別課外授業のポケベースは終わった。
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「あ〜っ!?オルオル様!?」
試合を終えたサトシ達が片付けようかと思っていたところ、突然どこかで聞いたことのある声が響く。ダッシュで近づいてくる赤髪の女性、その後ろに男とニャースとソーナンス……って
「ロケット団!?」
「ジャリボーイ!?」
「またポケモン達を狙いに来たのか?」
「へん、お子様は引っ込んでなさい。今日はあんたに用はないのよ!」
流石にこの発言には驚くサトシ達。あれだけピカチュウをしつこく狙って来ていたというのに、今日はまるで関心がなさそうだ。むしろ、ムサシは目をハートにしてオルオル選手のことしか考えていなさそうだ。
「オルオル様、よ、良かったら、サインを」
「待ってよ、だったら僕も欲しい!」
「あたしも!」
「何よあんた達、ガキは引っ込んでなさい!」
火花を散らすムサシとマオ、マーマネ。苦笑してしまうサトシは、コジロウと目が合った。
『大変なことになって来たな』
『そう思うなら止めたらどうだ?』
『無理無理。こうなったムサシはテコでも動かないからなぁ』
アイコンタクトだけで成立する会話。長年の付き合いの賜物とも言える。必要のない争いはしない、それが基本的なサトシとロケット団の今の関係だ。世界の危機を救うために何度も協力し合ったこともあり、ポケモンを盗む行動に出ない時には特に敵対しなくなって来ている。が、今回は、
「それなら、ポケベースで決めたらどうだい?勝ったチームに僕のサインをあげよう」
と、オルオル選手の提案を受け、チームポケモンスクールvs Team Rocketの試合が行われることになったのだった。
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オルオル選手も加わり、ポケモンスクールチーム圧倒的有利かと思われていたこの試合、意外な事に接戦だった。
ロケット団も、そのポケモン達も、なかなかのファインプレーを連発する。特に驚いたのはニャースのピッチングだ。オルオル選手曰く、
『あれなら十分、試合で通用するなぁ』
驚異的なスピードと、正確性。サトシ達も今日、かなり練習したが、ニャースのそれはそれ以上のものだった。
特にズルや妨害もなく、正々堂々とした試合展開に、サトシ達も、ロケット団達も熱くなっている。もうポケモンを盗み取り返す関係にあることも忘れ、全力で目の前の相手に勝ちたいという気持ちが表れている。
ついに9回の裏、ポケモンスクールチームの攻撃。既にアウトが二つで点差は1点。このタイミングでバッターボックスに入るのはサトシだ。
「おミャーを打ち取って、ゲームセットニャ!」
「そうはいかないぜ、ニャース!」
バットを構えようとするサトシ、その目がゲッコウガのそれと合う。サトシの脳裏に、自分が全力で腕を振るった時のイメージが思い浮かぶ。
「得意なことをイメージ……よしっ」
構えるサトシ。その構えは今までに使っていたものと明らかに違うものになっている。立つ位置を左右変えたものの、握りはそのままだ。
「何してるんだ、あいつ?」
「急に構えを変えるなんて……」
「大丈夫」
「スイレン?何で大丈夫ってわかるの?」
「サトシ、ちゃんとイメージできてる。だから打てる」
皆が固唾を呑んで見守る中、ニャースの全力投球が投げられる。
ボールが近づく中、サトシがイメージしたのは両手で背中の獲物を振るうゲッコウガの姿。そのイメージが重なり、サトシが動いた。
「行くぜ!みずしゅりけん斬り!」
刀を振り抜くような動作でバットを振るうサトシ。カロスリーグでリザードン相手にゲッコウガがしたように、チャンスを逃さずに振るわれた一撃。それは正確にボールを捉え、ニャースのすぐ横を通り抜けた。
「ニャ、ニャンですとぉ〜!?」
必死にボールにダイブするコジロウ。しかしその指先ギリギリの所をボールは通り過ぎる。何とかミミッキュがボールを取って三塁に投げるものの、サトシは既に到着していた。
「サトシ、やるぅ」
「イメージ作戦、大成功!」
「今のはまぐれニャ。それに次は確実にアウトにできるニャ!」
ニヤリと笑みを浮かべるニャースの前、カビゴンがのっそりとバッターボックスに立った。ここまで活躍らしい活躍を見せていないカビゴン。少しばかり不安そうなポケモンスクールチーム。
「大丈夫かな?」
「頼むぞ、カビゴン」
「大丈夫だよ。カビゴンはやる時はやる子だからね」
「えぇ〜、そうは見えないけど……」
欠伸をするカビゴンからは、とてもではないがやる気が感じられない。しかしそれを見ながらも、自信満々にカビゴンを見るオルオル選手、とサトシ。絶対にいける!そう信じている目だ。
「カビゴンの本気、見せてくれよ」
ニャースの投げたボールがカビゴンのバットに当たる。ゴロではあるものの、カウントとしては有効だ。駆け出したサトシがホームベースに迫る中、カビゴンは動く気配がない。
「走って」「カビゴン」「頼む!」
「走ってください!」「お願い!」
「カビゴン!走れぇ!」
サトシ達の声援を受けたカビゴンがバットを手放す。それを見たオルオル選手が左の袖をまくる。そこにはZリングが巻かれている。
「本気を出すぞ、カビゴン!」
ノーマルタイプのZ技のポーズをとるオルオル選手とカビゴン。ロケット団が何やらモタモタしている間に、サトシがホームベースに戻り、カビゴンが姿勢を低くした。
「ほんきをだすこうげき!」
オルオル選手の指示が出る。それを受けたカビゴンは、超速で走った。
「……速っ!?」
それはまるで風のようだった。砂埃をあげながら、カビゴンはあっという間に塁を回って、ホームベースに向かっていた。ニャースがそれを阻止しようと、ソーナンスにボールを投げる。そこへカビゴンが飛び上がり、ダイブをする。大きな砂煙が立ち上がり、視界を覆う。
誰もが見守る中、煙が晴れると、ボールが地面に落ちているのが見えた。カビゴンの体はホームベースの上。それはつまり、
「セーフ!」
審判のククイ博士が判定を下す。カビゴンのランニングホームランの得点が入る。それはつまり、ポケモンスクールチームに2点入ったわけで……
「「「「「勝った!」」」」」
白熱した試合は、ポケモンスクールチームの勝利という形で、幕を閉じた。
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泣き崩れるTeam Rocket。甲子園に来た学生の如く、砂を集めるニャース達。一人、座り込んでいるムサシの前に、そっとサインが差し出される。
「こ、これは?」
「約束のサインだよ」
「で、でも、あたし達負けちゃったのに」
「ナイスゲームだったよ。そのお礼さ」
流石プロは懐が大きい。ロケット団のことを詳しく知らないこともあるかもしれないが、ファンをちゃんと大切にしている。それに、今回は自分たちも楽しかったから、ロケット団にいいことがあってもいいかな?なんて、そんな気持ちでサトシ達はムサシの喜ぶ様子を見ていた……
と、突然ロケット団の姿が消える。一陣の風とともに颯爽と彼らをさらっていく後ろ姿。またあのキテルグマのようだ。哀れムサシ、サインを受け取る事叶わずに、さっさと運ばれて行ってしまった。
「……なんだったんだろう、今の」
「オルオル選手、そのサイン、ムサシへって書いてもらってもいいですか?」
「へっ?いいけど、どうするの?」
「今度会ったときにでも、渡しておきますよ。長い付き合いなので」
「そうかい?なら、お願いしようかな」
ムサシ宛のサインを受け取るサトシ。なんだかんだ言って、完全に嫌いになることができないのだろう。サトシとロケット団の関係について、詳しく知りたくなったクラスメート達。またいずれ、その話を聞くことになるかもしれない。とりあえず、今は、
「みんなで片付けるか」
「「「「「おー」」」」」
ポケモンスクール特別授業でポケベースを体験したサトシ達。スポーツを通じ、ロケット団とも友情が芽生え始めたか、それはまだわからない。
ただ、その日の彼らは皆清々しい気持ちで終えることができた。
ムサシを除き……ね
「そういえば、サトシはカビゴンの走りにそんなに驚いてなかったけど、どうして?」
「あぁ、俺もカビゴンをゲットしたことがあるんだ。あいつ、バトルも強いし、バタフライとかするし。だから、カビゴンなら、やる時はやってくれるって思ってたんだ」
「……バタフライ?」
「あの泳ぎの?」
「?あぁ、そうだけど」
「サトシくん、その話を詳しく!」
……続く
次はキャンプ回だな!
サトシ大活躍の時……
ライチさんとの絡みを描くのが今から楽しみ