今回もちょこちょこいじくり回しています笑
朝の海岸、スクールに向かう前に、サトシたちがバトルの特訓を行なっているところだった。対峙するのはゲッコウガとイワンコ、モクローの二体。ニャビー、ロコン、ピカチュウは見学中だ。
「モクロー、このは!イワンコ、いわおとし!」
サトシの指示に合わせ、二体が同時に技を発動させる。このはによって推進力が上がったいわおとしがゲッコウガ目掛けて飛ぶ。じっと技を見つめるゲッコウガは、その場で目を瞑る。驚くことに、ゲッコウガはその場から動くことはせず、体をそらす要領で全てかわしていく。
「たいあたりだ!」
「アン!」
技が完全に終わる前に駆け出したイワンコ。最後の一つを避けたゲッコウガは、動じることなく、横に跳び、その攻撃をかわす。ふと背後に気配を感じたゲッコウガ。横に飛んだままの体勢から地面に手をつき、体を跳ね上げる。さっきまでゲッコウガのいた場所を、モクローの蹴りが通過する。
「やるな、ゲッコウガ。目を閉じて攻撃をかわすなんて、まるでルカリオみたいだな。波動を感じてるわけじゃなくて、気配を察知してるのか?」
「コウガ」
『気配だけでここまで……ゲッコウガ、おそるべしロト』
「イワンコ、モクロー、お疲れ。そろそろポケモンスクールに行くか」
ボールから出たまま、サトシとポケモンたちはスクールへと駆けて行く。その途中で、彼らとすれ違う一人の少年。薄い色の金髪が顔を隠し、黒い服はあちこちファスナーだらけ。なんだか不思議な少年だと感じながらも、遅刻をしないために、サトシたちは必死に走った。
立ち止まり、振り返る少年。その眼はサトシ……ではなく、その隣を走る青い身体のポケモンに向けられていた。
「あれは……ゲッコウガ?珍しいポケモンを連れてる奴がいるもんだな」
「ブラッキ」
時間が経ってお昼頃。サトシたちはポケモンたちが遊ぶ様子を眺めていた。ついこの前、マーマネの手持ちに加わったデンヂムシを先頭に、何やら電車ごっこのようなことをしている。このデンヂムシ、走り出す合図が出発進行であり、しかも何故か電車のような音がするため、割と本格的に見えてくるのは気のせいだろうか。
「かわいい」
「シロンもとっても楽しそうですね」
「デンヂムシも、結構早く馴染んだな」
机を丸く合わせ、みんなで向かい合って食べる。自然と会話が弾む中で、噂好きのマーマネが新しい話題を振る。
「ねぇ、知ってる?最近この島にすっごく強いトレーナーが現れたって話」
「すっごく強いトレーナー?」
当然のように反応するサトシ。知らないのか、首をかしげるスイレンとリーリエ。カキも興味深そうに聞いている。
「あたしきいた事ある!この前お店に来てた人が話してた。謎のルガルガン使いって言われてるんだって。真夜中の姿の」
「そうそう。一緒にブラッキーを見たって話も聞いたよ」
「真夜中の姿のルガルガンに、ブラッキーか……バトルして見たいな。な、ピカチュウ?」
「ピッカァ!」
「アンアン!」
「おっ、イワンコもか?」
「アンッ!」
どうやらその強いルガルガンに興味を持ったらしいイワンコ。どんな相手かを想像しているのか、目がキラキラしている。
「そのトレーナーも、島巡りに挑戦しているのかもね」
「ってことは、他の島での試練をクリアしたのかもしれないな。そいつはZリングを持っているのか?」
「うーん、でもZ技を使ったって話は聞いたことないな〜」
「まだ使えないのか、それとも使わないだけなのか。何れにしても、Z技無しでここまでの評判になると考えると、相当強いぞ、そいつ」
結局、その日の昼休みは、謎のルガルガン使いの話で盛り上がってしまい、気づいたら午後の授業の開始時間になってしまったのだった。
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放課後、少し用事があるとリーリエが言ってたために、サトシは一人で帰っていた。足元にはピカチュウとイワンコ、ロコンが一緒に歩いている。モクローはリュック、ゲッコウガとニャビーはボールの中だ。広場の近くに来たところで、何やら大きな鳴き声と歓声が聞こえてくる。
「なんだ?」
『誰かバトルでもしてるロト?』
「バトル!?行ってみようぜ!」
バトルと聞いては黙っていられないサトシ。急いで階段を駆け下り、人だかりのできている広場の中央に向かう。そこで彼が見たのは、
「カメックス、ロケットずつき!」
「ガッメェー!」
巨体からは想像できないスピードで飛び出したカメックス。しかし、それを見ても対峙しているトレーナーは動揺することなく、指示を出す。
「カウンター」
「ルッガ!」
ロケットずつきが決まるその直前にわずかに体をそらし、攻撃をかわす。そしてガラ空きの胴体に、前足による強烈なアッパーが決まり、カメックスを大きく跳ね飛ばした。地面に落下したカメックスは完全に目を回している。勝利したポケモン、真夜中の姿のルガルガンが吠えた。
『あのカメックスの重量、およそ100キロと推定。それをあそこまで飛ばすなんて、凄いパワーロト!』
「カウンターのタイミングも、完璧だったな」
観客から拍手が上がる中、イワンコはルガルガンをキラキラした目で見ている。すっかりと憧れてしまっているようだ。
ルガルガンをボールに戻す少年。年はサトシよりも一つ、二つ上だろうか。その姿を見たサトシは、朝すれ違った相手だということに気づいた。その足元に寄り添うように、ブラッキーが立っている。
『ルガルガンにブラッキー。サトシ、謎のルガルガン使いの特徴と一致してるロト!』
「じゃあやっぱり、あいつが?」
対戦相手から視線を外した少年の瞳がサトシを捉える。その視線が一瞬自分の左腕、Zリングに向かったのをサトシは感じた。
「あのさ、「お兄様!?」……へ?」
サトシが声をかけようとした瞬間、大きな声が遮った。声の主は腕に白いロコンを抱え、大急ぎで走ってくる。サトシと少年の元までかけて来て、息を整える。
「やっぱり、グラジオお兄様ですよね!?まさか、噂のトレーナーがお兄様だったなんて」
「えっ?」
「お前、リーリエか……」
「えっ?」
「『えええええっ!?』」
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グラジオと呼ばれたトレーナー。よく見ると、前にリーリエの家で見た写真に写っていた男の子と髪型や髪や目の色が同じなのに気づく。なるほど、確かにリーリエの兄妹のようだ。
「お前……ポケモンにまた触れるようになったのか?」
「いえ、まだこの子だけです。この子、シロンは、私のパートナーです。シロン、グラジオお兄様よ」
「パートナーか……そうか」
「お兄様、よかったら一度わたくしと一緒に邸に行きませんか?ジェイムズたちも喜ぶと思います!」
「……遠慮しておく。じゃあな」
挨拶だけしてそのまま何処かへ行こうとするグラジオ。それを呼び止めたのはリーリエではなく、
「ちょっと待ってくれ」
ちらりとグラジオが視線を向けると、リーリエの側にサトシが来ていた。
「お前は?」
「俺はサトシ。カントーのマサラタウンから来たんだ。リーリエとはポケモンスクールのクラスメートで、一緒にククイ博士の家で暮らしてる」
サトシの最後の発言に、グラジオが驚いた表情をしてリーリエを見る。
「何?……邸に住んでいないのか?」
「わたくしが自分で決めたことです。ジェイムズたちからも了承は得ています」
「そうか……まぁいい。何か用か?」
「俺さ、ポケモンマスターを目指して修行しているんだ。だからアローラ地方の強いトレーナーとも戦いたいんだ。さっきのルガルガン、スッゲェ強かった。俺とバトルしてくれないか?」
左手で拳を作り熱弁するサトシ。その左腕のZリングをグラジオがまた見ているのを感じたサトシはそれをしっかりと見せる。
「俺、島巡りにも挑戦してるんだ。このZリングは、カプ・コケコから貰ったもの」
「カプ・コケコに?……会ったのか?」
「サトシは、カプ・コケコと何度かバトルしたことがあるのです」
「バトルだと?」
サトシを正面から見据えるグラジオ。まるで値踏みしているかのように、じっくりとサトシのことを見ている。ふっ、と息を吐き、グラジオの視線が普通なものになる。
「考えておく」
「わかった。その気になったら、いつでも教えてくれ」
「あの、お兄様!」
「パートナーを、大切にな……じゃあな」
サトシが握手するために手を差し出そうとしたが、その前にグラジオはブラッキーを連れて、さっさと行ってしまった。
「お兄様……」
何処か落ち込んだ様子のリーリエ。何やら訳ありのようだ。グラジオのことを伝えるべく、サトシとリーリエはジェイムズたちのいる邸に向かうことにした。
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「なんと、グラジオ坊っちゃまが!?」
「ええ。この島に来ているみたいなの」
「最近噂になっている謎のルガルガン使い、それがグラジオらしいです」
「そうですか……あの坊っちゃまが」
所変わってリーリエ邸。リーリエの部屋にてサトシとリーリエは、ジェイムズにお茶を入れてもらいながら、グラジオとの遭遇について話している。
「ジェイムズさん、グラジオは……」
「はい、家を出ております。丁度お嬢様がポケモンに触れなくなってしまってから、少しした頃のことでした」
「グラジオお兄様、わたくしの知っている頃と、雰囲気が全然違いました。前はとても優しかったのに……」
久しぶりに会った兄の変わりように、リーリエは戸惑い、悲しそうにしている。
「いい奴だよ、あいつは」
「えっ?」
断言するように告げられた言葉に、リーリエが顔を上げる。サトシが笑顔で頷く。出会ってほんの少し言葉を交わしただけだというのに、何故そんなに自信満々なのだろうか。
「あいつ、シロンを見て言ってただろ?パートナーを大切に、って。リーリエのことも、ポケモンのことも大切に思ってるってことだよ」
「サトシ……」
「ブラッキーもすっごく懐いてるみたいだったし、ポケモンから好かれる奴に本当に悪い奴なんていないさ。だから、グラジオもいい奴だよ」
「ありがとうございます」
シロンをぎゅっと抱きしめ、笑顔を見せるリーリエ。ブラッキーを連れていたことを聞いたジェイムズは、昔のことを思い出した。
「ブラッキーを……まるで昨日のことのようですなぁ、グラジオ坊っちゃまがイーブイを連れて来たことが」
「お兄様が?」
「どんな話ですか?」
まだリーリエも幼かった頃、ジェイムズが邸の掃除をしていた時、グラジオに呼ばれる声がした。駆けつけてみると、グラジオが弱ったイーブイを抱えていた。助けてほしい、強く訴えかけるグラジオのために、ジェイムズは応急手当てをし、すぐさまポケモンセンターに連れて行った。その後、無事に元気になったイーブイは、助けてくれたグラジオに懐き、グラジオのパートナーになったのだ。
「おそらく、あのブラッキーはその時のイーブイが進化したのでしょう」
「そんなことが?」
「お嬢様はまだ本当に幼かったので、覚えていないかと」
「やっぱり、いい奴だな」
「はい!」
久しぶりに邸に来たということで、リーリエはこっちに泊まることにし、サトシはククイ博士の家へと帰って行った。
その晩、みんなが寝静まった頃、サトシは一人、グラジオのことを考えていた。リーリエがポケモンに触れなくなった頃に家を出たというグラジオ。何か理由を知っているのだろうか。
と、上の階で何か物音が聞こえる。誰かが玄関に訪ねて来たようだ。こんな時間に誰が?疑問を持ちながら、サトシは他の人を起こしてしまわないようにそっと部屋を出て、階段を登り、扉を開けた。
暗闇の中で光るリングのような模様、ブラッキーはサトシに一つの手紙を渡し、そのまま何処かへ行ってしまった。
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明朝、まだ日が昇る前の時間に、サトシは海岸に向かっていた。いつもの特訓……ではなく、今日は呼び出しに応えているのだ。海岸が近づくに連れて、お目当の人物が既に来ているのが見える。朝日が昇り始めるのを見ているのか、瞳は水平線を捉えている。
「グラジオ!」
名前を呼ばれたグラジオが振り返る。
「待たせたな。バトル、してくれるんだって?」
「あぁ。カプ・コケコとバトルしたという実力、見せてみろ」
「望むところだ!」
両者距離を取り、相手を見据える。サトシは誰で行くのかは既に決めていた。互いにボールを手に取り、ポケモンを出す。
「イワンコ、君に決めた!」
「出でよ、紅き眼差し。ルガルガン!」
現れたイワンコはルガルガンを見て、目を輝かせる。しかしそれも一瞬、気を引き締め、やる気満々の表情になる。
「憧れのルガルガンとのバトルだ。イワンコ、気合い入れて行こうぜ!」
「アン!」
「来い」
「ルッガ」
ポケモンたちが火花を散らし、バトルが始まった。
「イワンコ、かみつく!」
飛び出したイワンコは、ピカチュウに教わった素早い動きでルガルガンの動揺を誘う。まっすぐと見せかけて回り込み、上下左右に駆ける。
タイミングを計り、イワンコはルガルガンに飛びかかる。ガブリとイワンコのかみつくがルガルガンの左前足に当たる。しかしルガルガンは動じることなく、イワンコを振り払う。
「いわおとし!」
空中で体勢を立て直し、イワンコの得意技、いわおとしが打ち出される。
「ストーンエッジ」
「ルッガァ」
ルガルガンが前足で地面を殴りつける。岩の柱が飛び出し、いわおとしが防がれてしまう。そのまま次から次へと岩柱が飛び出し、着地前のイワンコを狙う。
「イワンコ!」
「かみくだく」
岩柱によって再び宙に上がるイワンコ。素早く飛び上がるルガルガン。身動きが取れないイワンコに、ルガルガンの牙による攻撃が襲いかかる。
「イワンコ、いわおとしだ!そのまま回れ!」
尾の周りに岩を漂わせたまま、イワンコは身体を捻り、回転する。それはまるで岩で身体の周りをコーティングしたかのようになり、ルガルガンなかみくだくを弾く。そしてそのまま怯んだルガルガンに、いわおとしを打ち出すイワンコ。爆発が起こり、両者地面に降り立った。
「やるな」
「そっちこそ、流石だな」
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再び両者のポケモンがぶつかり合おうとしたその時、突然網が飛んで来て、ルガルガンとサトシのピカチュウが捉えられてしまう。
「ピカチュウ、ルガルガン!」
「何者だ?」
「何者だ、と聞かれたら」
「聞かせてあげよう、我らの名を」
「花顔柳腰羞月閉花。儚きこの世に咲く一輪の悪の花!ムサシ」
「飛竜乗雲英姿颯爽。切なきこの世に一矢報いる悪の使徒!コジロウ」
「一蓮托生連帯責任。親しき仲にも小判輝く悪の星!ニャースで、ニャース」
「「ロケット団、参上!」」
「なのニャ!」
トラックの荷台に取り付けられたクレーンのような装置。そこからぶら下げられた網の中に、ピカチュウとルガルガンが捕らえられている。
「ピカチュウとこのルガンガンは、あたしたちロケット団がもらったわよー」
「ルガルガンな。ともかく、目的は達成できたわけだし、とっととずらかろう」
「バイニャらー!」
発進するトラック。その後を追ってイワンコがまず飛び出す。その後をサトシ、グラジオ、ブラッキーが追いかける。
「速いっ」
「だったら!ゲッコウガ、みずしゅりけん!」
走りながらボールを手に取り投げる。飛び出したゲッコウガを見て驚くグラジオ。ゲッコウガはみずしゅりけんをトラックの進行方向目掛けて打ち出す。
「のわっ、危なっ!」
なんとかかわすロケット団、その際にスピードが落ちたところに、イワンコが追いつき、ネットに食いつく。
「ニャ!?邪魔者が来ちゃったニャ!」
「コジロウ、振り払うの!」
「ラジャー」
「逃がさん!ブラッキー、あくのはどう!」
「ブラッ、キキキキ!」
動き出そうとするトラックのタイヤ目掛けて、あくのはどうが命中する。パンクしてしまうタイヤ。その隙にイワンコは網をかみきり、ルガルガンとピカチュウの救出に成功した。
「いいぞ、イワンコ、ゲッコウガ」
「アン!」
「コウ」
「あらら?なんだか一気にヤバイ感じ?」
「ソーナンス」
「よーし、あとは俺たちが「待て」グラジオ?」
サトシたちの前に進みでるグラジオとルガルガン。
「あとは俺たちでやる。行くぞ、ルガルガン」
「ルガゥ!」
グラジオが両腕を交差させる。ルガルガンも同様に。その瞬間、グラジオの左腕から眩い光が放たれる。袖の下、露わになったのは赤いZリングだった。
「グラジオも、Z技を」
「蒼き月のZを浴びし、岩塊が今……」
拳を握るグラジオとルガルガン。その手を開き、天高く掲げる。
「滅びゆく世界を、封印する!」
飛び上がるルガルガンの頭上に、岩が集まり始める。それは巨大な岩塊となり、ロケット団の上に、巨大な影を落とす。
「何あれ?」
「なんかヤバそうな予感が……」
「くらえ!ワールズエンドフォール!」
ルガルガンがその岩塊をロケット団に向けて、力一杯投げつける。大きな衝撃とともに地面に激突した岩塊は、爆発を起こし、ロケット団は空の彼方へと飛ばされていった。
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朝日が昇りきってから少し経つ頃になり、あたりは大分明るくなっていた。ロケット団を追い払ったあと、サトシとグラジオはバトルを一時中断している。
「さっきの、Z技だよな?」
「あぁ。いわタイプのZ技だ」
「カッコよかったなぁ。俺も使って見たいぜ」
「持ってるのか?イワZを」
「それはまだ。これから手に入れるさ」
「……そうか。なら、アーカラ島の島クイーンの大試練に挑め。クリアできれば手に入れられるはずだ」
「サンキュー。絶対クリアして見せるさ。な、みんな?」
「ピッカァ!」
「アンアン!」
「コウ!」
やる気に満ちた顔で応えるピカチュウ、イワンコ、ゲッコウガ。強い信頼関係で結ばれているその姿を、グラジオはしばし眺めていた。
「さぁ、そろそろバトルの続きを「お兄様!」」
中断していたバトルを仕切り直そうとしたところで、遠くの方から声が響いた。白い帽子に白い服、白い肌に白いロコン。遠くから見ただけでわかる。
「「リーリエ」」
こっちに向かって走ってくるリーリエ。その姿を見たとき、ロトムが声を上げる。
『た、大変ロト!そろそろポケモンスクールに向かう時間ロト!』
「えっ、もうそんな時間?」
「残念だが、バトルはお預けのようだな。俺も妹の前では戦い難い」
流石にスクールをサボるのはマズイ。サトシにとっても残念だが、その提案を飲むしかなかった。
「今日の午後7時、初めて会った場所でお前を待つ」
「へ?」
「次は、そのピカチュウとゲッコウガの力も見せてくれ」
「!あぁ」
直ぐに元気になり、手を差し出すサトシ。今度はちゃんとグラジオも握手に応じてくれた。
「お前のイワンコ、いい眼をしている」
「え?」
「昔のこいつにそっくりだ」
そう言ってグラジオはルガルガンを撫でた。憧れの相手に似ている。そう言ってもらえて、イワンコも嬉しそうにしている。ルガルガンに駆け寄るイワンコ。ルガルガンも嫌がるそぶりはなく、応援するかのように、イワンコの頭を撫でた。
「じゃあな」
「リーリエには合わないのか?」
「あぁ。少しな……」
「そっか……リーリエ、話したがってたからさ、また今度、一緒に話そうぜ」
「……考えておく」
そう言って、グラジオは行ってしまった。次にバトルすることを考え、サトシはワクワクしていた。丁度グラジオの姿が見えなくなったところで、リーリエがやってきた。
「サトシ、グラジオお兄様は?」
「用事があるっぽくて、もう行ったよ」
「そんなぁ。今日こそはちゃんとお話ししようと思っていましたのに」
「またそのうちに、チャンスはあるさ」
新しいライバル、グラジオ。次のバトルに向けて、お互いに士気を高めている。再戦は、果たしてどんなバトルになるのか、そして勝者はどちらになるのか。
それはそれは、次のお話で……
というわけで、次回はオリジナルエピソードです
サトシとグラジオ、激しいバトルを描けるように頑張ります