XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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場所間違えた、やっちゃった


新たな出会い、守り神

「結構集まったし、そろそろ帰るか」

「ピカ」

「三人とも、喜んでくれるといいけど」

 

夕暮れ時、だんだん暗くなって来た頃になって、サトシたちは帰り支度を始めた。折角なので何かお土産を持って帰ろうと思ったサトシ。博士やカキ、マーマネが喜びそうなものは残念ながら見つからなかったが、ハートのウロコや、貝殻など、周りにはたくさんの綺麗なものが見つかった。マオたちが楽しそうにしているのを見て、持って帰ってあげようと考えたサトシは、ピカチュウとともに、素材を集めていたのだ。

 

「ん?何だ、この音?」

「ピィカ?」

 

浜辺を歩いていると、どこからか甲高い音が聞こえて来た。同時に、小さいながらも何かかが動いているような音もする。

 

「鳴き声?何処から?」

「ピィカ。ピカ!?ピカチュウ!」

 

サトシの方から飛び降りたピカチュウ。その後を追いかけると、岩の崖に小さな穴があるのが見えた。その中を覗くと、先ほどサトシのおやつを狙っていたのと同じポケモンが一体、中で動き回っていた。見たところ出入り口は上からしかないようだ。

 

「ひょっとして、出られないのか?待ってろ、すぐ助けるから」

 

言うが早いか崖に掴み掛かり登り始めるサトシ。本来ならばモクローの力を借りるところだが、今日は留守番しているため不在だ。自力で登るしかない。とはいえ、出っ張りも少なく、足場に出来る場所も少ないため、サトシも苦戦している。

 

「のわっ!?っ、く!」

 

足を滑らせたサトシ。落ちるのを止めようと手に力を入れて踏ん張る。少し滑り落ちたところで静止するサトシ。その手は擦りむけ、血が滲んでいる。

 

「痛ってて。よし、まだまだ」

 

手の怪我を気にせず登り続けるサトシ。しかし運悪く、右手と右足を掛けた出っ張りが崩れてしまった。

 

「へ、へ、うわぁぁっ!?」

 

崖から完全に体が離れ、落ちてしまうサトシ。襲撃を覚悟し、背中を丸める。と、ぽすん、という感じの衝撃で、サトシの落下が止まった。驚きながらも目を開くサトシ。その前に広がったのは緑色。そして耳に入った鳴き声。

 

「ナッシー」

「ナッシー?どうしてここに?」

「ピカピ!」

「ピカチュウ。そうか、お前が呼んでくれたんだな。ありがとう。ナッシーも、サンキューな」

 

長い首を持ち上げるようにするナッシー。その協力のおかげで、あっという間にサトシたちは崖の上に登ることができた。

 

「もう少しだけ待っててくれ。今からそっちに降りるから、少し隠れててくれ」

 

亀裂の壁に手と足を添え、ゆっくりと降りていくサトシ。何とか下まで辿り着く。怯えたように震えるポケモン。大きな岩のある穴に向かって進もうとするも、通れずにいる。

 

「ここから入って来たのか?この岩がその後に落ちて来たってことか。潰されなくてよかったよ」

 

岩をどかそうとするサトシ。しかしその大きさだけあって重い。全く動きそうになかった。不安げに鳴くポケモンを見て、サトシは安心させるように笑顔を向ける。

 

「心配するな。絶対にここから出してやるから。ちょっと離れてろ。ピカチュウ、アイアンテール!」

 

跳び上がり尻尾で岩を叩くピカチュウ。鋼のように硬度を高められた尻尾の一撃は、容易く巨大な岩を粉砕した。その先には穴が開き、夕焼け色に染まる海が見える。

 

「ナイスだ、ピカチュウ!さっ、出られるぞ」

 

サトシの足にひっつくようにして隠れていたポケモンは、サトシの声に正面を向き、すぐに外へと飛び出した。後ろに続くようにサトシたちも海へと出た。

 

「これでちゃんと帰れるぞ。次からは気をつけるんだぞ。ん、あれは……」

 

水面に現れたいくつかの影。どうやら仲間が迎えに来てくれたようだ。

 

「ほら、仲間も待っててくれてる。良かったな」

 

一目散に仲間の元へと駆け寄る(途中から泳いでいたが)ポケモン。チラリとサトシの方を振り返り、仲間たちと水中へと潜っていった。

 

「良かった、ちゃんと仲間たちと合流できて。ん?」

 

首をかしげるサトシ。先ほど潜って行ったはずのポケモンが浜辺まで戻って来たのだ。急いでサトシの足元まで来るポケモン。屈みこんで、サトシはできるだけ目線を合わせた。

 

「どうした?」

 

ポケモンが口に何かを咥えていた。サトシの掌の上に乗せられるそれは、夕日を受けて、淡いピンク色の輝きを放っていた。

 

「大きな真珠だ!これを、俺に?」

「キュイ、キュー」

「ありがとな。元気でいろよ」

「キュー」

 

別れの挨拶を済ませ、サトシとポケモンは別れた。海へと戻っていくその姿を眺めながら、穏やかな気持ちになるサトシ。そのまま水平線に陽が沈むのを、ずっと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、空を何かが飛んでいるのが見えた。

 

 

輝く軌跡を残しながら、華麗に舞うポケモン。ピンク色の身体をしているが、どこかカプ・コケコに似ていると感じた。

 

「ポケモン?うわっ!?」

 

飛ぶ姿を眺めていると、ポケモンはサトシの目の前まで降りて来た。首をかしげ、サトシを見つめる。その後、サトシの周囲を回りながら、サトシのことを観察しているようだった。

 

「な、なんだ?」

「テテ?」

 

ポケモンの目がサトシの手に止まる。ポケモンを助けるためにボロボロになった手。数度瞬きをすると、そのポケモンはサトシの両手を取った。

 

「へ?あっ、傷が……」

「ピィカァ?」

 

真意がわからず不思議そうな顔をしたサトシだったが、その顔が驚きに変わる。みるみるうちに、サトシの両手の傷が癒えていく。そして完全に治ったところで、ポケモンは手を離し、そのまま何処かへ飛んで行ってしまった。

 

「あっ、サンキューな!」

 

驚きから立ち直り、大きな声でお礼を叫ぶサトシ。ポケモンはサトシをもう一度一瞥すると、そのまま止まらずに飛んで行った。

 

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「そいつはきっと、カプ・テテフだな」

「カプ・テテフ?」

 

その後、無事に家に帰ったサトシたち。博士の家で夕飯を待っている間に、サトシは宝島でのことを話した。最後のポケモンについて話し終わったところで、ククイ博士がそのポケモンの名前を言った。

 

「カプってことは、カプ・コケコの仲間?」

『そうロト。アーカラ島の守り神ポケモンで、なかなか見られるポケモンじゃないロト』

「私も本で読んだことがあります。確か、鱗粉を振りまき、傷を癒す力を持っているとか」

「それと、助けてやったのはコソクムシだな。自然の掃除屋とも言われ、臆病な性格だな」

「そうなのか。あいつも元気でやってるかな?それに、また会いたいよな、カプ・テテフ。な、ピカチュウ?」

「ピッカァ!」

 

 

新しい出会いに胸を膨らませるサトシ。そして新しい守り神ポケモンのカプ・テテフ。また出会えるだろうか。まだまだたくさんの不思議やポケモンが待ってるアローラ地方。サトシたちの冒険はまだまだ続く。




次回ニャビー回、お楽しみに

グラジオでるのが楽しみだわぁ

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