XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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ゲッコウガ対カプ・コケコのオリジナルバトルですね
今振り返ってみると、ここまで作中何度か登場したものの、あのゲッコウガの登場時間って短いものばかりでしたね


雷鳴と激流

フィールドに立った両者は相手を見据えたまま動かなかった。誰もが息を呑み、見守る中、エレキフィールドが発動し、バトルが始まった。

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

「コウッガ!」

 

先に動いたのはゲッコウガだった。両手から放ったみずしゅりけんがカプ・コケコへと向かって行く。持ち前のスピードでそれを躱したカプ・コケコだったが、その回避地点にはゲッコウガが既に回り込んでいた。

 

「いあいぎりだ!」

 

手に握られた光の刃を振り上げるゲッコウガ。なんとか腕で防いだカプ・コケコだったが、ピカチュウの時と違い、咄嗟の行動ではパワー負けしてしまい、弾かれた。空中で態勢を整える。

 

 

「すごい、ゲッコウガ」

「あのカプ・コケコ相手に引けを取らないな」

 

「コォー、ケェー」

「かげぶんしんで躱せ!」

 

しぜんのいかりで反撃に出るカプ・コケコ。しかし狙いが定まらぬように、ゲッコウガはかげぶんしんをした。命中したのは影の方だったようで、ゲッコウガはそのままカプ・コケコ目掛けて走った。

 

「つばめがえしだ!」

 

力を凝縮させた右腕からの一撃が決まろうとした瞬間、カプ・コケコは再びほうでんを繰り出した。先ほど見せたものよりも広く走る電撃により、全ての影は消えてしまい、ゲッコウガ自身も大きなダメージを負ってしまう。

 

 

この時、観客の方へも電撃が向かったが、トゲデマルの機転により、誰も怪我せずに済んだ。特性ひらいしんにより電撃を彼女が全て吸収したのだ。

 

「助かったよトゲデマル〜」

「危なかった〜。本当にありがとう」

 

一安心した彼らはフィールドに視線を戻した。あれだけのでんき技を受けながらも、ゲッコウガが立ち上がったところだった。

 

 

「ゲッコウガ、いけるか?」

「コウッ!」

「見せてやろうぜ、俺とお前の全力を!」

 

二人の気持ちが一つになり、ゲッコウガの体を激流が包む。その中で姿を変えてゆくゲッコウガ。身体を包んでいた水が弾け、その姿が現れると、背中に巨大なみずしゅりけんが現れた。

 

「でた、謎のゲッコウガ!」

「やっぱりかっこいいなぁ〜」

 

生徒たちも大いに盛り上がっている。バトルの時もなかなか見ることのできない姿を見て、以前カキと行われた激しいバトルが思い出される。その時の勝者だったゲッコウガと、島の守り神カプ・コケコ。更に激しいバトルが期待される。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「先ずはエレキフィールドをどうにかしないとな。ゲッコウガ、みずしゅりけんを地面に突き刺せ!」

 

突然のその指示に誰もが耳を疑う中、ゲッコウガは迷いなく背中に背負った手裏剣を手に取り、地面に叩きつけた。その衝撃で地面にヒビが入り、みずしゅりけんが弾け、フィールドに水が降り注いだ。その水によりフィールドが放電し始め、エレキフィールドが打ち消された。

 

「うそぉ!?」

「あんな技の使い方があるのですね」

「まぁサトシらしいというかなんというか」

 

 

「ここからが本番だ。ゲッコウガ、かげぶんしん!」

 

走り出しながらかげぶんしんで相手を撹乱しようとする。対するカプ・コケコは放電で一掃しようとする。先ほどよりも威力は落ちたものの、それでも広範囲に広がった攻撃は、着実に分身を消していく。

 

「みずしゅりけん!」

 

分身の消える中、飛び出した本体がみずしゅりけんを投げつけた。その攻撃を腕を合わせて防いだカプ・コケコはワイルドボルトでゲッコウガに迫った。

 

「いあいぎり!」

 

両手に水のクナイを握り、交差させるようにし、正面から突進を受けて立つゲッコウガ。激しい衝撃に爆風が起こり、鍔迫り合いのように一歩も引かない二体の周りには、電気が火花のように弾けた。

 

「もっと、もっと強く!」

「ゲッ、コウガ!」

 

両腕を振り抜きカプ・コケコを弾き飛ばす。態勢の崩れた隙を見逃さず、飛び上がったゲッコウガの振り下ろした一撃で、カプ・コケコが地面に叩きつけられた。

 

「よっしゃ!」

 

 

「やっぱり、あのゲッコウガは強いですね」

「あぁ。サトシの手持ちじゃ最強だろうな」

 

この後、ゲッコウガと同等以上の実力を持つポケモンたちと出会うことになろうとは、彼らは思っていなかった。

 

「コォー!」

「みずしゅりけん!」

「コウッ、ガァ!」

 

カプ・コケコの放った特大のエレキボールと、ゲッコウガの背負っていた巨大みずしゅりけんが激突する。爆発が起こり、巻き上げられた土煙で視界が遮られる。

 

一瞬戸惑ったゲッコウガへと、真正面から突っ込んできたワイルドボルトが炸裂する。大きく宙に投げ出されたゲッコウガはそのまま地面に落ちる。

 

「ぐっ!?」

 

「サトシ?」

「どうかしたのでしょうか。なんだかとても苦しそうです」

 

突然腹部を抑え、苦しそうな声をもらしたサトシ。笑顔ではあるものの、やはりどこか辛そうだ。

 

再びワイルドボルトでゲッコウガに迫るカプ・コケコ。サトシの指示でなんとかつばめがえしで受けるが、指示が僅かに遅れてしまい、万全の態勢ではなく、また弾き飛ばされた。

 

「っづぅ、くっ」

 

今度は右腕を抑えるサトシ。その様子を見ている生徒たちはどうしたのか分からず、不思議そうだった。そんな中、ククイ博士とカキはサトシとゲッコウガを見ていて、何かに気づいた。

 

 

 

「まさか、そういうことなのか」

「カキも気づいたかい?」

「多分、ですけど」

「何何?何に気づいたの?」

「さっきからサトシが抑えている場所とその時何があったのかを思い出してごらん」

「確か、お腹と右腕」

「お腹の時は、カプ・コケコがワイルドボルトでゲッコウガを攻撃したときでしたよね。右腕は、ゲッコウガがつばめがえしで押し負けたとき……まさか」

「えっ、リーリエわかったの?」

「サトシが抑えた場所、おそらくそれは、ゲッコウガがダメージを受けた場所と同じなんです」

「どういうこと?」

「つまり、ゲッコウガがダメージを受ければ、サトシ本人もダメージを受けるんだ。バトルでゲッコウガが傷つけば傷つくほど、サトシ本人も傷ついていく」

「「えぇっ!?」」

 

今尚続いているバトルに目を向ける。みずしゅりけんを盾のようにし攻撃を防いだゲッコウガは、今度はそれを刀のように握り、振り抜く。ここで今まで気づかなかったことに彼らは気づいた。

 

ゲッコウガの動き、それと全く同じような動きをサトシもしていたのだ。バトルの時にトレーナーの体が動くこと自体は不思議ではない。バトルが盛り上がっている中、自然とそうなるものだからだ。しかしサトシのそれはゲッコウガとタイミングまで同じ。まるで、

 

「まるで、シンクロしてるみたいだな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

タイプ相性的にかなり不利な相手とバトルしていながらも、ゲッコウガはほぼ互角の勝負をしていた。しかしやはり蓄積されたダメージは大きく、疲労が見える。それはゲッコウガだけではなく、サトシもだった。

 

「やっぱり強いな、カプ・コケコは」

「コウガ」

「これ以上長引くのは、キツイな。ん?」

 

左腕で汗を拭ったサトシ。その時に、ノーマルZが僅かに光っているのが見えた。見てみると、デンキZには反応がない。

 

「これは…試してみるか」

 

デンキZを外し、ノーマルZと付け替える。

 

 

「まさか、Z技を使うのか?」

「でも、さっきピカチュウと一緒に使ったばっかりなのに」

「大丈夫かな?」

 

Z技を使うにはトレーナー本人の体力も激しく消耗する。ましてや今のサトシはゲッコウガのダメージを共有し、疲労が尋常じゃないはずだ。そんな状態では、そもそも使えるのかどうかすら怪しい。

 

 

「ゲッコウガ、やってみようぜ。俺たちで出せる全力を!」

「コウガ!」

 

頷きあう二人。Zリングからの光が溢れ、ゲッコウガを包み込んでいく。それを見たカプ・コケコもまた体に膨大な量の電撃を纏い始める。

 

 

「来るか、サトシたちのZ技」

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

「は?」

 

ゲッコウガによるウルトラダッシュアタックが来るのかと予想していたカキはサトシの突然の指示に驚かされた。

 

ゲッコウガは背中に背負ったみずしゅりけんを手に持ち、そのまま走り出した。ほぼ同時にカプ・コケコも今までの比ではない電撃を込めたワイルドボルトを発動しゲッコウガを迎え撃つ。

 

「そのままみずしゅりけんにつばめがえしだ!」

「「えぇっ!?」」

 

またもや唐突な指示に声を上げるマオとマーマネ。スイレンも声こそあげなかったものの、開いた口が塞がらないでいる。みずしゅりけんを前で回転させ、それを握る右腕でつばめがえしを発動させた。誰もが驚くなか、ゲッコウガはみずしゅりけんの水をそのまま拳に纏わせることに成功した。螺旋状に回転しながら集約されるみずしゅりけん。Z技に加えて、さらに二つの技を重ねがけしたゲッコウガはスピードを上げた。

 

「名付けて、ウルトラアクアダッシュパンチ!」

 

ネーミングはともかく、ウルトラダッシュアタックの突進力に加え、最大の武器であるみずしゅりけん、そしてゲッコウガの身体能力から繰り出されるつばめがえし。それら三つを合わせたその技の威力は計り知れない。

 

ちょうどフィールドの中心にて、二体の技が衝突し、水と電気、二つが混ざり合い、まるでドームのように二体を包んだ。しばらく中の様子が周りから見えなかったが、突然ドームが弾け飛んだ。

 

疲れているのか肩で息をするカプ・コケコと片膝をついているゲッコウガ。立ち上がろうとしたところで、後ろのサトシも地面に膝をついた。張り詰めていた気が緩んでしまったのか、ゲッコウガの体がふらつく。ゲッコウガの変化が解け、元に戻る。ドサリと音がしたのはゲッコウガの方だけではなかった。倒れたゲッコウガの目は回っていて、その後方、フィールドのそばでサトシもまた気絶してしまっていた。

 

その様子を見届けたカプ・コケコ。しかし無事というわけではなく、体のあちこちに傷が見えた。激しいバトルを制したカプ・コケコは一鳴きしし、森の方へと飛んで行った。姿が消えて少しすると、森からきのみが飛んできて、ゲッコウガの隣に落ちた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ん、ここ、は?」

 

気がつくと、自分は仰向けで寝ていた。見上げた先に見えたのはバトルフィールドから見えるはずの空ではなく、自分の見慣れた天井。窓から僅かに差し込む光の色から、今は夕方頃だと予想できる。体を起こしてみると、思っていたよりも力が入らないことに驚く。

 

「あっ、目が覚めましたか?」

 

すぐ隣から声がする。自分が横になっていたソファの近くに屈み込むようにして、ピカチュウたちが顔を覗き込んでいた。その後ろにはリーリエたちが心配そうに見ている。

 

「みんな……ここって博士の家?どうしてここに?」

「サトシ、体大丈夫?」

「どこか痛んだりしてない?」

「あ、あぁ。そっか、あの時、カプ・コケコとのバトルで、俺……そうだ、ゲッコウガは!?」

「今、カキと博士とポケモンセンター。元気になったから帰るって言ってた。大丈夫」

「そっか、良かった」

 

ホッと息を吐くサトシ。自分のことよりもポケモンの心配をするあたり、サトシらしい。

 

「俺たち、負けちゃったんだなぁ」

「でもすごいバトルだったよ。あんなの見たことなかったし」

「僕ももっとサトシたちのデータを取りたくなっちゃったよ」

 

サトシを励まそうとしているのか、明るく応えるマオとマーマネ。スイレンもウンウンと頷いている。

 

「もうこんな時間だ、そろそろあたし帰らないと」

「わわっ、僕も」

「私も」

「もう大丈夫みたいですし、後はわたくしにお任せください」

「ありがとう、リーリエ。じゃあサトシ、また学校でね」

「バイバーイ」

「じゃあな!」

 

みんなが帰ってしばらくしてから、カキとククイ博士がゲッコウガとともに帰ってきた。再戦に燃えるサトシたちを見て、カキは気になっていたことを聞くことにした。

 

「なぁサトシ、ひとついいか?」

「ん、なんだ?」

「お前とゲッコウガのあの力、あれはなんだ?あのバトルの時、ゲッコウガのダメージがなぜかお前にも伝わっていた。どういうことだ?」

 

博士も真剣な表情でサトシを見ている。リーリエは心配そうにシロンを抱えた。サトシも特に隠す理由がないため、正直に話すことにした。

 

「あの現象、キズナ現象っていうらしいんだけど、その時俺とゲッコウガは一つになってるんだ」

「一つに?」

「俺とゲッコウガの心が一つになって、シンクロしてるんだ。心だけじゃなくて体の動きや、お互いの視界もだ。その反動か知らないけど、痛覚も共有してるみたいなんだ」

「メガ進化でもそんなケース聞いたことはないな。あれだけの力だ。何かリスクがあるかと思っていたが」

「そんな状態に加えてZ技を使うとは、無茶苦茶だな」

 

神妙な顔つきになったククイ博士に、呆れ顔のカキ。たははー、と笑っているものの、かなりの疲労がたまっているであろうことは容易に想像できた。

 

その後しばらくしてからカキは帰り、サトシたちも夕飯を食べ、次の日に備えて眠ることにした。しかしそれぞれ思うことがあり、目が冴えてしまい、なかなか寝付けずにいた。




その後の周りの反応とかについては、また別のエピソードで書きますね

ちゅーかちょっとやり過ぎたかな?
技に技の重ねがけ的なの

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