XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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この作品が基本サトシの周辺のみのことなので、本編見てないとあんまし面白くないかもです

ちなみに本編はめっちゃ面白かったですよ


三匹の冒険

ポケモンスクールもお休みのある日、サトシ、リーリエ、マオ、そしてスイレンの4人は浜辺に集まっていた。ただの浜辺ではなく、スイレンとアシマリの思い出のあの浜辺である。どうやらアシマリの特訓の成果を見せてくれる模様。

 

「じゃあ行くよ。アシマリ、バルーン」

 

アシマリ鼻先から膨らんだバルーンは中にアシマリが入っても、割れずに宙に留まっていた。ロトム曰く、

 

『大きさ、強度、弾力性。どれを取っても絶妙な数値ロト!』

 

「すっげぇな、アシマリ」

「はい、わたくしもびっくりしました」

「でっしょ〜!あたしが遊びに行ったとき、ホウちゃんたちも入れたんだよ」

「アシマリ、すっごく頑張ったから」

 

褒められて嬉しそうなアシマリ。スイレンと叶えようとしている夢に、また近づいたのだ。

 

「次、俺も入ってみていいか?」

「あ、でも。この前私が入ったときは、すぐに割れちゃったから」

「まだあたしたちくらいの大きさの人は無理なんじゃないかな?」

「そっか。それなら、ポケモンはいけるかな?」

「それなら大丈夫。アシマリも、アマカジも楽しんでたから」

「ゲッコウガ、は、流石に無理だから。イワンコ、ロコン、出てこい!」

 

ボールから出てくるイワンコとロコン、飛び出してすぐに2体揃ってサトシの腕の中へとダイブしているあたり、仲良くなっているようだ。イワンコの首の岩を擦り付ける行為も、ロコンはその体毛のおかげか、特に痛がるそぶりもなかった。そしてその二体の隣、ピカチュウのいない方のサトシの肩に止まったのは、さっきまでリュックの中で寝ていたモクローだ。またすぐに眠りそうになっているその様子に苦笑するマオたち。

 

微笑ましい光景ではあるが、小柄なポケモンたちばかりとはいえ、こんなにもいると相当重いのに平気なサトシは相変わらず色々とおかしいようだ。

 

「みんな一緒には無理だから、順番。まずはピカチュウね」

 

楽しいバルーン乗り体験が始まろうとしていたそのとき、アマカジがくしゃみをしてしまった。くしゃみ自体は何の問題もないのだが、それがアマカジだったのがまずかった。そのはずみで甘い果実のような匂いが発せられたのだ。それに反応したのはモクローだった。匂いにつられるようにアマカジめがけて突っ込むモクロー。しかしそこはマオのアマカジ、すぐさま頭部の葉を回転させ、モクローを弾いた。

 

さて、ここまではいつも通りの流れだったのだが、運の悪いことにモクローがアシマリと激突してしまい、二体揃ってバルーンの中に入ってしまった。そこへ風が吹き、流されそうになるバルーンが、海から押し寄せた波の力を借りて、山の方まで飛ばされてしまったのだ。

 

 

・・・何を言っているかさっぱりわからないと思うが、事実ありのまま起こったことを整理した結果である。サトシたち4人もまた、この鮮やかとも言える一連の流れに完全に絶句し、しばらくあっけにとられて動けずにいた。バルーンが建物の向こうまで飛んで行った頃にようやく顔を見合わせ、

 

「「「「えぇぇぇぇぇえっ!?」」」」

 

驚きの叫び声がその海岸付近に響いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

急いで浜辺から道路へと出る4人。少し遠いところにバルーンが浮かんでいるのが見えた。しかしもう見えなくなりそうだった。

 

「くそっ、このままじゃ「行くよ」、へ?」

 

対策を立てようと考え始めたサトシの思考を中断させたのは、小さく発された言葉と腕に感じる圧迫感だった。顔を伏せ、表情が読めない状態のスイレンが、両手でサトシの腕を掴んでいたのだ。

 

「え、えっと、す、スイレンさん?」

「早く行くの!」

 

片手は話してくれたものの、もう片方の腕でサトシの腕をガッチリとホールドしたスイレンに引っ張られながらサトシはバルーンが飛んで行った方、街の方へと向かった。

 

「あ、ちょっと、スイレン?」

「サトシ、鞄を忘れていますよ!」

 

スイレンの様子にポカンとしていたマオとリーリエだったが、それぞれサトシとスイレンの鞄をを抱え、後を追いかけた。

 

「マオ、今のスイレン」

「うん、完全にスイッチ入っちゃってるね」

 

2人の視線の先では、サトシが躓きそうになりながら、スイレンに腕を引かれていた。スイレンのことが少し羨ましくありながらも、サトシに同情してしまう2人。もっとも、スイレンは割とすぐに冷静になり、腕を組んでいるその状況から、2人に対して若干の優越感を楽しむことになるのだが。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方、モクローとアシマリはというと、その後森の中へと落ち、そこでロケット団と遭遇してしまった。さらに運の悪いことに、輪っか状の新発明の装置が落下の衝撃でモクローの首回りにはまり、抜けなくなってしまったのだった。

 

アシマリの機転でなんとか逃げ出した二体だったが、ニャースとヒドイデによって追い詰められてしまうのだった。ヒドイデの毒の棘がアシマリに当たろうとしたそのとき、どこからか火球が飛んできて、ヒドイデを弾き飛ばしたのだった。

 

黒と赤の体毛に、鋭い目。二体の窮地を救ったのは、あのニャビーだった。ヒドイデとニャースを倒したニャビーに連れられ、アシマリたちは町の方へと向かった。

 

 

 

その頃、冷静さを取り戻したスイレンを先頭に、サトシたちは町へとたどり着いた。

 

「こっちの方に来てたのは確実なんだけど、」

「もうバルーンは割れてしまったようですね。アシマリたち、怪我をしていなければいいんですけど」

「アシマリ・・・うぅん、大丈夫。会える、絶対!」

「スイレンの言う通りだな。まずは手分けして探してみようぜ」

「でも、探すって言っても、大変だよ?何かいい方法はないかな?」

 

うーん、と4人は考える。そんな時、イワンコとロコンがサトシの足元で何か主張しているようだった。

 

「2人とも、どうしたんだ?」

『そうロト!イワンコもロコンも鼻がよくきくポケモンロト!』

「そういえば、本で読んだことがありました!人よりもずっと匂いに敏感で、匂いを頼りにものを探すのも得意だと」

「なるほど!イワンコ、ロコン。お前たちの力を借してくれ」

「シロンも、お願いします」

 

並ぶ三体。皆やる気満々のようだ。

 

『あとは、何かモクローとアシマリの匂いがするものを用意して、覚えてもらうロト』

「モクローの匂い・・・なら、俺のリュックだな。いつもここに入っているからなぁ」

 

リュックを地面に下ろすサトシ。三体はその周りに集まり、モクローの匂いを覚えようとする。さっきまでもその中で昼寝をしていたこともあり、とてもわかりやすかったようだ。

 

「アシマリの匂いは?」

「私の手、いつも抱っこしてたから。今朝もしていたし、残ってると思う」

 

モクローの匂いを覚えた三体はスイレンの手のひらからアシマリの匂いを見つけようとした。が、一様に首を傾げ、サトシの方を見た。

 

「えっ、何だ?」

『どうやら、スイレンの手のひらからは、サトシの匂いしかしないみたいロト』

「俺の?」

「あっ!」

 

ふと思い出すスイレン。先程までずっとサトシの手を握り、あまつさえ腕を組んでいたのだ。その時のサトシの匂いがアシマリのそれを上書きしているらしい。

 

「ど、どうしよう」

「落ち着けよ、スイレン。モクローとアシマリは一緒にいだんだ。きっと探せば一緒に見つかるよ」

「うん」

「みんな、モクローの匂いはわかるか?」

「アン!」「「コォン!」」

「じゃあ手分けしよう。俺はイワンコとロコン、リーリエはシロンに付くから、スイレンはリーリエたちと、マオは俺と来てくれ」

「うん」「わかりました」「オッケー」

 

サトシたちは匂いを頼りに、二手に分かれて捜索を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

夕暮れ時、サトシとマオ、スイレンとリーリエは合流した。残念ながらどちらも成果なしのようだ。というよりも、モクローたちも町のあちこちを巡っていたようで、匂いが色んなところからするのだ。時には匂いがぱたりと途絶え、また別の場所に突然現れることもあった。後にこれはアシマリがモクローをバルーンに入れて運んでいたからだと知る。特に驚きだったのは、何人かの女の子からも匂いがしたことだった。どうやらモクローと遊んでくれていたらしい。

 

この時最近注目のトレーナーとして密かに知られているサトシがその子たちに握手を求められていたことに、三人の心中穏やかじゃなかったのはここだけの話。その後も探していたか、一向にアシマリたちが見つかる気配がなかった。

 

「本当にどこ行っちゃったんだろう」

「もう大分日も暮れて来てしまいましたし」

「アシマリ、大丈夫かな」

 

やや落ち込んでいるようなスイレンにつられたのか、マオとリーリエもどこか不安げだった。が、

 

「大丈夫だって。モクローもアシマリも強いからな。きっと力を合わせて、俺たちのことを探してる。だから、俺たちも頑張って探そうぜ」

「サトシ・・・うん!」

 

サトシからの信頼に応えるべく、イワンコたちも気合いを入れ直した。と、ここでイワンコの鼻がモクローの匂いを捉えた。それも、まだ新しいものだ。一声上げ、走り出したイワンコ。その後を追ってサトシたちも駆け出した。たどり着いたのは高いビル。その屋上のあたりにモクローたちがいるらしい。サトシたちは急いで中に入り、屋上を目指した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

突如現れたロケット団によって、モクロー、アシマリ、ニャビーの三体は捉えられてしまった。突然のピンチに不安になるアシマリ。その反動で隣で呑気に寝ているモクローの頭をはたいてしまったのは、少しばかり仕方のない部分もあるだろう。そんなアシマリにニャビーは小声で耳打ちをする。

 

 

 

ニャビーの作戦でロケット団を油断させた瞬間、三体の反撃が始まった。ニャビーが彼らを捉えていた網を切り裂き、アシマリがバルーンでロケット団の動きを封じた。そこへモクローの全力の体当たりが決まり、宙に浮いた彼ら目掛けて、ニャビーのひのこ、アシマリのバブルこうせん、モクローのこのはが決まり、爆発する。

 

「この感じは、」

「ひょっとすると、」

「それではみなさん、ご一緒にニャ」

 

「「「やな感じぃ〜〜!!!」」」

「ソーナンス!」

 

 

ちなみにだが、はるか山の方へ飛ばされた彼らは、落下地点で待ち構えていたキテルグマにしっかりとキャッチされたのだった。

 

「「「何この感じぃ〜〜」」」

 

 

 

屋上にたどり着いたサトシたちには、謎の叫び声が遠ざかって行くのしか聞こえなかった。

 

「今のって何?」

「悲鳴でしょうか?」

「いや。多分、あいつらだな」

「ピーカチュ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

無事に再開できたことを喜ぶサトシたち。モクローの体についたままだった装置も無事にはずれ、これにて一件落着だった。

 

「ニャブ」

「ん?この声は、」

 

小さく、けれども確かに聞こえた声の方向へ顔を向けるサトシ。赤い夕日を背に受けながら、そのポケモンはサトシを見つめていた。

 

「あれって」

「ニャビー、だよね」

「あの時のニャビーでしょうか」

 

一歩前に出たサトシ。ニャビーの目をまっすぐ見てから

 

「ありがとな。2人を助けてくれて」

 

と、お礼を言った。フンス、と鼻を鳴らして応えるニャビー。

 

「ムーランドは元気か?」

「ニャブ」

「あ、ちょっと」

 

ヒラリと屋上の柵の向こうへと行ったニャビー。ビルの間を伝い、どんどんその姿は遠ざかって行った。その姿をサトシは笑顔で見送った。

 

「行っちゃったね」

「いいの?サトシ」

「いいんだ。きっとまた会えるさ」

「そうですね。サトシですもの」

「ふふっ、そうだね」

「うん」

「えっ、どういう意味?」

「いえいえ、お気になさらず。ふふっ」

 

にこにこ笑顔の三人に、サトシは首をかしげるだけだった。またいつか、サトシとニャビーは出会うのだろうか。それは、アローラの空のみぞ知る。お腹を空かせたみんなでアイナ食堂へ向かいながらも、サトシはその時に想いを馳せた。




もっとこう、バトルとかのシーンを書きたくなります

次回のエピソードは忙しかったらスキップしちゃうかもしれませんが、ご了承ください

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