サトシは流石ですね〜、まさしく理想のトレーナーとポケモンの関係って感じがしましたね、個人的には
ある日の晩、サトシたちが遅めに家に帰ってくると、家には誰もいなかった。留守番を頼んでいたはずのイワンコが、どこにも見当たらなかったのだ。
「あれ?イワンコはどこに?」
「どこかへお出かけしているのでしょうか?」
一先ず荷物をそれぞれの部屋に置くサトシたち。リビングに戻ったところに、丁度イワンコが帰って来たところだった。ところが、
「イワンコ、その怪我どうしたんだ!?」
『切り傷、擦り傷、火傷まであるロト!』
「足を庇っていますね。痛めたのでしょうか」
「ちょっと見せてみろ」
急いで治療するククイ博士。傷の数は多かったものの、深刻なものはそこまでなかったため、割とすぐに終わった。
「これで良しと。ちゃんと留守番してなきゃダメだろ?」
「あの、博士のモンスターボールに入れてあげればいいのでは?」
「あぁ、イワンコは俺のポケモンじゃないんだ」
「えっ?」
「じゃあ、野生のポケモンってことか」
『イワンコはとても人に懐きやすいポケモンロト』
「あぁ。ポケモンフーズをあげたらついて来て、それ以来って感じだ」
「へー」
ピカチュウやシロンと戯れるイワンコを見る。博士といるのが当たり前だったけど、まさか野生だったとは。少々驚いたサトシとリーリエだった。
翌朝、いつものように教室に集まったサトシたちは、昨日のイワンコのことをクラスメートに話した。
「ということがありまして」
「博士の手持ちじゃなかったのか。ずいぶん良く懐いていたからてっきり手持ちかと思ってた」
「俺もだよ。それで、どこかに行ったことなんだけど、何か心当たりとかないか?」
「でも、あたしたちはサトシたちほど近くで見てたわけじゃないし」
「秘密の特訓だったりして」
「あ、進化の予兆かもよ」
「進化?」
『イワンコは進化の時期が近づくと、気性が荒くなり、単独で行動するようになるロト。進化前に姿をくらまして、進化したら帰ってくる、というケースも確認されているロト』
「進化、か」
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授業が終わったサトシとリーリエはクラスメートに挨拶して、急いでククイ博士の家へと帰った。イワンコのことがどうにも心配だったのだ。そんな二人がドアを開けた時に、出迎えてくれたのは彼らの心配していた相手、イワンコ本人だった。サトシめがけてジャンプしたイワンコは、思いっきりじゃれついた。
「痛てっ、はは。出迎えてくれてありがとうな」
「イワンコの愛情表現は見ていると可愛らしいのですが、とっても痛いらしいですから。痛ければ痛いほど、愛が深いとも言いますし」
「そういうのも含めて、ポケモンと向き合うってことだな」
先に帰っていたらしい博士が声をかける。イワンコの様子がやっぱり心配だったのだろう。他に目何か準備したいものがあったらしいが、博士とイワンコが本当に仲がいいのだとサトシは感じた。
その晩、サトシたちは再び出かけることにした。イワンコに留守番を頼み、家を出たサトシたち3人は、すぐ近くにあった茂みに身を隠した。博士の手の中の携帯には、家の様子が映し出されていた。カメラを使って、イワンコの様子を確認することにしたのだ。
「今のところ、特におかしな様子はありませんね」
「さっきまでもいつも通りだったから、進化前に気性が荒くなるのとは違うと思うけど」
「おっ、二人とも。見てみろ」
画面の中に映るイワンコが何かに気づいたようで、彼のために用意された扉からそっと抜け出した。同時に目の前の家からイワンコが飛び出し、森の方へ走っていった。
「追いかけるぞ」
「「はい」」
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3人がたどり着いた先、そこには多くのポケモンが集まっていた。二つの大きな岩に立つ2匹のポケモン。片方は大型犬、片方は犬というよりも狼のような姿をしている。
『あれはイワンコの進化形、ルガルガンロト!それも真昼の姿と真夜中の姿の両方』
「何が始まるのでしょう」
「ここは爪痕の丘だな」
「爪痕の丘、ってなんですか博士?」
「そうだな。平たく言えばポケモンのための道場って感じだ」
「道場?」
「まぁ見てな」
博士が促す先を見ると、2体のルガルガンがバトルを始めていた。いわおとしを決めて、すかさずアクセルロックで追撃する真昼のルガルガン。真夜中のルガルガンはそこへカウンターで反撃する。2体のバトルに周りのポケモンたちも大いに盛り上がっていた。
「あの2体、半端ないな」
「野生のポケモン同士のバトルを見るのは初めてですが、トレーナーがいる時と同じくらい高度な駆け引きが行われているのですね」
2体が声を上げるのを合図に、他のポケモンたちもバトルを始めた。もちろん、イワンコもだ。イワンコが戦っている相手、ブーバーは多様なほのお技で他の挑戦者をも圧倒していた。
「ここで怪我をしていたんですね」
「ああ。けど、イワンコがここに来ているってことは、」
「強くなりたいんだ、きっと。もしかしたら、あのルガルガンたちのように強く。すごいな、あいつ」
何度目かもわからないブーバーの攻撃で吹き飛ばされるイワンコも。思わず飛び出そうとしたリーリエをサトシが止めた。その目は真剣にイワンコのことを見ていた。
家に戻って来たイワンコを、サトシたちは出迎えた。バトルで傷ついてはいたものの、元気な様子のイワンコは、彼らに気づくと、一直線に走って来た。
「おかえり、イワンコ」
「アン!」
「家に戻ったら、一度手当てをしましょう」
「そうだな」
「なぁイワンコ。もし良かったら、俺と一緒に特訓しないか?」
『特訓ロト?』
「さっきのバトルで、イワンコの首元の岩が光ってたんだけど、ルガルガンもそうだったから、もしかして技を使おうとしてたのかなって」
「そうですね、確かにあれは技の前兆だと思います」
「だからさ、俺と一緒にその技を完成させないか?絶対、あのブーバーに勝とうぜ!」
「アン!」
『どうしてサトシがそこまでするロト?』
イワンコはサトシのポケモンではない。トレーナーではない彼が、イワンコの特訓をする義務なんてどこにも無いし、責任もない。だというのに、サトシは自らイワンコと特訓がしたいと言った。
「なんか、こいつをほっとけないんだ。あんな真剣な目で強くなりたいって思ってるこいつを見たら、なんか、力になってやりたくて」
『力に?』
「わたくしも、精一杯お手伝いしますね」
「よーし、イワンコ。やろうぜ、特訓!」
「アン!」
サトシに飛びつき嬉しそうに首元の岩を擦り付けるイワンコ。それを眺めていた博士の目は、とても優しい目をしていた。
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翌朝から、サトシとイワンコの特訓が始まった。走り込みや、反復飛びなど、ピカチュウの素早い動きを活かした戦法を少しずつ教えていく。力を集約させ、技へと変えるためのコツを掴めるように、何度も繰り返して練習する。
『技を出すときさ、ピカチュウとこう、心がガーッって燃える感じがするんだ。だから、それが出来れば、きっとお前も技が出せるさ』
そうサトシは言った。その時の目がククイ博士にとっては印象的だった。ただ目線を合わせるだけじゃなく、もっと深く見ているような目。言葉からだけではなく、イワンコの奥底にある気持ちをちゃんと受け止めようとする姿勢。まっすぐにポケモンと向き合う彼の暖かさは、まるで日輪のようだった。
トレーニングは続く。筋トレや素早さの強化、足場の悪い中でどう立ち回るのが、地形をいかにして味方につけるのか。サトシの得意で特異な戦術をイワンコは着実にものにし始めていた。カキのバクガメスやリーリエのシロンにも協力してもらい、様々な状況や体勢での立ち回りを鍛える。
「よし、来い!」
サトシの声に反応し、イワンコの首が光り出す。尾の周りを岩が漂い、一斉に射出された。技の発動に成功したのだった。余談だが、この時自身を的にしていたサトシはその全てを受け切り、クラスメートたちに心配されるも、ケロリとしていて呆れと驚きの入り混じった表情を向けられていた。
その夜、今度は島に戻らなければいけなかったカキを除くメンバーで、イワンコを爪痕の丘まで見送った。離れた場所から様子を伺うサトシたち。イワンコが、またブーバーとバトルしようとしていた。
「頑張って、イワンコ」
「あんなに頑張ったんだもん、きっと勝てるよ」
「けどあのブーバー相当強いよ。大丈夫かな?」
各々が応援や心配の言葉をつぶやく中、サトシは食い入るようにイワンコを見ていた。
バトルが始まる。ブーバーはかえんほうしゃやほのおのパンチを駆使してイワンコに攻撃を仕掛ける。たしかに威力も高いが、カキのバクガメスほどではなく、早さもピカチュウとは比べるまでもない。周りの地形を生かし、攻撃を回避し、イワンコはブーバーに体当たりを繰り出した。その反動を利用して飛び上がったイワンコの首元が光り始める。
「あれは、」
「出るよ、いわおとし!」
「これで決めろ、イワンコ」
技の発射態勢に入るイワンコ。ところがそこへブーバーのかえんほうしゃが命中し、大きく吹き飛ばされてしまう。
「頑張ってください、イワンコ」
「ピィカ」
「大丈夫さ。あいつは凄い。絶対負けないさ」
空中で態勢を立て直し、着地したイワンコはブーバーへと向かった。ブーバーもまた、ほのおのパンチを発動し突っ込んでくる。飛び上がった両者が交差する瞬間、イワンコは空中で体をひねり、その拳をかわし、ブーバーの背後に回った。首元はすでに輝き、岩が舞っている。振り向いたブーバーめがけていわおとしが降りかかった。地面に叩きつけられたブーバー。立ち上がろうとしたところへイワンコの落下の威力をプラスした体当たりが炸裂し、目を回して倒れてしまった。
「よし!」
「やった!」
「イワンコが勝ったよ」
「ええ。とても素晴らしいバトルでした」
そのバトルの終了を告げるべく、月が綺麗な夜空へと、3つの咆哮が響く。真昼と真夜中のルガルガンたち、そして今回の勝者である、イワンコの声だった。
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マオたちを家に送り届けたサトシたちは、家に帰る前に、共に特訓していた海岸に来ていた。
「やったな、イワンコ。かっこよかったぜ」
「アン!」
尾を振りながらサトシにじゃれつくイワンコ。痛みを感じながらも、サトシはそれを優しく受け入れる。そこにいるのは、まさしく理想的なトレーナーとポケモンの関係、リーリエはその様子に少し憧れた。
「なぁ、サトシ」
「博士?」
「これは俺の勝手な考えなんだが、イワンコのこと、ゲットしないか?」
「へ?俺?でも博士の方がずっと一緒にいたんですよね?なら、博士の方がいいんじゃ」
「いや。今最もイワンコと向き合い、信頼し合っているのは俺じゃなくてサトシだ。お前はイワンコのために自分の時間を割くことを惜しまなかったし、誰よりも真っ直ぐに気持ちを受け止めていた。俺よりも資格があるのはお前だよ」
博士の真剣な目を見てから、サトシは腕の中に入るイワンコへと目を向ける。まるで期待しているかのような目をサトシに向けていた。
「ゲット、して欲しそうにしてますよ」
「ほら、サトシ」
「イワンコ、俺と一緒に行くか?一緒にもっともっと強くなろうぜ」
「アン!」
サトシが放ったボールめがけてジャンプするイワンコ。鼻でスイッチを押して中に入る。サトシの手の中に落ちたボールは音を立てて、中央のスイッチの光が消える。
「よーし、イワンコ、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
新たにイワンコを加えたサトシ。お互いに相手を思っている理想のポケモンとトレーナー、それを体現できる彼らの先を、しっかりと見ていたいと、決意するククイ博士だった。
さて、現在のサトシの手持ち
アニメではピカチュウ、モクロー、イワンコ
こっちではピカチュウ、ゲッコウガ、モクロー、ロコン、イワンコ
ヤベェ、もう5体いるじゃん!
この先のゲットとか考えたらどうしたらいいだろうか。