XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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シロン、ようやく登場です!
いやぁ、追いついた追いついた

今週休みでしたから、来週が待ち遠しいですなぁ


初めてのパートナー

ポケモンパンケーキレースの翌日、ポケモンスクールの教室は大慌てだった。その原因は、今日もリーリエが大事に持って来たタマゴだった。教室に着いた瞬間に、タマゴが光り出したのだ。

 

「これって、もしかして」

「あぁ。産まれる!」

 

固唾を飲んでみんなが見守る中、タマゴの殻が少しずつひび割れ、中からポケモンが姿を現した。白い体毛に6つに分かれた尻尾。水色の瞳を開いたそのポケモンは、リーリエを見て一鳴きした。

 

「コォン」

 

「う、産まれました」

「ロコンだったのか。でも、俺の知ってるのとは違うな」

「アローラのロコンだ。ラナキラマウンテンでよく見かけるらしいぞ」

『アローラ地方のロコンはこおりタイプ。マイナス50度の冷たい息を吐くことができるロト』

「こおりタイプ!?」

 

「おーい、みんな大変じゃヨーテリー!」

 

ポケモンギャグを言いながら、オーキド校長がククイ博士と一緒に教室にやって来た。その手にはサトシがカントーから連れて来たもう一つのタマゴが。そのタマゴもまた、光っていた。

 

「うそ、もしかしてそっちも!?」

「これは予想外だよ」

 

光が強くなり、タマゴが割れる。中から現れたのは赤い体毛に6つの尾、そして赤い瞳を持つポケモン。サトシを見たそのポケモンは元気よく鳴いた。

 

「コォン!」

「ロコンだ!こっちのは俺、よく知ってる」

「タマゴが孵るとこ、初めて見たよ。それも2つ!」

「うん、感動した」

「それにしても赤いロコンか、初めて見るな」

「確か、カントーのロコンはほのおタイプだったはずです」

「あぁ。だからアローラ地方のロコンがこおりタイプなのに、俺びっくりしたよ」

『同時に別の姿を持ってるポケモンが揃うなんて珍しいロト。データアップデートロト!』

 

どこか落ち着いた雰囲気の白いロコンと違い、赤いロコンは活発な印象を受ける。

 

「よろしくな、ロコン」

「コォン」

 

カントーのロコンは一緒に来たことをわかっているのか、早速サトシに懐いていた。頭を撫でられ、嬉しそうにするロコン。サトシはアローラのロコンにも挨拶をしようと手を伸ばしたが、

 

「コォゥン!」

 

勢いよく吐き出された冷たい息を浴びて、凍らされてしまった。それはもう綺麗なまでに。

 

「おぉっと、なかなか強烈なこなゆきだな」

「さ、サトシ!大丈夫ですか?」

 

心配そうな声を上げるリーリエ。当のサトシはというと、カントーのロコンのひのこで氷を溶かしてもらい、割とピンピンしていた。ところどころ焦げてはいたが。

 

「大丈夫、大丈夫。サンキューな、ロコン」

「コォン」

「いきなりすごい経験だね〜、マイナス50度とついでにひのこも」

「急に触ろうとしたから、驚いたのかも」

「そっか。ごめんな、シロン」

「サトシ、シロンって?」

「リーリエがこの子のこと、ずっとそう呼んでたから」

「へー、シロンか。いい名前」

 

謝るサトシに対し、そっぽを向いてしまうロコン。一方カントーのロコンはサトシの腕に擦り寄っていた。

 

「同じロコンでも、随分と性格が違うな」

 

ピカチュウたちと遊び始めたロコンと、机の上に座ったままそれを見下ろすロコン。かたや快活に遊び、かたや落ち着いている。一人でいる白いロコンを赤いロコンが誘い、ポケモンたちの輪の中へ連れて行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それで、これからどうするのかじゃが」

「あ、そっか。タマゴの観察はもう終わっちゃったんだ」

「このロコンたちはどうなるんですか?」

 

ニヤリと顔を見合わせる校長と博士。

 

「このままこの子達を育ててみるのがいいと、わしは思ったんじゃ」

「いいんですか?」

「うむ。本来ならわしがこのカントーのロコンを育てるつもりじゃったが、どうやらサトシをえらく気に入ったようじゃの」

 

オーキド校長の視線の先には屈み込んだサトシの腕に擦り寄うロコンの姿があった。

 

「どうじゃ?この子達を君達で育ててみるのは?」

「どっちの子とも一緒に居られるってこと?」

「それは面白そうだな」

「ってことは誰かがゲットしないとね」

「それなら、シロンはもう決まってるだろ」

 

立ち上がりながら言われたサトシの言葉に、ほぼ全員が頷き一人を見た。その本人はびっくりした顔をしている。

 

「わ、わたくし、ですか?」

「誰よりもずっとシロンを世話して来たのはリーリエだっただろ?リーリエ以外に考えられないって」

「そうだよ。あんなに一生懸命だったんだもの」

「うん。すごく頑張ってた」

「あぁ、間違いないな」

「僕もそう思う」

「ほら、リーリエ」

 

サトシがカバンから空のボールを取り出し、リーリエに渡した。ボールを見つめることしばし、リーリエはシロンへ目を向けた。

 

「シロン、わたくしのパートナーになってくれますか?」

「コォン!」

 

元気よく返事をするシロン。リーリエもその返事を受け、シロンをゲットすることに決めた。モンスターボールを勢いよく投げた・・・のはいいものの、緊張で目をつぶっていたため予想外の方向へ飛んでいき、サトシの頭にヒットした。

 

「サトシ、ゲットされた?」

「いや、スイレン?俺ポケモンじゃないから」

 

そんなおふざけ込みのやり取りの中、シロンは自らボールへ近づき、その中へと入った。ボールの中央の光が消える。シロンが無事にゲットされたということだ。

 

「自分でリーリエを選んだみたいだな」

「うんうん。良かったね、リーリエ」

「はい!シロン、ゲットです!」

「サトシの真似?」

「一度言ってみたかったので、つい」

「これで、リーリエもポケモントレーナーだな」

 

一連の流れを静観していた博士が、ふと口を挟んだ。

 

「さて、シロンはパートナーを見つけたわけだけど、もう1匹は誰が世話する?」

「そうだなぁ、カキは?ほのおタイプだし、上手くやれるんじゃないか?」

「俺もそうしたいとは思ったが、その様子だとな」

「へ?」

 

遊んだり、わちゃわちゃしたりとポケモンたちも自由にしている中でも、サトシのそばから離れなかったポケモンがいた。言わずもがなのピカチュウと、そしてロコンだった。今もサトシに構って欲しそうに足元でアピールしている。

 

「ほんと、すっごく懐いてるね」

「サトシらしい」

「まぁ正直なことを言うと、サトシらしいで納得できるのもどうかと思うけどね」

「そう言うお前だって納得してるんだろ?」

「ま、まぁね」

 

サトシだけがわかっていないようだ。ロコンが既に自分のパートナーにしたい相手を選んでいることに。シロンがリーリエを選んだように、ロコンもまた、彼を選んだのだ。

 

「ほら、サトシ。ゲットしてあげなよ」

「ロコン、俺と一緒に来るか?」

「コォン!」

 

サトシのその言葉に、待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに返事をするロコン。そっと差し出されたボールのスイッチを鼻で押し、ロコンもゲットされた。

 

「これからよろしくな。ロコン、ゲットだぜ!」

「ピッピカチュウ!」

『ゲットロト!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「二人とも、早く出して出して!」

「OK!出てこい、ロコン!」

「シロン!」

 

サトシとリーリエがボールを投げると、中から二体のロコンが現れる。ロコンは真っ先にサトシに駆け寄り、その腕の中に飛び込んだ。それをみたリーリエも覚悟を決めたようにその両手をシロンへと伸ばした。

 

 

 

 

 

 

しかし、やはり触れることができなかった。怖いわけではない。そのはずなのに、何故か体が強張り、無意識のうちに触れるのを拒絶してしまう。何故できないのか、理由もわからない自分の欠点に涙がにじむ。シロンもそんな様子のリーリエを見て、少し不安そうだ。

 

「わたくし、こんなことで、本当にポケモントレーナーになれるのでしょうか。こんなにも嬉しくて、こんなにも好きなのに、触れることすらできない。どうすれば皆さんのように、ポケモンと付き合えるのでしょうか」

 

リーリエの呟きに自分たちのパートナーと改めて見つめ合うカキたち。改めて言われてみると、どうしてるかは考えたことがなかった。いつもそばにいたから、考える機会がなかったのかもしれない。

 

なかなか上手くまとめられずにいたカキたち。そんな中、サトシがロコンをおろし、リーリエと同じ目線に合わせて屈み込んだ。

 

「俺はさ、たくさんのポケモンと出会って、たくさんのポケモンと仲良くなった。ケンカしたポケモンもいるけど、あとで仲良くなれたことも多かった。離れ離れになったポケモンだって、いっぱいいる。でもさ、それでも繋がってられるのは、俺たちが友達だからなんだよ」

「友達だから、ですか?」

「リーリエはシロンのことをすっごく大切に思ってるのはわかってる。だから、きっとその気持ちを忘れずにいれば、リーリエもすぐにシロンに触れるようになるさ」

「そう、なのでしょうか」

「そうさ。そうすれば、きっと大丈夫」

 

そう言いながら、サトシはシロンへと手を伸ばした。さっきのように氷漬けにされることはなく、シロンはサトシの手を受け入れた。ロコンとは少し違うその感触を感じながら、サトシはシロンを撫でた。シロンも最初の時のような冷たい態度は全く感じさせなかった。

 

「こうやって、友達になっていけばいいんだよ」

「わたくしも、できますでしょうか?」

「出来るさ。リーリエなら絶対」

 

 

 

その日の授業、珍しくリーリエはあまり集中できず、その様子をマオが心配げに見つめていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

放課後、先に帰ったカキ、スイレン、マーマネとは別に、マオはオーキド校長と話をしているサトシとリーリエを待っていた。ロコンたちを正式に引き取ることについて話しておきたいと校長が呼んだのだ。二人が建物から出て来るのを見かけたマオは大きく手を振りながら駆け寄った。

 

「サトシ、リーリエ!」

「マオ、どうしたんだ?」

「忘れ物でもしたのですか?」

「ううん。二人のことを待ってたんだ」

「俺たちを?」

「うん。せっかくだからうちに来ないかって誘おうと思って」

「あの、わたくしは今日はちょっと」

「どうして?」

「今日はシロンと二人で散歩をして帰りたいと思いまして」

 

隣に並んでいるシロンが返事するように声をあげる。タマゴの時はほとんどいつも一緒にいたとはいえ、お互いのことをちゃんと知っているとはいえない。だから、少しでもお互いのことを知れるようにとのことだった。早速リーリエとシロンは町の方へ歩いて行った。

 

「じゃあ俺、これから特訓するから、」

「ほら行くよ、サトシ!」

「えっ?」

 

反対方向へ向かおうとしたサトシのカバンを掴み、マオも町の方へ向かった。

 

「ちょっ、マオ?どこ行くんだ?」

「決まってるでしょ。リーリエを追いかけるの」

「えっ、ちょっ、転ぶ!転ぶからカバン離して〜」

 

マオに連れて行かれるサトシ。ことリーリエの話になると世話焼きなマオの様子に、マオはリーリエのお姉ちゃんみたいだなぁと思っていたとか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あちこちを一緒に巡るリーリエとシロン。その間には確かに絆が生まれ始めているようで、サトシもマオもほっこりとした気分でそれを見守っていた。

 

「うまく言ってるみたいだね」

「あぁ。マオは本当にリーリエのことを大切に思ってるんだな」

「あたしってばついお節介になっちゃうってゆうか、なんかほっとけなくなるんだよね。時々余計なことしたかもって思うこともあるし」

「でも、リーリエもマオの優しさはわかってると思うぜ。リーリエも、マオのこと大好きだと思うから」

「そうかな」

「そうだよ」

 

顔を見合わせてふふっと笑う二人。しかしこのとき完全に気をそらしてしまったため、視線を戻すと、リーリエとシロンはどこかへ消えてしまっていた。

 

「わわっ、見失っちゃった!」

「よーし、モクロー!リーリエたちを探してくれ!」

 

サトシはボールからモクローを出して空から捜索を頼んだ。しばらく辺りを見渡していたモクローだったが、リーリエたちを見つけたのか移動し始めた。

 

「モクロー、見つかったのか?」

「追いかけよう!」

 

モクローの後を追う二人。ある地点でモクローはその上空を回るように飛んでいた。

 

「モクロー?」

 

サトシの下まで降りてくるモクロー。その足は立派に育って美味しそうなきのみがしっかりと掴まれていた。

 

「いや、あのなぁ。まぁ美味しそうなきのみだけど、目的、完全に忘れてないか?」

「クロ?」

「あー、まぁいいか。良かったな、モクロー」

 

優しく頭を撫でてあげてから、サトシはモクローがリュックの中に潜り込むのを笑顔で見ていた。

 

「サトシ、どうする?」

「よーし、ゲッコウガ、君に決めた!」

 

別のボールから出てきたのはゲッコウガ。しかしゲッコウガでどうするのだろうとマオは首をかしげる。

 

「ゲッコウガ、リーリエたちを上から探せるか?」

「コウガ!」

 

飛び上がり、少し高めの建物へと登るゲッコウガ。そこから辺りを見渡し始める。

 

「よし、あとは」

 

目を閉じるサトシ。疑問符を浮かべるマオをよそに、サトシはゲッコウガへと意識を向ける。ゲッコウガもまた、サトシへと意識を向けた。閉じられたはずのサトシの目に、少し高めの視点から町が見える。ゲッコウガの見ているものが今の彼には見えているのだ。視界の端に白いものが見える。見るとリーリエたちがロケット団に追われているようだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ロケット団によって壁まで追い詰められたリーリエとシロン。逃げ場はなく、コジロウのヒドイデの攻撃があたり、シロンが吹き飛ばされてしまった。

 

「シロン!」

 

その姿にリーリエの息が詰まった。このままでは大好きなシロンが。そう思ったとき、もう体は動き出していた。壁を乗り越え、手を伸ばし、地面にぶつかろうとしていたその白い体をギュッと抱きしめた。地面にぶつかる衝撃に備え目を瞑る。

 

「モクロー、このは!」

 

突然あたりに木の葉が舞い上がり、リーリエたちを地面からすくい上げる。その体を誰かが抱きとめてくれた。

 

「大丈夫、リーリエ?」

 

近くからマオの声がする。心配そうに覗き込むマオを見て、リーリエは自分を受け止めてくれたのがマオだとわかった。

 

「ありがとう、マオ。そうだ、シロン!大丈夫ですか?」

「コォン」

 

元気そうに返事をするシロンに、リーリエは安堵の表情を浮かべた。その直後にハッとする。自分は今、シロンを抱き抱えているのだ。ポケモンに、触っているのだ。夢ではないことをこの腕の中の暖かさが告げている。ポンっとシロンとリーリエの頭に手が置かれる。サトシが笑顔で二人の頭を撫でた。

 

「よく頑張ったな、二人とも。後は任せろ」

 

サトシとゲッコウガが並んでロケット団を見据える。するとリーリエ腕の中からシロンは飛び出し、サトシたちの横に並び、戦う意思を示した。

 

「シロンも戦いたいのですか?」

「コォン!」

「リーリエ、一緒にやろうぜ」

「はい!お願いします、シロン!」

 

「げげっ」

「なんだか嫌な予感が」

「これはやばいニャ」

「ソーナンス」

 

「ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

「ゲッ、コウガ!」

 

二つのみずしゅりけんを投げるゲッコウガ。その二つはロケット団目掛けて左右から迫り、その目の前でぶつかり合い弾けた。

 

「やーい、どこ狙ってんのよ」

「腕が落ちたんじゃないか?」

「これはチャンスニャ!」

 

「リーリエ!」

「はい。シロン、こなゆきです!」

「コォォン!」

 

渾身の力でこなゆきを放つシロン。先ほどのゲッコウガのみずしゅりけんが弾けて降り注いだため、ロケット団は濡れていた。そのため一瞬で凍りついてしまった。先ほどのみずしゅりけんは外れたのではなく、あえて外したのだ。

 

「よーし、後はピカチュウで「キーッ!」っ、なんだぁ?」

 

甲高い咆哮とともにキテルグマが再び現れた。氷漬けにされたロケット団を抱えると、とんでもない跳躍で森へと帰って行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「シロン!やりましたね」

「おめでとうリーリエ!私もすっごく嬉しいよ」

 

感極まってリーリエに抱きつくマオ。リーリエの腕の中のシロンが少し苦しそうだ。しばらくしてマオが離れると、リーリエはサトシの方を見た。優しい笑顔で見ていてくれている彼に、リーリエは伝えなければと息を整えた。

 

「サトシ。わたくし、出来ました!」

「あぁ。すごいぜ、リーリエ!シロンも良かったな」

「コォン」

「ありがとうございます、サトシ」

「えっ?俺は何もしてないよ」

「いいえ。サトシの言葉が後押ししてくれました。確かに、ポケモンに触れるのは怖いです。でもそれ以上に、シロンともっと一緒にいたいと思いました。大切に想う気持ちがあったから、あのとき踏み出せたんです。だから、ありがとうございます!」

「本当に何もしてないんだけどなぁ。それよりリーリエ、シロンも触れるようになったんだ。きっとすぐに全部のポケモンにも触れるようになるさ。頑張ろうぜ!」

「はい!」

 

後日、アイナ食堂では2匹の色の違うロコンが仲良さげに遊んでいたとのこと。そして白い方のロコンが飛び込む先で、同じように白い少女の温かい腕が迎え入れていたとのことだった。




ようやくピカチュウとゲッコウガがレベル100になったよ、意外と大変だった。リーグ何回挑戦し続けたことか

でも、このままだとバトルツリーでは勝てない気がするんですよねー

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