XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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カキさんのエピソードですね

このシスコンめ、気持ちはわかるが


アーカラの炎

珍しく早起きなサトシ、それも休日であるというのにだ。大試練を突破し、今はノーマルZとデンキZを手に入れ、朝からZ技の特訓をしていたのだ。博士たちが見守る中、ZリングにノーマルZをセットする。

 

「よーし、行くぞモクロー!」

「クロッ」

「いっけぇ!ウルトラダッシュアタック!」

 

勢いよく飛び出したモクローが海に飛び込むと、その衝撃で波が割れ、乾いた陸の道が一時的にできた。しかしZ技を使ったモクローは、特訓を始めたばかりであったのに疲れ果ててしまった。

 

「モクロー、大丈夫か?」

「Z技はポケモンの体力を大きく使うからな。特訓すればするだけ、負担も減っていくはずだ。今はまだ一発撃つので精一杯みたいだけどな」

「そうなんですか」

「しかし、サトシの方は元気だな?普通Z技を使った後はトレーナーもそれなりに激しい疲れを感じるものなんだが」

「うーん、ピカチュウたちと一緒にトレーニングしてきたから、体力は結構あると思います」

「なるほどね。今までの旅の経験があるからこそ、かもしれないな」

「へへっ。ん?あれは」

 

ふと空を見上げると、見覚えのあるポケモンと少年が空を飛んでいるのが見えた。少し羽がボロボロになってはいるが、そのリザードンは安定した飛行をしていて、かなり鍛えられていたことがわかる。

 

「おーい、カキ、アローラ!」

「ん?サトシ、アローラ」

 

サトシたちの前に降り立つカキとリザードン。配達の途中だったようで様々な容器を持っていた。中にはとれたてらしいモーモーミルク。空の容器があるのを見る限り、既にいくつかの家をめぐっていたのだろう。

 

「早いな、カキ。今日も配達か?」

「はい。俺の日課でもありますから」

「カキの家って牧場なんだっけ?」

「あぁ。ミルタンクやドロバンコ、ケンタロスが大勢いる。そこでいろんな製品も作ってる」

「へ〜。なぁ、俺もその牧場に行ってもいいか?」

「俺は構わないぜ。とりあえず配達が終わってからだな」

「なら、俺も手伝うぜ」

「いいけど、お前空ライドポケモン持ってたか?」

「ふぅ。俺がライドポケモンを手配してやるよ。行ってきな」

「せっかくの休日ですから、特訓以外のこともするといいですからね」

「ありがとうございます博士」

 

こうしてサトシは空ライドポケモンのペリッパーにまたがり、カキとともに配達の仕事へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

無事にメレメレ島での配達を済ませたカキたちは続いてはカキの家があるアーカラ島へ向かった。赤く燃えるヴェラ火山を見ながら向かった家で、サトシはハルと呼ばれる少年と出会った。明日が母親の誕生日だというハル。そのハルとカキのやり取りを見て、カキがかなり慕われているのだということを、サトシは改めて認識した。スクールでも自分よりも年下の生徒たちの面倒をよく見ているのを見かけるし、サトシとは別の意味でいいお兄さんだった。

 

ついにやってきたカキの家がやっている牧場は広く、サトシはその大きさに驚かされた。敷地の範囲はオーキド博士の研究所と同じくらい、もしかしたらそれ以上かもしれない。そのあちこちにポケモンがいるのが見える。ケンタロスやミルタンクはサトシも見おぼえがあり、ここにいるケンタロスたちもとてもよく育っているのがわかる。

 

「すっげぇ空気がおいしい。牧場の香りがするな」

『ドロバンコがいっぱいロト!』

 

馬のような姿をしたポケモン、ドロバンコ。初めて見る彼らに興味を持ったサトシ。草ではなく土を食べて自身の力とすることに驚くサトシだったが、その直後にドロバンコのくしゃみによって泥を浴びてしまうこととなった。

 

「そうだ、サトシ。あんまりドロバンコに近寄ると泥がかかる・・・って遅かったか」

「あぁ、うん。もう経験しちゃってま~す。ははは・・・」

 

パサリと頭にタオルが乗せられる。カキに似た朗らかな女性がいつの間にか近くまで来ていた。カキの母親である。このヴェラ火山の影響で育った牧草とその土。それを食べる牧場のポケモンたち。そしてそのポケモンたちのおかげでおいしいミルクが取れ、自分たちは自然やポケモンへの感謝を込めて祈りや供え物を守り神へささげる。一種のサイクルが出来上がっているのだ。

 

「あたしたちとここのポケモンたちは、この自然と強く結びついているのさ」

「自然と・・・強く」

「だから、いい顔してるだろ?うちポケモンたちは」

「はい!」

 

「なん・・・だと!?」

 

突然カキが切羽詰まったような表情で駆け出した。何かあったのかと思い急いでサトシもその後を追う。と、カキがミルク用のタンクを抱え、一人の女の子の無事を確認していた。が、その女の子はどうやらご立腹のようだ。

 

「大丈夫か!?」

「大丈夫だもん。ホシ、これくらいひとりでできるもん」

「ダメだ。こういう危ないことは、兄ちゃんに任せろ」

「もー本当に過保護なんだから!あなたもそう思うでしょ!?」

「えっ!?」

 

唐突に話を振られたサトシ。流石に状況が全く読めてないため曖昧に笑ってごまかすことしかできなかった。

 

「あはは・・・で、君は?」

「俺の可愛い妹、ホシだ。仲良くしてくれよな」

 

そう言い残してミルクタンクを担いだまま、カキはどこかへ行ってしまった。とりあえず自己紹介するサトシ。ピカチュウは褒められて上機嫌だった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数分後、何か手伝うことはないかとサトシが聞くと、カキの母親が早速仕事を与えてくれた。ドロバンコの体を洗う作業だ。まずはカキの手本を見る。リズムよくブラシで体を洗ってあげるのがコツとのこと。早速サトシも試してみたが、

 

「あれ?毛が思ったより硬い、な」

 

初めはなかなか上手くいかない様子だった。それでもドロバンコの様子を確認しながら試行錯誤をすること数分、ようやく力加減やリズムを掴んできたサトシだった。

 

「ふぅ、こんな感じかな。気持ちいいか、ドロバンコ?」

「ブルル」

『とっても気持ち良さそうロト』

「流石にコツをつかむのが早いな」

「へへっ、サンキュー。よーし、終わりだぞドロバンコ」

 

お礼のつもりなのか、かがみこんでいたサトシの顔に自身の顔を寄せ、少し頬ずりしてからドロバンコはかけて行った。

 

「まだまだ仕事はこれからだからな、ついてこいよ」

「OK!やるぞ〜!」

 

その後他のポケモンたちの体を洗ったり、干し草を運んだりと様々な仕事を手伝うことになったサトシ。力仕事も多く、日が暮れる頃には流石に疲れていた。

 

「はー、疲れたぁ」

「お疲れ。ご飯の時間だよ。博士には連絡してあるから、今夜は泊まってきな」

「ありがとうございます」

 

夕飯時、並べられた食事にお腹がペコペコなサトシはすぐに手を伸ばそうとしたが、カキが待ったをかけた。

 

「食事の前に、ヴェラ火山に祈りを捧げるんだ」

「祈りを?」

「今日も1日見守ってくれてありがとうってね。さぁ、みんなで」

 

目を閉じ山に意識を向けるカキの家族につられて、サトシも深呼吸して瞳を閉じた。風の音、草の音、生き物の動く音。そしてテーブルを明るく照らす火の音が聞こえる。自然と一つにある。なんだか少しわかった気がしたサトシだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その夜、サトシが眠ろうとしていると、外が騒がしいのに気づいた。外へ出ると、カキとバクガメスがまさに特訓の最中だった。

 

「こんな遅くに特訓してるのか?」

「朝は早くから配達。学校や家の牧場を手伝い、夜は技を磨く。これが俺の日課だからZリングを持つものとして、ポケモンやアローラの島々を愛し守るものとして。爺ちゃんに言われてずっとそうしてきた。このZリングも爺ちゃんの形見なんだ」

「もしかして、島キングだったのか?」

「あぁ、昔のな。このリザードンが相棒だったんだ」

「へぇー」

「爺ちゃんのZリングを受け継ぐために、俺とバクガメスは島クイーンのライチさんの大試練に挑んだ。そしてその試練を経てリングを手に入れた」

「そっか。すごい人だったんだろ?カキの爺ちゃん」

「まぁな。昔よく言っていた。命を破壊する炎ではなく、ヴェラの山の炎のように命を育む炎になれってな」

「そういえば、カキがZ技使った時も言ってたな。アーカラの山のようにって」

「あぁ。それこそが俺の目標だからな。さて、そろそろ寝るか。明日は朝一でハルのところへ配達だからな」

「俺起きれるかなぁ?」

「安心しろ。しっかり叩き起こしてやる」

「お手柔らかに頼むよ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

翌朝、しっかりとたたき起こされることになったサトシは再びペリッパーにまたがった。カキの家族に見送られながら、サトシとカキは出発した。余談だが、出発の際にホシが手伝おうとしたのをみたカキが原因でみんな揃ってピカチュウの電撃を浴びたり、カキがホシに対して普段からはとても想像できないほどデレ~っとした表情を見せたりとあったが、それはまた別の話。急いで空を飛ぶリザードンとペリッパー。順調にいけば間に合う、そう安心していた二人だった。が、突然地上からの攻撃でペリッパーが傷つき、サトシたちは地面へ落ちてしまった。サトシたちに攻撃を放ったのは、

 

「お前たち、スカル団!」

「そう、泣く子も泣かせるスカル団だ」

「お前たちにはしっかりと借りを返してやるっす」

「どけ!お前たちの相手をしているほど、俺たちは暇じゃない」

「どうしても通りたいなら、その荷物を置いていけば?」

「お前たち、いい加減に」

「カキ、ここは俺たちに任せろ。いくぞ、ピカチュウ!」

「ピカ!」

 

腕のZリングにデンキZをはめる。あの日以来、まだ一度も使っていなかったこの技。こんどこそ、成功させて見せる!そう意気込む二人は同時に動いた。

 

「これが俺たちの、全力だぁ!スパーキングギガボルト!」

 

巨大な電撃のやりが打ち出され、スカル団の出していたポケモンへ直撃した。大きな爆発とともに電撃の柱が地面から空へ伸びていく。目をまわしてしまった自分たちのポケモンを回収すると、スカル団は大慌てで逃げて行った。バトルという名の制裁を終えたサトシは急いでペリッパーのもとへ駆け戻ると、翼の手当てを始めた。

 

「物にしたみたいだな。Z技」

「あぁ。カキのおかげでもあるよ。試練の時は助かった。ありがとう」

「いや。最終的に成し遂げたのはお前だ。誇っていい」

「へへっ。とにかく急ごう!ハルが待ってる」

「そうだな。行くぞリザードン!」

「ペリッパー、もう少しだけ頑張ってくれ。すぐにポケモンセンターに連れて行くからな」

 

 

 

その後、無事にハルのもとへ配達を遂げたカキとサトシ。スカル団のせいで少しばかり遅刻してしまったが、ハルには何とか許してもらえた。その代わりに、ハルは二人のバトルが見たいと頼んできた。もともとサトシもカキもお互いにバトルしたいと思っていたこともあり、二つ返事で引き受けた。ハルとその家族が見守る中、バクガメスとピカチュウのバトルが始まった。その様子に近所の人たちも集まりだし、実力者で知られるカキと互角に戦うサトシが、アーカラ島でも注目を浴び始めることとなったのは、また別の話。




結局アニメではバトルシーンカットでしたね

実際のカキのバクガメスってどんな技使うのだろうか

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