物語のストックはあります。けど、思い出した時とかなんとなく今かな?と思った時にこっちに載せますね
「あ~、びっくりした。なんだったんだ、あいつ?」
息を切らしながらつぶやくサトシ。あの後、アゴジムシを見失ったサトシとピカチュウは、また別のポケモンに出会った。ピンクの体に黒い手足。まるで着ぐるみのようにかわいいそのポケモンとも触れ合おうと、サトシは近づいた。ところがこのポケモン、キテルグマ。かわいい見た目に反してかなりの怪力を持ち、アローラ地方では危険指定までされているほどである。それを知らないサトシたちが近づいたのだからさぁ大変。木をもへし折るその腕から逃げるために、サトシとピカチュウは全力で走ることとなったのだ。
「はぁはぁ、ん?あれは?」
ふと、サトシは空を飛ぶ影に気付いた。尾から真っ赤に燃える炎を放ち、優雅に空を飛ぶそのポケモンは、サトシにとってはなじみ深いものだった。
「リザードンだ!よーし、ピカチュウ。追いかけようぜ!」
「ピッカチュウ!」
リザードンを追いかけて森を進むことしばらく。森を抜けたサトシたちの目に入ったのは大きな建物に、たくさんの自分とそう変わらない歳の子供たち、そして彼らとともにいるポケモンたちの姿だった。
「なんだ、ここ?おっ?」
サトシの目に入ったのは運動場のような場所にいる青いポケモンだった。他にも2匹、見たことのないポケモンがいたが、その青いポケモンは先ほど見たばっかりである。
「アシマリだ!それに、他にも見たことないポケモンがいる!」
一気に元気が出たサトシは柵を乗り越え、ポケモンたちに会いに行こうとフィールドを横切ろうとした。と、それに気づいた一人の少女。
「気を付けて!」
「えっ?」
その子の声でふと立ち止まるサトシ。横から何かが来るような音がしたため、そちらへ顔を向けた。三頭のケンタロスが、競い合うかのように走ってきていたのだ。ケンタロスの持つ突進力をおそらくは誰よりも知っているであろうサトシ。このままではまずいと本能が告げていた。隣にいたピカチュウを抱き上げた彼は、トラックの外、グラウンド中央にある芝生に向かってダイブした。土埃が上がり、ケンタロスたちはその場を通り過ぎて、
「ストーップ!止まって、ケンタロス!」
そのうち一頭にまたがっていた少女の声で止まった。土煙が晴れるとそこには、
「ふーっ、危なかった~。大丈夫か、ピカチュウ?」
「ピカ!」
何とか無事にケンタロスたちを躱すことができたサトシたちがいた。多少砂が服にかかってしまったようだが、それ以外は特にダメージも見られない。先ほどサトシに声をかけた少女、白に近いブロンドの髪に、白い肌。真っ白な帽子に、これまた白い服を着た少女が駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
「あぁ、平気平気。ケンタロスの突進には慣れてるんだ。一度ゲットしたこともあるし、走ってるのなんて日常茶飯事だったし」
「そうですか・・・はっ、きゃっ!」
一瞬安堵の表情を向ける少女。が、サトシの様子を確認しに来たケンタロスが近づくと、小さな悲鳴を上げサトシの後ろに隠れてしまった。肩に置かれた手には力が入っていて、サトシには彼女が何かしらの緊張状態にあることが分かった。ケンタロスが苦手なのだろうかと思いきや、サトシのピカチュウがのぞき込んでみると、また小さな悲鳴を上げ少し離れた。彼女の様子を見ながら、サトシはその行動が昔会ったことのある、とある少年に似ているように思った。
「もしかして、ポケモンが怖いのか?」
「こ、怖くはありません!ポケモンは大好きです!・・・学びの対象としては」
最後だけやや小さめの声で少女は言った。そこへほかのケンタロスたちに乗っていた少女たちもやってきた。
「ごめんね。突然森から飛び出してくるんだもん。止まれなくって」
「大丈夫。この通り、なんともなかったんだし!むしろ俺のほうこそごめんな。ケンタロスたちにも迷惑かけちゃったし、ケガとかはなかった?」
「あ、ううん。大丈夫だよ。私たちも、ケンタロスたちも」
「そっか、それならよかった。ごめんな、ケンタロス」
近くまで来たケンタロスたち一匹一匹をなでながら謝るサトシ。自分が30匹もゲットしていることもあって、ケンタロスたちがどこを撫でられるのが好きかを感覚でわかるようになっていた。目を細めてうれしそうな表情をするケンタロスたちを見て、少女たちは驚きの表情を浮かべた。さっきまで少し離れたところにいた白い少女もサトシの背中の後ろからのぞき込むように見ている。
「ブモォ~」
「わぁ、ケンタロスたちがこんなに気持ちよさそうにしてるの、初めて見るよ」
「ぼくも」
「わたくしもです・・・どうやってこんな」
「俺、ケンタロスゲットしたことがあるって言っただろ?あいつらを撫でてたから、なんとなくどこが気持ちいいのかがわかるんだ」
「すごいです!初対面のポケモンのはずなのに・・・」
「君も試してみたら?ほら」
そういって後ろにいた少女に手を差し伸べるサトシ。しかし彼女はその手を見て、サトシの顔を見て、ケンタロスを見て、また手を見てを繰り返すだけだった。その様子を見ていた一番背の低い少年がサトシに声をかけた。
「リーリエはね、ポケモンに触れないんだよ」
「触れます!論理的結論として、わたくしがその気になりさえすれば・・・」
少しむきになったような調子でリーリエと呼ばれた白い少女が反論する。
「大丈夫。焦らなくても、いつか触れるようになるよ」
「そうそう」
ツンとした表情になったリーリエに二人の少女が励ますように声をかける。一人はケンタロスに止まるように声をかけた少女、すらりと高い背に褐色色の肌、やや緑がかったか長い髪を二つに結んでいる。そしてもう一人、リーリエよりもやや低い背に青っぽいショートヘア、腕にはアシマリを抱えていて・・・
「あ~!君確か、海で釣りをしてた・・・」
サトシがサメハダーと一緒に海で遊んでいた時にであった少女だった。どうやらあちらも気づいたようで、
「あっ、サメハダーと一緒にいた」
と声をもらしていた。
「スイレンの知り合い?」
「ううん。今日釣りしてた時に偶然・・・」
「俺はサトシ。カントーのマサラタウンから来たんだ。相棒のピカチュウと一緒に、ポケモンマスター目指して修行中なんだ」
「ピカ、ピカチュウ!」
「あたし、マオ、よろしくね。この子は仲良しのアマカジ」
「カ~ジ~」
「スイレンです。この子、友達のアシマリ」
「シャマ!」
「僕はマーマネ。で、こっちはトゲデマル」
「マル!マル!」
「わたくしはリーリエです。よろしくお願いします」
「よろしくな!で、ここってどこなんだ?」
「どこって・・・ポケモンスクールよ」
偶然にしてはできすぎている。しかしサトシとピカチュウは気づかぬうちに当初の目的地、オーキド博士のいとこがいるというポケモンスクールにたどり着いていたのだった。
「ポケモンスクール!?ここがそうなのか」
大きな建物は校舎、このグラウンドや奥に見えるプール、上から下へ降りるための大きな滑り台、そしてあちこちにいるポケモンたち。サトシが旅に出る前に通っていた学校と比べると、人もポケモンもより楽しく過ごせるために作られているように見える。
「もしかして、迷ってた?」
「あはは、うん。そうなんだ」
「じゃあ、あたしが案内するね」
「案内?」
「うん!」
そういってマオはサトシの手を取って校舎へ歩き始めた。もともと姉御肌なのだろう、サトシとあってまだ数分なのに友好的に接してくれている。一方、同じくらいの年の女の子に手を握られた我らがサトシはというと、内心ドキドキしながら・・・なんてことはなく、「カロスでの旅では自分が腕を引いてもらうことはそんなになかったな」だとか、「たしかカロスリーグの登録するためにセレナがバトルを止めてくれた時に引っ張ってもらったっけ?」、なんてことを考えながらサトシはされるがまま、マオに引っ張られていった。
相も変わらず、恋愛ごとに関しては成長が見られないサトシであった。
皆様、今日はしっかりと体調に気をつけて、気持ちよく新年を迎えましょう!