XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

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オリジナルエピソードその2
スイレンメインの後日談?的なのですかね

大人なサトシくん、全開です
自己解釈などありまくりです


サトシの夢

その日の夕方、再びサトシはスイレンの実家へお邪魔することとなっていた。釣竿を返すついでに、せっかくだから一緒にご飯をとスイレンに誘われたのだ。ちょうどホウとスイとも一緒に遊ぶ約束をしていたサトシは二つ返事で了承した。今日、大活躍したアシマリはというとあの後褒められたのがよっぽどうれしかったのか、海で沢山遊び、疲れてしまったようで、今はスイレンの腕の中で寝ている。ピカチュウも、さすがに疲れたらしく、サトシの肩に乗りながら眠ってしまっている。

 

 

「今日のアシマリ、大活躍だったな」

「うん。サトシ、信じてくれてありがとう」

「え?」

「あんなに大きなバルーン、今まで練習でも一度だってできたことがなかったのに、サトシは私たちを信じてくれた。だから、あんな風にポケモンたちを助けようとしたんでしょ。だから、ありがとう」

「そんなことないさ。あんなに練習していたんだ。絶対にできると思ってただけだよ」

 

 

あの後の釣り、スイレンの次に沢山ポケモンを釣ることができていたのは、サトシだった。一体一体挨拶をして、名前を呼んで、優しくなでてくれる彼に、ポケモンたちも惹かれたのか、サトシの周りには気づけばたくさんのポケモンたちがいた。ライドポケモンのラプラスやホエルコも感謝の気持ちを表そうとスイレンとサトシにすり寄っていた。その様子を見たクラスメートは

 

 

「なんだかあの一角だけ、ポケモン密度高いね」

 

 

とうらやましいような微笑ましいような気持ちになったそうだ。

 

 

「けど今日は楽しかったな~」

「サトシ、釣りうまいね」

「何回か挑戦したことはあったからな~。でもこんなに釣れたのは初めてだったかな?」

「そうなんだ。サトシはポケモンに好かれるんだね」

「そうかな?スイレンだってすごかったじゃないか。あんなに一杯友達になっててさ」

 

 

二人並びながらの帰り道は、話題が尽きず、楽しいものになっていた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「あ~、お前あのときの!」

 

 

突然声をかけられて驚く二人。視線の先にはスカル団の連中、5人が立っていた。そのうち一人が指をさしてるのはスイレンだった。

 

 

「な、なんなの?」

「あのとき、よくも氷漬けにしてくれたな?」

「まさか、覚えていないって言うんスカ?」

「っ、アシマリをいじめてた」

「あん?その腕の中のやつ、あのときのアシマリスカ?」

「ちょうどいい、ここで恨み晴らさせてもらうぞ。いけっ、アリアドス!」

 

 

5人がポケモンを繰り出す。アリアドス、ニューラ、ヤング―ス、オニスズメにアゴジムシがスイレンと腕の中のアシマリを狙うように囲む。対するスイレンは相手に対する怒りが頂点に達していた。しかし現在彼女の手持ちはアシマリだけ。ラプラスたちは博士が家に連れて帰っておいてくれると言っていたため別行動中。今の彼女に打つ手はない。彼女には、だが。

 

 

ポン、と肩に置かれた手に怒りが少し収まる。サトシがスイレンを自身の後ろに庇うようにその体を引いた。

 

 

「ここは、俺たちに任せろ」

 

 

彼はモンスターボールを手に彼女にそう言った。巻き込まれただけなのに、彼は自分の代わりに戦ってくれるのだと。

 

 

「でもサトシ。さすがに5対1は無理だよ」

『そうロト!いくらサトシがバトルが強くても、これはいくら何でも無茶苦茶ロト!』

「大丈夫だ。数が多くても、こんな風にポケモンを大切にしない奴らなんかに俺は、俺たちは、負けない!行くぜ、ゲッコウガ!」

 

 

サトシの投げたボールから飛び出した青色のポケモン。スイレンのパートナーと同じく水タイプ、それも初心者トレーナー向けの一体。その最終進化形であるゲッコウガが颯爽とサトシたちとポケモンの間に降り立った。

 

 

「たった一人で勝てると思ってんスカ?」

「なめてくれるじゃない」

「俺たちが勝ったら、そのポケモンももらってやるよ!悪の波動!」

 

 

スカル団のポケモンたちが一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「躱せ!」

 

 

それを圧倒的なスピードですべて躱すゲッコウガ。そのまま敵のポケモンに接近した。

 

 

「いあいぎりだ!」

 

 

手の中に形成された光の刃を勢い良く降りぬく。5人のリーダーらしき男のアリアドスはその一撃で吹き飛ばされた。

 

 

『なんてスピード。通常のゲッコウガと比べても、驚異的ロト!』

 

 

「くそっ、奴の動きを止めろ。糸を吐いて捕まえろ!」

「アゴジムシ、あんたも」

 

 

ゲッコウガの動きを抑えようと大量の糸が発射される。何とかよけようとしたゲッコウガだったが、他のポケモンの攻撃もさばきながらでは難しく、腕や足に少し糸が絡まってしまう。

 

 

「よ~し、これで動きは鈍くなった。さっきのようなスピードはもうだせねぇぜ」

 

 

「サトシ、ゲッコウガ!」

 

 

二人が危ないと思ったスイレン。自分にも何か手伝えることはないだろうかと考える。しかし何も思い浮かばない。どうすればいいのかわからなくて焦るスイレン。しかし彼女を落ち着かせる声が聞こえた。

 

 

「大丈夫だ。俺たちを、信じろ」

 

 

ちらりと後ろを見ているサトシ。自信満々なその顔は、どう見てもピンチなこの状況に対しても全く動揺していないのがわかる。

 

 

「彼女の前だからって強がってんスカ?」

「だったら終わらせてやんよ。ナイトヘッド!」

 

 

再び周囲を囲んでゲッコウガに攻撃を仕掛けるスカル団。ぐっとサトシとゲッコウガの手が握りしめられる。

 

 

「負けられない。ポケモンを思いやっていない、お前たちなんかに!」

「コォウガァ!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

突如ゲッコウガの周囲を包み込むように、激しい激流が沸き上がる。それはスカル団のポケモンもその攻撃もを弾き飛ばした。バトルの音が騒がしかったのか、いつの間にか目を覚ましていたアシマリも、驚きながらその様子を見ていた。

 

 

「なに・・・これ?」

『理解不能理解不能。ありえない現象を確認ロト』

 

 

「な、なんだよ、おい」

「なんなの、あれ?」

 

 

水流がはじけ飛ぶ。中から現れたゲッコウガは姿を変えていた。さっきまで絡みついていた糸も水流で流されきれいさっぱりと取れ、先ほどよりも強者の風格が出ていた。その特徴的な背中の大きなみずしゅりけんが夕日を受けてきらめき、その赤い瞳は燃えるような熱さを宿していた。

 

 

「いくぜ、ゲッコウガ。かげぶんしん!」

「コウッ!」

 

 

飛び上がり、スカル団のポケモンを囲い込むようにかげぶんしんを作り出すゲッコウガ。その数に一瞬スカル団がひるんだすきにサトシたちは攻撃を放った。

 

 

「これで決める!ゲッコウガ、みずしゅりけん!」

「ゲッ、コォウガ!」

 

 

背中のみずしゅりけんを構えるゲッコウガ。そのみずしゅりけんに影分身たちの力が集約する。さらに大きく、鋭く変化するみずしゅりけん。

 

 

「すごい・・・これがサトシとゲッコウガの力?」

「アウ?」

『通常のみずしゅりけんと比べて、600%もの大きさ。こんなみずしゅりけん、ありえないロト!』

 

 

「いっけぇ!」

「コウガァァア!」

 

 

勢いよく発射されるみずしゅりけん。あまりのスピードにスカル団のポケモンたちはよけることなどできるはずもなかった。巨大な爆発が起こり、スカル団のポケモンたちは吹き飛ばされた。戦闘続行することなどできるはずもなかった。ポケモンを倒されぼーっとしているスカル団の前に、ゲッコウガが降り立った。

 

 

「な、なな」

「お前、覚えてろよぉ~!」

 

 

急いで逃げていくスカル団。それを見送った後、ゲッコウガは元の姿に戻った。

 

 

「ありがとう、ゲッコウガ」

 

 

ねぎらいの言葉をかけてゲッコウガをボールに戻すサトシ。そのまま少しふらつきしりもちをついたのを見て、急いでスイレンたちはサトシのもとへ駆け寄った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「サトシ!大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。ちょっと疲れただけだから」

『心拍数、脈拍の上昇を確認。現在正常値に向けて下降中。身体に異常はなさそうロト』

「そっか。よかった~」

 

 

ほっと息を吐くスイレン。とりあえずサトシは疲れているというだけのようで安心した。サトシの手を取り、立ち上がらせる。

 

 

「サンキュー」

「うぅん。こっちこそ、巻き込んじゃってゴメン」

「何言ってるんだよ。あいつらがやってることは許せないし、友達が困ってたら助けるのが当たり前だろ?」

「うん。ありがとう」

「さて、少し足止めを喰らっちゃったし、急いだほうがいいかもな」

「あ、そうだね。急ごうか。サトシは走れる?」

「平気平気。行こうぜ!」

「うん」

 

 

二人はスイレンの家まで走っていった。ついたら先に帰っていたラプラスが挨拶してくれたのでそれを返し、裏へまわって釣竿を置いた。それらのことをしてからサトシたちは家の中へ入った。

 

 

「ただいま」

「おじゃましま~す」

「ピカーピカ!」

 

 

「「おかえり~おねえちゃん!サトシ!」」

 

 

「ホウ、スイ。サトシにはおかえりじゃないでしょ。ここに住んでるんじゃないんだから」

「住まないの?」

「え?」

「おねえちゃんと結婚してここに住まないの?」

「な、なななな、し、しないから!結婚なんてしないからぁ!」

 

 

来て早々、妹たちによる爆弾発言によってスイレンはさらに疲れてしまった。そんな様子を苦笑気味に見るサトシと、にやにやしている双子。しかし彼女はまだサトシには聞きたいことがあるため、ダウンするわけにはいかなかった。それに、

 

 

「もう。わたし準備するから、二人はサトシを案内して」

「「はーい!」」

「準備って?」

「おねえちゃん、今日はお料理するの」

「ママとパパ遅いときはいつもそう」

「そうなのか?」

「夕飯できるまで、一緒に遊ぼう!」

「遊ぼう!」

「わかったわかった。ピカチュウも一緒に遊ぶか。何して遊ぶ?」

「えーとね、」

 

 

その後しばらく一緒に遊んでいたらスイレンが夕飯の用意ができたと伝えに来た。いろんなことがあって疲れていたサトシは、やはりおなかもかなりすいていた。妹たちがびっくりするほどサトシとピカチュウはよく食べていた。その後、ピカチュウとアシマリは双子と遊び始め、サトシはスイレンがいれたお茶を飲んでいた。

 

 

「ふ~。ごちそう様。スイレンの料理もおいしかった~」

「ありがとう。ねぇサトシ、ちょっといいかな?」

「ん?」

「さっきのゲッコウガのことなんだけど・・・」

『データにもあんな情報は載っていなかったロト』

「あぁ、あれね」

 

 

たはは~と彼は片手で頭の後ろを書くようにする。

 

 

「あれはキズナ現象って言って、俺とゲッコウガの心が一つになったときに起きるんだ」

「心が、一つに?」

『理解不能理解不能』

「実は本当に詳しいことはわかっていないんだけど、俺たちの絆の力って感じかな」

「絆の・・・力」

『極めて非論理的ロト』

「そうだな。理屈じゃうまく説明できないんだ、この力は」

「サトシは、本当にゲッコウガを信頼してるんだね」

 

 

トレーナーとの絆の力で強くなるポケモンもいることは父親から聞いている。実際両親の仕事の関係もあるのか、サメハダーやヤドランがパワーアップするところも見たことがある。それと同じようなものなのだろうとスイレンは納得した。

 

 

「サトシたちの全力、すごかった」

「全力?・・・俺たちの、全力・・・」

「どうかした?」

「いや、なんでもないや」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「サトシって、実はすごいトレーナーなんだね」

「そんなことないさ。俺は、まだまだだ」

「そうかな?私には十分すごいと思うけど」

 

 

ピカチュウもゲッコウガもサトシと旅をしてあれほどの力を手に入れたのだ。きっとすごい努力をして、すごくつらい思いもして、それでも頑張ったのだ。そこまでポケモンと一緒に頑張れるトレーナーが一体どれほどいるだろうか。それに聞いた話では最近仲間になったモクローだって、自分からサトシと一緒に行くと決めたというではないか。野生のポケモンがバトルを通じたわけでもないのについていきたいと思える何かがあるのだろう。そんなすごいトレーナーなのに、まだまだというのは謙遜し過ぎではないだろうか。

 

 

「まだまだだよ。リーグだってまだまだし、俺より強いトレーナーもいっぱいいるんだ。チャンピオンや四天王、それに俺よりベテランのトレーナーたち。今はまだ違くても、すぐに追いついてくるトレーナーだっている。ポケモンを命がけで守る仕事をしている人だっているし、ポケモンについての知識は俺よりも持ってる人なんてもっといっぱいいるんだ。俺なんて、まだまだだよ」

「ポケモンマスターを目指してるんだよね」

「あぁ。もっともっと強くなって、もっともっと多くのポケモンに出会って、もっともっとポケモンのことを知って。最高のポケモントレーナーになりたいんだ」

「どうして?」

「ん~、昔はただ憧れてたんだと思う。ポケモンリーグの動画とかいっぱい見て、かっこいいと思ったんだ。でも、旅に出て、いろんなポケモンに会って、いろんなトレーナーに出会って、いろいろと考えるようになった。中には本当にポケモンを大切にする人もいれば、スカル団みたいにポケモンにひどいことをするやつもいた。人間の身勝手で傷ついたポケモンもたくさん見てきた。それで思ったんだ。やっぱり俺はポケモンが大好きなんだ。ポケモンたちが幸せに暮らしてほしいと思う。最高のポケモントレーナー、ポケモンマスターになって、ポケモンと人間が一緒に、幸せに生きていける。そんな風にできたら・・・」

 

 

幼い子供のあこがれは、月日が流れ、旅の中で確かな形を持ち始めていた。ポケモンレンジャーのようにポケモンを助けるような仕事をしたい。チャレンジャーのように心躍るバトルに身を投じていたい。チャンピオンのように誰かの挑戦を受けて、応えたい。ポケモンドクターのように傷ついたポケモンを癒したい。ポケモンブリーダーのようにポケモンの成長を見守りたい。ポケモンコーディネーターやポケモンパフォーマーのようにポケモンと一緒に人に感動を与えたい。

 

 

様々な人の話を聞いて、様々な思想、理想を抱いている人と戦った。世界を征服しようとしたもの、自然を変えようとしたもの、新世界を創造しようとしたもの、ポケモンを人間から解放すると言っていたもの、美しい世界をつくろうとしたもの。様々なものと戦い、乗り越えてきたサトシ。思い出されるのはもっとも最近経験した大きな事件。そのときに思ったこと。

 

 

「みんなの明日を、守れるようになりたいんだ」

 

 

それはまだ10代の少年が語る夢物語にも見える。穢れを知らない、ただのきれいごとだと笑うものもいるだろう。けれどもその夢を語る彼は、どこまでもまっすぐにその夢を追いかけようとしていた。人の美しさも、やさしさも、醜さも、残酷さもすべて見てきた彼は、それでもその美しい夢を追い求めている。そこにはそのまだ成長しきってはいない身体からはとても想像できないほどの、強さと優しさが、覚悟が、込められている。その一端に触れたスイレンは、サトシがどこか遠い人のように思えてしまった。自分たちとは、違うのだと。でも、

 

 

「へへっ、なんだかちょっと恥ずかしい感じだな。こんな風に、真面目に夢について考えるようになってから誰かに話したのは、多分スイレンが初めてだな」

 

 

そういって彼は笑う。いつもと変わらない、自分たちと一緒にいるときの子供の顔で。だから安心する。サトシが自分たちをちゃんと対等に見てくれている。彼もまた自分たち同じように夢を持っていて、それをかなえたいと頑張る、まだまだただの子供なのだと思える。まだ、一緒なんだと。

 

 

「そうなんだ。すっごく大きくて、優しい夢だね」

 

 

(うん。すっごく優しくて、かっこいいんだね、サトシって)

 

 

また顔が赤くなっているのだろう、頬が熱い。心臓もバクバクといつもとは比べ物にならないくらい、みんなの前で話す時よりも速くなってる。二人も、こんな感じだったのかな。クラスメートで仲良しの二人の顔を思い浮かべる。きっと二人も、サトシと一緒にいて、サトシに触れたのだろう。そしてそれが心を動かしたのだ。見ていてわかるくらいに、二人はサトシの影響を受けている。もしかしたら、自分だってそうかもしれない。

 

 

「サトシって、本当にすごいんだね」

「え?そうか?」

「そうだよ!」

 

 

(だって、こんなに早く、私たち三人の心をつかんでしまってるんだから。もしかして、他にいたりして。苦労しそうだな~)

 

 

その後、サトシとピカチュウが帰った後、双子がスイレンの表情を見たときに、今までに見たことないような、少し大人になったような印象を持ったとのこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サトシたちの全力、すごかった』

 

 

「俺とゲッコウガの、全力・・・フルパワー」

 

 

スイレンの自宅からの帰り道、サトシは先ほどのスイレンの発言が頭の中で渦を巻いていた。何かが引っ掛かってる、何かがわかりそうになっている。そんな感じがした。




XYのサトシくんが語る「明日」にホロリと泣いた私がいます

なんだろう、なんか、すごく、感動したんです

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