XYサトシinアローラ物語   作:トマト嫌い8マン

11 / 103
モクロー、飼いたいな〜

そんでもふもふしたい

もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ

多分飽きないな、これ


そこだ決めろ、ゲットだぜ!

翌日、朝も早くからアイナ食堂でご飯を食べているのは、

 

 

「今日こそ絶対ゲットだぜ!」

「張り切ってるね、サトシ」

 

 

サトシとマオだ。リーリエは自室で勉強を、博士は外で研究をするとのことで、サトシは腹ごしらえにアイナ食堂にお邪魔していたのだ。

 

 

「ロトム、この間の場所はどんな感じ?」

『ポケモンスクール裏の森、野生のポケモン出現確率、86%ロト』

「いいんじゃない?あたしがアマカジと出会ったのも、その森だったし」

「カジ〜」

 

 

ふわりと甘い香りが漂う。マオの連れているアマカジというポケモンは、その身から美味しそうな香りを放つ。その香りにピカチュウはとろ〜んとした表情を浮かべ、サトシたちも安らいだ気持ちになっていた。と、急にアマカジが険しい表情に変わり、空を見上げた。つられてサトシたちが見上げると、一羽のポケモンがアマカジめがけて急降下してきていた。先に来ていることを察知できたアマカジは、頭の葉を刃のように回転させ、そのポケモンを弾き飛ばした。

 

 

「なんだ、あのポケモンは?」

『僕にお任せロト!モクロー、草羽ポケモン。くさ、ひこうタイプ。昼に光合成で力をためる。一切音を立てず飛行し、敵に急接近、気づかぬ間に強烈なけりを浴びせる・・・はずロト。』

 

 

少し最後のほうに勢いがなかったのは、再びアマカジに向かって言ったモクローがあっさりと弾き飛ばされてしまったからだ。

 

 

『こっちは敵にしっかり気づかれているうえに、強烈なけりを浴びせるどころか、逆に強烈な攻撃を浴びてるロト・・・』

「あたしのアマカジ、こういうの慣れてるからな~。甘い匂いで本物のきのみと勘違いされちゃうこと多いみたいで」

「それですぐに対応できたのか・・・」

 

 

三度目の正直、とばかりに突っ込むモクロー。しかしながらこの言葉と対になっているともいえる、二度あることは三度あるなわけで、モクローはまたまた吹き飛ばされ、電線に目をまわしながらぶら下がっていた。これにはピカチュウも、思わず苦笑。

 

 

「もしかして、すっごいおなかが減ってるとか?あっ!」

 

 

足の力が緩んだようで、モクローは電線から離れ、まっすぐ地面に向かって頭から落ちていった。それを見たサトシはテラス席の柵をあっさり乗り越え、ダイビングでモクローを無事にキャッチした。けがはなかったようだが、モクローは疲れもあったのか、そのまま気を失ってしまった。

 

 

「サトシ!大丈夫だった?」

「あぁ、モクローなら無事だよ。けがもしていないみたいだし」

「そっか。それならよかっ、って、サトシが怪我してるじゃない!」

「えっ?」

 

 

よく見ると、両腕の肘あたりが擦ったような怪我をしていた。先ほど、モクローをキャッチする際に、下のコンクリートで少しばかり腕を擦ってしまったようだ。

 

 

「平気さ、このくらい」

「だめだよ。小さな傷でも、ばい菌とか入ったら大変なんだから。こっちに来て。あたし、手当てするから」

「ありがとう、マオ」

 

 

サトシはモクローを自分のリュックを下に敷き、その上に寝かせた。そしてテラスの席に座ってマオを待った。少しして、救急箱をもってマオが戻ってきた。

 

 

「ほら、ちょっと見せて。あ~、結構広く怪我してる。ちょっとしみると思うけど、我慢してよ」

「わかってるよ。っててて」

「もう、無茶しちゃって。モクローもサトシも大したことなかったからよかったけど、下手したらサトシがもっと怪我してたかもしれないんだよ」

「でも俺が行かなかったら、もしかしたらモクローが大怪我してたかもしれないだろ」

「あのねぇ、ポケモンは人間よりもずっと丈夫でしょ?人間だったら大怪我するような技を受けても平気な子とかもいるし。確かに怪我させたくないと思うのはわかるけど、それでもサトシのほうが大怪我する可能性のほうが高いんだよ?」

 

 

マオには少しわからないところがあった。確かに自分だってポケモンが好きだし、できれば怪我をするところを見たくないとも思う。しかしポケモンと人間では、体の丈夫さに圧倒的な差がある。確かにモクローがあの高さから落ちていたら怪我をしていたかもしれないが、すぐ近くにあるポケモンセンターに連れて行けばすぐに良くなっていただろう。実際、地球投げなどの空中からたたきつけられるような技だってあるのだ。戦闘不能にこそなれども、死ぬことはなかっただろう。

 

 

一方サトシは人間だ。どれほど体が丈夫でもポケモンと比べると、その強度には歴然とした差が生じるのだ。あの高さから落下するモクローをキャッチしようとする時点でむちゃくちゃだ。下手をすれば自分が大怪我を負っていたかもしれない。今回は本当に運がよかったのだ。そうサトシは理解していないみたいだ。

 

 

「確かに、マオの言う通りかもしれない。けどさ、どうしようもないことなんだよ」

「えっ?」

「俺、昔からポケモンが大好きなんだ。旅の途中でもいろんなポケモンに出会ったんだけど、結構危ない目にあっているポケモンもいてさ。そんな時には、もう考えるよりも先に体が動いてる。助けなきゃ!って思ったら、みんなが止める声も聞こえなくなってる」

「でも、本当に危ないんだよ」

「うん、知ってる。実際、俺も助けようとしたからすっげぇ危ない目に合うことだって少なくなかったし」

「だったら、どうして?」

「う~ん。理由なんて、特にないんだと思う。ただ、その時に助けたいと思ったら、体が勝手に動いているだけなんだ」

 

 

そう言って笑う彼には恐怖も迷いもなかった。彼は本当に、ただ助けたいと思っただけなのだろう。安全な方法を考えようだとか、危険だからやめておこうだとか、そんなことは考えたこともないのかもしれない。それらの考えをすべて飛ばして、彼を動かしているのは、なんなのだろう。これほどまでにポケモンのために行動する人を、マオは見たことがなかった。島キングや島クイーンの人を何度か見たことはあったけど、それと同等、いやそれ以上にポケモンのことをまず考えて行動しているように見える。

 

 

「そっか。でも、これからはちゃんと考えてね。あたしたちも心配するし」

「ごめんな。頑張って考えるようにはしてみるけど、止まらなかったらごめん」

 

 

そういった彼は確かに少し反省、というか気を付けようとして入るみたいだ。けれども、気を付けるように伝えていながらも、マオはきっとそれは無理なことなのだろうと思っていた。サトシにとっては、きっとそれが当たり前のことだったのだから。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

しばらくすると、気を失っていたモクローが少し動き始めた。様子を見るサトシ。ゆっくりとモクローの目が開かれた。

 

 

「大丈夫か?よかった、気が付いて」

 

 

しばらく状況がわからずにぼけーっとしていたモクローだったが、意識がはっきりとしたようでサトシのリュックの感触を少し確かめると、隣に置いてあった果物にかぶりついた。

 

 

「すっげぇ食欲だな」

『食べる量、スピードともに驚異的レベルロト・・・』

「これも食べるか?」

 

 

サトシが皮をむいたきのみを差し出すと、モクローはサトシの腕に飛び移りそのまま食べ始めた。体を固定し、バランスを維持するためにモクローは足でサトシの腕をつかむ。予想外に強いその締め付けに、一瞬だけサトシは顔をしかめると、その痛みを顔に出さずにモクローにきのみをあげ続けた。

 

 

おなかがいっぱいになったモクローは、幸せそうな表情をしていた。その様子を見たサトシは手をモクローの頭にのせてそっと撫でた。スクールのケンタロスのように、モクローも撫でてくれるその感触に、さらに幸せそうな表情になっていた。

 

 

「やわらかいな、お前。羽というより、まるで毛みたいだな。ふかふかしてて気持ちいいな」

「モクローも、サトシに撫でてもらえてうれしそうだね。あたしもいいかな?」

「いいか?モクロー?」

「クロー」

「いいってことかな?ほら、マオ」

「わぁっ、本当にふかふか。手触りがいいね」

 

 

しばらく撫でたあと、二人は手を放した。そしてサトシはモンスターボールを取り出して、モクローにゲットしてもいいかと聞こうとしたが、どこか慌てていたのか、きのみを一つとって、モクローは森のほうへ飛んで行ってしまった。

 

 

「行っちゃったね・・・どうする、サトシ?」

「もちろん、追いかけようぜ!俺、あいつをゲットしたい!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

モクローを追いかけて森の中を進むサトシたち。そこで彼らが見たのはモクローと一緒にいる、多くの鳥ポケモンたちの姿だった。

 

 

『僕の出番ロト!ツツケラ、きつつきポケモン。ノーマル・ひこうタイプ。秒間16連打で木をつついてあけた穴に、食料を貯蔵する。ケララッパ、ラッパぐちポケモン。ツツケラの進化形。口にため込んだきのみの種を、敵や獲物に、一気に発射する。ドデカバシ、おおづづポケモン。ケララッパの進化形。発熱させた嘴の温度は100度を超え、つつかれただけでも大やけどする』

 

 

ロトムが解説している間に、ドデカバシの前にいたモクローが飛んできて、サトシのリュックの中に納まった。

 

 

「お前、こんなにたくさん仲間がいたんだな」

 

 

そうして彼らが和んでいると、どこからか網が飛んできて、ツツケラやドデカバシたちを捕まえてしまった。

 

 

「なんだ!?」

 

 

 

 

「な、なんだ、と言われたら」

「聞かせてあげよう、我らの名を」

「花顔柳腰羞月閉花。儚きこの世に咲く一輪の悪の花!ムサシ」

「飛竜乗雲英姿颯爽。切なきこの世に一矢報いる悪の使徒!コジロウ」

「一蓮托生連帯責任。親しき仲にも小判輝く悪の星!ニャースで、ニャース」

「「ロケット団、参上!」」

「なのニャ!」

「ソーナンス!」

 

 

 

「あんたたち、この前の!」

「ロケット団!ツツケラたちを放せ!」

「そうはいかないわジャリボーイ。こいつらはキテルグマの食料をとったんだもの」

「一宿一飯の恩義故、取り返させてもらうぜ!」

「そしてピカチュウも一緒に、サカキ様にプレゼントするのよ。ミミッキュ、お願い!」

 

 

ムサシの投げたゴージャスボールから、この前のミミッキュが現れた。前回の戦いでもかなり強いことが分かったミミッキュがロケット団の仲間になったことに、気を引き締めるサトシとピカチュウ。

 

 

「ミミッキュ、なんでもいいからやっちゃって!」

「ピカチュウ、エレキボール!」

 

 

ムサシの声に反応し、ミミッキュはシャドーボールを放った。それに対抗するように、サトシはピカチュウにエレキボールを指示、二つの技がぶつかり合い、爆発が起きる。

 

 

「モクロー、今のうちに仲間を助けるんだ」

 

 

その爆風の中、これをチャンスと見たサトシは、ロケット団にまだ気づかれていないモクローにツツケラたちを助けるように指示した。モクローはその足のひと蹴りでツツケラたちを捉えていた網を切り裂いた。図鑑にあった通り、モクローの脚力は驚異的なものだ。

 

 

一方ピカチュウはミミッキュの攻撃によりピンチに陥っていた。このミミッキュ、今までのロケット団の手持ちの中でもトップクラスの実力を持っていると言っても過言ではなさそうだ。ミミッキュのシャドークローが、ピカチュウに決まろうとしていたその時、ピカチュウの周りを葉っぱがまるで守るかのように舞い上がった。

 

 

「モクロー!」

「この技って、このは?」

 

 

ピカチュウの窮地を救ったモクロー。ピカチュウを見失い、無防備になっていたミミッキュの隙をつき、10万ボルトが決まった。それでもなお挑もうとするミミッキュ。すると大きな手がミミッキュを含むロケット団をとらえた。

 

 

「あれ?」

「これってなんだかデジャビュ?」

「「って、やっぱりキテルグマ!?」」

 

 

前回同様、突然現れたキテルグマによって、ロケット団は全員連れ去られてしまった。

 

 

「「「なにこの感じ〜」」」

「ソーナンス!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・行っちゃったね」

「・・・あぁ」

「ピーカチュ」

 

 

今までのロケット団とは全く違うその退場の仕方に、サトシは呆気にとられていた。ピカチュウに至っては、なんだか少し物足りなさを感じているあたり、彼らの長い付き合いぶりがわかる。

 

 

ちらりとサトシはモクローの方を見る。ツツケラたちに囲まれ、ケララッパに頭を撫でられ、それをドデカバシが見守る中、モクローはとても嬉しそうに、楽しそうに、そして幸せそうに笑っていた。その光景を見てサトシは理解した。モクローにとって、ツツケラたちがどういう存在なのかを。

 

 

「モクロー」

 

 

サトシが声をかけると、モクローは飛んできて肩に止まった。サトシの頬に体を摺り寄せるモクロー。

 

 

「お前のおかげで助かったよ。仲間たちも、ちゃんと助け出せたしな」

「うんうん。かっこよかったよ!」

『驚異的な蹴りだったロト!』

「ありがとな、モクロー」

 

 

サトシたちに褒められ、誇らしげに胸を張るモクロー。そんなモクローを少し撫でた後、サトシはそっとモクローを巣の近くの地面に降ろした。

 

 

「じゃあな。帰るぞ、ピカチュウ、ロトム」

 

 

その言葉にピカチュウたちは驚いた。あれほどモクローをゲットしたいと言っていたのにもかかわらず、サトシはモクローに別れを告げたのだから。

 

 

『帰る!?ゲットしないロト?』

「サトシ、どうしたの急に?あんなにモクローをゲットするって言ってたのに」

『理解不能、理解不能』

 

 

モクローに背を向けたまま、サトシは伏せ気味だった顔を上げた。そこには後悔はない。自分の決断に迷いがなかった。

 

 

「これでいいんだ。だってあいつには、こんなにたくさんの仲間がいる。あいつら、みんな家族なんだよ。姿は違うかもしれないけど、それでも確かに親子で、兄弟なんだ。だから、いいんだ」

 

 

そう言ってサトシは歩き出した。モクローたちに背を向けて。その後をロトムたちは追いかけた。

 

 

 

 

 

 

振り向かずに進むサトシの後ろ姿を見つめながら、マオはサトシについて考えていた。

 

 

ゲットしたいポケモンが目の前にいるのに、そのポケモンの幸せのために、彼は身を引いた。自分自身の願いを優先することなく、ポケモンの幸せを第一に考えたその行動。それが不思議でたまらなかった。

 

 

今まで、マオはスクールでゲットすることについて学んできたし、今腕の中にいるアマカジと出会い、バトルし、ゲットした。今では一番の仲良しのこの子も、あの時のバトルではまだ自分に対して警戒心を持っていた。それは当たり前のことで、ゲットしてから信頼関係を築くものだとずっと思っていた。

 

 

けれどもサトシはそんな考えからはずっと離れた存在だった。初めて会ったばかりの野生のポケモンのために身を犠牲にする覚悟があり、そのポケモンの心をすぐに開いた。ゲットされていなくとも、モクローのあのなつきぶりは、とても野生のポケモンとは思えないほどだった。サトシがモクローを大事に思っていて、モクローもサトシが大好きなのは明白だった。後はバトルしてゲットするだけ。だというのに、家族と幸せそうにするモクローを見て、サトシは自分の願いよりも、モクローの幸せを優先した。何よりも、自分自身よりも、ポケモンを優先する彼。今までに出会ってきたどんなトレーナーとも違う。

 

 

 

 

 

 

バサリ、と羽音がして一つの影がサトシのリュックに潜り込んだ。バッと顔を上げて後ろを向くサトシ。そのリュックから顔を出してサトシを見つめていたのは、

 

 

「クロ〜」

「モクロー!?」

 

 

先程別れを告げたばかりのモクローだった。

 

 

「お前、どうして?」

 

 

サトシの問いに答えるように、モクローは羽で巣の方をさした。そこにはツツケラたちとケララッパが翼を振り、ドデカバシがサトシを見据え、小さくうなづくのが見えた。行ってらっしゃい、元気でな、気をつけて。そんな声が聞こえてくるかのようだった。ドデカバシのうなづきの意味を理解したサトシは、もう一度モクローに確認することにした。

 

 

「お前、俺と一緒に来たいのか?」

「クロッ」

 

 

サトシに抱きつき身体をすり寄せるモクロー。自分で決めた答えをサトシに伝えるために。

 

 

「そっか。俺も、本当はお前と一緒に行きたいって思ってたんだ!」

 

 

リュックから飛び出したモクローがサトシの前へ飛び出す。そして何かを待っているかのようにとどまり続けた。

 

 

『何をしてるロト?』

「へへっ、モクロー。一緒に行こうぜ」

 

 

そう言って取り出したモンスターボールでそっとモクローに触れた。ボールの中にモクローが入り、ポンッという音を立てて、中央の光が消えた。

 

 

「モクロー、ゲットだぜ!」

「ピッピカチュウ!」

 

 

『ロトォォ!?』

「えぇぇっ!?」

 

 

二つの驚きの叫びが響いた。

 

 

『こんなゲット、ありロト!?』

「ありだよ!出てこい、モクロー!」

 

 

つい今しがた自ら入ることにしたサトシのボールから出されるモクロー。そのままサトシのリュックに一直線に潜り込んだ。

 

 

「そんなに俺のリュックが気に入ったのか?」

 

 

そう問いかけるサトシには答えず、満足そうな表情を浮かべるモクロー。それだけでサトシには十分だった。

 

 

『リュックが好きなモクローもいる、情報アップデート』

「これからよろしくな、モクロー!」

 

 

こうして彼らはツツケラたちに別れを告げて、森の出口へ歩いて行った。新しい仲間、よく食べておっちょこちょい、でも仲間のためならすごい力を発揮する、モクローとともに。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「ねぇ、サトシ?」

「ん?なんだ、マオ?」

 

 

戻る途中、マオはどうしても聞きたくてサトシに話しかけた。

 

 

「どうしてそんなに自分よりもポケモンを優先できるの?」

「えっ?どうしてって、」

「モクローのこと、ゲットしたいって言ってたのに、モクローの幸せのために諦めようとしたり、一歩間違えれば大怪我するかもしれないのに身体を張ってポケモンを助けようとしたり。どうして?」

 

 

マオの問いかけにサトシはしばし考え込んだ。やっと口を開いた彼の答えは、とても簡単で、単純で、まっすぐで、真っ白なものだった。

 

 

「ポケモンが好きだから、かな?」

「それだけで?」

「そんな感じかなぁ?やっぱりさ、ポケモンたちには幸せでいてもらいたいからさ。俺が楽しいから、嬉しいからっていう理由でポケモンの幸せを壊すようなことはしたくないし、怪我とかもして欲しくないんだ。そりゃあ、別れるのが悲しいことだってあるし、自分が痛い思いをするかもしれないけどさ、それでも、ポケモンたちが傷つくのを見るよりも、その方がずっといいかな」

 

 

先程も感じた深い愛情、それをマオは再び強く感じていた。あぁ、なんでだとか、どうしてだとかはないのだろう。理屈も、理由も、思考も、主義も何もない。あるのはただ、純粋なポケモンへの思い。自分のゲットしたポケモンのみならず、友達のポケモン、バトル相手のポケモン、野生のポケモン問わず向けられている、まっすぐで曇りのないその愛情こそが、彼の強さと優しさに表れているのだろう。それこそが、カプ・コケコに彼が気に入られた理由なのかもしれない。

 

 

何も飾らないその言葉を放った笑顔もまた、気取った様子もなく、純粋な思いで溢れたものだった。ドキリ、と心臓が少し高鳴るのをマオは感じた。少し顔に熱がこもるのも。

 

 

「マオ?顔が赤いみたいだけど、大丈夫か?」

「えっ?」

 

 

自分の褐色の肌は、リーリエと違ってそんなに血色の良し悪しがすぐに表れることはない。だというのにサトシに指摘されたということは、それだけ自分の顔が赤くなっているということだろう。心臓の鼓動がさらに速くなる。

 

 

「うぅん、なんでもないなんでもない!なんか、サトシって本当にポケモンが大好きなんだなぁって」

「そっか?まぁ、そうだな!」

 

 

再び前を向いて歩き出したサトシ。その後ろをついていきながら、マオはその後ろ姿をずっと眺めていた。サトシのこういうところが、リーリエにも影響を与えたのだろうか?

 

 

なんか、少しかっこいいかも・・って、

 

 

「あたし、何考えてるの!?」

「えっ、マオ?急にどうしたんだ?」

「だ、大丈夫だから!ごめん、本当になんでもないから!」

 

 

結局、マオの顔の熱が引いたのは、サトシと別れてから数時間後、寝る直前のことだった。




今回はマオちゃんメインですな

こういう関係もあり?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。