ゼロから始める瀟洒な異世界生活   作:チクタク×2

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 気付けばUAが1400越え。評価してくれてる人が少ないからほとんどの人が読んでないと思っていたけどそうでもなかったんですね。
 評価するにあたって、感想が0文字でもOKにできるような設定があったので設定してみたので、気軽に評価してくれると作者は嬉しいです。 


第七話:コンポタージュ味

 咲夜は、スバルに盗品蔵へ向かうことに自分も同行することを認めさせた。

 そして、道を知っていると言うスバルが先導し、ともに盗品蔵へ向かうことになった。

 

 盗品蔵に辿り着くまで、幾ばくかの時間はあったので、その間に咲夜はスバルからできるだけ「異世界」について情報を聞き出そうと考えを巡らせていた。

 しかし、咲夜は話を中々切り出せないでした。

 

(前回のスバルが口にした『召喚』について、今回は初対面のわたしが、そのことについて質問したら不自然よね……。一先ず、盗品蔵へ向かう目的だけでも聞いときましょうか)

 

「スバルは、盗品蔵という場所に向かうつもりのようだけど、どうしてそんな場所に行こうとしているの?」

「フェルトっていう小さな金髪の女の子が、徽章ってやつを盗んだんだ。それを取り返して持ち主に返してやりてぇんだ」

「自分の持ち物でもないのにわざわざ取り返そうとするの?持ち主はあなたにとってそんなにも大切な人なのかしら?」

 

 咲夜は、前回の経験からその持ち主がエミリアだと知っていたが、知らないふりをして聞いた。

 スバルは、エミリアとは前回、初めて知り合いになった。

 二人で行動していたみたいだが、それも僅かの間だけだったはず。

 そんなほとんど知らない相手に対して、わざわざ労力を払おうとするスバルの行動の理由が、咲夜には理解できなかった。

 

「いや、……向こうは俺のことは知らない。俺も相手のことをあまり知らないけど、俺はあの子に助けられたから。だから……うん、俺はあの子の助けになってやりてぇ!」

「相手はあなたを知らないって。……もしかしてあなたストーカーというやつかしら?」

「ちょっ!??違う!いや違わないのか?うわ、そこはかとなく否定できないかも!?」

 

 咲夜はひょっとして、自分が協力しようとている相手が実はストーカーで、自分はそんな危険な相手の手助けをしようとしてるのではないかと考える。

 しかし、迷惑を被るのはエミリアだし、まあ良いかと思い直し、

 

「まぁ、愛の形は人それぞれだから……いいんじゃないかしら?」

「優しい言葉とは裏腹にそんな、哀れな人見るような目でこっちを見ないで!めっちゃ心が痛いから!それにフォローするようなことを言って、少しづつ距離を取らないで!!傷つくから!」

「応援はできないけど、邪魔はしないから……。でも相手の迷惑になるようなことをしちゃダメよ?」

「分かってない!この人分かってないよ!」

 

 咲夜はその後は、「ところでその手に持っている袋は?」「これはコンビニの買い物袋」「ふーん、……コンビニ?」というような、なんでもない会話をしながら、時折スバルをからかい、ともに盗品蔵へと向かい、やがて盗品蔵の前に着く。

 

「ふう、やっと着いたぜ。盗品蔵のくせにこの俺をここまで苦戦させるとは、やるな!」

「……あなたが道が分かるというからついて行ったけど、ここまで来るのに大分迷ってたわよね。着くまで二時間もかかったじゃないの。日も少し暮れてきたし……」

「う、冷たい視線で見るのは止めて!お願いします! 俺の繊細な心にグサグサと突き刺さる!……でも、相手が銀髪美少女メイドに見つめられていると考えると悪くはないかも?」

 

 スバルは、自身満々に先導していたので、咲夜は土地勘がなかったので、道を完全にスバルに任せていた。

 しかし、それがいけなかったらしい。肝心のスバルが、盗品蔵までの道をうろ覚えで スバル自身それを認識してはいたらしいが、なんとかなるだろうと楽観的に考えていたらしい。

 似たような通りが多く立ち並ぶ王都において、スバルも同様に土地勘がなく、また地名や店名の表記も読むことができず、結果、記憶を再現しながら道を総当たりすることになった。

 そのことを咲夜に責めらるスバル。

 

「まあ、着いたんだからいいじゃないか!結果オーライだ。さあ、中に入るか」

 

 スバルは場を誤魔化すように言い、盗品蔵の扉の前に立つ。咲夜は、スバルの気軽さにため息を付き、スバルと一緒に扉に近づくが――。

 

「咲夜は、外で待っていてくれないか?すぐに用事を済ませるからさ」

「別に遠慮しなくてもいいわよ。ここまで来たんだから最後まで付き合うわよ?」

「いや、・・・・ここは俺一人に任せてほしい」

 

 先ほどまで能天気だったスバルだが、一転して真面目な顔をして咲夜を見つめる。

 スバルの目は、咲夜に迷惑はかけまいとする気持ちの他に、どこか咲夜の身を案じているようにも見えた。

 流石に咲夜も自分を案じる視線を押してまで、介入する気にはならず、

 

「……分かったわ。外で待ってる。でも、何かあったら呼びなさい。一応、駆けつけてあげるから」

「一応、かよ。そりゃ、心強いことで」

 

 そういうとスバルは、咲夜に背を向け、盗品蔵の前にたった。

 咲夜は、盗品蔵から少し離れ、通りからスバルの背中を見つめる。

 

(スバルの手、震えていたわね……。あの盗品蔵の中で一体なにがあったのかしらね。一応、警戒していつでも中に飛び込めるようにしておくべきかしら。……我ながら人間に対して、少し甘くなったかしらね。昔はもっと人間に対して、冷たかったと思うけれど。これもあいつらの影響かもね)

 

「ビビんな、ビビんな、ビビんなよ、俺。バカか……いや、バカだ、俺は。ここまできて答えを見ないでなんて帰れるかよ」

 

 スバルは、扉をすぐに開けず、扉の前で少し離れた場所にいる咲夜には聞こえないような小さな声で呟く。

 そしてスバルは、おもむろに扉をノックする。

 

 反応が返ってこない。ノックする。

 しかし反応が返ってこない。

 

 スバルは反応が返ってこないことに焦りを感じてきたのか、徐々に扉を激しく叩き出す。

 

「誰か……誰かいるだろ! 頼むよ、返事してくれ……頼む!」

「――やっかましいわぁ!! 合図と合言葉も知らんで何度もドンドンと、扉をぶっ壊す気か!!」

 

 突如勢いよく開かれた扉が、目の前にいたスバルを吹っ飛ばす。

 スバルが吹き飛ばされていく光景を咲夜は見ていた。

 

(人間って扉でも結構吹っ飛ぶのね……)

 

 スバルは盗品蔵の入口から五メートル近く後ろに飛ばされ、地面を無様に転がった。

 そしてその原因となった扉を開いた人物———顔を真っ赤にさせた大柄な禿頭をした老人がスバルを睨んでいる。

 

(老人にしては随分と筋肉質なのね。見た目通りのパワータイプって感じかしら)

 

 咲夜は、吹き飛んだスバルを見届けた後、扉の前にいる老人に視線を移して、そう思った。

 

「なんじゃお前! 見覚えのない面ぶら下げて、何しにきたんじゃ! どうやってここを知った、どうやってここに辿り着いた! 誰の紹介じゃ!」

「――お、お近づきの印に、おひとつどうぞ」

 

 スバルは老人の剣幕にすっかりビビり、スバルは咄嗟に、コンビニ袋の中から、ある袋を差し出す。

 その袋にはコーンポタージュ味と書かれていた。

 

「なんじゃ、お前さんは。こやつの仲間か?」

「いえ、わたしは通りすがりですので。その男はお好きにどうぞ」

「なあ!?」

 

 大柄の老人は、盗品蔵の近くではないが、見える位置にいた咲夜に気付き、扉を激しく叩き自分の盗品蔵の扉を壊そうとしていたスバルの仲間かと尋ねられる。

 しかし、咲夜はすぐに否定の言葉を返す。

 先ほどまで、親身に相手をしてくれた咲夜に内心とても感謝していたスバルだったが、咲夜の一瞬の手の平返しに変な声を出して、驚嘆する。

 

 その後、スバルは、老人に襟首を掴まれ、盗品蔵に引きずられていった。スバルは引きずられながら、咲夜の方へと目を向けたが、咲夜はそんなスバルに口パクで言葉を贈った。

 

「がんばって」

 

 そして無情にもスバルが盗品蔵の入口をくぐると、その扉は大きな音を立てて、固く閉じられてしまう。

 ……余談だが、引きずられている時、スバルは悲し気な目をして、「ドナドナ子牛をの~せ~て~」と歌を口ずさんでいたが、それを見た咲夜は、無性に牛が食べたくなったとか。




 何故だろうか?
 第一章は比較的シリアスな話なのに、咲夜とスバルの組み合わせはどこかギャグが多くなっているような気が・・・

 今回のお話は、驚異的なスピードでスバルの扱い方を学習し始めた咲夜さんでした。さすが、完璧に瀟洒なメイドさん。

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