ゼロから始める瀟洒な異世界生活   作:チクタク×2

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第七話です。

タイトルで話の予想は付くでしょうが、食堂回は今回で終わりです。


まったくの余談ですが、
リゼロって、WEB版にも文庫本にも収録されていない話がありますよね。
初回限定版に付いてくる、特典小説や月刊コミックアライブの外伝とか。

読みてー。特に特典小説。
月刊コミックアライブは何とかなりますが、特典小説は完全に手に入れた人だけですしね。
持ってる人は羨ましいです。


第七話:要求

「さぁて、だいぃぶ脇道それちゃったけど、本題に入るとしようかねぇ」

「そうね」

 

 ロズワールの言葉に、エミリアは同意しながら懐に手を入れ、あるものを取り出しテーブルに置く。

 それは、フェルトによって一度は盗まれた、そして咲夜がスバルの面倒ごとに巻き込まれた間接的な原因、竜を象った徽章だった。

 

「この徽章は、王選参加者の資格。これがなきゃ、王選は始まらない」

「ま、まさか……王選参加資格の徽章をなくしてたのか!?」

「なくしたなんて人聞き悪い! 手癖の悪い子に盗られたの!」

「一緒だ――っ!!」

「うっかり、じゃ済まないような話ね」

「うっ……咲夜まで」

 

 スバルは大声で叫び、食卓を叩きながらスバルは立ち上がる。

 しかし、それも無理はない。

 なぜそんなにも大事なものを盗まれる事態になったのか、問い詰めたくなるくらいだ。

 そのせいでどれほど苦労したのか、咲夜がこれまでに繰り返された時間を思い返され、小言を漏らす。

 

「……エルザは、誰かに依頼されたって言ってたな。つまり、エミリアたんが王様になるのを邪魔しようって奴がいる?」

「そうだろうねぇ。王選から脱落させるのに、一番簡単な方法だしねーぇ」

「つまり、わたしとスバルは、王選の争いに巻き込まれた、そういう事になるのね」

 

 たった一つの徽章の盗品の話が、随分と大きな話になってきたものだ。

 

「っていうことは俺ってば、エミリアたんの王選脱落を防いだ、超良い働きしたんじゃね!?これはもう、ご褒美を期待しちゃってもいいんじゃないでしょうかねーぇ?」

「そのロズワールの口調の真似、すっごく不愉快なんだけど……でも、スバルの言う通り。感謝してもしきれないくらいの恩があるんだから。何でも言って。出来る限り叶えるよう一生懸命に頑張るから」

「……え?」

 

 エミリアは沈痛な面もちで、胸に手を当て、スバルを真っすぐな目で見つめる。

 傍から見て、エミリアは悲壮感あふれる少女で、対するスバルは弱みを握ったさながら悪役のよう。

 スバルはそんな予想外の反応に困惑する。

 

「さすが、スバル。鬼畜ね」

「ちょっと!?咲夜たん、追い打ちは止めて!」

 

 微妙な空気になってしまったが、咲夜はあることが気になり、楽しそうに成り行きを眺めていたロズワールに質問を投げる。

 

「ねえ、ロズワールさん、わたしからも質問いいかしら?」

「ふむ?咲夜くんもロズっちと呼んでくれて構わないよん」

「……ロズワールは、どうしてエミリアの支持するの?あなたは彼女にとって何?」

 

 咲夜に問いを投げられたロズワールは、テーブルの上に腕を組み、その上に顎を乗せながら愉しげな笑みを象った。

 

「良い質問だよ、咲夜くん。私はエミリア様にとって女王候補として支援する後ろ盾……まぁパトロンってぇことだよ」

「パトロン、ねぇ」

 

 スバルはその得体の知れない、怪しさしか漂ってこないロズワールを見て、

 

「言い難いんだけどさ……エミリアたん、もっと人を選んだ方がよくね?」

「仕方なかったの。王都で頼れる人なんて私にはいないし、そもそも私に協力してくれるなんて物好きはロズワールぐらいしか……」

「なーる、消去法なのね」

「なら、仕方ないわね」

「本人を前にして、三人とも恐いもの知らずもいいとこだねぇ」

 

 ロズワールは明け助けな物言いをする三人に思わず、苦笑を漏らす。

 それでも、怒らないとは、見かけによらず、意外と器が大きいのだろうか。

 

「ロズっちがエミリアたんのパトロンってのはわかった。でも、そもそも事の発端となったエミリアたんだけど、女王様候補が一人でブラブラとするのはちょっと不用心じゃねぇ?」

「そうだねぇ……本当は、ラムが傍に付いていたはぁずなんだけど」

 

 ロズワールの言葉に、ピンク髪のメイドに視線が集中するも、視線を向けられた当事者は、髪の分け目をひっくり返して青髪に扮した体で平然としている。

 髪の色が違うから丸わかりなのだが。

 

「その自信満々に『誤魔化せたぞ、しめしめ』みたいな顔がムカつくな」

「姉様、姉様、お客さまったらあんなこと言っていますわ」

「レム、レム、お客様ったら頭空っぽなこと言っているわ」

「メイドさん、メイドさん、頭が空っぽな発言じゃなくて、事実頭が空っぽなのよ」

「口悪ぃからそれでも判別つくけどな!つか、咲夜たんも悪ノリしない!」

 

 スバルは各々の強い個性を発散させている三人のメイドたちに怒鳴り立てるが、エミリアがスバルにおずおずと声を上げる。

 

「スバル。あまりラムを責めないであげて。その、私が……ちょっと、ちょっとだけよ?好奇心に負けちゃって、ふらふらしている内に、ラムからはぐれちゃったの。だから本当はわたしが悪いの」

「……なんか、その時の情景が目に浮かぶように想像できるな。でーも、原因はそこにあるかもしれないけど、与えられた使命は、主人の傍にいることなんだろ?それが守れなかったのはやっぱり不手際じゃねーの?」

「まあ、そうよね。わたしも傍に仕えているときは、お嬢様から目を離さないわ」

 

 ——それこそ24時間。命令されなかったとしてもだ。

 

 メイドとして主の期待に応えるの当然といった感じで、スバルの言葉に、咲夜も同意をする。

 ……内心では少ーし過剰すぎる言葉が付け加えられていたが、声に出ていないので誰も察することはできなかったが。

 

「まあ、お二人の言う通りかもね。部下の不始末は上司の責任。でぇも、それはそれとして君はなにを言いたいのかなぁ?」

「簡単な話だよ。エミリアたんが一人でいる時に徽章を盗まれ、俺たちも巻き込む一連の出来事が発生!でも、それはそもそも徽章が盗まれたから。でも、もしその場に付き人がいれば?」

「つまり、君が言いたいのは、盗まれたのは付き人が仕事をしていなかったせい。ひいては、それは上司のせい。ならば、君の働きに正当な対価を払うべきはわたしってことかーぁな?」

「その通り!」

 

 ロズワールはいち早く話を理解し、少し関心したようにスバルを見て、他の人にも理解できるよう、スバルに成否を確かめるように話す。

 そして、それを聞いてようやくその場の全員が、スバルの言いたいことを話を理解すると同時にその場の全員の表情も一変する。

 申し訳なさそうにする者もいれば、敵意を滲ませる者もいる。

 スバルに対して呆れた表情や、我関さずで食事を行っている者も中にはいたが……。

 

「認めよう、事実だからねぇ。で、君は何を求めるのかーぁな?」

「話が早くて助かるぜ。男に二言はねぇな?」

「スゴイ言葉だねぇ。なるほど。男は言い訳しないべきだ。二言はない」

 

 スバルは、ロズワールの即断の了承に頷き、そして少し間を開け、その望みを言う。

 

「――じゃ、俺を屋敷で雇ってくれ」

 

 スバルの申し出に、唖然とする女性陣。

 双子はその表情の変化の少ない面差しに困惑を浮かべ、ベアトリスはこれまた本気で嫌そうに顔をしかめる。

 咲夜は心底呆れた表情。

 中でもエミリアは、

 

「わ、私が言うことじゃないけど、ちょっとそれは……」

「あなた、バカね。エミリアはそう言いたいそうよ」

「ちょ、咲夜!そんなハッキリと……!」

「ええ!?エミリアたん、そこは否定じゃないの!?」

「ち、違うの。似たようなことを考えてたかもしれないけど、そこまで酷い言葉なんて思ってなんか…?」

「……ミリアたんのフォローになってない、フォローありがとう」

「えっと……どういたしまして?」

 

 スバルの皮肉に、そのまま感謝の意味として言葉を受け取る天然なエミリア。

 

「ってそんなことはどうでも良いのよ!スバル本当にそんなお願いでいいの?」

「エミリアたんはわかってねぇよ。俺は本気で心の底から、そのときそのときの本当に欲しいもんを望んでるんだぜ?」

「――え?」

「正直、俺ってば今のところは徹頭徹尾の一文無し!そこんところは咲夜たんに指摘されて気付いたけど。今後の生活も考えりゃ、それに、超可愛い超好みの超美少女とひとつ屋根の下で暮らせる、実に合理的。ベストな選択だぜ?」

「……別に屋敷にいたいのであれば、食客とかで良かったんじゃ?」

「エミリア。言っちゃだめよ。スバルは頭が空っぽなんだから、気付かなくても仕方ないの」

「――その手があったか!? ロズワール!?」

 

 エミリアの食客の発言に対して、咲夜が諭すように、スバルの残念さを語るが、スバルはその発想には気づかなかったと少し、涙声で一縷の望みをかけてロズワールを見るが、

 

「最初の要求が有効です。男に二言はないからねぇ」

「うぉぉーい!そうだよね!男は二言とかしないもんね!?」

 

 さっきの誰かの発言が跳ね返っていて泣く泣く却下。

 すごすご引き下がるスバルは今後の就労生活に思いを馳せながら。

 

「さて、スバルくんの望みは聞いた。両者の間で快く合意もできた。なら、スバルくんと同じく功労者の咲夜くんの望みも聞かないわけにはいかないよーぉね?」

 

 ロズワールが、スバルの話に関してはここで終わりと、話を締め、今度は咲夜にも同様に話を振る。

 咲夜も当然の流れと、予想できたことなので、願いは既に考えていた。

 咲夜もスバルと同様にお金の持ち合わせがない。

 そして何としても幻想郷に戻らなければならない。

 ともすれば、願いは絞られる。

 咲夜は、口を開いてその願いを言う。

 

「わたしの願いは――」

 

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 余談だが、スバルの「好みの女の子」と言う少し告白じみたスバルの発言に対して、エミリアは眉を潜ませ、考え込みながら小さい声でぽつりと呟く。

 

「女の子と一緒の職場がいいなんて、不純よ。……咲夜とラムとレム、誰がスバルの好みだったんだろ?もしかしてベアトリス?」

 

 唇に指を当てて、まったくの見当違いな想像に胸を膨らませるエミリアだった。

 咲夜はたまたまその声が聞こえて思わず、噴き出してしまったとかなんとか。




果たして、咲夜たんの望みは如何に?

次回で早速、開かされますが。
咲夜たんが色々と行動する回になってきます。
あまり、ネタバレできないのでここまでに。

……最近、作者は「咲夜さん」よりも「咲夜たん」と打ち込む方が自然に感じてきています。たぶん、スバルに毒されたんですよね。
そのうち、間違えてスバル以外の人に発言させちゃうかも?(笑)

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