ゼロから始める瀟洒な異世界生活   作:チクタク×2

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第三話に続けて投稿です。

今回は若干の説明回ですね。


第四話:真の従者とは

 レムの案内の元、一行は庭園に到着する。

 レムとラムはまだ他に仕事があるらしく、そこで別れる。咲夜とスバルは庭園の中心で、座りながら目を瞑り、顔の前で手を組んで祈っている様子のエミリアを見つける。

 

 エミリアの周りには淡い光輝く存在が周囲にあった。

 可憐な少女とその幻想的な風景に見とれ、二人は息を呑む。

 そして、エミリアは祈りが終わったのか、目を開けて立ち上がる。 

 そして、淡い光に話しかけているのだろうか、エミリアの言葉に彼女の周りの光は明滅して反応を返している。

 

 これが、エミリアの言っていた日課というものだろうか。

 

 暫くしてそれが終わったのか、彼女の周りの光が散っていき、光が離れ消えていく。

 全ての光と別れを告げると、エミリアは咲夜たちに気付き、声をかけてくる。

 

「来てたのね。日課は終わったわよ」

「お、おう。何が起きていたのか知らねーが、凄いな!エミリアたん何してたの?」

 

 咲夜も抱いた疑問をスバルが質問する。

 その質問にエミリアの肩に乗っていたパックが答える。

 

「精霊との契約の儀式。――誓約の履行だよ」

 

 聞き覚えのない単語に、スバルと咲夜は疑問の表情をする。

 パックはその反応を見て説明を付け加える。

 

「まず、精霊使いは精霊と契約しないと精霊術が使えない。で、契約内容は精霊によって異なる」

「金貸しによって利息とか担保が違うってわけだな。オーケー」

「嫌な例えね」

「だね。失礼しちゃうよね。精霊が求めるものは個々で違うんだけど、相手がああいった微精霊みたいな子たちだと、術者本人のマナを介した触れ合いで、わりと簡単に協力を取り付けられるんだよ」

「お手軽な感じなんだな。つっても、今の言い方だとちゃんとした精霊は別なんだろ? そこんとこどうなんですか、精霊さん」

「賢い子は話が早くて助かるよ。……変に頭が回るから、余計な脱線して話が進まないって感じもするんだけど」

「そうよね。一言も二言も多いのよね」

 

 咲夜とパックの言葉に何故か、いやあ、と照れて頭を掻くスバル。

 そんなスバルにパックは生温かい視線を、咲夜は冷たい目を向ける。

 

「スバルの言った通り、ボクを始めとした意思ある精霊はもうちょっと要求内容が厳しい。その分、術者に貢献するつもりだけどね。ボクはこれでもそれなりに力のある精霊だから、リアに付けてる誓約は厳しいよ」

「さっきから気になってたけど、そのリアって呼び方可愛いな」

「君のエミリアたんには負けるよー。ボクも今度からそうしようかな」

「――お願いだから、絶対にやめて」

 

 どうやら彼女も色々と苦労しているらしい。

 エミリアの切実そうな願いを見て、咲夜は思わず、エミリアに少し共感を抱いてしまう。

 

「そういえば、まだ二人にはお礼を言っていなかったね。危うくリアを失うところだった。感謝してもし足りないよ。なにかして欲しいこととかあれば言ってくれれば、大抵のことは叶えてあげるよ」

「んじゃ、好きなときにモフらせてくれ」

 

 スバルの即断の返事の速さとその内容に、三人は驚く。

 

「ちょ、もうちょっと考えて決めてもいいんじゃない?」

「いーや、一流のモフリストからしたら、これは巨万の富と引き換えても余りある対価だぜ」

 

 言いながら権利を履行して、スバルはパックに顔をこすり付け、思う存分にモフり続ける。

 

「ふーむ、スバルのすごいところは本気で言ってるとこだね。うすぼんやりと心が読めるからわかるんだけど」

 

 手指で自由に弄ばれながら、パックは愉快げにそう言った。

 戯れる二人の様子にエミリアははっきりと呆れのため息をついて、

 

「なんだかもう、スバルを理解しようとするのって疲れるわね」

「わたしは理解することを放棄したわ。バカはいつだって常人の理解を超えてくるもの」

「咲夜たん辛辣だな。でも諦めんのよくないぜ。人生物事、対人関係は相互理解の精神から成り立ってくもんだ」

 

 スバルはそう言って、こちらにウインクを投げるが、エミリアの「それ、すごーく、不愉快かも」と、彼女の綺麗な顔を歪め、咲夜も思わず一歩足を下げて引く、そんな二人の反応に傷つくスバル。

 

「スバルが変わり者と理解できたけど、咲夜は僕にどんなことをして欲しい?遠慮せずに言ってごらん」

「そうね。その前に少し質問しても?」

「いいよ」

「ここの屋敷の持ち主のロズワールって人はこんな大きい屋敷を持っていることから随分とお金持ちなのだろうけど、どういう人物なのかしら」

「おや、知らないのかい?ここルグニカでは結構有名だと思ってたけど」

「俺も知らねーな」

「結構な特殊な田舎の場所から来たから、知らないことが多いのよ」

「そうみたいだね。ゲートもついこの間まで開いていなかったみたいだし、スバルは今なお開いてないみたいだしね。二人とも普通の場所で過ごしていなかったみたいだね」

 

 咲夜は、既にその話を聞いていたが、スバルの方は初耳だったようで、「ゲートって何?」と疑問を上げるが、質問からどんどん話が話が逸れるため、咲夜は「それは後でエミリアにでも聞いて」と遮る。

 

「えっと、ロズワールのことだったね。ロズワールはここ王国の筆頭宮廷魔術師だよ」

「すげぇ、大物だった!」

「ここの主は、そんな凄い人だったのね」

 

 咲夜とスバルは、屋敷の主が予想以上に、凄い人物だったことに驚く。

 しかし、それは咲夜にとって好都合だった。

 咲夜は「ここからがお願いの話になるんだけど」と前置きして、

 

「実は、恥ずかしい話だけど、わたしは今お金を全然持っていないのよ。パックじゃなくてエミリアの方へのお願いになるかもだけど、そのロズワールの人に王都の方で働き口とか紹介してもらえるよう、お願いしてもらえないかしら?」

「スバルと違って随分と現実的なお願いが来たね」

「咲夜はスバルと違ってしっかりしてるもの」

「うう、エミリアたんの咲夜たんと俺の信頼の差が、俺に突き刺さって胸が痛い」

「どうかしら?」

「うん、それはたぶん、僕やエミリアの方からお願いしなくても、きっとロズワールは聞いてくれると思うよ。だからそれとは別にお願いを聞いてあげるよ。勿論、ロズワールの方に咲夜のお願いを聞いてもらえるよう僕の方からも頼んでみるよ」

「ありがとう、助かるわ」

 

 どうやら、パックの言葉を信じるなら、ロズワールという人からも、お願いを聞いてもらえるらしい。

 エミリアたちとどういう関係の人物かは分からないが、それなりに関係が深いのだろうか。

 ひとまず、パックがそれとは別に願いを聞いてくれるならありがたい。

 そう思い咲夜は、願いを口にしようとしたとき、「エミリアさま」と声を聞こえた。

 そこには、いつの間にかに来たのだろうか、双子のメイドがいた。

 

「「当主、ロズワール様がお戻りになられました。どうかお屋敷へ」」

「そう。ロズワールが。……じゃ、迎えに行かないとね」

「「はい。それからお客様も。目が覚めているなら、ご一緒するようにと」」

 

 そして、メイドたちに連れられて、咲夜たちも庭から屋敷に戻る。

 

「どんな人なんだろうな、噂の宮廷魔術師殿とやらは」

「きっと、随分と個性的な人物ね」

「え!?うそ、咲夜なんで分かったの?」

 

 これから会うことになるロズワールという人物の人となりについて、疑問を上げたスバルに咲夜が推測し、その推測が当たっていることにスバルを除き、声を上げたエミリアを含めた全員が驚く。

 

「主の意向に沿って動く、主に真の忠誠を誓っている従者。真の従者は主の性質を映す鏡のようなもの。そっくりとまではいかないだろうけど、どこかその在り方は似るものよ。メイドらしくないメイドときたら、貴族らしくない貴族だろうな、と思ってね」

 

 咲夜はそう言い、双子のメイドたちを見る。

 スバルやエミリア、パックも双子を見て納得する。

 確かに、メイドらしくない太々しさを持っているメイドたち。

 特に従者も主も変わり者であることを知る、エミリアとパックにとって、納得させられる理由であった。

 そして、なにより長年従者として仕えてきたという咲夜の言葉には、説得力が感じさせられた。

 

「うん、とっても変わってる人よ。スバルと気が合いそうなのが、嫌になりそうなくらい」




次回はロズワールとの対面回。

相変わらず作者のお話は、スローペースですが、できるだけ丁寧に話を進めていきたいので、悪しからず。

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