自信の小説の評価は小さいものの、UAの伸びをちょくちょく見ては喜んでる筆者です。
おかげさまでUA4500突破です!
正直ここまで伸びるとは思ってなかった・・・。
第一章の話が終わりましたら、一旦、第一章の文章の見直しをする予定です。
評価の低さの原因が話が面白くないからなのか、文章の読みにくさなのか、もしくは両方、それとも他にあるのかは分かりませんがなんとか改善できれば、と考えています。
大筋のストーリーの流れについては、変更するつもりはないので、修正されたとしても既読済みの方は再度読み直す必要はないようにするつもりです。
改善できれば、その後の第二章についてもそのまま生かせるようになれるといいですしね。
長々と、作者の前書きの駄文が続きましたが、それでは第十二話の始まりです。
咲夜と老人が話していると、盗品蔵の扉がノックされる音がする。
「誰か来たようじゃの。お前さん連れか、もしくはフェルトが来たってことかのう?」
老人は訪れた人物を迎えるため扉前まで移動し、先ほどの咲夜と同じように合言葉を投げる。相手もそれを承知していたのか、すぐに返事が返ってくる。
「大ネズミに」
「ホウ酸団子ってどこで売ってんの? 毒」
「スケルトンに」
「意外と掘るのって労力いるよな。落とし穴」
「我らが貴きドラゴン様に」
「ファンタジー世界だから実際いるんだろうけど、マジ直接対面したらなんにもできないこと請け合い。でもロマンだから会いたいのも事実。そんな曖昧な自分の心に嘘をつくこともできなくて、ところがそんな自分がやっぱり嫌いじゃない。クソったれな気分」
「余計な枕詞つけんと合言葉も言えんのか! 余計に腹立たしいわ!」
扉から返ってくる合言葉の独特のふざけた言い回しの言葉から、スバルが言っているのだろうと咲夜は苦笑する。
老人はスバルの合言葉の返しに怒鳴り散らしながらも律儀に扉を開き、スバルと口論をしながらも中に迎え入れる。
咲夜の予想通り、老人が明けた扉からはスバルが入ってくる。
しかし、スバルだけでなくフェルトの姿もあった。
どうやらスバルは先にフェルトと合流してから盗品蔵に来たようだった。
「あれ、そのメイド姿は咲夜?」
「先ほどぶりね、スバル」
「どうして咲夜がここに?」
「あなたに聞きたいことがあってね。さっきは聞きそびれてしまったからあなたを探していたの」
「俺を探して?それにしてもよく俺が盗品蔵に来るって分かったな」
「それはあなたが、銀髪の少女を探していたからよ」
「?」
咲夜がスバルを探し当てた理由が、「エミリアを探していたから」と返事を返されるが、スバルには意味は分からなかった。
咲夜はスバルに近づき、スバルだけに聞こえるよう囁やき、説明する。
咲夜が近くに来てスバルは顔を赤くするも、咲夜の声に耳を傾ける。
「あの後、フェルトって子が銀髪の少女から盗みを働いていたことを思い出したのよ。わたしはその場を見てたから」
「咲夜はその盗難の現場にいたのか……」
勿論、咲夜がエミリアからフェルトが徽章を盗んだ現場を目撃したことは、嘘である。
しかし、誰もその事が嘘と分かる人間もいない。
そして、これまでのエミリアやスバルとの会話で、大凡の事情を理解していた咲夜は、知っている事実をさも目撃したように述べることで、咲夜の話に信憑性を持たせていた。
スバルが知る事実とも矛盾しないため、嘘と疑わずに信じたようだった。
「あなたの探している徽章を盗まれた少女は、盗みを働いたフェルトを探すだろうし、調べてみれば盗品は、この盗品蔵に持ち込まれるって話だったから、ここにいればもしかしたら銀髪の女の子にもあなたにも会えるかも、と考えたのよ。わたしの見かけた銀髪の女の子が、あなたの探している少女と人違いだったらダメだったでしょうけど、どうやらここでは銀髪は珍しいようだから」
咲夜はラインハルトに銀髪はいたずらに目立つと忠告されたことを覚えていた。
そして、王都というだけあって、人はたくさん見かけたが、これまで銀髪をした人物は、自分を除けばエミリアくらいしか見かけなかった。
ならば、同一人物である可能性が高い。
咲夜はスバルにそう説明する。もっとも、時間逆行を認識している咲夜は同一人物であることを分かっていたが……。
「すげえな、咲夜。それだけの情報でここまで推理できるなんて……。美人で強くて優しくて頭いいって何それ?完璧美少女?しかもメイドで銀髪だし。俺の世界にはそんな女性はいなかったぜ……。さすが異世界ファンタジー。侮れないな……。そう言えば、咲夜が俺に聞きたいことって?」
「その話は後にしましょう。あなたはここに用事があって来たんでしょう?」
スバルが咲夜の質問内容を聞こうとするが、咲夜に先に用事を済ませるように言われ、スバルも早く徽章を回収しないとまたエルザがいつ盗品蔵に訪れるか分からない事実を思い出し、用事を優先することにすることにしたようだ。
「さて、爺さん。さっそくだけど本題に入りたい」
「なんじゃ?」
「頼みたいのは鑑定、って感じになるかな。俺の持ってきた『魔法器』に値段をつけて、それをフェルトに対して保障してもらいたい。そんでもって、それとフェルトが盗んできた徽章と取引を行いたい」
あらかじめ咲夜からスバルが商談に来ると話を聞いていた老人は、スバルの話に真面目な表情をして聞く。
スバルが懐から携帯電話を取り出す。
金属質な見た目で独特な色をしていたそれは、咲夜の目から見ても興味を引くものであった。
少なくとも幻想郷では見かけたことはなかった。
香霖堂に行けば、見つかるかもしれないが……。
「これが魔法器。さしもの儂も見るのは初めてじゃが……」
「変わった形状をしているのね。」
「たぶん世界に一個しかない。あと、わりとデリケートな機械だから扱いには注意。ぶっ壊されるとマジで死ななきゃいけないレベル」
スバルの話を聞き、スバルから携帯を受け取った老人の手つきがより慎重なものになる。
そして、折り畳み式の携帯を開く。
起動音とともにわずかな光で照らされて画面が表示されたことに、スバル以外の人間は驚いた。
「この絵は……」
「タイミング的にちょうどいいかと思ってな。効果のほどを見せつける意味で、フェルトちゃんの一日を待ち受けにしてみた」
咲夜も携帯を覗き込んでみると、その画面にはフェルトの画像が表示されていた。
「これは驚いた。こんだけ精巧な絵を描けるもんはおらんじゃろうな」
「時間を切り取って、そこに封じ込める魔法器さ。人の手によるもんじゃ、到底できない綺麗さだろ?」
「これは確かに恐れ入ったわい。もしも儂が取り扱うなら、聖金貨で十五……いや、二十枚は下らずにさばいてみせる。それだけの価値はある」
「とまぁ、俺の手札はこんな感じだ。宣言通り、聖金貨で二十枚以上の品物。これでお前の徽章との物々交換を申し込みたい」
咲夜は、なるほど上手い表現をするものだと思った。
咲夜は携帯の存在は知らなかったが、この画像に似たものを知っていた。
ブン屋がよく持ち歩いているカメラという機会で写される写真というものだった。
そしてこの機械はそれに似た、もしくは同じ機能を持っているのだろうと推測する。
スバルはその撮影の機能をさも魔法のような道具と思わせて説明し、それは相手により価値あるものだと思わせるだけの効果があった。
咲夜は内心で少しスバルの評価を上に改めた。
(会った時は平凡な男かと思ったけど、意外と口は回るようね)
咲夜は、スバルとフェルトたちの交渉に関して、特にスバルに手助けするわけでもなく干渉するつもりもなかった。
いつエルザが訪れるかは分からないとはいえ、前回に来たときは日が暮れてた後だったため、まだ交渉するくらいの時間はあるはずだ。
咲夜はスバルから聞きたいことがあるが、スバルが死ぬとまた逆戻りしてしまう可能性があるため、事の顛末が無事に終えることを優先した。
「ま、それが金になるって保障がついたのは素直に嬉しいさ。聖金貨二十枚ってのも疑わないで済みそーだし。アンタの手札は了解した」
「だろ!? んじゃ、交渉成立ってことで。うまく売るのはそっちのやりようだ。ガンバ! それじゃ俺は急ぐんで、ここらで失礼させてもらおうかと……」
スバルはエルザのことが後を引いているのか、交渉をなるべく早く終えようと焦っていた。
そしてその焦りは交渉ごとにおいて相手に見抜かれると、不利になる可能性があるものだった。
(焦りすぎよ、スバル)
「ちょっと待て。なんでそんなに急いでんだ?」
「急いでるとか、そんなこと別にねぇですよ? あ、あとあんま顔、近付けんな」
「なんだよ。女の子の顔が近いと照れちゃうタチか?」
「いやお前、何日か風呂とか入ってねぇだろ。目に沁みる刺激臭がする」
スバルはフェルトから顔を下から殴られ、倒れこんだ。
その際に舌を噛んだのか、少しスバルは涙目で抗議する。
「女相手に容赦ねーな!?」
「お前もちょっとした軽口に容赦ねぇな!? 早くも流血沙汰だよ!」
「そんな臭うかな……」
「ほら、二人とも話が逸れているわよ。交渉をしていたんじゃないの?」
フェルトは少し傷ついたようで、自分の髪の匂いを嗅ぎ気にしてるようだった。
咲夜は、交渉の場に口を挟むつもりはなかったが、話が逸れてきていたので、軌道修正をしてやることにした。
咲夜の指摘に話が変わっていることに2人は気づき、話は戻る。
「……話を戻すけど、兄ちゃんはなんでそんなに急ぐんだよ?」
「人生ってのは有限なんだ。一秒一秒を大切に、無駄を極力省くことで……」
「あー、はいはい。そーゆーのはいいんで。つかさ……」
スバルは何とかごまかそうとするが、フェルトはそんなスバルの核心を突くような質問を投げた。
「そもそも、なんで兄さんはこの徽章を欲しがんだよ?」
(はあ。これは少し長引きそうね。……仕方ない、少し助け舟を出してやるか)
咲夜は、交渉において、スバルの旗色が悪くなってきたことを感じると、口を挟むことに決める。
「それは―――」
「それはね、わたしのためなのよ。」
スバルが言葉を返そうとしたセリフにかぶせるように、咲夜は言葉をそう発した。
スバルとフェルトの交渉。スバルにとって、交渉の雲行きが怪しくなってきたところで、咲夜さんの介入です。
次回は、咲夜さんのお手並み拝見回です。
・・・第一章って結構濃い話なんですよね。書いていてなかなか終わんねーな、第一章というのが作者の正直な感想です。
まあ、原作者様はプロローグや幕間を合わせると、二十四話もありますが。さすがと言わざるを得ない。