ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第58話 バースデー

海未の誕生日、俺達は朝から待ち合わせ、午前中は二人で弓道の練習をした。

練習の終わりには恒例となりつつある3セットマッチを行った。

今回は二人とも袴を着用し弓も自分の物なので、言い訳の効かない勝負である。

指導員や大学生、社会人の練習者も見守る中、俺達は互いにまったくミスなく射続け、1セット目、2セット目までは皆中し引き分けだった。

3セット目、ついに海未が一矢外し、俺の勝利が決まった。

俺はあまりの嬉しさに「きっせき~それは!今だよここなんだよぅ!」と、先日のラブライブでμ'sが歌った曲をアレンジして歌いながら小躍りした。

ぴょんぴょん跳ねながら手を上から下ろす振り付けは、もちろん目の前で俺を睨みつけている娘もしていたダンスである。

海未「くっ!この屈辱!ニューヨークから帰って来たら!また必ず勝負です!首を洗って待っていなさい!」

紫音「はーい!待ってまーす!でも絶対俺の方が弓道の練習するけどね!」

その時の海未の悔しそうな顔は忘れられない。

 

昼前になり、私服に着替えた俺達は弓道場を出た。

3月も半ばの晴れの日は、だいぶ気温も上がり海未の服装も軽めになっている。

 

 (スクフェス 園田海未SR<シャボン玉編>未覚醒 参照)

 

俺達は秋葉原駅ではなく、御茶ノ水駅の方へ手を繋いで歩いた。

俺のおこづかいにあまり余裕が無かったので、大学生が多い御茶ノ水で、オシャレで安めに食事が出来る店に入るためだ。

秋葉原には安く食事できる店はたくさんあるのだが、いずれも海未が喜んでリラックスできそうな雰囲気の店ではなく、そういう店になると若干お高目の値段設定なのだ。

俺達はデザートが美味いと評判のイタリアンの店に入り、デザート付きパスタランチを注文した。

弓道場から歩いてくる間にも、話は自然とニューヨーク行きの話になった。

海未はアメリカの銃社会を警戒しており、クモ男やコウモリ男といったヒーロー映画に出てくる銃撃や破壊のシーン、「神のような父」というギャング映画のイメージを濃く持っていた。

また「レオーネ」や「MIシリーズ」に出てくる特殊部隊やスパイ出身の人が多く住まい、日夜9・11のような大規模テロに狙われている街とも思っているようだ。

俺達家族がニューヨークに移り住んだのも9・11からは数年が経過した後で、ニューヨークは懸命にそのイメージから脱却しようとしている都市である事を俺は知っていたが、確かに日本の女子高生にまでは浸透していないだろう。

紫音「ふーむ、海未が心配している事は良く判ったけど・・・そういう映画って海未が好きなの?」

海未「いえ、アクション映画はお父様が好きで、居間のTVに良く・・・。ヒーロー映画は弟が好きなのですが、まだ怖くて一人で見られない所があり、一緒に見ます」

・・・なんだか、園田家の男性とはすぐに仲良くなれそうな気がした。

紫音「そっかぁ。それでなのかな?俺もあんまり見ないけど、例えば『西側街ストーリー』とか『NYゴースト』とか、恋愛映画は見ないの?」

そう言うと海未は苦虫を噛み潰したような表情をしたため、俺はちょっと笑ってしまった。

紫音「はは、今の変な顔、何?そんな顔してもかわいいとか、海未は凄いね!」

海未「か、からかわないで下さい!その、恋愛映画だって、今なら・・・あなたとお付き合いしている今なら、見れます!」

紫音「今ならって?見れない時があったの?」

そう聞くと海未は下を向いてもじもじし始める。

海未「その、スノハレの歌詞が出来る前の検討会で・・・恋愛映画を見るのが怖くて・・・そ、そもそもそうなったのはあなたのせいですよっ!」

うなだれている所から突然ぷんぷんと怒り始めた海未を宥めるべく、意味は判らなかったがとりあえず謝る。

紫音「ごめん、ごめんよ。じゃあニューヨークから帰ったらさ、弓道の勝負をして恋愛映画を観ようよ」

そう言うと海未は頬を染めて恥ずかしそうに頷くのだった・・・かわいい。

紫音「それからニューヨークって言ったってすごく広いし、海未が思うような危険な場所も全くないわけじゃないけど・・・」

俺は海未が安心出来るように笑顔で話す。

紫音「今回行く所は有名な観光地も近いから日本人もぽつぽついるし、夜遅く歩いたり無許可タクシーに乗せられてサウスブロンクスやブルックリンの奥の方へ連れ込まれたりしなければ、大丈夫だよ」

海未「はい・・・そうだと良いのですが・・・。基本的に3日目の撮影日まで、通訳もガイドも付かないそうで・・・心配です。スマフォも置いて行きますし」

海外ローミングやレンタル携帯などのサービスもあるが、今回は日数も少なく団体行動であり、各人のコストも抑えたいようで、スマフォを持って行くのは真姫ちゃんだけだそうだ。

海未と連絡が取れないのは俺も不安になりそうだが、文句を言える立場にはない。

 

ランチ後は旅行の準備で足りていない物を買い揃えるためロフポに行くことになった。

ロフポは珍しい品が並ぶ巨大な雑貨屋で、クリスマスにμ'sにプレゼントした照明スタンドを買った店でもある。

渋谷、池袋、上野、有楽町と今いる御茶ノ水から行くとしてもいくつかのロフポがあるが、今回は行った事のない青空街のロフポに行く事にした。

青空街は東京スカイタワーに造られたショッピングモールである。

前回浅草の水上バス乗り場から見たのが最接近であり、常日頃から秋葉原でも見える東京スカイタワーだが、まだ二人とも行った事がなかったからだ。

 

天気が良い土曜日のスカイタワーは、墨田川花火大会を思い出すレベルの混雑ぶりだった。

あわよくば展望台、と思っていたが諦めた。

青空街も猛烈に混んでおり、移動には常に手を繋がないとあっと言う間にはぐれそうだった。

これ幸いと手を繋ぎ、1階から回って行くと意外と食べ物の店が多い。

ランチを済ませた後だったため腹は満たされていたが、妹達には何か美味そうなものを買ってやろうと思った。

ロフポは3階にあり、海未は目的の小さな目覚まし時計を買った。

スマフォを日本に置いて行くので、無いと困ると思ったようである。

海未「お待たせしました。小さくてかわいい時計が買えました!次はどこに行きますか?」

満足そうな顔で聞いてくる海未に、俺は少し悔しくなった。

こんなもので満足されたら、今日この娘を独り占めしている意味がない。

紫音「次はね、もちろん海未の誕生日プレゼントを買いに行くんだよ」

すると海未は慌てて手を横に振った。

海未「いえ、先程のランチもご馳走になりましたし、ここまで一緒に来てもらい、これ以上は貰えません。それに、私はあなたの誕生日に何も・・・」

紫音「いや~俺の誕生日の時はまだ付き合ってなかったけど、ちゃんとサンドウィッチを貰ったし、海未は明日からニューヨークだから、誕生日プレゼント兼お守りをあげたいんだよ」

海未「そんな・・・その、お守りならこの弓矢のアクセサリーがありますし」

今日も海未のバッグと俺の腰には、お揃いのキーホルダーが光っていた。

紫音「それは弓道のお守りだよ。今日のお守りは向こうでも俺の事忘れないようにさ。海未が金髪の男を好きになったら嫌だから」

俺がそう言うと海未は真っ赤になって怒り始める。

海未「わ、私が浮気をするとでも言いたいのですか、あなたは!私はそんな目移りの激しい子ではありません!あ、あなたこそ、私が居ない間にその・・・」

海未は眼光鋭く俺を見上げる。

海未「昨日、紅音さんと翠音さんから聞きましたよ!コンビニの、かわいい佳織さんという子から、凜と同じくらい想いのこもったバレンタインを貰ったと!」

紫音「あー佳織ちゃんは確かにかわいい顔しているのは認めるけど・・・ちゃんと断ったよ。今は海未が好きだから」

怒りで朱くなっていた海未の顔が、今度は羞恥に染まる。

海未「なっ!こんな所でそんな事・・・恥ずかしいです!」

海未はそう言って視線を左右に振って周囲を確認した。

海未「わ、私だって浮気しません!小学生の時から気になっていた男の子が、中学生の時に穂乃果の事が好きと判ってから・・・男の子の事は考えなかったのです!だから、あなた以外の男の子を突然好きになるなんて、有り得ません!」

突然恋に落ちる事はない、というのがイコール浮気をしないという事になるのか、理論的にそれは通るのかちょっと良く判らなかったが、それよりも面白い情報に食いつく事にした。

紫音「え?海未ちゃんが好きだった男は穂乃果ちゃんが好きだったの?」

そう聞くと明らかに海未は目を泳がせた。

海未「す、好きなんて言っていません!気になっていた、と言ったんです!・・・その、ある時風紀委員だった私は、その男の子が学生服のボタンを外し着崩していたので・・・注意したのです」

少し辛い想い出なのかも知れない。

海未「気になってはいましたが、話した事はほとんどなくて・・・注意されたその男の子は大きな声で『うっせえ!』って」

俺達はロフポから出てフロア歩き始める。

海未「私は萎縮してしまって・・・その時穂乃果が割って入ってくれたんです」

穂乃果ちゃんは男の子の前に立ち「海未ちゃんはね、カッコイイ子は制服をちゃんと着たらもっとカッコイイって言いたかったんだよ」と言ってフォローしたそうだ。

するとその男の子は「高坂がそう言うなら、そうする。高坂にはカッコイイって思われたいから」

と言ったそうである。

紫音「へーっ。さすが穂乃果ちゃんだねえ。当時から可愛くて、迫力あったんだろうねえ~。で、それが海未ちゃんの初恋が失恋に終わった話?」

海未「ですから、初恋でも、失恋でもありません!私の初恋は・・・その・・・初恋は・・・あ、あなたです・・・」

そう言うと海未は俯いてしまった。

しかしサラサラのストレートヘアから歩くと覗く耳は真っ赤である。

猛烈にかわいい。

俺は海未の手を引いて青空街のスタッフ用通路の角を曲がり、海未を壁に押し付け、周りから見えないように自分の体で彼女を包み隠した。

海未「な、なんですか紫音、こんな所で何を、うんっ」

海未の顎を持ち上げ、まだ話している口を自分の口で塞いだ。

だいぶキスも上手になった海未だが、場所が場所だけに抵抗してくるかと思った。

数秒間、唇を重ねていたが、特に抵抗されなかったのにはこちらも驚いた。

紫音「ごめん、いきなり・・・嫌だった?」

海未「い、嫌ではありませんが・・・恥ずかしいです。もう少し人気の無い場所で、それと事前に一言あると・・・嬉しいです」

ですよね~すみません。

潤んだ目で見つめる海未の目を見返し、頭を掻いて照れ笑いしながら、俺は大事な事を思い出した。

女の子を体で隠すという自分の行動が、記憶を刺激したのだろう・・・穂乃果ちゃんとキスしてしまった事を、俺はまだ海未に話していなかった。

 

その後はリラ熊ショップやTV番組グッズショップを回り、大行列のプラネタリウムは次回への課題とし、アパレルやファッション小物の店舗が並ぶ階に来た。

並んでいる服は全面的に春物で、ミニスカート、ミニワンピの類が多い。

絶対海未にも似合うと思うのだが、俺にはあまり知識がなく「何故これが似合うのか」を説明出来ないため、服をプレゼントするのは早々に諦めた。

しかし女子同士の買い物でも「絶対かわいい」とか「絶対似合う」という言葉には根拠がない気がするのだが・・・それで会話が進むのは不思議である。

まだニューヨークは寒い時期なのでストールやマフラーも良いかと思ったが、その手の物は冬物処分のコーナーにあり、プレゼントには不適切なばかりか旅行には荷物になる可能性もある。

俺としては財布が許せば指輪をプレゼントしたかったのだが、金額の桁が一つ違っていた。

そのフロアにはサマンサタパサが入っており、若い女の子が群がっているので覗くと、予算では化粧ポーチくらいなら買えそうだった。

しかし海未は生徒会副会長であるせいか、普段は化粧をしない。

海未が化粧をしているのを見たのはステージ上と俺の誕生日デートだけだ・・・一応念のため聞いてみる。

紫音「海未、化粧ポーチって持ってる?」

海未「はい、持っていますがほとんど使いません。ステージの時はことりにして貰いますから旅行にも必要ありません」

との事だった。

色々な小物店や雑貨屋を巡り、最終的に俺が海未の誕生日プレゼントに選んだのは、シンプルなデザインの銀色のネックレスである。

ペンダントの部分は月をあしらっており、小さいながらもアメジストがアクセントとして嵌まっていた。

これをプレゼントしたい、と言うと海未は恥ずかしそうに首を横に振り「いいです、悪いです、要りません、似合いません」と言い続けていたが、俺がレジに並ぶと諦めたようだった。

 

目的を無事果たし、最後はジプリショップでトロロのぬいぐるみをもふもふすると、海未がとても満足げな顔をしたので聞いてみた。

紫音「海未、楽しかった?もう思い残す事はない?」

すると海未はふるふると首を横に振った。

海未「縁起でもない事を言わないで下さい!私はあなたに弓道で完全勝利し、恋愛映画を攻略し、まだあなたと行っていないプラネタリウムや水族館に行くまで死ねません!」

紫音「はは、その意気だよ。無事に帰って来いよ。俺だってまだまだ海未としたい事がたくさんあるんだからさ!」

海未「はい、ありがとうございます!必ず帰ります。待っていて下さい!」

俺としては「ニューヨークくらいでそんな身構えていません」くらいの返事を期待していたのだが、海未はやっぱり死地に赴き生還するような決意をしているようだった。

 

妹達に「チーズの庭」という店のフロマージュを買って家路についた。

だいぶ日も伸びてきて多少遅くなっても空は明るいのだが、海未は明日からニューヨーク旅行だ。

周到な彼女の事だから準備はほぼ終わっているのだろうが、何度も荷物を確認しそうだし、早く帰ればその分早く休ませてあげられる。

明日は東行きなので出発後すぐに日は落ち、夜間飛行でほぼ海上を飛ぶため外も見えず、朝に出発するのにニューヨークのその日の朝に着くというパターンだ。

当然機内は寝るに限るのだが・・・初めての国際線のエコノミー席で海未がぐっすり眠れるとは思えない。

暮れなずむ中を俺達は園田邸に急いだ。

 

暗くなり始めた頃、俺達は園田邸に帰りついた。

門の前でふと見つめ合う。

海未「今日は、ありがとうございました。・・・ですが、まだ帰りたくありません・・・」

紫音「はは、俺だってそうだよ。でも明日に備えて海未は寝るべきだよ。体力温存しないと。明日は空港まで俺がトランク持つから」

明日のバイトは午後からなので、俺も成田空港まで見送りに行く約束になっていた。

俺は今日買った品物の中からネックレスを取り出した。

不満そうな海未の肩を優しく掴み、後ろを向かせる。

何回も触っているが、海未の髪はとても綺麗でどうしても、許可を得ないといけない気になる。

紫音「海未、髪に触るよ」

海未「ふふ、何も言わないでキスする人が、何故髪に触る時は一言あるのですか?おかしな人ですね、あなたは」

紫音「はは、そうだね。海未の髪、すごく綺麗で大好きだから何となく、聞いちゃうんだよね」

俺はそう言いながら、ウエストのラインに届きそうなほど長く美しい黒髪を、左右から丁寧にまとめ、海未の左肩から前に流した。

真っ白いうなじがあらわになる。

流した髪の下からネックレスを首に回し、うなじの上でホックを留めた。

ついでに軽くうなじにキスする。

海未「あんっ・・・もう、キスする時は一言欲しいと言ったではありませんか・・・エッチなんですから」

紫音「そうだった・・・ごめんね。気をつけます」

海未は髪を背に戻しながら向き直った。

ペンダント部分を手に取って見つめる。

海未「綺麗ですね・・・」

紫音「海未、誕生日おめでとう。これからもよろしくね。とりあえず明日から頑張れ。それと、気をつけろよ」

海未「はい、ありがとうございます。私こそ、ふつつか者ですが、なにとぞよろしくお願いします」

紫音「はは、それってお嫁さんのセリフじゃなかったっけ?」

海未は慌てる。

海未「いえ、別にお嫁さんだけが言うわけではありません。園田家では謙虚が美徳とされるのです!そ、それよりも、このペンダント、どうして月を選んだのですか?」

なんか誤魔化された気もするが、まあ良いだろう。

紫音「判らない?それはお守りとして、俺だと思って明日持って行って欲しい。アメジストがアルテミスを守るってるって意味だからさ」

俺がそう言うと海未は不思議そうな顔をした。

紫音「それはともかく、ニューヨークでは向こうから声をかけてくる変なタクシーには乗らない事。荒れたスラムみたいな所には入らない事。夜は早めにホテルに戻る事。限界でも夜9時だな」

海未「はい、必ず守ります。皆にも、そうさせます」

紫音「絵里先輩や希先輩、真姫ちゃんや海未だって、ある程度英語話せるだろ?まあでも迷ったら日本人を探した方が良いかな?」

海未「はい。私はそこそこですが、話せない子にはそうさせます」

紫音「うん。じゃあ明日は余裕見て、朝7時に迎えに来るから。早く寝ろよ」

俺がそう言って帰ろうとすると、海未に袖を掴まれた。

紫音「おっと。どうしたの?」

海未「・・・その・・・今日は、して下さらないのですか?」

紫音「え?なんか忘れてたっけ?・・・ああ、このネックレス仕舞う箱か。はいどうぞ」

海未「違います!それも貰いますが、そうではなくて・・・もう、ずるいですっ!」

紫音「ええ~っと、何だっけ?」

機嫌が悪くなってきた海未に箱を渡して必死で考える。

すると海未は素早く左右を見渡し・・・誰も居ない事を確認すると俺の首にさっと両手を回し、背伸びした。

海未「・・・やっぱり、届きません・・・ずるいです」

そう言って海未は俺の首筋にキスをした。

紫音「はは、海未、キスする時は一言、だろ?」

海未「!そ、そうでした。その、キスを忘れています!」

俺はあまりにも海未がかわいいので、意地悪がしたくなった。

紫音「いやあ、特にそういう約束はしていないけどなあ!何?海未は、したいの?」

その時の頬を朱に染めて俺を見上げる海未の顔は、俺の人生で永久保存したいシーンランキングの第一位に、永らく留まり続けた。

海未「ひ、酷いですっ!意地悪です!人が来てしまいます・・・いつもあなたが帰り際にして下さるから、忘れたと言ったんです!」

海未は俺の首を両手で引っ張り、背伸びをし続けている。

紫音「いやあ、俺は海未の首にしたからもういいけど。でも海未がどうしてもキスして欲しいってお願いしてくるんなら、考えようかなあ」

海未「なっ!う~・・・どうしてあなたはいつでも私にキス出来るのに、私はお願いしないといけないんですかっ?」

紫音「えー?そんな事ないよ~別に~。どんどんして下さって構いませーん」

海未「届かないですっ!もう意地悪・・・」

海未は背伸びをやめ下を向いて数秒唸っていたが、やがて顔をあげ拗ねた顔でこう言った。

海未「ニューヨークに行く前にどうしても、もう一度キスして欲しいです。明日は皆居てその余裕がありませんから。キスして下さい。お願いします」

心の中でスタンディングオベーションしながら、海未を抱きしめる。

紫音「ごめん意地悪言って。俺も海未にキスしたい。今日のおねだりは90点、かな」

再び背伸びし目を閉じた海未の唇に、俺はゆっくりと優しく、口づけた。


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