ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第47話 勉強会

海未ちゃんのお願いから一週間、12月に入り秋葉原はクリスマス商戦が本格化してきていた。

年末セールの影響もあるのかもしれないが、親父の会社でキャンペーンがあり、なんと家族全員がスマートフォンに機種変する事となった。

親父以外の家族の携帯は日本に来てから手に入れたもので、まだ1年と使っていなかったのだが・・・新しいモノが大好きな俺達兄妹は、早めのクリスマスプレゼントを素直に喜んだ。

スマートフォンになり妹達から即日入れさせられたのが「Liner」である。

これは通話機能もあるグループチャットアプリで、既読通知やスタンプでの表現、軽快な操作などが人気である事は知っていた。

学校で友人らが何人か使用していて噂は聞いていたのだが、実際に使うと確かに便利である。

まず家族グループ、兄妹グループの各グループを作りチャットをした。

それにプラスして紅音と二人、翠音と二人のトークも可能なようにグループ(板)を作る。

すると俺が実家マンションから自分の部屋に引き上げても、家族の会話が楽に続けられる。

便利さを体感でき、ここまでは素晴らしく好印象だった。

 

雲行きが怪しくなったのは翌日からである。

まず学校で運動部系の友人、ゲームやマンガの会話をする友人のそれぞれとグループを作った。

次に昼休み、凛ちゃんからLinerに招待したいというメールが来たのでもちろん快く了解したところ・・・放課後にはμ'sグループに招待されていた。

μ's9名と俺、紅音と翠音、亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんの14名のグループがあり、それぞれ1対1のトークも出来るようになった。

最初はこれだけ女の子の友達と会話できる俺、スゲーと思ったのだが・・・事はそんなに単純ではなかった。

発言の数が・・・ハンパではない。

レスを返すのも大変で、しかも誰がその会話を聞いているのかがとても複雑になり、うっかりすると意識しないで爆弾発言をしてしまいそうなのだ。

最初のうちは頑張って一つ一つの発言にレスしていたが・・・2日も経つ頃には諦めた。

学校の友人に音ノ木坂のスクールアイドルと知り合いなんて事がばれたら大変なので、万が一にも間違えないよう、眠い時の発言は避ける事とした。

これまで培って来た信頼を一言で壊しかねない。

 

     ■□■

 

翌週後半の平日、俺は学校を出てバイト前に道場で筋トレをすべく歩いていた。

実は期末テスト10日前なので、筋トレは今日までとし、その後はバイト時間以外、テスト勉強をする予定である。

つまりしばらく部活を休みにするため、今日の筋トレは気合いを入れたかったのだ。

 

幾分早足で移動していると、スマフォがLinerの発言を通知した。

なんと海未ちゃんから開通確認以降初めてのトークである。

「少しで良いのでお時間を下さいますか?」とある。

俺はなんだか体が軽くなったような気持ちになり、もちろん了解した。

Linerが繋がっていてもなかなか会話のネタが無く、仲良くおしゃべりが出来なかった俺にとって、大きなチャンス到来に感じた。

弓道の試合でもあれば会話もできるのだが、残念ながら現在は試合の空白期間である。

ここは筋トレをサボってでも、会うべきだろう。

 

海未ちゃんは音ノ木坂制服の青いタータンチェックのミニスカートが少しだけ覗く長さの、学校の指定の紺色のAラインのコートを着て、ピンクのマフラー(これもチェック柄)をしていた。

俺の大好きな細く長い脚は今日は黒いストッキングに覆われているが、それはそれで美しいラインが強調されてより可憐に見え、かわいい。

今日の海未ちゃんはどうも希先輩に会うのを避けた模様で、俺達は弓道場の前で会った。

紫音「海未ちゃん、おっす!どうしたの?急に連絡来て嬉しいけど・・・またμ'sの作業?」

海未「あ、こんにちは。急にお呼び立てしてしまい、失礼しました。来て下さって、ありがとうございます」

紫音「いやあ、会えるの嬉しいから遠慮なく呼んでよ!あ、でも俺しばらく期末テストの勉強があるから、10日間くらいは反応できないかもだけど・・・」

海未「す、すみません!勉強があるのにお呼び立てしてしまい・・・」

紫音「いや、明日から部活停止してバイトだけにしようかと思って。だから今日は大丈夫だよ。で、どうしたの?」

俺がそう聞くと、なんだか海未ちゃんは歯切れ悪く言った。

海未「どうしたと言われると、その、どうもしていないのですが・・・あっ、そのマフラー、かわいいです。似合ってます」

先日雪がちらついた事もあり、その時の俺は凛ちゃんから貰ったマフラーを巻いていた。

紫音「ああこれ?これは誕生日プレゼントに凛ちゃんから貰ったんだよ。ちょっと可愛い過ぎるかと思ったけど、皆の評判はすごく良いね」

そう言うと海未ちゃんは明らかに狼狽した。

海未「あっその・・・私は何もあげられていなくて・・・すみません」

紫音「いやあ、海未ちゃんからは手作りサンドイッチを貰ったよ。バースデーカードが貰えなかったのは超残念だけど」

海未「・・・すみません。あのカードは・・・紫音さんを疑う内容で・・・」

紫音「そっかぁ・・・じゃあクリスマスカードに期待してるよ。それで一体今日はどうしたの?」

そう聞くと海未ちゃんは頬が紅潮し・・・小さな声で言った。

海未「あ、あなたの・・・が見たくなってしまって・・・」

紫音「ん?あんまり良く聞こえなかった。何が見たいって?」

聞き返すと海未ちゃんは俯いて手を握り、ぶるぶると震えだした。

海未「あ・・・あなたの顔が見たいって言ったんです!いけませんか!」

紫音「・・・ええ!・・・ちょっと失礼」

びっくりした俺は海未ちゃんの前髪を上げ、額に手を当てた。

海未「きゃあっ!何をするんですか!」

紫音「海未ちゃん、ちょっと熱あるんじゃない?俺送るから帰って寝た方が良いよ?」

海未「だ、大丈夫ですっ!病気ではありません!私はそんなにおかしな事を言ったのですかっ?」

えらい剣幕で怒り始める海未ちゃんに、俺はたじたじとなりつつも返答する。

紫音「えーと、まあ、その、おかしくはないけど。俺、海未ちゃんって用事がないと会ってくれないと思ってたから・・・顔を見たいって、俺にただ会いたくなったって事だよね?」

すると海未ちゃんの頬は染まり、目は辺りを見回している。

海未「そう、そうです・・・いけませんか!」

俺は深い感慨を覚えた。

紫音「海未ちゃんがこんなにかわいい事言うなんて・・・感動したよ。長生きはするもんだねえ。今の言葉、録音したい」

俺が冗談混じりにそう言うと、海未ちゃんは瞬時に腹パンチする構えを取った・・・が、一旦解除して俺の斜め後ろに回り込んだ。

その後、俺の肩をポカポカと叩く。

海未「もう!恥ずかしい事言わないで下さい!今までの私も悪いですが・・・録音とか意地悪ですっ!」

紫音「いやあ、あまりにも似合わないセリフだったから!ごめん、ごめんってば。許して」

海未「私だって!似合わないって判っていますけど・・・酷いですっ」

海未ちゃんが頬を染めながら軽く叩いてくるのは、じゃれあっているようでとても嬉しい。

紫音「いやあ、今までのイメージあるからね、これからもそんなかわいい態度をずっと続けてくれたら似合うよ絶対。でも、どういう心境の変化?」

そう聞くとやっと海未ちゃんは俺を叩くのをやめた・・・それはそれで、ちょっと淋しい。

海未「心境の変化というか・・・作詞をしました。東京決勝用の新曲です」

紫音「おー、すごいね!あれ、ことりちゃんの話だとあと2、3日かかるって言ってたけど・・・どんな歌詞なの?」

海未「そ、それは・・・秘密です」

紫音「えー!ここまで来てそれはないよ。じゃあ予想すると・・・俺に会いたくなったって事は、弓道みたいに好きなら頑張れて夢を叶えられる、的な歌詞かな?」

その言葉を聞いた海未ちゃんは手をポンと叩いた。

海未「・・・それ、良いです。頂きます」

紫音「あれま、外れか。仕方ない。じゃあ決勝で歌う新曲、楽しみにしてるね。あ、作詞終わったんなら・・・」

海未「はい、終わったのなら?」

ちょっと鈍かった・・・発言した後、俺の脳裏にことりちゃんとの約束が浮かんだ。

紫音「・・・えーと、すみません、今のは無しで。ごめんね。じゃあ俺、そろそろバイト行かないと」

海未「・・・謝るというのが怪しいですね・・・私には言えないという事ですか?」

紫音「ご、ごめんよ海未ちゃん・・・言わないように言われてて・・・じゃあね」

海未ちゃんが明らかにジト目になったので、俺は手を振りそそくさとその場を後にした。

 

     ■□■

 

翌日、俺はバイトもなく部活も休みとし、神田明神下の交差点に居た。

そろそろ16時、待ち合わせの時間である。

Linerでこちらに向かっているという知らせもあったのだが・・・やはり女の子との待ち合わせは緊張する。

ことり「紫音くーん、待った?」

制服の上に茶色のコートを着て(音ノ木坂は指定でないコートも着用OKらしい)、白い手袋とマフラー、黒いニーソでぱたぱたと小走りで寄って来ることりちゃんは・・・一瞬天使に見えた。

普通には自分の目を疑うべき所だろうが、せっかくなので天使が音ノ木坂学院の制服を着ているのだと思う事にした。

紫音「おっす、ことりちゃん!今日はよろしく」

ことり「こちらこそ~!ふふっ、今日はことりの事よろしくお願いしますっ!頑張ろうね!」

音ノ木坂学院も期末テスト約一週間前の為、俺達は一緒に勉強をする約束をしていたのだった。

ことりちゃんからは「皆にことりがあんまり勉強出来ないの知られたくないから、二人でこっそり」と言われていた。

紫音「はは、俺なんかで役に立てば良いけど。俺もさ、教えて欲しい所有るんだよね」

ことり「はいっ、ことりに聞いて下さいっ!」

・・・笑顔が眩しい!さすがは天使。

 

俺達は穂むらの前を通過し肩を並べて歩いた。

俺が古文の担任のラリホーマ大西先生がどれだけ強力な魔法を使うか、面白おかしく語ると、ことりちゃんはコロコロと笑ってくれた。

さりげなく横を見ると、ことりちゃんは肩が触れるほどの近くにいる。

歩くだけでもなんだか少しドキドキした。

 

俺達は俺の高校の近くにある神田街角図書館に到着した。

この図書館は音ノ木坂学院からは幾分離れていて割りと小さめのため、音ノ木坂の生徒からの認知度は低い。

おまけに俺の学校の生徒はここを使うなら校内の図書室の方が便利なので、俺の知り合いの利用者はほぼ皆無なのだ。

とは言っても油断は大敵、二人分の勉強席を確保すると俺はマフラーを取ってブレザーを脱ぎ、伊達眼鏡をかけユミクロで買ったピンクのセーターを着て変装した。

ことりちゃんはコートを椅子にかけ、小さめの眼鏡だけの変装である。

二人で並んで座り、教科書とノート、筆記用具を出す。

女の子の隣で勉強なんて・・・妹を除けば10ヶ月近くなかったのではなかろうか。

緊張しながらことりちゃんの方を見ると、赤い細いフレームの眼鏡をかけたことりちゃんと目があった。

近い。

俺は今まで萌え属性の中に「眼鏡っ娘」というジャンルが何故存在するのが判らなかったのだが・・・その時突如、電撃に打たれたように瞬時にそれを理解した。

ことりちゃんの大きな瞳が上目遣いで俺を見ているだけでもドキッとするのだが、眼鏡がその視線や顔の小ささを更に強調する事に気付く。

反則的にかわいい・・・理性の半分を持って行かれた気がする。

ことり「眼鏡・・・珍しいよね。かけなくても見えるんだけど、今日は変装だよ。紫音くんと同じ」

俺は懸命に言葉を搾り出した。

紫音「うん、すっごく似合ってる。ドキッとした」

ことりちゃんはにっこりして英語の問題集を開き、俺の緊張をよそに勉強を始めた。

一人で舞い上がってしまった俺は恥ずかしくなり、慌てて古文の教科書を開く。

 

黙って勉強していると数分でことりちゃんが話しかけてきた。

ことり「ねえ紫音くん、この文長くて意味が判らないの」

紫音「うん、これはね・・・関係代名詞だっけ、このwhichが有るから、ここまでが主語なんだよ。で、これが動詞で・・・」

俺は丁寧に教えながら横目でことりちゃんを見た。

近くで見るとブレザーを着ていても、ウエストのくびれから腰にかけてメリハリがはっきりと判る素晴らしいスタイルをしている。

そう思うとまたもや、俺の理性に大きなダメージが入ったようだった。

まだ始まったばかりなのに、大丈夫か俺の理性・・・少し不安になった。

ことり「うわー!判った。すごい、ありがとう!」

紫音「そりゃまあ英語はね。それでごめん、俺にこの古文の意味を・・・」

俺は枕草紙の一節をことりちゃんに訳してもらう。

ことりちゃんは肩が俺に触れるのもお構いなしで身を乗り出してきた。

左にいることりちゃんが身を乗り出すと、リボンのついた特徴的なサイドテールは俺の顔に触れんばかりだった。

シャンプーの良い香りがする。

ことり「うんとー、これはね~」

振り返ったことりちゃんとまた目が合った。

俺は必死で古文に集中する・・・一瞬でも気を抜くとことりちゃんの事しか考えられなくなりそうだった。

なんとか枕草子の例文の訳をノートに書き留め、今度はことりちゃんの問題集を訳す事に専念する。

それなのに俺は、リップで彼女の唇がつやつやでぷるぷるとしている事に気付いてしまった。

これは俺の集中力が低いというより、ことりちゃんが可愛い過ぎるせいだと思うのだが・・・俺の理性は間違いなくゲージ赤点滅状態になった。

 

その後も俺はなんとか死んでしまいそうな理性をなだめすかして保ちつつ、教え合いっこを続けた。

30分ほども経ったであろうか・・・ことりちゃんがまた近い位置で俺を振り返って見つめてきた。

ことり「あ、そうだ、紫音くん、飴食べる?」

紫音「うん、貰う~」

緊張で喉が渇き、ちょうど何か甘い物でも欲しかった俺がそう言うと、ことりちゃんはごそごそとバッグを漁り、飴を出して包装を解いた。

ことり「はい、あーん」

そう言うとことりちゃんは、自分も口を少し開きながら、俺の口に飴を入れようと手を伸ばしてきた。

紫音「あーんって・・・ちょっと、は、恥ずかしいよ」

ことり「だーめ。はい、あーん」

妹とキャンディを食べる時はあーんをしないわけではないが、図書館では恥ずかしい・・・さりとて大声で抗議するわけにもいかず、俺は仕方なくことりちゃんの手で飴を口に入れてもらった。

ことり「紫音くん、かわいい!美味しい?」

紫音「うん、甘ーい!これ美味しいね!疲れてる時ピッタリだ」

ことり「だよね!このキャンディ大好きなの。恥ずかしがってる紫音くん、かわいいよう!はい、ことりにもあーんして」

うーむなんだか猛烈に恥ずかしいが・・・俺は周りを軽く見回し(背後を見ないのが敗因)ことりちゃんから飴を受け取り包装を外して口に入れてやった。

ことり「うーん!美味しい。紫音くん優しいね!男の子ってこういうの嫌がるのに・・・大好き!」

そこで完全に俺の理性は吹っ飛んだ。

うんうん俺もキミの事大好きだよもう何もかも忘れてこのままずっとキミと一緒だったら色々全部解決するよしたいして欲しいしたら良いな・・・ちょっと抱きしめちゃおうかな。

その時、にこにこしていたことりちゃんの顔が、恐怖に引き攣った。

俺の右横の席にどさっとバッグが置かれる。

海未「ずいぶんと仲がよろしいのですね、お二人とも。しかし勉強なさるには、少々お席が近すぎるのではありませんか?」

抱きしめるどころか手を動かしてもいないのに恐怖の顔をしたことりちゃんを不思議に思ったのと、その声が聞こえたのは同時だった。

振り返るのが恐すぎる・・・って言うかこのパターン何回目だよ!と俺は自分に突っ込む。

吹っ飛んだ俺の理性はいつの間にか全回復して戻ってきていた。

ことり「う、海未ちゃん・・・どうしてここにいるの?」

ことりちゃんが恐る恐る聞く。

海未「この人が私に言えない事があるなんて十中八九、ことり、あなたとの約束です。あなたが穂乃果の誘いを断り今日急いで帰ったので、失礼とは思いましたが後をつけてしまいました」

その言葉に俺とことりちゃんは凍りついた。

紫音「は、はは。じゃあもしかしてずっと、この図書館で見てたの?」

海未「勉強しているだけなら声はかけないつもりでしたが・・・あの時何故あのタイミングで穂乃果が出て来たか判りました。あーんがこんなに腹立たしいとは・・・」

怒ってる・・・。

海未「ことり、μ'sにある程度の区切りがつくまで紫音さんにはお互い何もしないと、約束しましたよね?」

ことり「うん、したよ。ことり、何もしてないもん。友達同士で勉強してるだけだよ。ね!紫音くん!」

紫音「そ、そうだよ。うん。ちゃんと勉強してたし!勉強以外何もしてないよ」

実際にダウンしかけた理性の事を棚に上げ、俺は笑顔で言った・・・少々色々だいぶ思い切り意識はしていたが、物理的には何もしてない事に嘘はない。

海未「・・・そうですか。では私も勉強に混ぜて頂いても文句はありませんね?」

その言葉に俺達はこくこくと首を縦に振るしかなかった。

 

その後はことりちゃんが俺に体を寄せて聞こうとすると海未ちゃんがいちいち注意し、海未ちゃんの疑問点に俺が答える際はことりちゃんが俺の服を引っ張って寄らないようにさせる、という事態となった。

しかし終わる頃には3人仲良く勉強し、随分捗る事が出来た。

そして期末テストが終わるまで、またちょくちょく勉強会を行う事を約束した。

 

帰りは海未ちゃんの家の方が近かったので海未ちゃんの家に先に寄った。

別れ際にことりちゃんに手を出したらどうなるか、何度も念押しされた。

3人になってから理性を通常運転できている俺なのだが・・・やはり海未ちゃんには疑われているようだ。

まあ昨日の事もあるから、今日は好意的に「ヤキモチ」と思っておく事にしよう。

 

海未ちゃんの家からことりちゃんと二人で歩き出すと早速聞かれた。

ことり「ねえ紫音くん、付き合うの待ってって言われて、良くOKしたね」

紫音「はは、そう言われるまでの間は何度もことりちゃんと付き合おうと思ったよ。でも、どっちと付き合ってもμ'sがおかしくなるの嫌だし・・・」

俺は一つため息を吐いて言った。

紫音「残念ではあるけど、やっぱり待つのが正解だと思う。二人の事大好きだけどμ'sも大好きだし」

ことり「ふふ、でもことりにもチャンスくれたんだなって思ったよ。ありがとう!」

紫音「いやいや・・・あ、一つ言っておくけど、俺、二人が東京や日本のトップアイドルになってから付き合いたいって思ってるわけじゃないからね。今付き合いたいけど、μ'sを最後まで頑張って欲しいから待つんだよ」

俺の言葉にことりちゃんは柔らかく笑ってくれる。

ことり「ふふ、判ってます!日本一のアイドルになっても、ことりの気持ちは変わらないから。・・・ね、手を繋いで良いですか?」

ことりちゃんの言葉に俺は少々慌てた。

紫音「え?それはマズイんじゃ?」

ことり「えー?穂乃果ちゃんや花陽ちゃんからは、海未ちゃんと手をつないで逃げたって聞いてるよ?ズルイよー」

ぐうの音も出ず、俺はことりちゃんと手を繋いだ。

ことりちゃんが手袋を取ったので俺もそうした。

12月の夜、その日も風は冷たく俺はことりちゃんの手ごと、ズボンのポケットに手を入れた。

ことり「暖かい・・・素敵な思い出をありがとう」

いや、こちらこそお礼を言うべきだ・・・天使の手がポケットにあるのだから。

 


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