ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第46話 海未の想い

ダイエット騒ぎがあった週の週末日曜、俺は今年の弓道を締めくくる大会に出た。

今日も共学の選手には女子からの声援が飛ぶ・・・うらやましい。

そういえば俺にも前回、佳織ちゃんからの声援が飛び、すごく嬉しかった。

前回みたいな奇跡が起こらないかな、と薄い期待を抱く・・・だが、決勝が始まる頃には半ばあきらめていた。

今日も自分の力だけでがんばるしかない・・・集中するにはかえって良いや!と、一抹の寂しさを抱いたまま、俺は決勝の射場に立った。

その時だった。

紅音「お兄ちゃ~ん!がんばって!」

佳織「紫音せんぱ~~い!かっこいい~!」

聞こえてきた声は、俺の心に爽やかな風を吹き込んだ。

はは、あの二人、一緒に来たのかよ・・・俺は心の中で笑いながら、大きく弓を構えた。

だがその後に会場に響いた声は、さらに忘れられない思い出となった。

海未「紫音さん!集中して!しっかり狙って!」

その声は乾いた大地に心地よく水が染み渡るようなイメージを想起させた。

聞き間違えるはずはない。

この8ヶ月間、どうしても欲しかった声援が、ついに俺の耳に届いたのだ。

告白、冷たい態度、ダイエット事件・・・靄がかかっていた俺の心は、その一言で奇跡のように穏やかに澄み切った。

自分でもかつて無いほど落ち着き、しっかりと狙いが定まり、矢を放つ。

 

     ■□■

 

大会の結果は個人戦準優勝だった。

東京都の男子高校生の中で2番目に上手い射手である、と言って良いだろう。

俺は海未ちゃんに結果とお礼を言いたくて探したが・・・見つからなかった。

紅音と佳織ちゃんは一瞬で見つかった。

俺は二人を一目見て、頭を抱えた。

紫音「ちょっと紅音!佳織ちゃん・・・ここ、男子の弓道大会なんだけど!そんな格好して・・・良いと思ったの?」

妹という事もあり、俺は少しイラついた口調になってしまった。

紅音「何よお兄ちゃん、人がせっかく応援に来てあげたのに・・・最初に言うのがそれ?」

佳織「そうですよ~失礼しちゃう!でも格好良かったです!準優勝とか凄いじゃないですか!佳織、学校の友達に自慢します!バイトの先輩が超カッコイイって」

紅音「佳織、それはやめて。お兄ちゃんには女の子を近づけないで」

佳織「なあに?紅音ってほんとブラコンだよねっ!佳織達は女子高だから気持ちは判るけどさぁ!でも妹は決して彼女にはなれないんだから!佳織のほうが有利だもん」

男子弓道大会の会場で、楽しげな声で穏やかじゃない会話を始める妹とその友人に、俺は焦るしかなかった。

紫音「ちょ、ちょっとキミ達!ただでさえキミら顔が良くて目立つ上にこんなド派手な服着てるし!俺ちょっと着替えてくるから、ナンパされないようにおとなしく女子トイレの中にでもいなさい!ケンカすんなよ!」

大層不安ではあるが・・・着替えないと帰れないため、俺は慌てて着替えに行った。

戻ってくると案の定と言うか何と言うか・・・女子トイレの前に居た二人に複数の男が話しかけようとしている。

中に居ろって言ったのに・・・俺は二人を促し急いでその場を離れた。

男子大会でも女の子は居るが、段付きミニスカートとかピンクのタータンチェックのワンピとかを着ている女子高生は居ない。

二人の服は色使いもデザインも有り得ないほど派手だった・・・しかも、丈が短い。

すれ違う男子のほとんどが振り返るのも当然だった・・・声をかけてくれたのは凄く嬉しいが、この二人の取扱いにはかなりの気を使う。

 

九段下駅から半蔵門線に乗り、やっと一息吐く。

三越前から銀座線に乗り換え末広町に至るルートは、そんなに時間がかからないのがありがたい。

何しろ二人の女子高生は恐ろしくかしましく、長く乗ったら試合より体力を削られそうだった。

紫音「二人とも今日は応援に来てくれてありがとう。嬉しかったけど・・・次から学校の制服で来てくれよ。目立ちすぎる」

紅音「え~!応援席には家族の人とかかわいい格好している人居たよ?ねえ佳織?」

紫音「いやいやそれ大学生とか大人だろ!キミら明らかに女子高生だから!大会は制服が基本です!弓道はお堅い競技なんだから頼むよ」

佳織「もう、紫音先輩ったらしょうがないなあ!そんなに佳織の制服好きなんですかぁ?制服で手を握ったからかなあ~」

明らかに紅音を挑発するように、佳織ちゃんは流し目を送る。

紅音「ちょっと佳織!手を握ったってどういう事よ?」

佳織「ふ~んだ、ブラコンの妹には教えないよっ」

紅音「佳織?怒るわよ!」

こいつら、電車の中で騒ぎやがって・・・しかも一番肝心な事は言わないし!

紫音「ちょっと、キミ達、もう少し小さい声で!あと紅音、海未ちゃん居ただろ?挨拶しなかったのか?」

海未ちゃんの名前を出すと、紅音は不満そうな顔になりトーンが下がった。

紅音「居たけど・・・お兄ちゃんの準優勝が決まった瞬間、帰ったわ。表彰式が始まる前ね」

佳織「あ、佳織達以外で先輩の事応援してた音ノ木坂の人?すごい綺麗な人だったね~」

紅音「あの人、音ノ木坂の今の生徒会副会長で弓道部部長なの・・・。でも冷たいんだ~。お兄ちゃんは割とああいうタイプが好きみたいだけど、見込み無いわね」

佳織「え~先輩、ああいう人が好みなんですかっ?佳織、あんなタイプじゃないけど・・・佳織じゃダメですか?」

紅音「ちょっと!いきなり電車の中でコクらないでよ!それにね、生徒会は書記の先輩もすっごく可愛いくて、お兄ちゃんの事が好きなの・・・佳織じゃちょっと勝てないわよ」

その会話・・・俺を困らせようとしているとしか、思えない。

紫音「お前、紅音!しゃべり過ぎ!!知ってる事全部バラすなよ!」

紅音「いいの、佳織にはお兄ちゃんをあきらめてもらうんだから!お兄ちゃんは黙ってて」

佳織「そんな事くらいであきらめないもん!佳織は女子高だから・・・男の子と出会う機会があんまりないし!紅音はかわいくて話は合うけど、お兄ちゃんラブ過ぎがダメよね~」

紅音「お兄ちゃんラブで何が悪いのよ?佳織はかわいいからとにかくこれ以上お兄ちゃんに近づかないで!」

ケンカしてるのか褒めてるのか・・・まあ「じゃれてる」っていう表現だろうなこれは。

まさに「仲良く」口ゲンカを始めた二人を放置し、俺は海未ちゃんにメールを出した。

「今日は声援ありがとう!本当に嬉しかったよ。ちゃんとお礼が言えなくて残念。お陰で準優勝取れた!来年は絶対優勝したい!するぞ!」

メールにはなってしまったが、海未ちゃんにお礼を言った俺はだいぶ心にゆとりができ、二人に注意を戻した・・・が、もう俺の話題ではなくなっていた。

今日は二人で渋谷に遊びに行ったらしい・・・立ち寄ったファッションブランドについて、俺の理解が及ばない話をしていた。

紅音と佳織ちゃんの性格はそんなに合うとは思えないが・・・紅音に楽しく話せる友達ができた事は素直に喜びたい。

 

末広町駅に降りた時、俺の携帯がメールの着信を告げた。

内容をさっと確認し、歩き出す。

紫音「紅音、明日が面倒だから俺、道具を道場に置きに行ってくる。佳織ちゃん、今日も本当にありがとうね!すごく勇気出たよ。これからも紅音と仲良くしてやってね」

佳織「いえ、佳織も先輩の準優勝を見れて・・・感動しました。ホント格好いいっ!紅音より先輩ともっと仲良くしたいけど、まずは紅音と仲良くします!でも佳織はいつでも準備おっけーですよ」

その物言いに、紅音は腰に手を当て怒り口調になった。

紅音「佳織、何が準備おっけーなのよ?仕方ないわね、あなたに現実を見せてあげるわ。お兄ちゃん、私達ケアルカフェとアイドルショップ寄って帰るね」

紫音「あまり遅くなるなよ。ナンパされないように終わったら速攻帰れ。じゃあな!」

もう俺の話を聞いているのかいないのか、二人は揃って歩いていってしまった。

・・・そばに居るとウルサイが、あの格好で秋葉原を動き回られると、それはそれで佳織ちゃんも含め心配になる。

別れた途端、手元に置いておきたくなる困った妹と後輩なのであった。

しかし今からの俺は、妹達を心配できるほど余裕を持てる状況ではなかった。

 

     ■□■

 

道場には海未ちゃんが待っていた。

家に帰って着替えて来たのだろう・・・またとんでもなくかわいい服装である。

 

 (スクフェス 園田海未UR<雪娘編>未覚醒 参照)

 

が、判決を待つ俺は、その服を褒められる立場になかった。

道場に道具を片付け、今回は海未ちゃんを前にして俺達は神田明神まで歩いた。

何日か前に正座させられた場所で、美しい長い髪を揺らして海未ちゃんは立ち止まり、振り返った。

海未「紫音さん・・・今日は準優勝、おめでとうございます。本当に・・・すごいです」

紫音「ううん、海未ちゃんが声をかけてくれたお陰で、心がすっと晴れたんだよ。ありがとうね」

海未ちゃんは照れたのか、髪を耳にかけ頬を染めた。

海未「そうであれば・・・私も嬉しいです。それで、その、今日はメールでお約束した通り、2週間前のお返事をさせて下さい」

いよいよか・・・俺も自分が相当緊張している事を自覚した。

喉がからからだ・・・試合なんて目じゃない。

海未「その、2週間前のデートの日、ここであなたは私の事を・・・好きだと言ってくれました。それなのに逃げてしまって本当にごめんなさい。ただあの時は・・・信じる事ができませんでした」

デートって認めてくれた・・・俺は唾を飲み込む。

海未「あの夜、希が追いかけて来てくれて、あなたがことりの告白を断った事を知りました。次の月曜の夜、紅音さんにことりの気持ちを考えるよう、言われました」

あれは・・・俺に言ったんだと思ったが。

海未「あの翌日、私はことりにあなたの事を聞きました。ことりには・・・あなたを強く振って欲しいと言われました。そうすればことりがあなたと、お付き合いする可能性があると」

そこで海未ちゃんは綺麗な唇を切なそうにゆがめた。

海未「私は答える事ができませんでした。ことりにも時間をもらいました・・・ことりには動揺させてしまって悪かったと思っています。生徒会で書類のミスが出てしまって・・・あなたのせいではないのですが」

・・・それは、明らかに俺のせいなような気がする。

海未「それから約二週間、必死で考えました。試合も応援に来て下さったのに、みっともない所を見られてしまいました・・・集中しようとしたのですが・・・私の未熟さゆえです」

それもやはり俺のせいだろうか・・・だが今は口を挟む時ではない。

海未「必死で考えて・・・その間、あなたにはずいぶん冷たくしました。それでもあなたが私の事を想って下さるのか・・・確かめる気持ちもありました」

つまり・・・試されていた、という事なのだろうか?

海未「冷たく、そっけなくしても・・・あなたは私の味方でした。あなたの告白は穂乃果達に見られていましたが、私が逃げた事を上手に言い訳してくれました。買い食い発覚の時も嘘を吐かずに答えてくれました。そしてあなたはやはり、私の応援に来てくれました」

だって・・・俺だってキミへの気持ちを信じてもらえないままじゃ悔しいし、やっぱり諦め切れないからだよ。

海未「二週間考え抜きました。あなたをことりに譲ろうと、何度も思いました。でも悲しくて耐えられない、それを選べない私が居ました」

海未ちゃんが、はっきりと唾を飲み込んだのが判った。

海未「今日の試合を見て、今までのあなたを思い出して、私も覚悟を決めました・・・ことりよりも穂乃果よりも凛よりも・・・私はあなたをお慕いしています。あなたを・・・誰にも譲りたくありません」

紫音「・・・じゃ、じゃあ?!」

海未ちゃんの言葉は、どう聞いても俺の告白にYesと答えていると思った。

俺は唐突な展開に我を忘れ、思わず声を上げたが・・・しかし海未ちゃんの表情は苦痛を宿したままだった。

海未「・・・ですが、今の私、私達μ'sにとってやはり今は大切な時期です。私があなたを振って、あなたがことりとお付き合いするのも・・・嫌な上に困ります。それであなたには本当に申し訳ないのですが・・・」

海未ちゃんは辛そうに言った。

海未「来月のラブライブ東京決勝後、3年生の活動は限界となります。そこでμ'sがどうなるか、決まると思います。μ'sの行く末が決まったら、あなたにもう一度、私から告白します」

紫音「・・・え?」

海未「それまで、ことりや穂乃果、凛と交際するのも・・・待って頂きたいのです。もちろんその間にあなたの気持ちが、かおりさんやμ'sとは関係の無い女の子に向かってしまっても、それは仕方がないと思っています」

紫音「・・・そ、それは無いと思うけど・・・」

海未「本当に勝手なお願いで・・・すみません。あなたが私を想っていて下さる事、今は信じられます。それに甘えるわけではないのですが・・・あなたの事以上に、今はμ'sが大事なのです」

紫音「・・・え~と、話をまとめると、俺がキミを好きな事は認めて、キミも俺の事が好きだけど、付き合えないし、ことりちゃんと付き合うのもやめて欲しい、って事?」

海未「・・・私だって・・・あなたと正式にお付き合いをする事ができたら、恋人と呼べたら・・・どんなに素敵か・・・嬉しいか・・・あなたの気持ちが私以外の女の子に行ってしまったらどんなに嫌か!」

海未ちゃんの言葉はいつにない激しい叫びとなり・・・またもや、目には涙が溢れてきていた。

目が合うと海未ちゃんの顔はくしゃっと歪み、俺に走り寄った・・・そして俺の胸に顔を埋めた。

海未「ごめんなさい!あなたの事が・・・好きです。大好きです。男の人を、生まれて初めて、こんなに好きになりました・・・苦しいほどに・・・お慕いしています」

2ヶ月前のあの夜、ことりちゃんの留学を聞いた夜、俺がこの娘を好きになった夜を思い出す。

また俺の制服の胸はこの娘の涙で、濡れていく。

泣かせたくないって・・・思っていたのにな・・・。

海未「ですがもう少し、μ'sがどうなるか決まるまで、もう少し待って下さい。身勝手なお願いですが・・・私を見守って下さいませんか?」

俺を見上げた海未ちゃんの顔は涙でぐしゃぐしゃで・・・だが真剣だった。

海未「そうしたら、私はあなたがもっと私を好きになってくれるように、がんばります。堂々と自信を持ってあなたとお付き合いできる女になります!」

それを聞いた俺は・・・少し笑ってしまった。

海未「なっ!何が可笑しいんですか!」

紫音「はは、冷たい俺の師匠がずいぶんかわいい事言うんだなって思って。ごめんね!ほらハンカチ!拭いてあげようか?」

そう言ってハンカチを差し出すと、海未ちゃんは目に涙を浮かべながら怒り顔になった。

海未「は、恥ずかしいです・・・変な事言わないで下さい!もう」

すぐにでも会話を再開したかったが、やはり女の子が顔を直している所を邪魔するわけにはいかない・・・俺は海未ちゃんが顔を拭き終わるまで待ち、気持ちを吐露した。

紫音「海未ちゃん、俺ね、今日の応援、本当に嬉しかったんだよ。あのデートの日と同じくらい嬉しかったんだ」

海未ちゃんの目を見つめる。

紫音「あのさ、俺がキミの事が好きなんだって理解してくれたんなら、キミを褒めたのはからかってるんじゃないって、判ってくれたでしょ?」

海未ちゃんの目の前で指を折って数える。

紫音「褒めたのは全部本気だよ。それなのに何回殴られたっけ?それから他の女の子にイタズラしないか見張る、とかバイトが楽しそうだとか・・・嫌味もたくさん言われた」

海未ちゃんはすごく困った顔になった。

海未「ご、ごめんなさい。あの時は・・・あなたは穂乃果の事が好きか他の子が好きか・・・判らなくて、どうして私を褒めたりするのか理解できず、ただ女の子にイタズラしたいだけなのかと」

紫音「それでちゃんと好きだって言ったら次は、μ'sが終わるまで待って欲しいとか・・・すごくわがままお姫様だよね!」

海未ちゃんは下を向いてしまった。

紫音「でも仕方ない。今日応援に来てくれたから、待つよ。でもキミが魅力無い行動をしたり、自信がないままだったりしたら、俺、ことりちゃんか穂乃果ちゃんに改めて交際を申し込むから」

海未ちゃんは絶望的な顔になって俺を見た。

紫音「そんな顔しないで。キミが俺の事を疑ったり殴ったりしなければ大丈夫!でもことりちゃんや穂乃果ちゃんがアタックしてきたら・・・次は断らないかも」

海未「・・・い、意地悪言わないで下さい・・・」

紫音「意地悪じゃないよ、俺だって待つの辛いし。μ'sが目処付くまで待つけど、キミも穂乃果ちゃんもことりちゃんも凛ちゃんも、公平な目で見守る」

俺は励ますように言った。

紫音「だからμ'sが片付いた時、海未ちゃんが一番魅力的な女の子でいて欲しい。大好きな、かっこよくてかわいい師匠が俺に告白してくれたら、絶対嬉しいよ」

海未ちゃんはまた顔をゆがめて涙を溢れさせている。

紫音「泣くなよ海未ちゃん。俺が待つって事を知ってるのは海未ちゃんだけなんだから、有利でしょ?これは大きな貸しだよなあ!ことりちゃんには言わないと、フェアじゃないよなあ!」

そう言うと海未ちゃんは驚くほど慌てた。

海未「待って下さい・・・ことりには・・・私から言います。そして、ことりより私が選ばれるよう、全力を尽くします」

紫音「うん・・・μ'sは俺も大好きだから、東京決勝、がんばって。すごく良い9人だもんね。俺が壊したくないから、大切に最後までやり遂げてよ。それまで待つからさ!」

それを聞いた海未ちゃんは、ようやく今日最高の・・・もしかしたら今までで最高の笑顔を見せてくれた。

海未「はい!ありがとうございます!」

 

     ■□■

 

自宅に帰るとベッドに寝転がり、今日一日を振り返る。

海未ちゃんが提案した「μ'sが片付くまで待つ」事の最大の意味は、俺という異分子である「男」が紛れ込む事によって複雑な恋愛関係が生じ、μ'sを崩壊させてしまうのを避ける事だろう。

それを防ぐという点では「待って欲しい」と言うしか選択肢はない・・・だがそのような理屈を言わずに「私の自信が付くまで見守って欲しい」と言ったのは、何とも師匠らしい言葉だと思う。

ことりちゃんには今日の顛末を海未ちゃんから伝えると言っていたが・・・二週間前のことりちゃんの必死の涙を思い出し、俺は少し心配になった。

だがそれはおそらく杞憂だろう・・・俺の師匠は、親友のことりちゃん、穂乃果ちゃんの事が大好きだからだ。


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