ラブライブ・メモリアル ~海未編~ 作:PikachuMT07
穂乃果ちゃんの背中を見送った後、ふ~とため息を吐きながら俺はイスに座り直した。
冷めた紅茶をすする。
その時、だいぶ涼しくなったにも関わらず大きな帽子とサングラス、そしてマスクで顔を隠した怪しい二人の女性が店に入ってきた。
二人組はなぜか、つかつかとこちらに歩いてきた。
そのうちの一人が俺に話しかけた、というより詰問した。
??「紫音さん、少々お話があります」
声を聞いて、俺は自分が重大な危機を迎えている事に気が付いた。
紫音「あ、え~と?海未ちゃん??そちらはことりちゃんですか??」
二人は帽子とサングラスとマスクを取った。
そういえば私服姿って・・・あんまりなかったな。
いつも制服かジャージか、弓道着だし。
二人ともめっちゃかわいいんですけど・・・。
いつもの俺なら今すぐ服装を褒める場面(そのように妹達から訓練されている)だが・・・果たして褒める事は吉なのか凶なのか?
希先輩、近くに居ますよね?俺はこの時ばかりは、希先輩に心から、占って欲しいと思った。
(スクフェス 園田海未SR<レトロポップ編>未覚醒 参照)
(スクフェス 南ことりSR<人魚編>未覚醒 参照)
海未「・・・こちら、座ってもよろしいでしょうか?」
紫音「も!もちろんだよ!何か飲む?穂乃果ちゃんのカップ、下げてもらわなくちゃね!二人とも、紅茶でいい?」
俺は焦りながら海未ちゃんの顔を見て・・・近年まれにみる悪相である事を確認した。
まさに殺気を感じる。
ことりちゃんは困った感じの苦笑を浮かべている。
二人とも頷いたので俺は店員さんを呼び、海未ちゃんとことりちゃんの分の紅茶を注文した。
紫音「あは、あはは、二人とも良く来たね。こんにちは!い、いつから居たのかな?」
海未「・・・最初からです!」
ひえええ!
紫音「き、着替えてよく間に合ったねえ!二人ともその服、すっごい似合ってる・・・とってもかわいいよ!最初のマスクとサングラスはダメだけど」
二人はコメントを発さない。
紫音「あはは、海未ちゃんの服はイメージ通りで爽やかだね!ことりちゃんの服、すっごい俺の好み!その服は手荷物で持っていくのかな?・・・あの?なんか機嫌悪い?」
ことり「そう、他の服は大体送っちゃったけど、全部送ると行動できないから、お気に入りの服だけ手荷物にしたの。褒めてくれてありがとう」
やっとことりちゃんからコメントをもらえたが、相変わらず海未ちゃんは俺をにらみつけている。
紅茶が運ばれてくるまでの5分間で、俺は必死に考えをまとめた。
店員さんが紅茶を置いて去ったところがゴングである。
この空気は・・・査問会?裁判?いや待て、そんなに悪い事はしてないよね、俺?
海未「それでは紫音さん、聞きたい事がいくつかあります」
海未ちゃんの目がキラリと光る。
ことり「海未ちゃん・・・紫音くんもがんばってくれたんだからお手柔らかに・・・」
海未「ことりはちょっと黙っていて下さい!」
ことり「ふぇぇ」
ああ、ことりちゃん・・・もっとピンチの際に応援をお願いします。
海未「とりあえず、穂乃果の説得はありがとうございました。しかし!まず最初に『園田海未暴力被害者の会』とは何ですか?」
そ、そこから居たのかよ・・・。
紫音「そ、それはですね、穂乃果ちゃんの気持ちを確かめるために考えた事で・・・そこ聞いてたなら穂乃果ちゃんが海未ちゃんの味方をしたのが判った・・・」
俺の言い訳を遮り、海未ちゃんの尋問は続く。
海未「それは判りますが手段が悪すぎます!あなたが私を普段どう思ってるか、良く分かりました」
紫音「ち、違うんだよ海未ちゃん!海未ちゃんならそういう事言っても『作戦だな!』って笑って許してくれる大きな広い心があると思って・・・」
海未「・・・ほほう、うまく言い逃れましたね。では次です。あなたはなぜその写真を9枚、9名分持っているのですか!」
紫音「え、ええ~と!ホラ、やっぱりコレクションだし、仲間が一人いないと他の写真も淋しがってるしさっ!これは残りの8枚の写真がね!9枚揃ってこそμ'sだと言うので!ね、穂乃果ちゃんの説得にも持ってこいだったでしょ??」
他の写真が呼んだ、という表現は少しは満足頂けたようだが・・・海未ちゃんの視線は恐いままである。
まさかあの日に、海未ちゃんの写真を二枚買っていたと言える雰囲気ではない。
海未「・・・納得はいきませんが今回は仕方ないとしましょう。それでは次です。あなたはなぜ穂乃果の手を握るのですか!あれは明らかに必要ありません!い、嫌らしい事を考えていたのではありませんかっ!」
紫音「ええ~っと!あ、あれはホラ!俺もちゃんと確認してはいないけどさ!映画でルパァ~ンもクラリンの手を握ってたと思うよ、たぶん!演出だよ演出!!あはは!」
海未「・・・ほほぅ、ではそれは後で確認致します。次に・・・穂乃果が泣いた時、なぜ・・・なぜ抱きしめる必要があるんですかっ!!わっ・・・私以外の女の子にも・・・ではなく、誰にでもしていい事ではありませんっ!!」
ことり「え!海未ちゃんも紫音くんに抱きしめられたの?」
海未「はっ・・・えぇと違うんです。わ、私の事ではなく・・・お付き合いしていない女の子に触るなど!破廉恥です!!」
紫音「え~とですね、その・・・女の子が泣いている時は・・・」
ことり「私もね、紫音くんに頭をきゅっと抱いてもらった事、あるよ」
ことりちゃんの爆弾発言に、俺は黙り込むしかない。
海未「なっ!!!あ、あなたはことりまで!!!ゆ、許せません!!」
ことり「違うよ海未ちゃん、ことりが留学の事をみんなに言えなくて、紫音くんだけに相談してた時があって・・・お店の席でことり、何回も泣いちゃって・・・」
ことりちゃんは俺と海未ちゃんを交互に見ながら言った。
ことり「それでことりを泣き止ませるために、紫音くんはきゅってしてくれたんだよ。決してエッチな気持ちでやったんじゃないと思うの」
あ、ありがとうございますことりちゃん!!感激だよ!!
ことり「さっきだって、写真がスルスルいっぱい出てきて、最後の写真見て穂乃果ちゃんが泣いちゃって、それで仕方なく、紫音くんはきゅってしたんだよ」
海未「・・・ことりがそこまで言うなら仕方ありません。あなたという男性は隙あらば女の子を抱きしめようとしているのかと思いましたが・・・それは違うという事ですか・・・確かに私も、あの時は泣いていましたから」
ことり「あの時?」
海未「こほん!それでは最後です・・・紫音さん、あなた、穂乃果とお付き合いする気はないですね?穂乃果と中途半端な気持ちで付き合ったりしたら・・・いえ!穂乃果と付き合うなんて絶対にダメです!天が許してもこの園田海未が許しません!」
紫音「あは!あはは、や、やだなあ海未ちゃん・・・全部見てたんでしょ?穂乃果ちゃんが付き合おうって言ったけど、俺断ったでしょ?」
海未「・・・ことり?紫音さんは断っていましたか?」
ことり「ううん、断ってはいなかったなあ~もう一回ちゃんと告白するって言ってました」
ぐげえ!!
紫音「ち、違うんだよ海未ちゃん!!あ、あそこでもし断って穂乃果ちゃんを傷つけたら、今回の作戦が台無しだろ?だから時間を稼いだの。俺、穂乃果ちゃんには告白しないよ・・・たぶん」
海未「たぶん??そんないい加減な気持ちがありますか!穂乃果の事が好きならそれを私に判るようにキチンと説明しなさい!それがちゃんとしていれば告白する権利を与えます!」
海未ちゃんの剣幕はものすごい・・・。
紫音「わ、判ったよ・・・今回の件が終わったら、ちゃんと穂乃果ちゃんに説明して、告白はしないって言うよ・・・傷つかないかな、穂乃果ちゃん・・・」
海未「あ、あなたの告白を延々と待ち続けるよりはずっと良いと思います!仕方の無い人ですね・・・これからは私があなたを見張ります。μ'sのメンバーに話しかけたり何かする時は、私を通してもらいますから!」
ことり「海未ちゃん・・・なんだか旦那さんを見張る奥さんみたいだよぅ」
海未「なっ!!だ、誰が誰の奥さんなのですか!私はこの人が浮気・・・というかμ'sのみんなに次々と嫌らしい事をしないように見張るんです!」
ことり「ことりは・・・紫音くんになら色々されてもいいもん・・・もちろん変な事はしない人だって信じてるもん」
紫音「うう~ことりちゃんは優しい・・・ありがとう。それに比べ・・・」
海未「・・・だっ!!誰をことりと比べようと言うのですか!?とにかく、ことりが何と言おうと、あなたが変な事をしようとしても、私以外にはさせません!私ならちゃんと防御できますから」
ことり「・・・ズルいよ海未ちゃん・・・紫音くん独り占めじゃない・・・」
海未「ことり?何か言いましたか?あなたは・・・先ほどのこの人の説得が効果なかったら・・・留学ですね。この人がことりに何かする事はできなくなります」
ことりちゃんの話題になると、海未ちゃんはだいぶ暗い声になって言った。
海未「この人に何かされないという点は安心ですが・・・でも本当は、ことりと穂乃果と皆と、μ'sをするために今日は集まったんですよね・・・」
海未ちゃんのセリフが気まずい雰囲気を呼ぶ予感がしたのだろう、ことりちゃんば明るく言った。
ことり「ことりね、お母さんに言ったの。やっぱりデザインよりもやりたい事があるって。ことりの大切な人が『どうしても日本でことりとやりたい事がある』って言うならキャンセルします!って言っちゃった」
その時のことりちゃんの笑顔は、納得しスッキリしているように見えた。
ことり「さっき、紫音くんががんばってくれたから・・・穂乃果ちゃんはことりをどうしても必要だって・・・言ってくれるよね!ことり信じてるもん。紫音くん、穂乃果ちゃんを泣かしてまで、がんばってくれた」
俺とことりちゃんの視線が合った。
紫音「この何日か、穂乃果ちゃんと会ったら何て言おうかって必死で考えたよ。アイドルに意味がないって事は、ファンの立場からは簡単にひっくり返せたんだけど・・・みんなに迷惑をかけてでもやりたいって言ってもらうには、俺にはキミ達の友情を信じるしかなかったんだ」
ことり「・・・穂乃果ちゃんに見せた写真を見せて」
さっきのようにカバンから紐を引っ張っると、万国旗のようにするすると出てきた写真は全部で11枚だ。
9枚はμ'sの9人が一人ずつ。
10枚目は浴衣の穂乃果ちゃんが浴衣の海未ちゃんに抱きついている写真。
11枚目はμ's二年生の3人が浴衣で並んでいるショットである。
もちろんあの日、花火大会の日に撮影したものだ。
それを見た海未ちゃんとことりちゃんも、なんだか目がウルウルしだしてしまった。
ことりちゃんは手で目をぬぐいながら言った。
ことり「紫音くん、本当にありがとう。ことり・・・ホントに信じてる。これで穂乃果ちゃんが言ってくれなかったら・・・ううん、絶対に言ってくれるよ」
残念ながら俺は一枚しかないハンカチを穂乃果ちゃんの涙を拭くのに使ってしまっていた。
俺がハンカチを出して折りたたみ方向を変え綺麗な面を探していると、ことりちゃんは笑っていった。
ことり「紫音くん、大丈夫だよ。自分のハンカチ、ある。前に借りたハンカチ、洗濯して持ってきてあるけど・・・まだ借りておくね。穂乃果ちゃんが言ってくれなかったら、パリに持って行っちゃっていいかな?お守りで」
ことりちゃんのその問いに、俺は笑いながら即答した。
紫音「もちろんいいよ!そんなハンカチで良いなら」
海未「わ。私も・・・ハンカチもう少し借りておきます・・・今回の件が片付くまで。ことりの苦しみに気付けなかった私自信への反省のため」
ことり「・・・・・」
紫音「はは、大丈夫だよ。え~とそれじゃあフライトは、明後日土曜の15時だね。たとえ穂乃果ちゃんが行かなくても・・・言いたくないけど作戦が失敗しても、俺、ことりちゃんの見送りに行っていいかな?」
そう聞いてことりちゃんから返ってきた言葉は、全くの予想外だった。
ことり「・・・ダメ」
紫音「・・・え?」
ことり「もし穂乃果ちゃんが来ないなら、紫音くんも来ないで。誰にも会いたくない。会ったら・・・絶対辛くなっちゃうから」
俺は海未ちゃんと絶句してしまった。
ことり「ごめんね、ことりの事見送ってくれるって言ってるのに・・・ごめんなさい」
紫音「大丈夫、ことりちゃん、穂乃果ちゃんは絶対来てくれるよ。あの、ちなみに携帯なんだけど・・・」
ことり「携帯は解約しちゃったの。向こうに行ったら向こうの人と話す事が多いから・・・出張とかで海外から日本に居る人と話すのが多い場合は国際ローミングで携帯持って行けるんだけど、向こうの人との通話が多いと、料金が不利になっちゃうの」
紫音「って事は・・・」
ことり「ぎりぎりまで、ぎりぎりまで出発ロビーで待つけど、連絡は取れないから・・・」
連絡が取れないという事は、羽田空港で搭乗時間までに穂乃果ちゃんが間に合わなかったら、アウトという事であった。
3人でため息を吐く。
話は終わった・・・これ以上ここに居ても雰囲気は悪くなる一方だろう。
紫音「・・・じゃあ、帰ろうか。手ごたえはあったと思う。俺は穂乃果ちゃん信じてるよ。後の俺の役目は・・・穂乃果ちゃんがことりちゃんに話するのがぎりぎりになった場合の誘導だね」
二人はうなずいた。
高校生の俺達ができる限りの手は、尽くしたと思う。
支払いは俺が済ませ、俺達は店を出た。
■□■
翌金曜、海未ちゃんからのメールは「進展なし」だった。
もし穂乃果ちゃんがスクールアイドル復活を決心するとしても、明日の土曜にことりちゃんが出国ゲートを通過した後では意味がない。
俺の胸の底に、暗く冷たい感情がわだかまるのを感じた。
悲しみとも怒りともつかない、焦りとも不安とも言える恐怖のような感情だった。
そんな想いを抱えた土曜、授業が終わった12時に携帯のメールを見た時の安堵感は、言葉に表せないものがあった。
海未ちゃんのメールには「穂乃果に呼び出されました。午後1時に講堂です」とある。
安堵したのも束の間、その記載された時間に俺は逆に強烈な焦りを覚えた。
ちょっと待て!え~と!・・・仮に海未ちゃんが穂乃果ちゃんの説得に30分かかるとすると・・・どんなに急いでも羽田空港に着くのは14時になる。
フライト1時間前・・・搭乗もすぐに始まる時間だ。
俺は急いで昼飯を食い、13時に秋葉原駅に着いた。
この後は海未ちゃんからの連絡待ちである。
予想より素晴らしく早く、海未ちゃんからメールが来た。
穂乃果ちゃんは海未ちゃんに謝罪し『アイドルを一緒にやって欲しい』と言った事がそのメールに記載されていた。
俺は携帯の画面を見て、泣きそうになってしまった・・・嬉しい。
文面は「穂乃果ちゃんは走って秋葉原駅に向かっている」と続いていた。
ほどなく、制服で走ってくる穂乃果ちゃんが見えた。
俺は懸命に手を振った。
紫音「お~い!穂乃果ちゃん!!こっちこっち!」
穂乃果「しょーくん!どうしてここに?」
紫音「海未ちゃんからメールがあったんだよ!穂乃果ちゃん、ことりちゃんを止めに行くんだろ?羽田空港、判るの?」
穂乃果「うっ!判りません・・・」
紫音「だから俺がいるんだよ!行こう!」
二人で山手線に乗り浜松町駅からモノレールに乗った。
秋葉原から羽田空港国際線ビルまでの所要時間は約30分である。
ことりちゃんはどんな気持ちで待っているだろうか。
今穂乃果ちゃんと羽田に俺達が向かっている事を伝えられればいいのに・・・。
本当に待ってくれているのか・・・やっぱり留学したいのかも知れない。
俺の空回りで、無理に穂乃果ちゃんを連れて行き、無理にことりちゃんの留学を引きとめようとしているのかも知れない。
待ってもこないとあきらめて、ゲートを通過したかも知れない。
俺自身の不安と、ことりちゃんが今抱えている不安が重なり・・・胸が痛んだ。
移動している最中、穂乃果ちゃんは俺に、海未ちゃんが笑ってわがままを受け入れてくれた話をしてくれた。
俺は満面の笑みで話を聞いた。
μ'sの復活まで、あと一歩である。
俺はその一歩、最後の魔法が効力を失うまで、つまりことりちゃんのフライトまでそんなには時間がない事を説明した。
穂乃果ちゃんの顔はいつになく真剣になった。
だが「どうして言ってくれなかったの?」と俺を責める事はなかった。
もう、他人や自分を責める穂乃果ちゃんではないのだ。
そこには、現実を受け止め努力する穂乃果ちゃんがいた。
後はことりちゃんがロビーのどこで待っているか・・・探すのに手間取ったら・・・最後まで焦りが胸を掠める。
モノレールから降り、俺が道を教えながら二人で国際線出発ロビーに駆け込む。
先頭は穂乃果ちゃんだ。
穂乃果ちゃんはチケットカウンターが並ぶ出発ロビーへ駆け上がっていく。
その先に、見たことのない服を着た大人びた横顔のことりちゃんが今まさに立ち上がって、出国ゲートへ行こうとしている所が見えた。
懸命に走った穂乃果ちゃんの手が、しっかりとことりちゃんの手を握る所を、俺は見た。
穂乃果「ことりちゃん!」
俺も、穂乃果ちゃんに追いついた。
穂乃果ちゃんはことりちゃんの背中に向けて叫んだ。
穂乃果「私、スクールアイドルやりたいの!ことりちゃんと一緒にやりたいの!」
穂乃果ちゃんはことりちゃんの前に回り、ことりちゃんを抱きしめながら叫んだ。
穂乃果「だから・・・行かないで!」
よしっ!!100点だぜ、穂乃果ちゃん・・・。
ことりちゃんの顔は・・・嬉しい?楽しい?いや、これは幸せの泣き顔なのではないだろうか。
抱き合って泣く二人を見て・・・なんだか俺も泣けてきてしまった。
しかし泣いている場合ではない。
今頃海未ちゃんはμ'sメンバーを集め、文化祭で中止になったライブを再度講堂で行うと、全校に通知を出しているはずである。
俺は努めて明るい声を出す。
紫音「キミたち!、感動の再会は一旦中止!さあ急いで二人はことりちゃんの家に戻って、お母さんに報告して、制服に着替えて学校に行くんだよ!みんな待ってる」
穂乃果「うんっ!しょーくんは?」
紫音「俺はことりちゃんの航空券のキャンセルをしなくちゃ。一緒に行っても男子はイベントじゃないから入れないし。紅音から報告聞くよ」
ことり「何から何まで・・・本当にありがとう!これ、航空券です」
俺はチケットをことりちゃんから受け取った。
穂乃果「ことりちゃん!行こう!」
ことり「うんっ!!」
俺は二人が手を取り合って走っていくのを見送った。
μ's活動再開の瞬間である。
■□■
その後、俺は親父に携帯で電話し航空チケットのキャンセル方法を聞いた。
親父はこの手の経験が多く頼りになった。
しかし残念ながらバイトは若干遅刻してしまった。
携帯があったので遅刻連絡ができたため何とか許してもらえたが、遅刻の代替で明日もバイトとなってしまった。
バイトから実家に帰宅すると、紅音と翠音が急遽行われた『μ's活動再開文化祭リターンライブ』について、熱く語ってくれた。
なんと急遽行われたにも関わらず、父兄や別の学校の人の観覧もOKだった、というのだ。
翠音は雪穂ちゃんと高坂父、母、それに亜里沙ちゃんと見に行ったそうである・・・うらやましい。
だがまた、そのうちユアツーブにアップされるだろう。
楽しみだ。