ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

17 / 69
第16話 WonderZone!

μ'sの9名での初ライブから数日が過ぎた7月半ば、俺の高校も期末テストが終わり、俺は弓道とバイトへ精を出していた。

オープンキャンパスイベントで集まった中学生からは、音ノ木坂学院を入学希望校にするというアンケート結果が多数集まったようで、廃校の線はほぼ無くなったらしい。

そして、イベントで撮影された「僕らのLIVE 君とのLIFE」動画もネット上で人気を集め、スクールアイドルランキングでμ'sは50位にまで上がっていた。

以前海未ちゃんから聞いたスクールアイドルの試合「ラブライブ」の予選通過にはこのランキングで20位以内に入る事が必要で、紅音や翠音は毎日のようにランキングを注視し、動画を眺めている。

俺もどの曲のどの部分が海未ちゃんのパートなのか、判るようになっていた。

 

     ■□■

 

土曜の夜、俺がいつものようにバイト終わりに夕食を摂るべく実家に帰ると、紅音がとたとたと玄関まで走ってきた。

紅音「お兄ちゃん!!大変大変!!明日バイト休みでしょ!?」

紫音「・・・なんだよ慌てて。明日は午前に弓道やるくらいしか予定ないけど。どうしたの?」

紅音「凛ちゃんからメールがあってね、明日、穂乃果先輩と園田先輩が、ケアルメイドカフェでメイドやるんだって!!」

またもや俺は一瞬思考停止した・・・がその奇跡を理解すると飛び上がらんばかりに心が躍った。

うぉ~っ神様凛ちゃん様ありがとう!海未メイド最高!・・・と心で叫ぶ。

しかし紅音の前で実際に叫んだら明らかに勘ぐられるので・・・それは危うく踏みとどまり、この喜びを声に載せないよう注意して発言する。

紫音「へ、へ~~っすごいね・・・あ、って事はことりちゃんのバイト、バレちゃったんだ・・・」

紅音「そう、大変でしょ?ことり先輩、必死で隠してたのに・・・でもお兄ちゃんは嬉しいんじゃない?園田先輩のメイド服が見られて」

うっ・・・紅音が大変と言ったのはことりちゃんの秘密の事だという正解は(偶然)見つけられたのだが・・・ブーメランが返ってきて当たったイメージである。

紫音「そ、そうだね、見られたら嬉しいけどな・・・でも穂乃果ちゃんだってμ'sのセンターだしかわいいからな、見たいな~」

海未ちゃんへの特別な思い入れを悟られないよう、言ったつもりだが・・・自分でも誤魔化せてない気がした。

紅音はジト目になりながら言った。

紅音「まったく運がいいよね、お兄ちゃん。穂乃果先輩がオープンキャンパスの手伝いのお礼で、私達の分の席も取ってくれたんだって。明日翠音と3人で行くわよ」

うぉ~~・・・俺は心の中で穂乃果様と凛様に祈りを捧げた・・・ありがとうございます。

 

     ■□■

 

翌日、歩行者天国の中を紅音と翠音と3人でケアルメイドカフェに向かった。

店は大行列であったが凛ちゃん、花陽ちゃん、真姫ちゃんの1年生、にこ先輩、絵里先輩、そして東條希先輩(簡単に紹介してもらった)の3年生、雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんの中学生2人と合流し11人で入店した。

いやはや大所帯である。

店内には穂乃果ちゃんとミナリンスキーさんがいた。

慣れと言うか教育と言うか・・・ここで会うと自動的にことりちゃんではなくミナリンスキーさんと認識するのが、自分でも自分の脳が良く出来ていると思う。

穂乃果「お帰りなさいませ~!ごっしゅじんさまぁ!お嬢様がた達~!どうぞどうぞこちらへ~」

長いメイド服の裾を軽やかに揺らし、ノリノリで挨拶してきたのは穂乃果ちゃんだ。

雪穂「お、お姉ちゃん・・・ちゃんと仕事してるの?ヘンな事しないでよ!」

穂乃果「たっはは~どう雪穂、お姉ちゃんかわいいでしょ~?皆様~メニューはこちらになります!」

穂乃果ちゃんはとても嬉しそうである。

テーブルの間をクルクルと回りながら歩き、注文を聞いて水を運んでいる。

果たして海未ちゃんはどこなのだろうか・・・。

 

キョロキョロしているとミナリンスキーさんが俺達のテーブルにやってきた。

ミナリンスキー「紫音様、紅音様、翠音様・・・今までことりがミナリンスキーだって事、黙っててくれてありがとう」

ミナリンスキーさん(もうことりちゃんで良いのかな?)が晴れやかな笑顔でそう言うと、紅音も疑問をぶつけた。

紅音「いえ、ぜんぜん大丈夫です!でもどうしてバレちゃったんですか?お母様とか家族の方には・・・大丈夫なんですか?」

ミナリンスキー「ええと、まだケアルのバイトの事知ってる人は、今日ここに呼んだ人と、後で来るミカちゃんやフミコちゃん達だけなの。だからお母さんは知らなくて・・・だからここで会う人以外は引き続き、内緒にしてね」

俺達が当然のごとく約束すると、ミナリンスキーさんはバイトがバレた経緯を教えてくれた。

先日、店内イベントで盗撮されてしまった写真がアイドルショップに流れたという噂を聞き、それを買い取ろうとミナリンスキーさんは秋葉原を走り回っていたそうである。

その際に穂乃果ちゃん達とアイドル写真屋の前で鉢合わせしてしまった、という事だった。

そこまで話した後、更にミナリンスキーさんは俺だけを見て、言った。

ミナリンスキー「あの、紫音くん。あのことは・・・ここにいる人にも内緒だよ」

そう言い残しミナリンスキーさんは厨房に去っていった。

あの事って・・・あの事だよな?と思いつつ目を前に向けると、紅音と翠音の視線が超恐い。

紅音「お兄ちゃん・・・?今の『あの事』って何?ことり先輩には、何もしてないよね?」

俺は必死で手を横に振る。

紫音「・・・し、してないしてない。少なくとも俺は何もしてない、と思うたぶん」

翠音「お兄さま、あやしぃ。何もしてないなら何が内緒なの?」

うぐっ・・・作戦変更。

紫音「いや実はね、このあいだすっごい大変な事があったんだけどさぁ・・・ことりちゃんは裏切れないからなぁ~言えないなぁ」

紅音「なに!?なんなの!?ハッキリ言いなよお兄ちゃん!」

作戦変更は有効な言い訳を考えていない場合、まったく役に立たなかった。

紫音「・・・いやこの前、俺がハンカチ忘れて持ってなかったからティッシュで色々してたのがみっともないって話だよ」

翠音「・・・なんかあやしぃ~!お兄さまがハンカチ持ってない事が、どうしてことりさんの内緒になるのぉ?」

俺の言い訳もダメダメではあるが・・・まったく悪魔的に鋭い妹達である。

 

そんな事を話していると穂乃果ちゃんが注文のモノを次々と運んできた。

が、我々は11名の団体様である。

穂乃果ちゃん一人で運べるものではないぞ~と思っていたところ、ついにその方が降臨した。

海未ちゃんの身長はことりちゃんと変わらないのだが、すっと背筋が立った姿勢、スレンダーなシルエット、サラサラ黒髪ロングにヘッドドレスが合わさり、いつもより背が高く、更に綺麗に見えた。

さすが我が師匠・・・おそらく靴のヒールもいつもより高いのだろう。

それを除いても、姿勢の良さはメイドが美しく見える大事なポイントである・・・つまり海未ちゃんはメイド服が素晴らしく似合っているのだった。

海未ちゃんはまず隣のテーブルの亜里沙ちゃん、雪穂ちゃんの席にケーキセットを運んできた。

海未「お・・・お待たせ致しました・・・ええと、お、お嬢様・・・」

亜里沙「うわ~・・・園田先輩・・・かわいいです・・・」

雪穂「海未ちゃん・・・めっちゃ綺麗だよ~」

亜里沙ちゃん雪穂ちゃんの本気のつぶやきに、海未ちゃんは頬を染めながらケーキをテーブルに置いた。

一旦カウンターに戻った海未ちゃんは、次に俺達の注文したケーキセットを持ってテーブルに来た。

海未「お嬢様、お待たせ致しました。ケーキセットでございます」

まず紅音と翠音のケーキセットをテーブルに置く。

妹二人も、自分にはない黒髪を持つ海未ちゃんのメイド服姿に感銘を受けたようで、しきりに褒めている。

最後に、俺の注文したケーキセットが彼女の手で運ばれてきた。

海未「おっ・・・お待たせ致しました・・・ご・・・ご・・・ご主人さま・・・」

紫音「うわ~~・・・海未ちゃん、メイド服超似合ってるよ、すっごくかわいい。今度からそれで弓道・・・あ痛っ」

海未ちゃんが震えながらご主人さまと言っているのを我慢できず、俺は先走って海未ちゃんを褒めてしまった。

その途端、海未ちゃんは俺の脚を蹴っ飛ばしたのだ。

海未「・・・だ、だいたいなぜあなたがここにいるんですか!女の子でも恥ずかしいのに・・・か、かわいいとかからかわないで下さい!」

海未ちゃんはケーキを置くと顔を真っ赤にして怒って厨房に帰ってしまった・・・みんなと同じ事しか言ってないのに、俺だけ怒られる・・・とほほ。

悔しかったので、試しに近くを通った穂乃果ちゃんを褒めてみた。

紫音「おお、穂乃果ちゃんもメイド服似合うね~すっごくかわいいよ。ことりちゃんを超える人気出ちゃうんじゃない?」

穂乃果「へっへ~ん、しょーくんありがと!そりゃ私はかわいいらね!惚れんなよ!じゃなくて、私はメイドなんだから、好きになっちゃダメよご・しゅ・じ・ん・さまぁ!」

雪穂ちゃんはあきれて首を振っているが、なんて素晴らしい切り返しなんだろう。

マジで惚れそうだ・・・というかこのセリフにはもう惚れた。

 

お腹も満たされ宴もたけなわという所で、仲間内だけで絶対流出禁止という条件の下、穂乃果ちゃんとことりちゃんと海未ちゃんを撮影した。

その後、俺と海未ちゃんは皆の前でダーツバトルをした。

矢を放つという行為自体は弓道と同じであるが、海未ちゃんはダーツ(投げ矢)には触るのも始めてだったようで、俺が完勝した。

アメリカに居た頃はどの友達の家にもダーツがあったから、俺にとっては得意の遊びの一つなのである。

海未ちゃんに少し見直した感じで見つめられたのが嬉しい。

今度「教えようか?」と言ってみたい。

 

15時近くになりそろそろ予約時間が終わりという頃、穂乃果ちゃんから俺達桜野兄妹と雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんにお願いがあった。

なんとこの後、歩行者天国でμ'sがゲリラライブをやるから手伝って欲しい、というのである。

今回の衣装は既に用意されているようで、μ'sの面々は1年生、3年生もケアルメイドカフェの更衣室に着替えに行った。

 

ミカちゃんはカメラ、フミコちゃんは音響、俺と翠音、雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんはビニールテープを4人で持って台形に張り、路上ステージの確保に当った。

チラシ配りはヒデコちゃんと紅音である。

やがてμ's9名全員が、ケアルメイドカフェの制服を元にしたロングドレスのメイド服で現れた。

曲は新曲「Wonder Zone」である。

 

(スクフェス「Wonder Zone」プレイをおすすめ!)

 

今回はことりちゃんの作詞だそうだ。

楽しいメロディーに元気付けられる歌詞、レベルの高いダンスとかわいい女の子の組み合わせとあれば、歩行者天国を行き交う皆様も足を止めるに決まっている。

瞬く間に周囲には黒い人だかりが出来てしまった。

これでμ'sの狙い通り、スクールアイドルランキングもまた変わりそうだ。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。