ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第15話 オープンキャンパス!

7月に入ってすぐの日曜日、音ノ木坂学院で「オープンキャンパス」というイベントがあった。

これは現中学3年生とその保護者の方に校内を見てもらい、学校をアピールするという企画である。

紅音はソフトテニス部で、試合形式の練習風景を見学者に見てもらうための選手になった、と言っていた。

妹二人は日光に弱くすぐ火傷したようになってしまうため、紅音は常日頃から長袖長ズボンのジャージで大きな帽子を目深に被り、顔には日焼け止めを塗って練習している。

しかしこの日ばかりは日焼け止めの量を更に増やして全身に塗る事で対策し、テニスウェアで練習するのだそうだ。

家族が男性でも合法的に女子高に入れる数少ない日である・・・もちろん俺は翠音と共に音ノ木坂学院に向かった。

翠音と一緒なら当然、亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんも一緒である。

雪穂「あ、お兄さんこんにちは!お久しぶりです!いつもおまんじゅう買ってくれてありがとうございます!」

雪穂ちゃんが元気良く声をかけてくれる・・・穂むらのファンになった桜野家では、定期的に店を訪れ饅頭を買っているのだ。

当然俺も何度か買いに行った。

紫音「おう、雪穂ちゃんこんにちは。饅頭いつも美味しく食べてるよ。亜里沙ちゃんもこんにちは」

亜里沙「こんにちは!」

亜里沙ちゃんはすごく機嫌が良いようで、明るく挨拶してくれた・・・ま、まぶしい!!なんと輝く笑顔なんだ・・・。

紫音「亜里沙ちゃん何か良い事でもあった?なんだかすごく嬉しそうだけど?」

亜里沙「え~分かりますか?実はお姉ちゃんがμ'sに入ったんです!!」

亜里沙ちゃんが弾む声で嬉しそうに言った言葉に、俺は2秒くらい思考停止し・・・その後盛大にビックリした。

紫音「・・・え、えええええ~~っ!!亜里沙ちゃんのお姉さんって・・・あの超美人の生徒会長さんだよね??」

俺は路上で大声を上げてしまった・・・翠音が解説に入る。

翠音「お兄さまうんとねぇ、私たちぃ、2週間くらい前にね、亜里沙ちゃんの家で音ノ木坂学院の説明を絵里さんから聞いたの。その時、雪穂ちゃんたら寝ちゃってぇ」

雪穂「み、みおんちゃん、そこは言わなくていいから!」

翠音「てへぇごめんね~。そのとき亜里沙ちゃんがねぇ絵里さんにはっきり『ツマラナイ』って言ったの。ホントはそれだけではないと思うけどね、絵里先輩もそれで考え直してくれたみたいで、μ'sに入って、穂乃果さん達と一緒にオープンキャンパスを盛り上げる事になったんだってぇ!」

亜里沙「亜里沙、ずっとμ'sのファンだったからすっごく嬉しいんです!お姉ちゃんがμ'sの一員なんて!しかも今日はお姉ちゃんを入れて9人になったμ'sの新曲発表があるんですよ!」

9人??俺が知らない情報ばかりである・・・最近神田明神で会ってなかったからか・・・にこ先輩を入れて7人だったから、更にもう一人増えたのだろう。

しかも新曲とは凄い・・・亜里沙ちゃんに続いて俺もルンルン気分になりそうだ。

紫音「へ~新曲かぁ~それは楽しみだね~!」

海未ちゃんを見たいがために見続けているμ'sであるが、この話を聞きなんだか俺の運命も今日、変わってしまうような気がした・・・大げさか。

 

音ノ木坂学院に入ると各部活動が盛んに練習をしている光景が目に入った。

紅音の活躍を見ておかないと後が大変なので、μ'sの活動紹介が始まる前に、俺と翠音はソフトテニス部の練習を見に行った。

紅音は運動が苦手なわけではないが、すごく得意という事でもない。

中の上、と言ったところである。

ただソフトテニス部自体が総体入賞を目指してスポ根的に鍛えるチームではないようで、エンジョイしながら基礎を身に付けるというような内容の紹介であった。

紅音は薄いピンク色の半袖ポロシャツと白いミニスカートのテニスウェアで、被った帽子の後ろから髪をポニーテールのように出して揺らしている。

華奢な体つきのため手足が長く見え、スタイルはとても良い・・・兄から見ても完璧な美少女である。

音ノ木坂が女子高で良かったと思う瞬間だった。

翠音も「お姉さま、かわいい・・・」とつぶやきながら見入っている。

そこそこラリーもできていて見栄えは良い・・・後で褒めるとしよう。

 

そのうち亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんが翠音を呼びに来たので、これ幸いと俺も音ノ木坂学院の校庭に向かった。

割と広い、というか俺の神田電機高校のグラウンドよりは遥かに広い校庭だった・・・さすが国立だ。

今日のμ'sは午前中に一回ライブがあったようで、15時から行われるライブは2回目のようである。

午前中のライブの評判が良かったのか、既にかなりの人数の観客が校庭に集まっていた。

音ノ木坂の在校生も多い。

亜里沙「あっ!お姉ちゃん!」

亜里沙ちゃんが校庭の端に設置されたテントから、ステージ(今回は校庭)方向を覗き見ている生徒会長を発見した。

その横には穂乃果ちゃんも見えた。

亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんがそちらに向かったため、俺と翠音も後をついて行った。

亜里沙「お姉ちゃん!来たよ!」

雪穂「お姉ちゃん、しっかりやってる?」

生徒会長「あら、亜里沙いらっしゃい。雪穂さんも、翠音さんも、いらっしゃい」

穂乃果「お~!しょ~くんの妹のみおんちゃん!雪穂がいつも面倒かけてます!しょ~くん、また来てくれてありがとう!」

穂乃果ちゃんと生徒会長は赤を基調とした近衛隊風ジャケットに白いプリーツスカートという衣装である。

いやこれ、マジでことりちゃんが作ったの?というレベルの出来だ・・・普通に既製品にしか見えない。

亜里沙「お姉ちゃん!すごくかわいい・・・ハラショー!」

雪穂「お姉ちゃん、馬子にも衣装だね」

二人の姉の褒め方は対照的なのが面白い。

翠音「穂乃果さん絵里さんこんにちは~。絵里さんは翠音のお兄さま、初めてですよね?お兄さまはシオンといいます~」

紫音「は、はじめまして。桜野紫音と申します。先日は翠音がそちらにお邪魔したとか・・・良くして頂いてありがとうございます」

絵里先輩「はじめまして・・・では無いと思いますよ、紫音さん。私は綾瀬絵里です。私たちは紅音さんの入学式で、一度お会いしています」

うぇ~~っ!!あれ、覚えてたの!!いや、そりゃこっちは忘れられない衝撃の金髪美少女との出会いですけど・・・先輩にとっては多数の新入生の一人の兄ってだけなはずなのに。

心の中で衝撃が渦巻いたが何とかそれを丸め込み、声には出さず会話を再開する。

紫音「・・・覚えていて下さったとは・・・びっくりです。これからも翠音は亜里沙ちゃんと仲良くさせてもらうと思うので、よろしくお願いします。穂乃果ちゃんこれ差し入れ」

絵里先輩「ふふ、確かμ'sのファーストライブにも居ましたよね?翠音さんは亜里沙と友達で中3ですから、来年ぜひ音ノ木坂に入って頂きたいです。こちらこそ仲良くして下さい」

そんな会話の最中にも穂乃果ちゃんは俺の手から差し入れを奪っていく。

穂乃果「お、しょ~くんいつも気が利くねえ!ありがたくもらっておくよ!」

ちなみに差し入れは今日もオレンジジュースとアップルジュースだ。

絵里先輩「ところで高坂さん、やっぱり予想外に人が集まっているわ。踊る場所の目安の風船が・・・少し淋しいわね。もう少し数が必要だわ」

穂乃果「・・・う~人が集まってるのは嬉しいけど、風船はちょっと困ったな~。ミカはカメラ、ヒデコはナレーション、フミコは音響だし・・・誰もいない!!」

・・・なんだか困っているようである。

紫音「あの、もし困ってるなら、俺達手伝いましょうか?風船を膨らましてステージになる部分の、左右にもう少し長く、置いてくればいいんですよね?」

絵里先輩「そう・・・なのだけれど、どうするの?」

紫音「俺と翠音、亜里沙ちゃんと雪穂ちゃんで4人いますから、なんとかがんばりますよ」

絵里先輩「・・・・・」

穂乃果「いよっ!しょーくん相変わらずナイスガイだね!よろしく!」

穂乃果ちゃんは単純に手伝いが増えて渡りに船と喜んでいるが、絵里先輩は美しい眉を寄せ小さなため息を吐いた。

絵里先輩「高坂さん・・・雪穂さんや翠音さんは来年うちに入学してもらうために、本来私達がもてなす必要がある子だわ。その子達に作業を頼むなんて・・・緊急事態とはいえ、少し図々しくないかしら?」

穂乃果「ぜんっぜん大丈夫です!ねっ雪穂!しょーくん!」

雪穂「仕方ないなあ!今日のお姉ちゃんはμ'sだからね!手伝っちゃうよ!」

雪穂ちゃんはいつも穂むらでお姉ちゃんの愚痴を言う顔ではなく、満面の笑顔で請合った。

亜里沙「亜里沙も平気です!お姉ちゃん、手伝います!」

亜里沙ちゃんも元気に追随する。

妹達の溌剌とした声に、絵里先輩も苦笑しながら提案を受け入れてくれた。

絵里先輩「悪いわね、あなた達・・・。それじゃ桜野さん、お願いしますね」

紫音「はい、お任せ下さい。それから俺の事はシオンと呼ぶか、言いにくければショーンでもいいですよ・・・穂乃果ちゃん、余りの風船はどこ?」

話がまとまったので早速聞くと、穂乃果ちゃんはテントに向かって叫んだ。

穂乃果「ことりちゃん、海未ちゃ~ん!膨らましてない風船あったでしょ!!持ってきて~~!!」

ことり「は~い、あれ??」

中からことりちゃんの声が聞こえる。

海未「ことり、はいこれです。私が持って行きます」

さらに奥から声がして、海未ちゃんが風船と針金を持って出てきた。

海未「はい穂乃果・・・きゃあっ!!し、紫音さん!!どうしてこんな所に・・・み、見ないで下さい!」

海未ちゃんは俺の顔を見ると超焦ってテントに引っ込んでしまった。

海未ちゃんも既に衣装に着替えており、白いプリーツのミニスカートと真っ白な脚がまぶしい・・・まさに一瞬の眼福であった。

亜里沙ちゃんは海未ちゃんファンだったようで、きちんと挨拶できずがっかりしている・・・俺もがっかりだ。

しかし本番はあれで歌うのだから否が応でも期待は高まる。

ことり「紫音くん来てるの!?あ~雪穂ちゃんに翠音ちゃん!こんにちは!来てくれたんだ!嬉しい!!」

逆にことりちゃんは真っ白い脚を惜しげもなくさらし、テントから出てきた・・・女子トークが加熱しそうである。

実はことりちゃんと会うのはあの夜以来だが、元気そうで何よりだ。

俺は余計な事がばれないうちに、海未ちゃんが持ってきた風船と針金、ことりちゃんが持ってきた空気入れとペンチで、風船追加作業を黙々と開始した。

 

風船を膨らませ、その根元に針金を固定する。

すると翠音と雪穂ちゃん、亜里沙ちゃんがその風船を持ち、ステージエリアと観客エリアを分けるように、観客の前と横に固定していった。

校庭には一段高いステージがあるわけではないが、色とりどりの風船でずいぶんと華やかに見えるものである。

準備は整った。

いよいよμ'sが9人になっての初ライブである。

 

9人のメンバーが初期配置についた。

俺の知らなかった9人目のメンバーはなんとあの巨乳の巫女さんだった・・・ブラボー!

俺は女性だらけの観客に混じるのに少々抵抗があったので一番左に居たのだが・・・ラッキーな事に初期配置一番左手前は海未ちゃんだった。

師匠のミニスカート、恐ろしくかわいい・・・ただしスカートは短すぎて、まともに見るには少々勇気が必要だ。

穂乃果ちゃんの熱い想いが語られた後、9人全員の声を合わせて曲名がコールされた。

穂乃果「私達のスタートの曲です!」

全員「聞いて下さい!僕らのLIVE 君とのLIFE」

 

(スクフェス「僕らのLIVE 君とのLIFE」プレイをおすすめ!)

 

紫音「こりゃすげえ・・・」

曲が始まってしまうと、俺は「海未ちゃんの脚がまぶしい」などと言っていられなくなってしまった。

歌、曲、ダンス、フォーメーション、どれをとっても大変レベルが高い。

というか俺にはプロのアイドルチームとの違いが分からなかった。

中でも絵里先輩の笑顔、歌、ダンスは飛びぬけて素晴らしかった。

そしてそれを見つめる亜里沙ちゃんの目は本当にきらきらと輝いていた。

ライブを見た全員が、μ'sの9人から素敵な夢や元気をもらえたと思う。

本当にがんばって練習したんだと、練習風景を見ていない人にも伝わっていると確信できた。

これはもしかしたら、すごい瞬間に立ち会えたのかな、と直感的に思う。

μ'sに与えられた時間は30分だったのだと思うが、「僕らのLIVE 君とのLIFE」「これからのSomeday」「START:DASH!!」そして「きっと青春が聞こえる」の全4曲が披露された。

開始時点から倍増した観客から万雷の拍手が送られ、ライブは終わった。

俺達は風船の後片付け、背後の立て看板の片付けを手伝いオープンキャンパスを後にした。

 

パフォーマンスを見終わってもまだ体に残る熱、そして感動した想いを、俺は彼女達に直接伝えたいと思った。

が、海未ちゃんにどうメールするのがベストだろうか・・・衣装や脚を褒めたら間違いなくヘンタイの烙印を押され嫌われそうだ。

「これからのSomeday」のソロのところを褒めてみるか・・・それも怒られそうな気がするけど。


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