ラブライブ・メモリアル ~海未編~   作:PikachuMT07

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第10話 階段トレーニング

結局帰宅後に夕食を摂りながら、園田師匠と穂乃果ちゃん、ことりちゃんについて、家族に洗いざらい白状せざるを得なかった。

とは言っても弓道の基礎を神田道場で教えてもらった事と、神田明神での練習後にミニストッパに買い物に来るというだけで、園田師匠以外は名前も知らなかったと主張した。

嘘はついていない。

妹達の目を見てしっかり言って何とか信用してもらえた。

妹達は俺の話から、μ'sの3人はコンビニでだべっているうちに店員をからかってみたくなったのであり、俺の事を意識してはいない、という結論を出した。

悔しいがそう外れてはいないだろうな。

その後、紅音の部活についても話し合われた。

瑠璃音「そもそもあの子たちのスクールアイドルというのは何なの?何をするのかしら?」

翠音「翠音ね、さっき雪穂ちゃんにメールしたの。穂乃果お姉さまに会えたよ!って。雪穂ちゃんが教えてくれたのはね~穂乃果さんは音ノ木坂学院を廃校にしないために、来年志望する中学生を集めたくて結成したんだって~」

紅音「それとスクールアイドルは学校内で結成して活動するから、いわゆる事務所の所属だとかオーディションとかのハードルがないのよ。だから思いついた子が始めてネット動画で人気が出て有名になるっていう、敷居の低さも人気があるポイントなの」

瑠璃音「なるほどね。でもアイドルと付くわけだし、そのA-RISEみたいなビデオまで出れば、学校内だけしか活動しないというわけには行かないでしょう?もちろんA-RISEみたいなレベルの子達って一握りなんだろうけど」

母さんは心配げに言った。

瑠璃音「例えばそれで有名になって学校外のファンができたとき、誰が守ってくれるのかしら?」

紅音「・・・守るってどういう事?」

瑠璃音「例えばピアノのコンクールでかわいい子がいて、ファンの子がサインをねだってもピアニストはアイドルじゃない、って断れるでしょう?でもアイドルとして有名になったら断れないじゃない」

それはその通りである。

瑠璃音「それがそのうち有名になっていくに連れて、握手して下さいとか歌を歌って下さいってエスカレートして要求された時に、事務所に所属していればプロデューサーやマネージャーが守ってくれるけど、スクールアイドルじゃそうもいかないって事ね。つまりガードされない女子高生アイドルが町をウロウロしてるって事になるわね」

紅音「・・・でも・・・そんなに有名になるとは思わないけど・・・」

瑠璃音「母さんはね、あなたが安全でいて欲しいの。ほらファンの人で変な人がいて、アイドルが刃物で襲われる事件がいくつかあったでしょう?ああいう事があったら絶対に嫌なの。だから紅音がアイドルになりたいなら、ちゃんとした事務所に所属して、徹底的に安全を確保した上でやって欲しいわ。それならOKするけど、スクールアイドルはやめて欲しい」

紅音「・・・」

翠音「・・・」

妹二人は言葉を失ってしまった。

かくいう俺も同じだ。

母さんが言っている事は正論中の正論である。

ネット動画に上がっているかわいい女の子を探して会いに行く時代、園田師匠3人組のレベルは高い。

あれだけかわいいのだから変なヤツが変な事をしにこない、とは言えないのだ。

これは俺もいい勉強になった。

今後園田師匠達が有名になった際、誰かのガードが必要になるかも知れない。

その時、俺が師匠を守れるようになりたいものである。

 

     ■□■

 

ゴールデンウィークに入った。

結局紅音はμ'sではなくテニス部に入った。

だが花陽ちゃんと凛ちゃん、西木野さんがμ'sに入った、と聞き俺はビックリした。

紅音も散々誘われたようなのだが、母さんの言葉には従わざるを得ないだろう。

 

ゴールデンウィーク中、俺は午前中は弓道場へ行き練習する事にしていた。

午後はバイトが入っている日もあるが、週に3日しかバイトしてはならないという高校側の制限があるため毎日ではない。

クラスの友人には「バレなきゃいい」という感じでバイトしまくっているヤツもいるし、確かに週4ならバレないのでは?と俺も思ってはいる。

今日は9時に道場が開くのでそれに合わせて自宅を出て、神田明神の下を通りかかった。

すると園田師匠3人組と一緒に階段トレーニングをしている娘たちがいた・・・あれは・・・。

凛「あ~!しょー兄ぃ~だ!おはようございますにゃ~!」

紫音「あ、凛ちゃん花陽ちゃん・・・西木野さん、おはようございます。μ'sに入ったんだってね!素敵だね。早速がんばってるんだ!・・・って花陽ちゃんだよね?眼鏡はどうしたの?」

凛「かよちんはね!眼鏡なしにしたんだよ!コンタクト!どう?しょー兄ぃ?かよちんかわいいでしょう?」

眼鏡を外した花陽ちゃんは・・・こんなにかわいい娘だったっけ・・・?ちょっとガン見してしまった。

花陽「あ・・・おはようございます・・・紫音さん。は・・・恥ずかしいです・・・」

声は間違いなく花陽ちゃんである。

しかしTシャツ一枚な姿は初めて見たので今気づいたのだが・・・この娘、こんなに胸が大きかったのか・・・。

紫音「うん、びっくりした。花陽ちゃん、かわいいね。眼鏡なしのほうがずっといいよ」

花陽「そ、そんな私なんて・・・真姫ちゃんのほうがずっとかわいいです」

紫音「まきちゃんって・・・ああ西木野さんの事か。ついに名前で呼ばれるようになったんだね西木野さん。そうそう聞いたよ、あの『START:DASH!!』って曲、西木野さんが書いたんだって?すごいね!!とてもいい曲だよ。ウチの家族全員、ビックリした」

紅音から聞いた時の驚きはまだ新鮮さを保っている。

西木野さん「・・・真姫よ」

紫音「え?」

真姫「だから私の名前、真姫。今みんなにそう呼んでもらおうとしてるの。紫音さんだけ『西木野さん』なんて、嫌だから・・・あと曲を褒めてくれて・・・ありがとう」

真姫ちゃんは頬を染め目をそらしながらそう言った。

すかさず凛ちゃんが「まきちゃんまきちゃ~~ん!かわいいにゃ!」と言いながら飛びついて行った。

「なによう!離れてよう!」とか言っている姿がまたかわいい。

俺は花陽ちゃんとにっこりと笑いあった。

穂乃果「お~~っとそこのナイスガイ!!ウチのかわいい後輩達と何してんだい!」

紫音「おはよう~穂乃果ちゃん、だね。忘れたかもだけど、俺、桜野紫音。シオンって言いにくかったらショーンって呼んでもいいよ。凛ちゃんはいつの間にかしょー兄ぃって呼んでるけど・・・」

穂乃果「しょーくん!カッコイイねえ!おっはよー!ただのコンビニバイトかと思ったらウチの後輩達を3人とも知ってるとは・・・!そして雪穂も!」

紫音「うん、この前見たとおり、ウチ妹が2人いるんだよね・・・みんな知ってる。雪穂ちゃんからお姉さんの話は聞いてたよ」

そう言うと穂乃果ちゃんは俺にずいぶんと近寄り、大きい目で俺を見上げつつ、興味深々といった表情をした。

穂乃果「え・・・何なに?どんな話?」

さすがに聞いたままは言えないので、俺は少し脚色をする事にした。

紫音「それはもちろん・・・お姉さんは優しくて美人で、妹思いでおやつをくれたり、お店番はキチンとやってくれるし頼りになって・・・」

穂乃果「すとっぷすと~~っぷ!もう!もういいです!!雪穂め~~ある事ない事色々しゃべったな~」

俺の脚色は瞬時にバレたようである・・・しかも正確な方向で。

紫音「いやそんな怒らないであげて。雪穂ちゃんね、お姉さんの話をする時はすごく楽しそうだったから。きっとお姉さんの事大好きなんだと思う」

俺がそうフォローすると、穂乃果ちゃんはいたずらをする子供のような表情をした。

穂乃果「・・・よっこのナイスガイ!!そんな事言ったって饅頭は安くしないぞ!!っていうかそんなお世辞よりも今度ハロパロ買うとき私だけ大盛りにして!!そのほうが嬉しいから!」

ハロパロはミニストッパのソフトクリームが浮かぶ小さめのドリンクである。

もう暑くなってきているので売れ筋商品の一つだ。

凛「あ~先輩、ずるいにゃ~!しょー兄ぃ、凛も凛も!!」

あ、あれ・・・なんだこの展開・・・なぜ褒めた俺がリスクを負うのか・・・これが穂乃果ちゃんという女の子か。

ことり「ほ、穂乃果ちゃん・・・それはいくらなんでも強引だよ・・・紫音くん、おはようございます。穂乃果ちゃんはね、ハロパロが大好きだから、いつも紫音くんを誘惑して大盛りにさせる計画を練ってたんだよ。それが思わず口に出ちゃったの・・・」

穂乃果「あ~ことりちゃん、なんで言っちゃうの!」

ことりちゃんに対しむくれる穂乃果ちゃんはとてもかわいいくて、思わず笑ってしまった。

紫音「あはは、穂乃果ちゃん、正直だね!了解、じゃあ穂乃果ちゃんと凛ちゃんは必ず俺のレジに並びなよ!混んでる時はダメだけど、空いてる時は善処します」

アイスクリームを少々長く出すだけならバイトの俺でも充分できるだろう。

穂乃果ちゃんは俺の右腕をバシっと叩き、凛ちゃんは左腕に巻きついて嬉しそうな顔をした。

穂乃果「やったぁ!絶対だよ!」

凛「しょー兄ぃやるぅ!嘘でも嬉しいにゃ!」

俺は照れながら園田師匠を見た。

ホントは園田師匠とこうやってじゃれあえたらな・・・と思うが、性格的に無理だろうとも思う。

俺は師匠にも声をかけようとしたが、目が合うと師匠は首を横に振るので遠慮した。

二人になれるチャンス、来ないかな・・・。

紫音「じゃあ俺行くね。ファーストライブは感動したよ!皆さん、練習がんばってね。凛ちゃん花陽ちゃん、えーと真姫ちゃん、早く追いつけるといいね」

凛「しょー兄い、どこ行くの?バイトかにゃ?」

紫音「うん、今日は午後3時からバイト。今からは弓・・・」

園田師匠がギロっとこっちを見た。

凛「きゅう??」

紫音「きゅう・・・あ、そうそう急須とかセトモノって言うの?そういうの売ってる店がないかな~って探しに行くところ」

俺は園田師匠と視線を交わし、お互いふ~~っとため息を付いた。

花陽「あ、それなら私、いい所知ってます・・・」

俺は知りたくもない瀬戸物屋の位置を花陽ちゃんに教えてもらい、全員にばいば~いと手を振って別れた。

こりゃ適当な瀬戸物を一つ買っておかねばなるまい・・・花陽ちゃんは実家に来る可能性があるからだ。

新μ'sメンバーと別れ歩きながら考える。

弓道の道具を道場に置きっぱなしだから今はバレなかったが、道具を持っていたらさすがに切り抜けられない・・・師匠はいつまで秘密にしておくのだろうか。

 

     ■□■

 

俺は午前中精力的に弓道の練習をした。

約2時間矢を放ち30分の筋トレである。

その後実家に戻りシャワーを浴びて昼食を摂った上で15時からバイトに入った。

夕方、本当にμ'sの6人がやってきたので、俺は穂乃果ちゃんと凛ちゃんが頼んだハロパロを少し大盛りにしてみた・・・大層喜ばれた。

俺を神だと呼ばんばかりの勢いではしゃいでいる・・・店長にバレるから店内で騒ぐなよ・・・。

 

     ■□■

 

ゴールデンウィークなので翌日も休日で、しかもバイトのシフトも無かった。

俺は弓道の練習とμ'sに会いたいがために、午前中から道場に行った。

すると予想通り、μ's6人は階段トレーニングをしていた。

これを狙っていた俺は、昨日親父がコストカで買ってきた日焼け止めクリームを持ってきていた。

コストカは海外メーカの製品も含め商品を大量に入荷、販売時も小分けせずダースやガロン単位で販売するため、単位当たりで計算すると高額な商品がお得に買える、という店である。

一度買うと使い切れないほどの量になるのだが、安く感じるのでついつい買ってしまうのが特徴だ。

我が家は毎年、特に女性陣は強い日光が苦手なので日焼け止めを買っている。

特に今年からは東京のとんでもない量の紫外線にさらされるので、大量に購入したのだった。

俺はトレーニング中のμ'sを呼び止め、以上の事を簡単に説明し続けて言った。

紫音「というわけで、みんなアイドルなんだから顔が真っ黒になったら困ると思って、日焼け止めの差し入れです。やっぱり女性は顔の作りよりも色の白さが大事って俺の母さんがいつも言ってるからさ」

そう言って紙袋を差し出す。

紫音「俺達家族が毎年使ってるモノだから大丈夫だと思うけど、一応今日はパッチテストして、大丈夫だったら明日から使ってみてね。顔を隠して練習って難しいと思うけど、少なくとも手足は長袖のジャージを着て日焼けしないよう守ったほうがいいよ、みんな色白でかわいいからさ!手袋もしてね」

顔を隠して、というのはここに来る途中で見た、サングラスとマスクと帽子で完全武装した小柄な女の子の事を思い出しての言葉だ。

あれは日焼け対策はバッチリである・・・ヘンタイさんの方向へは若干、近寄り過ぎだけど。

紫音「5月の日差しは8月とまったく同じだから、それくらい気を使ったほうが良いと思う」

予想通りと言いますか真姫ちゃんは既に対策済みだったため、残りの5人に一本ずつ手渡しした。

ことり「紫音くん、ありがとう・・・でも、一人一本なんて、もらっちゃっていいの?」

紫音「あ、まずは肌に合うかテストしてね。合う人にはあげるよ、大量に買ったから」

園田師匠も視線をそらしながらも受け取ってくれた。

まずは園田師匠の白い肌を守りたい。

 


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