…とても痛い。からだ全身を殴られたみたいで全身真っ青になっている。
分かっている、これが夢なのは。いつか覚める。そう思いながらやけに現実味を帯びている痛みを我慢しこの夢が覚めるのを待つ。
あの辛い過去はこの夢のせいで忘れられないのだ。
『アッハハハハ!見てみなよ!泣いてやがる!』
『うっわ、こいつの血ぃついた。きったね~。』
『おいッ、擦り付けんなよ!?穢れるわ!?』
『おいおい、顔面殴んのは止めとけ。まだもう少し働いてもらうからな。』
『は~。この女のどこがいいんだか。』
『反抗しないところか?』
『ははは、男数人に押さえつけられたら逃げれないって。』
『でもあんま楽しくないよな~。』
『もぉ少し痛め付けるか。』
『さんせ~い。』
ドガァッ ベキッ バキッ ドゴッ ゴキッ
『ぎぃっ!? はぐっ!? いぎっ!? あぁっ!? げふぅっ!?
…………………………い…、やぁぁ…。ゅる、してぇ。』
『許す?ば~~~か。お前はそうやって喚いてればいいんだよっ!』
『あうぅっ!?』
『おいおい明日までに治らなかったらどうすんだよ。』
『はぁ?どうでもいいだろ。どうせ親にも同じことされんだからよ。』
『こいつはこの世に要らねぇ奴だからな!』
『いづっ!?』
ああ、まただ。この夢は毎日見る。私のあの
見たくない。それでも見てしまう。まるで私に
お前は弱者なんだ、強くなることは許されない。
と、言っているいるような感じがする。実際に私は弱いし、あのときなにも出来なかった。
ほら、この夢もそろそろ終わる。抵抗した私は突き落とされ、そのからだはコンクリートに向かってまっすぐに落ちる。
…怖い。
一瞬で遠かったコンクリートがすぐ目の前にくる。ああ、死ぬんだ。夢の中の私はとても冷静だ。
…コンクリートが、真っ赤に染まった。
「っ!?」
こっちに来てから毎日見るあの悪夢から目を覚ます。やけにリアルなんだ、あの夢は。
私は汗でびっちょりと濡れた服を代えようと起き上がる。あのあとファミリアのお金から私の服を買ってくれたのだ。私にとっては優しすぎるんだあの二人は。いつか騙されそうだ。
すでに起きていたベルに見られないようにシャワールームで着替えて、私達はベルの作ったちょっと不恰好な卵焼きなんかをを食べて、ダンジョンに向かう準備をする。
「そうか、サクヤ君は今日が初めてだったね。あまりけがをしないようにするんだよ?ベル君も先輩なんだからしっかりやるんだよ。」
「はい、神様。それじゃあ、いってきます!」
「いってきます。」
そう、今日から私はダンジョンに冒険をしに行くのだ。まだ見慣れないオラリオの街並みを見渡しながら常に人に怯えながらダンジョンのあるバベルへと向かう。
「ここが、ダンジョン。」
「そうだよ。この下にはもっと広い階層が何十階をもあるんだ。」
暗い、あと狭いそれが第一印象だ。それに目の前ちはひょろっとした人型の気持ち悪いのがいる。エイナさんに教えてもらった通りならあれがゴブリンのはずだ。
あれが日本の街中を歩いていたらどうなるだろう?否応なしに引っ捕らえられて研究されるな。絶対。
「じゃあ相手は一体だけだし、倒してみなよ、サクヤ。」
「ん。」
いきなりすぎる。もう少し教えてほしい。と言うか大事なことを忘れている気がする。私は若干の不安を覚えながら目の前のゴブリンへと向かう。
そもそも私が他のものに攻撃するなんておこがましいんじゃないかな?というか今でも怖い。でも死ぬよりましだ。
『グギャアッ!』
ゴブリンの攻撃速度はあの人達の本気の拳打なみの速度なので私には避けることのできる。なんで生前でしなかったのかというと避けたら避けたで逆ギレするからだ。今思い返してもめんどくさい性格をしているものだ。
ゴブリンの攻撃を避けたあと、支給品としてベルに買って貰った支給品の剣をゴブリンに突き出す。突き出した剣は見事ゴブリンに命中しーーーー
ガキィンッ
「 はぇ?」
ゴブリンにはじはれた。ベルの方へ視線を向けると、ベルもあんぐりしている。なんで攻撃が通らない?その疑問はすぐにとけた。ああ、私のスキルだ。明確な意志がない限り攻撃できない。だっけ?それってダメじゃん。
「サクヤ!!」
そんなことを考えているとゴブリンが私に攻撃してくる。って、何余計なこと考えてるんだ。いや、余計なことではないけどさ。けど私のスキルが発動しているのであればベルもそこまであせる必要はない。ゴブリンは腕を振り上げてくる。
でも大丈夫だ。
嫌だ、死にたくない。嫌だ、あの場所を、失いたくない。
そう思うとまるで解錠したかのような音がした。恐らくこれがスキルの無効化これで攻撃が通るはずだ。ただ、死にたくないと思うだけでも目の前に自分を殺しえるものがあるだけでそれは死にたくないとゆう明確な意志になるのだ。
私は迫り来るゴブリンの腕を切り落とし、脇腹から心臓辺りをめがけて剣を突き出す。
『グギャッ!?』
そう言い残すとゴブリンは魔石を残して灰になるまあ、魔石と言ってももともと小さいし、そこからさらに私が砕いてしまったせいでかなり小さい。
「サクヤ~。ビックリさせないでよ。」
「ご、ごめん。」
「でもよかったよ。怪我もしてないようだし。」
「ん。」
そこからは数体だけ倒して私達はホームへ帰ることにした。
攻撃をすることが出来ない弱い私の初ダンジョンはけがをすることなく終わった。
いい忘れていたことですが主人公はだんまちの世界を知りません。