一月にマギ最新刊発売らしいですが、今度はすごいですよ
練白雄と白蓮を救う。
俺や紅玉にあまりメリットがないと思うかもしれないが、そんなことはない。
まずこの両皇子と白徳大帝が謀殺される大火の事件だが、練玉艶が仕組んだものである。
目的は二つ。自分の操り人形と化している練紅徳を皇帝にして政治の実権を握ること。
もう一つは、組織、もしくは練玉艶の本性の情報を手に入れた白雄・白蓮の抹殺。
この惨劇を止めることは不可能だろう。組織の力は強大だ。
むやみに立ち向かえば、俺の方が消されるだろう。
しかし、白雄・白蓮は失うには惜しい人材だ。
まず大前提として紅玉のことを優先して考える。
紅玉を守るためには、紅炎と手を組み、紅炎に仕える中で、紅玉を守るのが手っとり早い。
紅炎と手を組むのは簡単なことではない。
俺は得体の知れない鬼倭王国の第二王子。ジンの金属器を手にしているくらいで仲間に加えるほど紅炎は甘い男ではない。
しかも、俺が就きたいのは仮にも皇女(もちろん紅玉)の護衛だ。多大な信頼を勝ち取らなければいけない。
そこで俺は考えた。
白雄、白蓮皇子が死んだと見せかけ俺が救う。
白雄たちには命を救ったことを借りに俺の仲間になってもらう。
すると俺に、組織を欺いて白雄たちを救ったという実績ができる。
また、白雄たちが仲間になっていることで紅炎も俺に信頼を抱くだろう。
これで紅玉を守るポストに就けるということだ。
しかもまだメリットがある。
白雄たちが生きていることで、ずっと後に起こる煌の内戦を止めれるかもしれない。
その内戦は、大火の事件の生き残りである白龍が、自分こそ正しい煌の皇帝だと、紅炎に戦いを仕掛けて始まる。
しかしこの内戦は確実に紅炎サイドの負けになる。
シンドバッドが裏で糸を引いていて、七海連合とかいう国際同盟の国々と一緒に白龍側に参戦するのだ。
許せん、シンドバッド。
結局、紅玉の敬愛する紅炎たちは流刑になってしまう。
それはいかん。紅玉にとって尊敬できる兄たちを失うのは不幸だ。
しかもこれで煌の主力がごっそり減ったのを良いことに、シンドバッドは煌が確実に自然消滅する世界を作り出す。
まったく、紅玉にとって悪いことばかりだ。
しかしこの負の連鎖を止めることはできる。
その鍵が、白雄・白蓮だ。
内戦が始まらないようにするためには白龍を説得することだ。
しかしこれが難しい。白龍が心を許していたアリババやアラジンでも彼を説得できなかった。
しかし、兄である白雄の説得になら応じるなではないか?
彼は怒りで強くなったから、玉艶を殺してくれるまでは泳がしておいて、そこでネタバラシだ。
これで効率よく、紅玉が幸せになる世界に導けるというわけだ。
パーフェクト。我ながら良いことを思いついたな。
◇◆◇
「ふぅん。白雄・白蓮皇子が暗殺される…」
「そうだ。彼らは組織に狙われている。…見捨てることはできない。」
大峡谷ー…。
レーム帝国の南端に位置する未開の地、暗黒大陸に存在する、巨大な谷。
そこはなぜか底も対岸も見えず、まるで世界がここで終わっているかのような異常な光景が広がる。
その向こう側には、強靱な肉体を持った最強の戦闘民族、ファナリスの村があるといわれている。
そして、大峡谷の奥底には、伝説の魔法使いであるマギが暮らしているともいわれている。
「…それ、口に合わなかったかな?」
この、お茶の味の加減を聞いてくる男こそそのマギ、ユナンである。
「いや、おいしいけど。」
「そうか、良かった…。人にお茶を出すのは久しぶりなんだ。」
ここは大峡谷のユナンの家(?)である。
大峡谷の入り口で初対面を果たした俺たちは、立ち話もなんだということでここに招かれた。
そのときユナンに浮遊魔法をかけてもらって崖を下りたが、あんなに気持ちの悪いものだと思わなかった。
ジンを手に入れたら、魔装で空を飛べるようになるわけだから、こんなものには早く慣れておかねば。
「君の話は、よく耳にするんだ…。なにせ、ブキミな鬼倭王国の大層優秀な王子らしいからね」
「えっホントに?」
思わず聞き返してしまった。俺は有名人だったのか。それは知らなかったな…。
「オトヒコ、君は一体何者なんだい?」
確かに何者かと聞きたい気持ちはわかる。むしろわかりすぎるくらいだ。
俺はまだ12のガキなのに、一人で旅をして、煌の皇子を救うためにジンを手に入れようとしている。
しかも、この世界の知識がかなりある。未来に起こることさえ知っているのだ。
もちろん俺はマギがサンデーで連載している世界からこの世界に転生してきたので、当たり前といえば当たり前なのだが。
しかしこのユナンも転生者だ。何回もマギとして生まれ、この谷を守っている。
「似たような者だ、お互い。」
ユナンは笑った。
「そうかい。」
「君をジンの迷宮へ導くことはぜんぜん構わないんだ」
実をいえば、という感じでユナンが話を切り出した。
「えっ?」
「君の周りのルフを見ればわかるよ。希望と情熱に満ちていて、使命を果たそうとして必死になっているような雰囲気だ。……嫌いじゃないよ。」
まるで占い師だな。
そんな感想をふいに抱いた。
「…何度でも憎しみあい、戦い合う、この辛くて悲しい世界を、良い方向へ導いてくれるような、そんなことを君からも感じたんだ、オトヒコ。」
君から、も、ね。
ユナンが選んだ王の器が今の世界に一人いる。
七海の覇王、シンドバッド。
「じゃあユナン、頼む。」
もしかしたらさっき俺はユナンに王の器としてシンドバッドに近い位置に分けられたかもしれない。
奴と一緒というのは気に食わないが、力を手に入れるために俺を選んでくれたことに感謝しよう。
「ああ!君にぴったりなとびっきりのジンを出してあげよう!」
「…ありがとう、ユナン。」
まだ道のりは長いが、ようやくここで、俺の紅玉に捧げる人生を共にするジンに出会えるわけだ。
もちろんのことながらワクワクしている。
まだジンの力を手にしている者は少ないから、選び放題というわけだ。
ベリアルとかだったらどうしよう?ヴィネアが出たら困るな。
いや、とにかく何でもまずは攻略しないとな。
これまで鍛えてきた力の見せ時だ。
どんな敵が現れたって、斬って進むだけだ!!
◇◆◇
本当に君は変だよ、オトヒコ。
僕と君が似たような存在だって?
全然違うよ、オトヒコ。
君はウーゴくんを知っているといったけどそんなはずはないんだ。
なぜならウーゴくんのいる聖宮に還り生まれ落とされるのはマギのルフだけ。
君はマギじゃない…。なぜ、ウーゴくんのことを知っているんだい?
あと、僕のことも。
君はどう見たってまだ幼い子供だよ。
そんな君がなぜ、最近現れだした(僕が出したのもあるけど)迷宮のことや、僕のことを?
シンドバッドに聞いた?まさか。
もしそうだったら君のことを僕はよく知ってるはずだよ。
僕は君のことを全然知らない。
君は僕のことどころか、僕でさえよく知らない組織のことまで知っているようだ。
それに君のルフー…。
君の周りのルフは確かに希望に満ちて白く光輝いてるんだ。
でも、なぜだい?
君の身体に宿るルフは真っ黒だったよ。
君は、自分のことを多く話したくはなさそうだったね。
まるで不都合でもあるかのように。
君の言うことは信用性があるよ。
実際、煌で暗躍する組織は、白雄皇子たちの命を狙っているようにも思える。
でも君が信用できないんだ、オトヒコ。
君が白き王の器であるのは間違いないんだけどね。
悪いけど君には、ちょっとした魔法をかけさせてもらうよ。
杖に力を込め、ジンを呼び出す。
すると大峡谷の底のど真ん中に、光と共に巨大な建物が現れる。
その建物は西洋風で、まるでレームの大使館のようだ。
「これが、迷宮…!!」
オトヒコが驚いたような声を上げる。
我が王の器よ、この迷宮が攻略できるかな?
「このジンはくせ者だ、でも君に絶大な力を与えるだろう。攻略できれば、だけどね。」
「わかっている。」
そう言うとオトヒコは鬼倭製らしい、身丈にあっていない大きな刀を持って迷宮の入り口へと進んでいった。
恐れなしか、本当に君は子供かい?
なんてね。聞くまででもなく君は子供じゃないよ。
「あっオトヒコ。」
すでに入り口へ入ろうとしていたオトヒコの足が止まる。
「僕は今回攻略についていかないよ。お手並み拝見ってところだね」
「望むところだ」
オトヒコが笑ってみせた。
「あと、」
「この女の子は連れていかないのかい?」
僕は大峡谷の僕の家の前で、僕の隣で荷物を持って立っている娘を指して言った。
気になってたんだけど、君についてきたこの子は誰だい?オトヒコ。
ジンについてですが、オリジナルの設定でいこうと思っています。
さて、乙彦が連れていた女の子とは一体!?