ULTRAMAN ZOFFY   作:銀河 流星

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《前回のあらすじ》
海王星に出現した巨大なゼットンの繭との戦いに苦戦するゾフィー。残された最後のエネルギーを使うもその繭の中へ飲み込まれてしまった。
一方、何も知らない地球では一つの戦いが幕をきろとしていた。


第36話「木山先生」

戦いが終わった静かな風が吹くと、木山春生の表情は晴れなかった。自ら守りたかったもののために1人の超能力者を殺してしまったのだから……。

 

 

「恨んでもらって構わんよ。手荒なことをしたくなかったが、統括理事会が動く前に片付けなければならない。邪魔をする者は何人だろうと潰す。」

 

 

そう言って振り向きその場を立ち去ろうとする木山春生の後ろから何者かがギュッと動かせなくするかのように抱きしめた。

 

 

「つーかまーえた!」

 

 

その声を聞くと木山春生は、横目でその人物を確認すると驚きの声をこぼす。なぜなら、先ほどまで瓦礫に埋もれてピクリとも動かなかったはずの人物なのにも関わらずピンピンしてるからだ。

そう、その人物とは……御坂美琴だ。

 

 

「馬鹿な!直撃したはず……ッ!!」

 

 

そう言って更に後ろへ視線を移すとあることに気づく。それは、ただの瓦礫ではなく盾になっているという事だった。

 

 

(あの死角からの奇襲をどうやって!?)

 

 

疑問が木山春生の脳を走る。すると、後ろから捕まえている美琴が説明を開始した。

 

 

「AIM拡散力場の専門家に説明するのもアレだけど……私の身体からは、常に電磁波が出ているの。妙な動きがあったら反射波で感知できるから死角とか関係ないのよ。」

 

 

すると、下を見ていた美琴が顔を少し上げた。その表情は木山春生と違って晴れていた。

 

 

「ゼロ距離からの電撃……あのバカや宇宙人には効かなかったけど……あんなトンデモ能力までは持ってないわよね?」

 

 

そう言われた木山春生は、危険を察すると慌てて近くにあるものを能力を使って動かすと美琴に奇襲をかけようとした。

 

 

「遅い!!」

 

 

そう言って美琴の電撃が木山春生を襲った。

すると、ガクッと動くのを最後に木山春生は、意識を失ってしまった。

 

 

「一応手加減はしたけど……これで戦闘不能なはず!」

 

 

そう言うと美琴は安心しながらそう言った。

 

 

しかし!?

 

 

『センセー』

 

その一言に美琴は、背筋を凍らせたと同時にあたりを見回すが、誰もいなかった。

 

 

『木山センセー』

 

 

しかし、子供たちの声は確実に美琴の脳に伝わった。それを聞くと美琴は、確信した。

 

 

(私と木山は電気を介した回線で繋がっている!?)

 

 

驚く美琴だが、次の瞬間、彼女の脳にたくさんの情報が流れ込んできた……。

そのほとんどが、この事件の発端に繋がる出来事だった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ナレーション担当:木山春生】

 

 

「私が教師に?」

 

 

私は、数年前とある研究施設にいた。目の前には私の上司である木原幻生が自分の椅子に座っていた。

 

 

「何かの間違いでしょうか?」

 

 

突然の事で不思議に思った私は質問するが、木原幻生は違うと言って椅子から立ち上がると窓の方を見る。

 

 

「君は確か教員免許を持っていたよね?」

 

「あれは…取得単位で取れたからついでに……。」

 

「なら、教鞭をとっても何もおかしくはないじゃないか……木山君。」

 

 

この頃の私は、今より髪も短く瞳の下にあるくまも無かった。だが、私はどうしても教鞭を取りたくはなかった。それには、二つの理由からだ。

 

 

「今は、研究に専念したいんですが……。」

 

「何語も経験だよ、木山君。」

 

 

そう木原幻生は、窓から私の方へ振り向いて言うと手でこっちに来るように合図する。私は、「聞いてください」と言いながら木原幻生の隣へ向かうと同時に外で元気に遊んでる子供たちを見る。

 

 

「表の子供達……。彼らは、置き去り(チャイルドエラー)と言ってね。何らかの事情で学園都市に捨てられたち寄りのない子供たちだ。そして、彼らが今回の被験者であり君が担当する生徒になる。」

 

 

普通ならおかしい。

幼い小学生を実験の対象にするのだから……。しかし、これが学園都市だと私は納得した。

私が今回行う任務は、

 

「実験成功のために被験者の詳細なデータを取り細心の注意をはかって調整をする」

 

ことであった。だから、私は研究の一部だと思い教鞭を渋々引き受けた。

しかし、これが本当に教鞭を取りたくなかった理由ではなかった。

 

 

「あー、今日から君たちの担任になった木山春生だ。よろしく。」

 

「「「宜しくお願いしまーす!!!」」」

 

 

私が本当に教鞭を取りたくなかったのは、『子どもが嫌い』だからだ。

教鞭を取ってから数日が経った天気のいい日。

私は、教室に入ると上からバケツ一杯分の水をかけられた。それを見たクラスの男子は喜ぶ。

 

 

「ワーイ!引っかかった!!」

 

「コラー!!」

 

「センセー、大丈夫?」

 

 

その喜ぶ男子とは逆に数名の女子は私の心配をしてくれた。私は、質問に答えながら手をシャツのボタンへ持っていくと一個一個外し始めて脱ぎ始めた。

 

 

「今日は晴れてることだし外で干しておけばすぐに乾く。」

 

「わーっ!こんな所で着替えないでっ!!」

 

「コラ、男子!あっち向いてろー!」

 

 

それで素直に後ろへ向けば利口なのだが、その男子達は後ろへ振り向きながら反抗するように会話をし始めた。

 

 

「べ、別にセンセーのぺチャパイなんか見たくねーよな?」

 

「お、おう。」

 

「ぺ……ペチャパイ……」

 

 

全く……これだから子供は嫌いなのだ。人が気にしてることを問答無用でいうし、いたずら好きだし……。

 

 

「なぁ、センセー彼氏いるの!?」

 

「……いないけど。」

 

 

また別の日、一人の男子生徒が私へ質問をしてきた。私は、真実を答えるとその生徒は生意気な態度を取りながら話を進めた。

 

 

「なら、俺が彼氏になろうか?」

 

「よ、余計なお世話だ!」

 

 

デリカシーもないし、予想通りじゃないし……。

先生になり、数ヶ月たった雨の日……。

私は、全ての仕事を終えてマンションへ帰ろうとすると校門前で尻餅ついている女子生徒を発見した。

 

 

「あ、木山先生。」

 

「一体どうしたんだ!?」

 

「滑ってコケちゃった……」

 

 

その少女は、笑いながらそう言った。私は、少し呆れながらその少女にあることを聞いた。

 

 

「家に来るか?」

 

「え!?良いの??」

 

 

女子生徒は、目をキラキラさせながら聴くとそれに対して私はうんと頷いて生徒と共に帰宅した。

 

 

「わーい!お風呂だ!!先生、入っていいの?」

 

「あぁ、だか風呂がそんなに珍しいか?」

 

「うん、だって施設だと週に2回のシャワーだけだもん!」

 

 

そう言って生徒は服を脱ぎそのまま風呂へ向かった。入った瞬間、「温かい」などの言っていた。

 

 

「センセー、私も頑張ったら大能力者や超能力者になれるかな?」

 

 

風呂に入ってから数秒後、生徒は私に質問してきた。私は、論理的なことを言おうとしたが、次の瞬間口が止まり別の言葉を変わりに言った。

 

 

「今のままでは何とも言えないな。才能にもよるが、今後の努力次第といったところか。高能力者に憧れでもあるのか?」

 

 

今度は、私がその子に質問をした。すると、予想外の回答が帰ったきた。

その回答は、大人っぽくて聞いてる私もびっくりした。

 

 

「んー、勿論それはあるけど……私たちは、学園都市に育ててもらってるから、この街の役に立ちたいなーって……。」

 

 

その後、女子生徒は風呂上がりにすぐ寝てしまった。おかげでいい迷惑だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからさらに時は過ぎてAIM拡散力場制御実験当日。

私は、指示通りに動き生徒達を実験台に寝かせた。

 

 

「怖くないのか?」

 

 

私は、常に笑顔になっている風呂に入れた女子生徒に質問した。すると、女子生徒は笑顔で答えた。

 

 

「うん!だって、木山先生の実験でしょ?先生の事信じてるもん!だから、全然怖くないよ!」

 

 

それを聞いて私は、何故か安心した。これで、先生ごっこもおしまいだと思った矢先に事は起こった。

 

 

「ビーーー!!」

 

 

何かの警告音と共に周りの研究員は慌てだす。私は、実験室で血を吐きながら苦しんでいる彼らを見て全身が震えた。

 

 

「急いて病院に電話を!!」

 

「あー、良いから早くデータを集めなさい。」

 

「しかし!?このままではあの子達が!」

 

「実験は成功した。君たちは何も見なかった。良いね?」

 

 

そう言って一人データが取れたことに喜んでいる馬鹿科学者、木原幻生は私の隣りにやってきた。

 

 

「木山君、良くやってくれた。彼らには可哀想だが、実験に犠牲はつきものだ。今回の事故は気にしなくて良い。」

 

 

そう言いいながらポンと私の肩を叩いた木原幻生は、悪魔のような笑みで言い残して去った。

 

 

「君には今後も期待してるからね!じゃあ、後はよろしくー」

 

 

その後、木原幻生がいなくなった後一人の研究員が病院に通報した。救急隊に運ばれる彼らの苦しい顔を見た私はペタッと両膝を地面に付けて落胆した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ナレーション木山春生終了】

 

 

 

 

美琴は、怖くなり木山春生から手を離した。中学生である美琴には、未体験のグロさだったからだ。

 

 

「な、何よ…これ……。」

 

「み、見られた!」

 

 

そう言って木山春生は、能力を使い美琴を攻撃しようとするが、電撃のダメージが残っており美琴に攻撃が当たることは無かった。

 

 

「な、何で……あんな事を!?」

 

 

美琴らしくないオドオドしながら質問した。それを聞いた木山春生は、大声で笑い出した。

 

 

「あの実験の正体は、『暴走能力の法則解析用誘爆実験』能力者のAIM拡散力場を刺激して、暴走の条件を探るものだったんだ。あの子達を使い捨てのモルモットにしてね!」

 

「だったら……それこそアンチスキルに……。」

 

 

そう呟いた美琴へ能力を使った攻撃が飛ぶ。それを躱した美琴の前にはボロボロになった木山春生が立っていた。

 

 

「23回……。あの子達を救うために『樹形図の設計者(ツリーダイアグラム)』の使用許可申請をした。しかし、全て断わられた。アンチスキルも統括理事会もグルなんだ!働くわけがない!!」

 

「でも…アンタがやってる事も同じじゃ……。」

 

「君に何がわかる!!」

 

 

美琴が正論を放つとそれを対して木山春生は、大声で反論した。

 

 

「あんな悲劇二度と繰り返させはしない。そのためなら私は何だってする。この街の全てを敵に回してもの止める訳にはいかないんだっ!!!」

 

 

その瞬間、木山春生の脳に何かが起きた。

激しい痛み……。

木山春生は、出産寸前のお母さんのように大声で叫んで頭を抑えた。

 

 

「ちょっと、どうしたの???」

 

 

突然の変異に美琴も状況が読めなかった。

しかし、木山春生の頭から離れるかのように胎児のような形をした能力の暴走体AIMバーストが出現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、初春は手錠を外そうとしてたが、中々外れない。

 

 

「あ!飾利ちゃん!!」

 

 

そこへ、危険も知らずに穂乃果、絵里、真姫がやって来た。三人の後を追うかのように固法先輩も駆けつけた。

 

 

「だ、ダメですよ三人は一般人なんですから現場に立ち入っちゃ……。」

 

「そんな事言ってる場合!?アレ、見てから物言いなさいよ。」

 

 

真姫が空へ指を指すとそこには、あのゾフィーをも取り込んで繭から孵ったばかりだが、通常の怪獣の何倍にもデカい大きさのハイパーゼットンギガントが地球に接近するのが目で見えた。

 

 

 

 

 

 




《次回予告》
AIMバーストの負の怨念を求めてハイパーゼットンギガントが地球へ接近する。
両者が揃う時、地球の崩壊の危機に陥る。


第37話「誕生!完全無敵のハイパーゼットン」

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