外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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なかなか書く気分になれなくて、進められませんでした。今後もゆっくりと更新していく所存です。


61 天下一武道会 閉幕

『それでは準決勝、イーヴィ選手 対 グレートサイヤマン選手の試合を開始します』

 

 私とグレートサイヤマンが武舞台へと上がる。

 

「こうやって面と合わせて戦うのは初めてね」

「そ、そうですね」

 

 悟飯の苦笑いが見て取れる。悟飯に苦手意識を持たれているのは前々から自覚しているが、こうも態度に表れていると少々傷つく。本人はちゃんと隠しているつもりなのもわかっているが。

 

「遠慮なくかかってきなさい」

「はい。いきます」

 

 悟飯が構えを取る。私の方は、ステップを取る。カポエラなんかでよく見る動きだ。我流なので名称はよく知らない。

 

『それでは準決勝始めてください!』

 

 開始と同時に悟飯が仕掛けてきた。私は大仰に避ける。ブレイクダンスの様な動きでわざと服に掠らせたりする。

 

「くっ!」

 

 私の動きに悟飯は多少の苛立ちを見せる。その際に大振りの右ストレートをしてきたので逆立ち状態で足の裏で受け止めた。

 

「あの! ふざけてるんですか?!」

「いや、遊んでるだけだよ」

 

 開脚した状態で腕だけで体重を支えながら回転する。要は体操やダンスなんかで使われる開脚旋回である。その勢いで蹴りを入れる。少々トリッキーな動きだが、悟飯はしっかりと防御した。

 

「防がれたか……ちょっと甘く見過ぎたかな」

「もう少し本気でやってもらえませんか?」

「うーん……まぁ、いいけど?」

「けど?」

「すぐ終わるよ? ほら」

 

 瞬時で背後にまわり、飛んで頭を掴んで武舞台に叩きつけた。

 武舞台に小さなクレーターができあがったが、悟飯は丈夫なのでこの程度で死んだりはしないだろう。

 

『グレートサイヤマン選手ダウン!ワン!トゥ!スリー!……』

 

 カウントダウンが始まる。

 

「……! ふっ! ぐぬぬ……!」

 

 悟飯が立ち上がろうと腕を動かすが、中々起き上がれない。

 

「あら、意識があると思わなかった」

 

 確実に脳震盪を起こすように叩きつけたつもりだったが、やはりサイヤ人は特別の様である。

 

『ナイン!テン! イーヴィ選手の勝利です」

 

 悟飯を背負い、武舞台から降りる。

 

「痛てて……こんなに力の差があるなんて……」

「超サイヤ人になる前に潰しにかかったしね。ちょっとずつ力上げるとか、そんな負けフラグ私はやりたくないから」

「負けフラグですか?」

「そういうことすると最終的に負けちゃうのよ。本当に実力差が桁外れに違わない限り」

「イーヴィさんはホント独特な戦いをしますよね」

「楽しむこととが第一だからね。負けるにしたってそれなりに理由を付けたいのが私だから」

 

 

 

 

 

 

 続く準決勝はサタンの負傷による棄権のためにラディッツが決勝に上がることとなった。そして、決勝戦。イーヴィとラディッツが武舞台の上で対峙していた。

 

「こうして真正面から戦うのは随分と久しぶりね」

「正面から? 一方的に何かされた覚えしかないぞ」

「そうだった? いじってる相手からの反撃は嫌いだからねぇ、そうしてたかも」

 

 これだから嫌なのだ、とラディッツは思う。恩があるのもまた事実ではあるが。

 

「娘の前だ。いつものようにはやらせんぞ」

「君、ホント良いパパさんやってるね」

 

 イーヴィは目頭を押さえながら言う。

 

「な何故、そんなことを褒める」

 

 気持ち悪いぞ、と口がついて出そうになるのを止めた。

 

「嬉しいからだよ。私の起こした変化が」

「また、よくわからんことを……まぁ、いい。来い!」

 

 開始を告げる声と共に飛び掛かる。様子見の左拳の連打をラディッツは容易く避ける。

 

「随分と速くなったんじゃない?」

「貴様が訓練した結果だろうが」

「それじゃあ、一気にスピードを上げるよ」

 

 今度は両手で手数を増やす。ラディッツは受け流しつつ、後退することもない。多少は焦ると思ったのに思いのほか余裕がある。ここでローキック……と思わせて、ハイキック。

 

「え! 嘘!?」

 

 ラディッツは、フェイントに引っかかることもなく私のキックを掴んで止めた。

 

「せいっ!」

 

 そのまま放り投げられた。武空術で場外は防いだが、危ないところだった。

 

「長年、相手をさせられているんだ。お前のしそうなことぐらい何となく読める」

「む……ラディッツのくせに生意気な。それならこれでどうだ」

 

 右手で銃のハンドサインを、某霊界探偵の如くラディッツに向ける。

 

「バン」

 

 私の言葉と同時にラディッツは背中に衝撃を受けた。

 

「なっ!?」

 

 イーヴィが何かすると身構えたら背中にダメージを受けた。それはつまり

 

「てめぇ……それは反則だろう」

「さぁ、何のことかしら」

 

 まごうことなく反則である。要はいつもの如く仕掛けを作って、狙撃しただけの話だ。ただし、飛ばしているのはただの空圧である。と言っても、一般人が脳天に食らえば死ぬこともある威力だ。

 

「このぉ!」

 

 ラディッツが思い切り殴りかかるが、イーヴィはラディッツを嘲笑うようにムーンサルトでラディッツの頭を触りつつ後ろに避ける。

 

「てめぇはムカつくが、ルールだけは守るやつだと思ってたのによ!」

「え、意外。私のことそんな風に思ってたんだ」

 

 ちょっと嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。

 

「それをてめぇは……失望したぜ」

「あー、うん。そんな風に思ってくれているとは思ってなくて、えと、その……ごめん」

 

 イーヴィがあたふたしながら謝っている。その様子にイーヴィをよく知る者たちは、驚きを隠せなかった。イーヴィとしては恩義を感じていてくれているのは知っていたが、自分に失望するような要素があったことに驚いていた。いつものように、あいつなら仕方ないと思われるとばかり考えていた。

 

『え、えーと、私には事情がわからないのですが……イーヴィ選手が何らかの反則を行い、イーヴィ選手がそれを認めたと……?』

 

「ちっ……こんな勝ち方あるかよ……!」

「ごめん、って……」

 

 ラディッツに近寄り、再び謝意を示そうとするとラディッツがイーヴィの頭を掴んだ。そのまま武舞台に叩きつけた、

 

「はーっはっはっは! ざまぁみろ! いつもの仕返しだ!」

 

 周囲はドン引きである。昔の悪の血でも騒いだのだろうか。

 

「あぁ、そう……なかなか面白いね。面白いよ……ふふふ」

 

 イーヴィは額から血を流しながら、ラディッツに向いてそういった。それはそれはいい笑顔だった。表情に反してブチ切れていたが。

 イーヴィは、ラディッツの足首を掴みある術を決行した。その術を使った瞬間、武舞台からラディッツと共に姿を消した。

 

「二人の気が消えた……?」

 

 悟空たち全員がラディッツとイーヴィの気を捉えられなくなった。

 

『……これはどうしたらいいのでしょう』

 

 審判のおっちゃんは、途方に暮れることしかできなかった。

 

 そして、イーヴィたちは砂漠の上にいた。

 

「な、なんだここは?」

「ここはとある人たちの心象風景を模して作った異空間。そしてその能力を再現してみようと思ったの」

「……どんな能力だ」

「私の後ろを見ればわかるよ」

「……!! おい、冗談だろ」

 

 遥か彼方に見える影、それはイーヴィだった。ただし、数が尋常ではない。地平線のかなたまでいるのではないかと思えるほどだった。

 

「本来は自分に忠を誓った配下を呼ぶ術なんだけど、そんな軍勢になるほどの配下は私にはいないからねぇ。私の機械10万体で代用してみたの。って、わけで数の暴力を味わってね」

「う、うわぁあああああ!」

 

 次元刀で脱出を試みるが、出てこれた場所は同じ砂漠の上。

 

「逃げられると思った? おあいにく、対策済みなの」

 

 イーヴィの軍勢に囲まれ、ラディッツに為す術はなかった。

 

「それじゃ、病室でまた会いましょう」

 

 拳の雨あられは30分の制限時間ギリギリまで続いた。そして、術を解いた時にはボロボロになったラディッツと気が晴れたと言わんばかりのイーヴィが武舞台の上に現れた。

 

『一体、どちらにいたんですか?』

「遠く見えないどこかで決着付けてきたのよ。結果は御覧の通り」

『生きているんですか……?』

「ちゃんと生きているわよ。呼吸も脈も内蔵機能にも異常はないわ」

 

 審判はしっかりと呼吸を確認した。

 

『私、正直何が起こったのかさっぱりわからない上に待った挙句決着が付いている試合に非常に納得いかないのですが、イーヴィ選手の勝利! 優勝です!』

 

 優勝については特に灌漑もなく、とりあえず微妙な声援に応えるイーヴィ。ただ、今回の件で不正疑惑が多数来そうなのでミスターサタンを使って疑惑を晴らそうと考えるイーヴィであった。

 

――不正しかないね。


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