外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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ちょっと詰め込み過ぎた感。そんなに長くはないですが……


60 第二回戦

『それではこれより二回戦を開始したいと思います!イーヴィ選手とシン選手は武舞台へ上がってください!』

 

 どことなく緊張した面持ちの界王神。得体のしれない存在に慄いているのか。

 

「それでは第二回戦、始めてください!」

 

 私が一歩踏み出すと、界王神が一歩後退る。

 

「ねぇ、びびってるなら降参したら? この後もお仕事あるでしょうし、ここでケガしても何の得にもなりもしないわよ」

 

 私の発言に少しむっとした様子。

 

「いえ、私にも界王神としての矜持がありますので、ここでみっともないところはみせられません」

「意地を張る人は嫌いじゃないけど、考えなしのバカは嫌いよ。知識も実力もないような神様なら仕方ない気もするけどね」

「こ、このっ!」

 

 流石に堪忍袋の緒が切れたのか、気功波を撃つ構えを取るがそれより先に私が界王神の顔前に掌を向ける。

 

「実戦ならこれで死んでるよ」

「あなたは一体、何をしたいのですか?」

「私はただやりたいことをやりたいようにやるだけよ。それで続けるの?」

「……降参します」

 

 項垂れて降参を告げる界王神。はぁ、とため息をこぼすイーヴィ。

 

 審判の人がイーヴィの勝利を告げ、二人とも武舞台を降りていく。

 

「もしかしたら勘違いしているかもしれないけど、別に私はあなたを困らせたいわけじゃないからね」

「えぇ……!?」

「いや、それは間違ってはないか……対象の範囲がほぼ全ての人ってだけで」

「えぇ!!?」

「勘違いしてほしくないんだけど困らせたいだけであって、脅かしたいわけじゃいからね」

「……それは一体何が違うんですか?」

「犯罪と悪戯ぐらいの違いはあるわ」

「……悪戯によっては、それも犯罪では?」

 

 全くもって真理である。

 

「死人や後遺症が残ることがなきゃなにやったっていいのよ!」

「開き直った!?」

 

 後腐れがなければ、どんな悪事も許される……とまでは思っていないが、それに近い考えである。

 

「とりあえず、私が悪であることは認めるけど、あなたは自分が無知であることを罪に思った方がいいわよ。あなたは神である割に物を知らなさすぎる」

「え……」

「全知全能なんて都合の良い神様が居るとは思ってない。それでも、あなたの知らなさっぷりは犯罪的よ」

「そこまで言うなら教えてください.。私が何を知らないのかを」

 

 あまりのおかしな発言に失笑し、呆れてしまう。

 

「……教えを乞うような神様が居ていいわけないでしょうが。それぐらい自分で知りなさい」

 

 全く……これだから、無能神は。魔人ブウに襲われた件もあり、仕方ない面もあるのかもしれないが…でも、神を名乗る者がこんなのでいいわけがない。

 不服そうな面持ちの界王神。

 

「そんな顔しないでよ。威厳も何もあったものじゃない。この件で必要だと思うことはちゃんと教えるから」

「……! お願いしますよ」

 

 この腰の低い態度は、この界王神としての美点であり欠点だ。

 

「えぇ」

 

 だが、教えを乞われて嫌な気分はしない。

 

 

 二回戦第一試合が終わり、次の第二試合が始まる。

 第二試合は悟飯もといグレートサイヤマン 対 トランクスだ。

 ここでの試合は悟飯に軍配があがった。当然と言えば当然の結果である。いくら修行をさぼり気味とはいえ経験も底力も別格である。少々危ない場面も見られたが、トランクスを場外負けにさせた。

 

 そして、第三試合 ビーデル 対 ミスターサタン。

 共に普通の人間の枠を大きく踏み越えていない……ビーデルはそうでもないか。サタンはギャグ的には人類超越してるけど。

 

 二人が武舞台の上に立つ。観客の下馬評は五分五分、ややサタン寄りであるが、ビーデルとサタンの実力を正確に知る者たちはどうひっくり返ってもビーデルの勝ちである。

 今回、イーヴィはサタンに全く手を貸す気がなかった。どちらかに肩入れする気が起きなかったのである。サタンがどう打開するのかにも気になっていた。今回ばかりは運だけではどうにもならない。

 

「ビーデル、思いっきりかかってきなさい」

「もちろんよ、パパ」

 

 最も近しい関係である親子でありながら互いに本当の実力を知らない者同士。サタンはビーデルを溺愛しながら、ビーデルはサタンを避けたいお年頃。しかし、サタンの力を信じている。

 

「それでは第三.試合、始めてください!」

 

 先に仕掛けたのはビーデルだった。

 

「はぁ!」

 

 ビーデルが鋭い突きを放つ。気を意識しない者が放つものとしては、最高レベルだ。

 サタンはその一撃にビビる様子も見せずに受け止めた。

 

「!?」

「ずぁああああ!」

 

 受け止めた拳をそのまま引っ張り込み、後方に投げ飛ばす。ビーデルは武空術により空中で受け身を取った。

 

「びびび、ビーデル……!」

「どう? パパ、驚いた?」

 

 楽しそうな表情のビーデル。

 

「飛行少女になってしまったのか……!?」

 

 話を聞いていた全員が呆然とした。なんてつまらないシャレを言うのかと。

 

「あのねぇ、ふざけないでよ!!」

「そんなことはない。パパはいつだって真剣だよ」

 

 サタンは構えを取る。

 ビーデルはゆっくりと降りて、サタンに相対する。

 

「私は正直、パパの強さを疑っているの」

「な、なにを言っているんだ、ビーデル! パパは世界チャンピオンなんだよ!」

「師匠から技を教わって、悟飯君のパパの修行を少しだけ見たの。パパのするトレーニングよりずっと過酷で、動きもまるで違った」

 

 さすがに身近に居る自分の娘までは欺けなかったようだ。

 

「さっきの18号って人との試合も何かおかしかったし、私は何で今まで疑問に思わなかったんだろうって……」

 

 サタンは覚悟を決めたのか、さっきまでの慌てる様はなかった。

 

「ビーデル、黙りなさい」

「でも、パパ!」

「黙りなさい。試合を続ければわかることだ」

 

 珍しく真剣な表情をするサタンに自分も真剣に立ち会わなければならない。そう感じた。

 

「はぁあ!!」

 

 ビーデルは先ほどより速い連打をサタンに繰り出す。サタンは何発かは止められたが、そのほとんどを受けてしまっていた。

 

「たぁ!!」

「ぬぉおお!!」

 

 飛び蹴りがサタンにクリーンヒットした。一般人ならこれで決着かと思ったが、サタンは起き上がった。

 

「さぁ、来なさい、ビーデル」

 

 余裕ありげなセリフとは裏腹に既に足が震えている。少ない攻防で最早限界が近い。

 

「パパ……」

 

 このやり取りでビーデルは確信に変わった。自分の父親は世界で一番強いわけではないのだと。元々抱いていた疑問ではあったが、小さな失望だった。

 

「試合はまだ終わっていない……来なさい」

「まだ続けるの?」

「世界チャンピオンだからな」

 

 サタンというのは悉くが並である。努力は重ねてきたのだろうが並である。努力にしても世界チャンピオンになってからはサボりがちだ。人より強いところと言えば虚栄心で、また運もかなり良い方だが、今度こそ運の尽きというやつなのだろう。有象無象ではなく娘に敗れるのだからまだ良い方なのかもしれないが……

 

 ビーデルの一撃が入る度にサタンは倒れる。反撃する力さえ残されていないようだが、それでもサタンは立ち上がった。

 

「パパ!! これ以上は!」

「……コヒュー……」

 

 サタンの呼吸は乱れ、なぜ立っているのかもわからないような状態だ。それでも構えを取る。

 

 

「ずあぁあああ!」

 

 サタンは、それでもビーデルに走って向かう。ビーデルは蹴りで迎え撃ち、サタンは再び倒れ伏す。それでも、立ち上がろうとした。

 

「もうやめて! もう結果は見えてるじゃない!」

「……ミスターサタンは、パパは、世界チャンピオンだからな。娘、相手にも負けるわけにはいかん……」

「これ以上やったら死んじゃう!!」

『ミスターサタン……私もそう思います。ここは降参を』

 

 さすがに審判の人も諫める。

 

「絶対にそれはできん!!」

 

 痣だらけの身体を起こし、立ち上がる。

 

 一連の様子を見て、さすがに可哀想に思ったのかイーヴィは力を使った。それはサタンの運気を大きく上げるものだった。それは気休め程度に怪我の程度を少なくする程度のものだ。すぐに復帰できるように、また彼の評判が悪くならないようにと思ったからだった。運命を操作し、サタンを勝たせると言う様なご都合主義な能力も持ち合わせているが、直接フォローしてしまうとサタンの心意気を汚してしまうような気がしたので控えた。

 

 ただ、イーヴィに誤算があったとすれば、サタンの運というのは最初から並外れていたということだった。

 

 サタンは馬鹿の一つ覚えの様にビーデルに走って向かった。右ストレートを当てるために。ビーデルはそれにカウンターを合わせに行った……が、サタンは足を滑らせた。

 ビーデルの一撃は外れ、サタンの拳はビーデルの顎にクリーンヒットした。それは、一般人の脳を揺らすには十分な威力だった。ビーデルは確かに一般人に比べれば超人に入る部類であるが耐久力は一般的な女性と変わらなかった。故に、ビーデルは脳震盪を起こし倒れた。

 

 しばしの沈黙の後、歓声が上がる。

 

「そんなのあり……?」

 

 イーヴィは自分の力に驚いていいのか、サタンの運の良さに驚いていいのか困惑した。本当に、運気を上げただけなのである。人によっては、本当におまじない程度の気休め程度にしかならないはずだったが、いろいろと常識外のことが重なったことによって奇跡が起きた。奇跡と呼んでいいかは甚だ疑問が残るが……

 

 とは言ったもののあの怪我では次の試合に出ることは叶わないだろう。仙豆という回復手段がないわけではないがそこまでフォローする気はない。しかし、これでサタンの名誉は守られたと言ってもいいだろう。

 

 

『二回戦最後の試合、ラディッツ選手 対 ベジータ選手。武舞台に上がってください!」

 

 

 武舞台の上でベジータとラディッツが向かい合う。

 

「貴様と一対一で戦うのは初めてだな」

「あぁ、できればなくてよかったんだがな」

 

 例によって勝っても負けてもめんどくさい事態になりそうだからこその感想だった。

 

「ちっ、お前も悟飯の様になまっていないだろうな?」

 

 ベジータは悟飯の様に戦うことに重点を置かなくなったが故の発言だと受け取った。それは半分間違いで半分正解である。今の地球がどんなに平和でもイーヴィが居る限り平穏が続くと思えない。

 

「イーヴィのおかげで腕がなまりようがないからその心配は無用だ」

 

 そのため鍛錬を怠ることはなかった。イーヴィに強要されていたとも言う。

 

 

 互いに構えを取る。ベジータはいつもの構えだが、ラディッツは居合でもするかのような構えだ。

 

『それでは第二回戦第四試合始めてください!」

 

「でやぁぁぁぁ!」

 

 先に動いたのはベジータだった。ラディッツは居合のような体制を崩さず待つ。

 

「はぁっ!」

 

 そして、ベジータが拳を振り上げる合間に何も持たぬ手で降り抜いた。ラディッツの動きの方が速かったが、ベジータのパンチには何の影響もなく、そのまま拳を繰り出したが

 

『おぉっと!? これは一体どういうことだ!?』

 

 ベジータは場外の地面に拳が埋まっていた。ラディッツは武舞台の上に立っていた。

 

「!?」

「悪いが場外負けにさせてもらった。正面からやりあったらただで済みそうもないからな」

 

 ラディッツは次元刀を完璧に自分のモノにしていた。空間を切り裂き場外手前の空間と繋げて、その空間にベジータが飛び込んで場外になったのだった。

 

「おい、ラディッツ! 俺との戦いから逃げたのか!?」

「それは間違いね」

「なんだ、イーヴィ!」

「さっきの一撃、その気なら君を真っ二つにできたからね」

「なっなんだとぉ!?」

「さっきのラディッツの攻撃、気で作り出した剣によって空間ごと切り裂く技だから肉体の強度に関係なく斬れる。ベジータのパンチが当たるよりも速く、ベジータの手前の空間を斬ったんだ。それがどういうことかくらいわかるでしょ?」

「ちっ! 次は絶対に負けん! イーヴィ、貴様も覚悟しておけよ!」

 

 ベジータはその場から飛び去ってしまった。

 

「慌ただしいことで」

『……この試合、ベジータ選手場外によりラディッツ選手の勝ちです!』

 




思ったより時間がかかってしまいました。書いてて原作がどうして天下一武道会を最後までトーナメントで進めなかったのかがわかった気がしました。だれます。
後、審判のおっちゃん……時々存在忘れます。

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