外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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最近上手く話が思いつかないです。完結させるつもりはあるんですが、ホントいつになることやら。


58 ビーデルとサタン

「それでは第五試合ミスターサタン対18号選手です!」

 

 観客がサタンコールで盛り上がる。観客の声援に応える様にバク宙で武舞台に立つサタン。が、着地で足を滑らせ後頭部を打ち付ける。痛がりながら転げまわるが、すぐさま立ち上がる。

 

「ガハハハハ!! ジョーク、ジョーク!!」

 

 世間体を気にするところは相変わらずである。読者にはこのキャラ性が愛されていたり愛されてなかったりする気がする。ただ、ギャグ要素満載な彼ではあるが、実は一番現実的なキャラでもある。少なくとも(世界チャンピオンだが)一般人らしい一般人で、狡いところもあるが良識もある。

 

 18号は呆れ顔でゆっくり武舞台に上がる。

 

「それでは第五試合、始めてください!」

 

 サタンは18号の強さを知らない。そして、18号はこの状況では原作のような脅しを使う可能性が低い。これでは詰んでしまうかもしれない。対策は……特に考えてなかった。

『どーしよ♪どーしよ♪』と童謡のワンフレーズが頭でリフレインする。私の計画にサタンはいなくても成立する。ただ、原作での最後のキーキャラを削ってもいいものかと原作ファンとしての自分がなんとかしたいと思っている。

 

「さぁ、かかってこい!」

 

 18号のパワーなら小突くだけでサタンは終わる。18号はお金が欲しくてこの大会に参加している。サタンが金持ちというのはわかるだろうが、原作では確実にサタンを優勝させることができる状況で単に自分が優勝するより更にお金を手に入れる方法が思いついたからこその脅しだ。であれば……

 

 18号は軽くサタンを倒そうと一瞬で距離を詰め顔面にパンチを入れようとしたが、

 

『18号、ストップ!!』

 

 私は力を使うことで18号に念で話しかけた。それにより、サタンにパンチは当たらず寸止めになったが、風圧でサタンは軽くダメージをくらった。ただ、一般人にその攻撃が見えるはずもなく

 

「おぉっと、18号選手のパンチがミスターサタンの顔面にクリーンヒット!」

 

 一般人で寸止めしたことに気づく者はいなかった。ミスターサタンはそれに気づけてはいたが、それでなおダメージを食らっていることに驚いていた。というか、18号が常識では測れない人外の者だと気づいた。要は、私や悟空の様な存在だと気づいたわけだ。

 

『なんだい、いきなり』

『この試合、お金出すからさ、サタンに勝たせてあげてくれない?』

 

 お金を出すという言葉に僅かに反応した。

 

『いくら出せる?』

『1000万ゼニーでどう?』

『……まいどあり』

 

 一瞬、悩んだ様だがまずこのメンツで優勝することは不可能。順当に行けば3位か4位だろう。3位なら300万、4位なら200万だ。もう少し吊り上げることも考えたが、交渉を取り消されるより良いと考えたため交渉を受け入れた。イーヴィとしては、そろそろこの世界を去るので会社の資産ごと渡してもいいのだが、さすがにそこまでいくと怪しまれると思ったので18号が大きく利を感じる程度にした。

 

 その後は大体原作通りの運びになった。ヘッドロックからのサタンに呼びかけ、わざと18号が引きはがされたように見せかけてからのサタンの必殺技であるただの右ストレート(名前忘れた)。18号はそれに呆れを通り越して驚き、時間差で場外に(わざと)落ちた。しかしまぁ……あれでよくばれないものだと思う。観客の半分ぐらいは疑ってもいいんじゃないかな?そこがサタンのすごいところではあるが。

 

 

 それよりも次の試合、私的には悟空とベジータとの勝負より気になるビーデルとスポポビッチの試合だ。ビーデルの力は底上げしてあるが、一般人の中での最強では、ほぼ人間をやめているスポポビッチを倒すことは無理かもしれない。だが、それは倒すことが無理なのであって、試合に勝てないわけではない。それを伝えなくては。

 

「ビーデル」

「師匠、どうしました?」

「ちょっとアドバイスしに来たの」

「アドバイス……ですか?」

 

 怪訝そうな顔を浮かべるビーデル。師匠と言えど一応、この場では敵同士でもある。師匠と言っても数日指導しただけの関係でもある。言ってしまえば、ビーデルとの縁は深いようで浅いのだ。

 

「ビーデルの対戦相手。スポポビッチは大会の規則には違反していないけど、ほぼドーピング、それもかなり危険な代物を使っているのと変わりない状態と言っていいわ」

「それってどういうことですか……?」

「まともな方法じゃ気絶しないし、痛みもないに等しいから降参もしない。純粋な格闘での勝ちを取るのは難しい」

「場外に出せと?」

「その方が確実よ。私が教えた技なら簡単でしょ」

「とっておきにしておきたかったんですけど、師匠がそこまで言うなら……そうします」

 

 素直に従ってくれればいいけど……負けず嫌いだしなぁ。ただ使うだけってのはしてくれないかも。

 

「ビーデル選手。早く、武舞台へ」

「ごめんなさい」

 

 駆け足で武舞台に上がる。スポポビッチは全身が力み、息も荒い。

 中央で向かい合い、ビーデルは一瞬顔をしかめる。

 

「それでは、ビーデル選手 対 スポポビッチ選手。第六試合始めてください!」

 

 ビーデルが一気に攻勢に出た。スポポビッチはそれに対して防戦一方である。

 

「連牙弾!」

 

 五連続のパンチから一瞬のためを入れた正拳突きがスポポビッチの胴に入る。通常よりも気が込められた拳のため威力は高い。だが、スポポビッチは立ち上がった。

 やはり決定的に威力が足りないのだ。技を教えたと言っても、人の領域をはみ出た程度に過ぎない。それこそ、小さい頃の悟空が参加していた天下一武道会なら通用するレベルだが、今となってはその程度……なのは悲しいことである。

 

「ビーデル!」

「……はい」

 

 少し不機嫌そうにしたが、アドバイス通りにはしてくれそうだ。

 スポポビッチが拳を繰り出すが、ビーデルは深く沈んで避け左の拳で胴を叩く。その勢いでくの字に曲がり、その際に突き出た顎を右の拳でジャンピングアッパー。

 ……あれ、真・昇竜拳じゃん。臥龍空破じゃないじゃん。

 元ネタがなぜかズレたが、結果は同じ事だ。スポポビッチは空高く舞い上がった。そのまま落ちれば、場外コースだ。

 

「おぉっと! これは場外か!?」

 

 と、思いきや、すれすれで武空術を使って浮いていた。

 

「なんと! スポポビッチ選手が宙を浮いている! 場外に落ちておりません!」

 

 さすがのビーデルも面食らったようだ。だが、場外にしやすい技は他にもある。

 スポポビッチは武舞台に立つと怒りの形相を浮かべていた。掌を前に出し、気功波を出した。

 

「!? 飛葉翻歩!」

 

 本来は敵の背後を取るための技だが、気功波を避けるために使い難を逃れた。スポポビッチはますます頭に来たようだった。一気に距離を詰めようとビーデルに向かって直進する。

 本気で来ているのか、今までの様な体格通りの速度ではない。巨体に似合わない速度だ。そのまま体当たりされても、直撃すればビーデルの身体が文字通り粉砕されかねない。

 スポポビッチの右ストレートが来るとビーデルは身体を反転させながら避けて二発の掌底を入れる。スポポビッチがわずかによろけた。

 

「獅子戦孔!!」

 

 獅子の形をした闘気がスポポビッチを吹き飛ばす。

 

「ぐぉっ!?」

 

 初めてスポポビッチのダメージらしい声を聞いた。吹き飛ぶ勢いは止まらず、観客席の壁に激突した。

 

「スポポビッチ選手場外! よって、ビーデル選手の勝利です!」

 

 歓声が沸く。スポポビッチは何事もなかったように立ち上がる。怒りの形相を浮かべたまま。気功波を撃とうとするが、何者かが腕を掴んだ。

 

「止めろ、スポポビッチ。我々がすべきことはこんなことではない。あんな小娘に負けるとは思わなかったがな」

 

 その正体は、ヤムーであった。

 

「ちっ」

 

 スポポビッチは不満気にその場は去った。

 こいつらの動向は気になるところではあるのだが、それ以上にエネルギーを測定する器具やら吸収する器具は一体どこにしまっているのやら。荷物らしい荷物も持ってなかったし、服にも隠すスペースなんてない。まさか、四次元ポケット……!? と、冗談は置いておいて、どこから取り出そうが対策は完璧だ。というか、光学迷彩&気配遮断をしているコルクが待機中である。

 

 ビーデルの勝負はここまで鮮やかな勝利になるとは思っていなかった。まぁ、今後戦いでの活躍の機会はないだろうからね。お茶の間にリョナを見せるよりずっといいんじゃないかな……と、誰に言い訳するわけでもないがそう思っていた。


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