第六試合も当然ながら原作通りである。ナムへのフォローも亀仙人がしっかり果たした。そして、ようやく悟空との対決だ。この時期の悟空じゃちょっとお話にならないけど、この物語の主人公としての片鱗は感じられるはず。
武舞台に上がると悟空が嬉しそうにしているのが見える。強いやつと闘える、それが何より嬉しいという悟空らしい感情だ。サイヤ人だからこそかもしれないけど。ただ、私が今の悟空よりちょっと強いとかそういう次元じゃないことがちょっと残念。20年もすれば今の私より圧倒的に強いんだけどなぁ。
『ではただいまより天下一武道会決勝戦をおこないまーーす!!』
悟空が構えるので、私もそれっぽく構えておく。
『決勝戦、はじめーっ!』
「……私、両手を使わないわ」
宇宙の帝王さんもやっていたやつ。サービス期間があるらしい。
「両手を? 随分と自信あるんだな」
「手加減しないと勝負にならないからね」
「それはどうかな?」
悟空から攻撃を仕掛けてきた。
「てやーっ!」
私からすればまだまだ遅い。上に避ける。悟空もジャンプをして追ってきた。飛び蹴りか……でも、これは残像だ。後ろから蹴りを入れる。
「あれ、残像?」
「上だぁ!」
両腕が振り降ろされたが、何とか足でガードした。その勢いのまま背中から着地することになってしまったが。痛くも痒くもないが一本取られた。私が少し間抜けだっただけと言うのもあるが……なんか……こう、嬉しいな。
『イーヴィ選手、空中から叩き落されたにもかかわらず笑っている! 余裕の表れでしょうか!?』
首跳ね起きで立ち上がる。
「全く効いてねぇな」
「まぁね」
「すっげぇ、鍛えたんだな」
「あ、あぁ、うん。そうだね」
なんか純粋に尊敬しているような視線で見ているけど、私の身体機械だからそういうんじゃないんだよなぁ……少し心が痛む。悟空が純粋な分、痛い。
「それじゃ、今度はこっちから行くよ」
連続で蹴りを入れる、悟空も負けじとパンチをはなってくるが、私には当たらない。身長差もあって、私にパンチを当てづらそうだ。パンチとキックの応酬になっているが、私が少しずつ速度を上げていくことで、形勢は私の方に傾く。
「そこだっ!」
悟空の胴体に蹴りがクリーンヒットした。
「ぐえっ!」
結構、効いたはず。手加減しているとはいえ、直撃だからね。
「痛ちち……!!」
反応がそんなに効いてなさそうなのは気のせいかな……
「今度はオラの攻撃だ」
悟空はかめはめ波の構えをした。
「君のかめはめ波じゃ、私には効かないよ」
「へへ、そうでもねぇと思うぞ」
何をするつもりだ?
「か~め~は~め~……」
悟空はそのタイミングで後ろを向いた。
「波―っ!」
そして、その勢いで私に飛び込んできた。うぉっ、マジか!
「くらえ!」
とはいえ、ノロい。胴体を掴んで、そのままバックドロップを決めた。
「痛ちちちち……両手使わねぇんじゃなかったのかよ」
「あっ、ごめん忘れてた」
しかし、こんな危険な技食らって「痛ちちち」で済むこの子はタフすぎる。まぁ、サイヤ人だし仕方ないか。後のことを考えると、星を吹っ飛ばすような奴らの攻撃にも耐えるのだからこれぐらい当然ともいえる。
そろそろ潮時かな。決着をつけてもいいだろう。その前に悟空が今後大猿化するのも面倒だし、月を破壊しておくか。力を見せつけるという演出でやっておこう。
「君に実力の差を思い知らせてあげるよ。あの月を見てごらん」
「月?」
悟空が変身し始めてしまった。服が破ける前に破壊せな。ピッてやったらボカーンって壊れた。衛星だから綺麗な花火にはならん。
「な、なんだ?」
観客席のブルマたちが悟空の変化が収まったことに安堵してる。私の言葉に相当焦っていたようにも見えた。理性を失って暴れるんだから当然か。審判に秋の風物詩がなんだの言われたけど気にしない。そのうち、神様が再生させるでしょ。
「というわけで、わかったかな? 片手間で月が破壊できちゃうだけの力が私にはある」
「そんなこと言ってもまだ勝負はついてねぇぞ」
ま、降参するなんて欠片も思っちゃいない。それじゃ、最後はジャッキー・チュンと同じ様な感じで決めるとしよう。
「はぁー!」
「てやーっ!」
走って互いにジャンプした。そして、私と悟空は同じ様に蹴りを繰り出す。当然、それは私にも悟空にも当たる。が、喰らうダメージには天と地ほどの差がある。
私はダウンすることはないが、悟空はそのまま倒れた。立ち上がろうとするも、力尽きた。10カウントを受け、私の勝利が決まった。
『優勝です! イーヴィ選手の優勝です!』
さて、これからどうするかな。
接戦に見せようとするのはイーヴィさんは偏に目立ちたいからです。イーヴィさんは手加減が上手ね。字数稼ぎとも言う。