ちなみに、この話を書いた感想
コルク、マジバルバトス
『ついに来てしまった決勝戦。せめてわt…みんなが楽しめるといいな。コルク対孫悟空! 武舞台へ上がってどうぞ!』
二人が武舞台に立ち、互いに向き合う。いつぞやのセルとの戦いと似たような情景であるもののその場に居るのはセルではなくコルクであり、悟空は超サイヤ人でなく、通常状態である。
「またおめぇと戦うことになるとはな」
「あの、私はセルではなくコルクですよ」
少し嫌な顔をするコルク。見た目はそのままセルではあるが、中身は完全に別人である。
「わりぃわりぃ。見た目はそのまんまだかんなぁ」
「基となったものがセルなので仕方ないことではありますが、あんなのと一緒にしてもらっては困ります」
「……確かにな。おめぇはあの時のセルより強ぇ。だけど、オラだってあの時より強くなったんだぜ」
コルクはゆっくりと片手で自分の顔を覆う。
「くふっ……楽しませてくれよ」
「なぁ……おめぇのそれ気持ちわりぃよ」
悟空も戦闘狂には違いないが、コルクとは全く別物である。ある意味で近しい反応もしたことはあるが、あんなに気色悪くはない。
「すまんなぁ……だが、私にはわかるのだ。基礎はべジータと同等であるはずのお前にはべジータ以上の何かがある。一回戦で見たあの長髪の超サイヤ人。あれは確実に私の力を上回っていた。それが楽しみなんだよ」
「オラも楽しみだよ。おめぇとの戦い」
互いに構えを取る。
『そんじゃ、天下一武術会決勝戦、開始ぃ!』
「はぁっ!」
悟空は最初から超サイヤ人2となる。べジータもそれに近い力を出していたが、それでも一方的にやられていたため最低限これだけの力を出さなければすぐにやられてしまうと考えたからだった。
「ほう……ならば、私もあれを使うとするか」
コルクはべジータの時に使った斧、ディアボリックファングを右手に持った。
悟空は気にせず、コルクに直進し右のストレートを仕掛ける。コルクは左から横に振って迎撃する。悟空のそのストレートはフェイントであり、コルクの攻撃をかがんで避ける。さらに、斧の後ろを叩くことでコルクの体勢を崩しにかかった。
しかし、コルクはその勢いのまま一回転してもう一度悟空に斬りかかった。その攻撃は、刃の腹に手を置き逆立ちの様になって避け、さらにエネルギー弾を喰らわせた。
そして、一旦距離を取る悟空。
「なかなかいい動きだ」
それでもコルクに一切のダメージは見受けられなかった。
「タフなやつだなぁ……」
「その程度ではいつまで経っても勝てはせんぞ。孫悟飯に使ったあれで来い」
「あれはまだ未完成なんだ。おめぇ、わかってて言ってんだろ」
「ふふふふ……貴様なら、この戦いの最中にでも完成させることができよう」
「随分と期待してるみてぇだな」
「当然だ。死力を尽くすことこそ私の今の最高の願いなのだ」
「なるほど。ちょっとだけオラと似てるな」
悟空の指摘した通り、コルクと悟空は似ているところがある。しかし、戦いを求める理由は似て非なるものだ。コルクは全力を出したいがために強者を求める。対して、悟空は自分の力を確かめるため、さらには自分の力の向上と限界を超えて強くなり続けるために強者を求める。実際にはそこまで小難しことは考えていないだろうが、とイーヴィは両者をそう評した。
「だが、強さはどうかな? ここから少しずつ上げていくぞ」
「よし……! 来い!」
再びコルクが斬りかかるが、悟空はいなして防御する。先ほどと同じ様に体勢を崩されているのにもかかわらず力業で強引に次の攻撃へと繋ぐコルク。それが連続で繰り返していた。互いに埒が明かないと思い始めたところで先に動いたのはコルクだった。
「縮こまってんじゃねぇ!」
空いている左手で悟空の顔面を掴んだ。
「んがっ!」
悟空がコルクの腕を掴み引きはがそうとするがビクともしない。胴体に蹴りを入れてもダメージが見受けられない。
「ずあっ!」
コルクは悟空をそのまま地面へと叩きつけた。
「ぐ……があ」
「いつまで寝てんだ!」
叩きつけて横たわった悟空にストンピングをする。
「ぐぁああああ!!」
「まだいくぞぉ!」
もう一度繰り返そうとすると、悟空は足を掴んで防いだ。そのまま寝がえりを打つようにコルクの足を捻って倒す。
「ぬぉっ!」
これは堪えきれずに地面へと倒れ伏した。が、大したダメージでもないのですぐ起き上がった。悟空はその間になんとか距離を取った。
「ふふふ……面白い。だが、まだ足りぬぞ。その程度ではまだまだだ」
「ちぇっ。こっちはほとんど全開だって言うのによ……なら、これならどうだ」
悟空はかめはめ波の構えに取る。
「かぁ……めぇ……はぁ……めぇ……」
「ほう……ならば、こちらも迎え撃つとしようか」
コルクは斧の先を悟空に向ける。
「ジェノサイドブレイバー!」
そして、悟空の姿が消えた。
「俺の背後に立つんじゃねぇ!!」
「ぐああああああああ!!」
悟空は瞬間移動を使ってジェノサイドブレイバーの隙を突いて背後からかめはめ波を撃つつもりだった。しかし、背後に回った瞬間にコルクが超反応で悟空を斧で天高く吹き飛ばした。悟空は天井にぶつかり、そのあと落下して地面に再び倒れることになった。
「素晴らしい技だったが、俺の前では無意味だったな」
本来なら感知することもできずに悟空のかめはめ波をくらうはずだった。だが、コルクはイーヴィから受けた改造によって敵が背後に居ると身体が自動で相手を天高く吹っ飛ばす攻撃をするようになっていた。本人の意思とは全く関係なく動いてしまうため、それがある意味弱点ではあるのだが、この瞬間においては悟空にとって最悪の性能だった。同時にコルクにとっては自分の意志が介在していない攻撃のため多少不満でもあった。これらを悟空が知る由もないが。
「ぐっ……くく……ああ……!」
先ほどのダメージが大きいが、なんとか立ち上がる悟空。
「これでも立ち上がってくるか……さっきのは俺も遠慮できなかったからな。かなりのダメージのはずだ」
コルクはほとんど力業のみを使っているがそれでも一度も全力を出していなかった。しかし、背後に対する反射だけは、自分の力の調節さえ受け付けない反応であるためにほぼ全力の攻撃となってしまったのだった。
悟空はその攻撃を受けたために既にふらふらだった。下手をすれば、ジェノサイドブレイバーを直撃した以上の一撃をくらってしまったのだ。ここまで来てしまうと反撃の手立てが一つしか思い浮かばない。それもかなり分の悪い賭けになる。
「そんじゃ、おめぇの希望通り、超サイヤ人3でやってやるよ」
「まだ未完成だから使わないんじゃなかったのか?」
「使わないなんて言ってねぇよ」
イーヴィがこんな感じのことをよく言っていた気がした。そんな思いがよぎる程度にはまだ余裕があるらしい。
悟空は常々強いやつと戦いたいと言っているが、ただ戦えればいいのではない。強者と戦いたいのは自分の全力を尽くし、限界に挑み続けるためなのだ。だから、分が悪い賭けでも最後の最後まで諦めない。相手に勝ち得る全ての可能性を試して初めて全力を出したと言えるのだ。
「ぐ……がぁ……ああああ……!!」
悟空が超サイヤ人3となるべく気を溜める。その過程であって自分の居る星さえも揺るがす。その力は、本来あの世でしか許されないほどの強大な力だと言う。この世で使うにはエネルギーの消費が大きすぎて、長い間使えない。そのため、悟空にはまだ御しきれないようだった。
この長い気を溜める時間は隙だらけでもあったが、コルクは待った。コルクにとっては勝つことが目的ではない。イーヴィから指示されていることは、楽しませることであって勝つことではない。そのため、自分も最大限楽しむために全力の相手と戦いたいのだ。己の全力を出せることを願って。
「ああああああああああ!!」
悟空の髪が伸びていく。悟飯の時は途中から気が乱高下していたが、今は安定している。今までの超サイヤ人であれば炎の様に湧き上がる気が、超サイヤ人3では悟空を包むように留まっている。
「待たせたな」
「上手くいったようだな。ククク……それでこそだ」
悟空は一瞬で距離を詰めてコルクに右ストレートを放つ。ギリギリで反応して刃の腹で受け止める。元々ひびの入っていた斧であったが、そのひびが大きくなった。
そこからは悟空のラッシュである。今度はコルクが防戦一方となっていた。それでも、コルクに一撃も入らないことに驚きを隠せない悟空であった。逆にコルクは、口の端がどんどん吊り上がっていく。
「いいぞぉ! もっと楽しませろぉ!」
悟空の蹴りを屈んで躱すと、そのまま地面にエネルギーを叩きつけて爆風を起こす。その爆風に耐え切れず、悟空は仰け反った。
「おい、孫悟空」
「なんだよ。時間があんまねぇんだ。喋ってると、この状態でいられなくなっちまう」
「俺に一撃入れろ」
「は? なんでだよ」
「さっき、お前に後ろに立たれた時反撃しただろ。あれは我が神に改造されていたが故にできたこと。あれに俺の意志は介在していない。だから、本来ならば直撃していたはずだ」
「それがなんだよ。おめぇの力じゃねぇか」
「まぁ、これは建前だ。本音を言うとだな、俺は攻撃をくらうことで全力の一撃が出せる。違うな。正確には限界を超えた一撃を出せる。色々とリスクは背負うがな」
悟空は戸惑った。この言葉に甘えるのか。断るのか。正直に言えば、自分で一撃当てて全力を出させたい。だが、
「その方がおめぇがやりやすいっちゅうんなら、いいぜ」
「あぁ、思いっきり頼む」
「でりゃあ!!」
悟空の渾身の右ストレートがコルクの左頬を捉えた。叩きつけるように放たれたその一撃はコルクを地面へと沈ませるには十分な威力だった。武舞台には、大きなクレーターができた。
悟空は思いっきりやり過ぎたかと、少し不安になったが、コルクがすぐに立ち上がったために杞憂であることを悟った。
「く……ククク……ハーッハッハッハ!!」
悪役っぽい三段笑いをするコルク。放電現象のような気がコルクの身体から迸る。
「もっと楽しもうぜ! この痛みをよぉ!!」
自分から攻撃させといて、変なことを言うと感じてしまうが、別にコルクがMなわけではない。この状態にするために言わなければならない呪文のようなものであって、そんな趣味は一切ない。これも当然、イーヴィの改造のせいである。
放電が治まり、コルクに特に変化は見られない。気の総量も変わってはいなかった。
「なんだよ。なんも変化ねぇじゃねぇか」
「やればわかる」
悟空は再び攻撃を仕掛け、先ほどと同じ様にコルクは防戦一方になるばかりで何も変わらなかった。また、一瞬の隙を突いてコルクは避け今度は反撃に出る。斧でではなく左腕によるボディーブローだ。悟空は防御するために腕で受け止めようとした。
「ぐぉっ……!」
だが、悟空の防御を突き破って腹に入った。あまりの衝撃に膝を着く。
悟空は超サイヤ人2の時より気の総量が大きく増えている。即ち、全ての能力が高まっていることを意味する。当然、防御力も上がる。それでも、コルクの一撃は悟空に大きなダメージを与えていた。
「解せない。という面持ちだな。気が増えたわけでもないのになんでもない一撃が予想以上に重い。その答えは、さっきの技だ。あれは、簡単に言えば防御力を犠牲に攻撃力を上げる技だ。だから気の大きさは変わらないが、一撃の重さが全く違う」
態々、解説を入れるコルク。
「……なるほどな。でもよ、そんなこと喋っていいのかよ」
「問題ない。その方が楽しめそうだからな。さぁ、いつまで膝を着いている。立て」
「くっ……」
悟空は立ち上がり、かめはめ波の構えを取る。
「またそれか。今度は真正面から来るか? それともまた後ろに来るのか?」
「さぁ、どうかな?」
「どちらでもいいことか。どちらにしろやることは同じだ」
悟空に向けて斧を向ける。
「か……め……は……め……」
「ジェノサイドブレイバー!!」
悟空はコルクの後ろへと瞬間移動した。
「無駄だと言ったはずだ!」
コルクは超反応で悟空に向かって斧を振り上げるが、悟空はすぐに撃たず、バックステップで避けた。
「何ぃ!?」
「波!!」
今度こそかめはめ波が直撃した。それも、超サイヤ人2の時より威力が高いうえに、コルクの防御力が下がった状態で。
土煙が晴れるとコルクは武舞台に倒れ伏していた。
「へへっ……どうだっ」
「……っぐ、ぐぬぅ……」
コルクは足を震わせながら何とか立ち上がった。
「ク……クフフ。さすがに今のは死ぬかと思った。だが、まだだ。まだ俺は全力を出し尽くしちゃいねぇぇぇぇえい!」
斧がオレンジ色の閃光を放つ。
「んなっ!?」
コルクの気が急激に高まっていく。それが放たれれば、この星どころか世界さえも壊してしまうのではないのかと思えてしまうほどだった。
「おめぇ……死ぬ気か!?」
「何、俺もお前も死にはせん。これを使ってもこの星は壊れん。ただ全力を出すだけだからな」
「……そうか……だったら、耐えてやる!!」
「覚悟はできたか? ワールドデストロイヤー!!」
コルクが斧を振り下ろしたその瞬間
会場は全壊した。
武舞台が置かれた地球ではないどこかの星の岩山はすべて平地となった。
「ククク……」
コルクは笑みを浮かべて倒れた。
そして、その横には悟空が立っていた。
「ふぅ……」
悟空が超サイヤ人3を解く。
「よっしゃー! 勝ったぞー!!」
『コルクは……戦闘不能、みたいね。ということで、第一回天下一武術会優勝者は孫悟空だー!』
やっと決勝戦が終わった。でも、天下一武術会はまだ終わりじゃないんです。もう忘れられてるかもしれないけど、この大会が始まるときにイーヴィが言っていたことを思い出してください。まぁ、この編のエピローグごとやるつもりでもあるんですが。
次に更新できるの本当にいつになるかわかりませんけどね。