『ついに二回戦よ。実質準決勝戦。人数が8人しかいないから当たり前だけど』
自分でルールを作っておきながらどこか不満気に漏らすイーヴィ。
『どんな物事も終わりへと向かって行くもの。この二回戦はまだまだ中盤。みんな頑張ってくれたまえ。それでは、悟空と17号は武舞台に向かってね』
「よしっ! 行くか!」
悟空が軽くストレッチをして気合を入れる。
「初めまして……ではなかったな。まぁ、よろしく頼む」
セルとの戦いの後、悟空達と共に神殿に行っていたためこの時点で一応顔見知りではあった。
「あぁ、よろしく」
互いに武舞台に上がり、構えを取る。
『それじゃ二回戦第一試合、開始!」
「「はあぁぁ!」」
互いに突っ込み距離を詰めてから拳のやり取り。通常状態の悟空がやや押され気味だろうか。自分が不利だと感じたためか、悟空は超サイヤ人となる。
「早速、それか」
「超サイヤ人じゃねぇときつそうだからな」
攻防を繰り返しながらそんな会話をする。超サイヤ人となったことで実力は五分五分といったところだった。
「俺もそれなりに強くなったつもりだったんだが……サイヤ人って言うのは少しずるいな」
「ずりぃことなんてしてねぇって。ちゃんと修行をしてきた成果だ」
「そうか? だが、そんな強いお前だからこそ面白くもある」
「何?」
「簡単にクリアできるゲームじゃ面白みに欠けるからな」
「へへっ、ゲームのことはよくわかんねぇけど強ぇ相手と戦いたいってことはよくわかるぜ」
「それは違う……と言いたいところだが、似たようなものか」
どこか似ているところを持つ二人。本質は全くの別物であるが、近いところはある。
「はぁ!」
連続でエネルギー弾を放つ17号。悟空はそれを軽々と避ける。しかし、それでも17号はエネルギー弾を止めずに撃ち続ける。
17号は長期戦を考えていた。17号は実力を上げたもののまだまだ超サイヤ人2に比べればだいぶ劣る。だが、エネルギーを無限に持つためスタミナが切れることはない。一方で超サイヤ人は強力だが体力を消耗するもの。力を上げれば上げるほど体力の消費も大きくなる。そうすれば、17号に勝機が見えてくる。
「波っ!」
悟空は、17号が撃ち続ける間に生ずる僅かな隙にかめはめ波を撃つ。17号のエネルギー弾は一気にかき消された。
「くそっ」
直撃する寸前でバリアを張ってかめはめ波を凌いだ。
「硬ぇなぁ、それ」
「バリアなんだからそう簡単に破られちゃ困る」
この世界では戦闘力至上主義なところがあるが、バリアは戦闘力にあまり関係なく強い。多少格上の相手ならば易々と攻撃を弾く。使う頻度も使える人物も少ないが。
「なら破ってみっか」
「できるものならやってみろ!」
再び連続でエネルギー弾を放つ17号。悟空は最初の数発をいなし、武空術で空に逃げる。
悟空は先ほどよりも避けるのに大きく動いているためその方がエネルギーを使う。17号としては、その動きはありがたかったが悟空が自分の狙いに気づいていないと考えるのは甘い。何か考えがあると見た。
悟空は更に速度を上げて、大きく旋回し、エネルギー弾を撃ちながら17号へと近づいた。しかし、17号の周りを回りながら撃ち続けるために方向が定まらず、17号の横を素通りしていく。
「どこを狙っている!」
それでも、悟空と17号との距離は縮まっていった。エネルギー弾も徐々に互いに掠る様になっていた。どちらが先に防御をするか、ある種の根競べ状態であった。
「くっ」
とうとう、17号はバリアを張った。これで悟空に攻撃されても一安心かと思いきや、悟空の姿が消えていた。
「ど、何処だ!?」
「後ろだ!」
振り返ったところに悟空の拳が17号の頬を捉えた。17号はそのまま場外まで吹き飛ばされてしまった。
「ふぅ……」
悟空は超サイヤ人を解いた。17号は起きあがり、未だ自分がどうして負けたのか分からないでいた。悟空が超スピードで自分の後ろに回り込んだまではわかる。しかし、悟空は自分のバリアの内側にいたのだ。この悟空が起こした不可解な現象、どうやったのかが全くわからなかった。
「一体、何をしたんだ?」
「瞬間移動だ」
「瞬間移動? それは確か、相手の気がわからないと使えないんじゃなかったか?」
17号は悟空に瞬間移動という技があることを知っていた。しかし、人造人間から気は感じ取れないため使えないだろうと警戒していなかった。
「あぁ、よく知ってるな。でもよ、自分自身の気は感じ取ることもできなくはないんだぜ」
「そうか……あの連続の気功波は、攻撃というより瞬間移動のための目印だったのか」
「あったりぃ!」
こうして悟空は超サイヤ人2になることもなく17号に対して勝利を収めた。
『なかなか好試合だったんじゃない? もうちょい何かあっても良かった気がするけどね。そんじゃもう一つの準決勝。べジータとコルクは武舞台に上がってね。って、もう上がってるし』
イーヴィの言葉の通り、二人は既に武舞台の上に立っていた。依然、コルクはコートにフードを被ったままであったが。
「貴様、一体何者だ? 貴様から感じる気はあいつに良く似ている」
「今更隠す必要もないかもしれませんね。よろしいですか? 我が神よ」
『あ、はい。どうぞ~』
コルクはコートを脱ぎ棄てるとそこに現れたのは黒い甲虫の様な羽を持ち、緑色に黒い斑点がある肌、白い顔や手。要はセルの完全体と全く同じ容姿であった。
「やはりてめぇか……何故、生きてやがる」
「何か勘違いをしておられるようなので言わせてもらいますが、私はセルではありません。基の身体こそセルとほぼ同一ではありますが」
その言葉でべジータはコルクが何者であるか察した。
「……現代のセルか」
「その認識で間違ってはいません。我が神――イーヴィ様に様々な改造を施されたので元のセルとは別人ですがね」
「どうりでセルよりも更に気がごちゃ混ぜになっているわけだ。あの野郎が何をしたかは知らんが、てめぇの面は気に食わん」
「そんなことを言われても困ります…………が、闘争ならば望むところだ! さぁ、来いよ、べジータ。貴様を微塵に砕いてくれる!」
先ほどまでの紳士的な態度が一変。戦闘狂としての一面を見せる、コルク。
「てめぇのその変化。虫唾が走りやがるぜ」
「御託はいいからかかってこいよぉ! こねぇならこっちから行くぞぉっ!」
コルクは銃剣を両手に持ち、べジータに振り下ろす。べジータはどちらも片手で白羽取りして受け止めた。
「どうした、その程度か? それで粋がっているようだったら随分と笑わせてくれるぜ」
「これはただの小手調べよ。ならば、これでどうだぁ!」
今度は両手の指に挟み、計6本を持って斬りかかった。べジータはそれらの腹に蹴りと手刀で折って防ぐ。
「ぬぅぅ……やはりこの程度の武器では殺せぬか……」
「違う武器なら俺を殺せるとでも?」
「あぁ……貴様には特別に極上の武器を以ってお相手しよう」
脱ぎ捨てたコートから一本の戦斧を取りだした。幅広い刃はひび割れており、その中心部には紫色の宝石が鈍く光っていた。
「この斧の銘は、ディアボリックファング。切れ味はご覧のありさまで使い物にならんが、貴様を破壊するには十分すぎる威力がだせる」
「よくしゃべる野郎だ。さっさとかかってきやがれ」
「ならば遠慮なく……死ねぃ!」
コルクが、かがんだ状態から逆袈裟に斬りかかった。
べジータは先ほどと同じ様に武器を破壊することを考えたが、嫌な予感がしたために避けに転じた。少し遅れたために髪を掠った。
「ちっ!」
「甘いわぁ!」
斬り上げた斧をすぐにまた横の斬りへと変えた。通常の剣でさえ、身体の身体構造や遠心力などにより体に大きな負荷がかかり普通よりかなり速度が落ちてしまう様な行動であるが、力技で先ほどよりもさらに速い攻撃となっていた。
「ぬぉっ!」
なんとか左腕を防御に回したべジータであったが、その一撃で左腕の骨を折られてしまった。その勢いのまま地面に倒れ伏す。
「ほう、なんとか躱したようだな。本来なら、今の一撃で死んでいたはずだ」
かなりのダメージを負いながらも立ち上がるべジータ。一撃でこれほどのダメージを負うとは全く思っていなかった。内心でくそったれと、毒を吐く。最初に感じた嫌な予感が正しく的中していたようだった。戦闘の続行は難しいが、彼はサイヤ人。戦いにおいて諦めるなどという選択肢はない。
「……今の、一撃で決められなかったことに後悔するぜ」
「面白い……ならば、超えてみせよ。そして、俺のこの渇きを癒せぇぇ!」
コルクは、再び斬りかかる。
「はあぁあああああああああ!!」
べジータは超サイヤ人となり気を高めていく。その圧に耐えかね、コルクはその場で踏ん張った。
「あれほどの傷を負いながらこれだけの力を……いいぞ……! もっとだ! もっと楽しませろぉ!」
コルクは歓喜の声を上げる。イーヴィに肉体と精神を改造され、イーヴィに忠実かつ戦闘狂へとなった者ために強者との戦いがなにより嬉しいのだった。元々の素体がセルだったせいもあるが。
「てめぇのにやけ面をぶちのめしてやる!」
実際には違うとはいえ、また似たような奴にやられてしまう己が許せず、なんとしてでも倒すと心に決めていたべジータ。己の誇りを何度傷つけられようと、その誇りを守るためなら何度でも挑む。
「でやぁ!」
「せいやぁ!」
べジータのアッパーに合わせコルクは右の拳も潰しにかかる。しかし、べジータのアッパーはフェイントであり、その勢いに乗って左の蹴りで、コルクの斧を逸らし、右でコルクの頬を全力で蹴飛ばした。
コルクは、その蹴りによって地面へと倒れ伏す。
「ふん!」
ようやく一矢報いたと不満気ながらも少しスッキリしたべジータであった。
倒れたコルクは、起きあがり口の中を切って血が出ていたのでそれを拭う。
「くふ……くふふははははは!」
コルクは急に笑い出す。べジータは気持ちが悪くて悪寒が走っていた。
「いい……! 実に良い! これならもう少し上げても良さそうだなぁ!」
少し離れた位置から斧の先をべジータに向ける。
「ジェノサイドブレイバァァー!」
斧の先から巨大なレーザーが放たれた。
「くっ、ビックバンアターックッ!」
咄嗟にべジータはビックバンアタックで迎撃する。しかし、勢いを僅かに遅らせるだけでかき消された。
「何っ!?」
レーザーはべジータに直撃した。レーザーに武舞台の端まで持っていかれたものの場外になるのはなんとか凌いだ。
「はぁ……はぁ……くそっ……!」
「よく凌いだ。だが、次も上手くいくかな?」
「くっ、くそったれ……!」
既にコルクは先ほどのレーザー――ジェノサイドブレイバーは、発射可能な状態であった。
「願わくばこれも凌いで反撃してくれることを望む。では、さらばだ」
紫色の閃光が無慈悲にべジータへと向かう。べジータはそれに対して両手を広げて気を溜める。そして両手で受け止めて、踏ん張る。
「ふはっ!」
それを見て思わず笑い声を漏らすコルク。未だ諦めをみせないべジータに対して心底感心していた。
「ファイナルフラーッシュ!」
そのままファイナルフラッシュを放ち、ジェノサイドブレイバーを押し返そうと試みる。エネルギーの押し合いは、べジータの分が悪かった。まず、自分が受け止めることで勢いを殺し、ファイナルフラッシュで押し返す心づもりだったが、予想以上にジェノサイドブレイバーの威力は高く、全く動かせる気配がなかった。
「どうした!? 押し返してみろよぉ!」
「黙りやがれぇーーっ!」
べジータの気の勢いが僅かに増すが、押し返すには至らない。その様子に少しばかり気落ちするコルク。
「もう少しなんだがな。まぁ、今回ばかりは仕方ない」
「な、何……言ってやがる……!」
耐えるのに必死でコルクが何か言っているのは聞こえたが、あまり気にしている余裕もなかった。
「残念ながらこれで終いだ」
斧を振り上げ、ジェノサイドブレイバーの放出が止まるが勢いが留まることはない。
「ぶるぁあああああ!」
斧を振り下ろすと衝撃波が、べジータを襲う。
「く、くそーっ!!」
ジェノサイドブレイバーを抑えるのに精一杯のべジータがその衝撃波を防ぐことは叶わず直撃。そのままジェノサイドブレイーバーも一緒にくらってしまった。武舞台の端だったこともあり、そのまま場外へと押し出されてしまった。
べジータは気絶し、超サイヤ人も解けて黒髪へと戻る。
「はぁ~……」
コルクはため息を吐く。
『べジータ、場外!勝者、コルク! ……あー、べジータ、死んでないよね?』
「ご心配なく。べジータさんは生きていますよ」
戦闘モードを切り、紳士モードになるコルク。切り替えの早いことだ。
『そんじゃ、べジータ回収して戻ってきてね』
「承りました。我が神」
どこか気落ちしたコルクの姿が見えた。その不満は力を出し尽くせていないことにあった。圧倒的な力を手に入れ、それを振るう場がない。その力を戦闘狂故に出し尽くしたいのだ。それはつまりべジータとの戦いでまだまだ全力を出し尽くせていないことの裏付けでもあった。
いよいよ決勝戦。イーヴィの造り上げた新たなセル――コルク。悟空はこれにどう打ち勝つのか。イーヴィは最高の戦いを期待していた。
なんか、コルクが若本というかバルバトスになってしまった。書いている途中コルクじゃなくてバルバトスって間違えてしまったぐらいにはバルバトスになってしまいました。