外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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前回のあとがきの通り「ベジータ 対 16号」と「ラディッツ 対 コルク」ができました。楽しんでください。






51 天下一武術会本戦 その3

 悟空と悟飯の親子対決も終わったのでさっさと次に進めようと考えていたイーヴィだったが、既に武舞台の上には16号とベジータが立っていた。

 

『……あんたら、早すぎ。別にいいけどね』

「ふん。さっさとしろ」

 

 極めて冷静にベジータはそう言ったが、内心はかなりイラついていた。超サイヤ人2の時点で悟空に勝てるか危ういと感じていたのに更にその上の可能性を示唆されては、焦りもでる。

 

『あぁ、そう。16号は大丈夫?』

「問題ない」

『そんじゃ、第三試合開始―!』

 

 先に動いたのは16号だった。右腕をベジータに向け、右前腕部分が発射された。

 べジータはそれを難なく避け、右腕の前腕はそのまま壁に刺さった。

 

「どうした。右腕を失ってそれでおしまいか?」

 

 べジータはそう嘲笑した。しかし16号は動きを見せない。

 

「けっ。やる気がねぇんだったらさっさと降参しやがれ」

 

 どこからともなくBGMが流れ始める。

 

♪街を包む(wht’s going on) Midnight fog♪

 

♪孤独な shilouette 動き出せば♪

 

♪それは まぎれもなく ヤツさ♪

 

♪コ○ラー♪

 

ジャキンッ!と16号の右腕から出てきたもの、それはサ○コガンだった。

 

『コブ○じゃねーよ!』

 

 もはや見た目や中の人とか全く関係ないパロネタを挟んできた。しかし、やったのはまぎれもなくヤツ(イーヴィ)だ。要は自作自演である。

 

「ちっ、ふざけやがって。そんなおもちゃで俺に勝てると思っているのか?」

「やればわかる」

 

 銃口はそのままべジータに向けられており、エネルギーが発射される。細い射出口から放たれたそれは普通に放つエネルギー波より貫通力が高い。

 べジータはそれがただのエネルギー波でないことがわかったため避けることにした。直線にしか動かないのであれば避けるのは容易い。

 飛び上がって避けたが、16号の放ったそれはべジータを追尾した。まさかのサイ〇ガンと同じ仕様である。

 

「何っ!?」

 

 咄嗟に超サイヤ人となり、エネルギー波を放って相殺した。その隙を16号は逃さず、左腕でべジータを地面へと叩きつけた。べジータは受け身を取ったため、大きなダメージとはならなかったが、かなり屈辱だった。

 

「くっ……くたばりやがれ! ファイナルフラーッシュ!」

 

 溜めが短いため、セルに放った時程の威力はないが放つまでの速度は格段に速かった。そのため空に居た16号に直撃した。更に天井には大穴が開いた。

 パラパラと細かな瓦礫が降る中、土煙が晴れると16号が両腕を防御に回し、服の端々が焦げているもののダメージを減らしていた。

 

「以前のままなら危なかった」

 

 16号はイーヴィの趣味によって度重なる改造を受けていた。お遊びで弄くりまわされる16号は不快に思うこともあったが、自身の恩人でもあるイーヴィを無碍にできなかった。その影響で何の役に立つのかも意味不明な機能から無駄に実用的な機能まで幅広い機能を付けられた。基礎的な出力も大幅に向上されており、さらに頑丈な造りにもなっていた。元々、機械とは思えない人間らしさを持つ16号であったが、イーヴィの意味不明な行動に益々疑問を持つなど妙な人間らしさを更に増やしていくのだった。

 

 そんなことなどべジータに取ってはどうでもいいことであるのだが、ただ自分の攻撃が難なく防がれたことがなにより我慢ならなかった。完全体のセル以上の実力を身に付けた(この時点でもまだプライドは取り戻せていないが)自分が以前であれば楽に倒せたはずの奴が倒せない。機械が相手とは言え、自分の成長速度を追いぬかれた様なそんな気分にさせられた。

 

「くそったれーっ! 人形如きに何度もこの俺を超えられてたまるかーッ!!」

 

 一気に気を高めて16号に対して肉弾戦に持ちこむ。16号は右腕を上手く攻撃や防御に回せないため防戦一方となる。

 

「どうした!? そんなものか! ぬぉっ!?」

 

 自分が優勢になったと思った矢先、壁に突き刺さっていたはずの16号の右腕がべジータを殴り飛ばした。

 

「悪いな。この右腕は自動で戻ってくるようにできているんだ」

 

 サ○コガンが引っ込み、右腕が元に戻る。

 

「イーヴィが関わっているせいか、お前の行動一つ一つがイライラするぜ……!」

 

 さっきの一撃で口の中を切って出た血を拭い、再び空に上がる。

 

「だが、それもこれで終いだ!」

 

 ベジータは親指だけを折った右の掌を16号に向ける。

 

「ビックバンアターックッ!」

 

 一瞬の溜めとは思えないほど巨大な気弾が16号を襲う。16号はそれを受け止め、そのまま気弾を返そうと動くとべジータが両腕を広げ、気を溜めているのが見えた。

 

『ちょっ! その威力はまずいって!』

 

 

「そんなこと俺の知ったことか!」

 

 イーヴィの制止も聞かず、べジータは全開に近いそれを再び放つ。

 

「ファイナルフラーッシュ!」

 

 ビックバンアタックを受け止めている最中の16号が避けられるはずもなく気弾ごと弾け飛ぶ。当然その先にある壁を破壊し、星すらも軽く消し飛ばす様なエネルギーは宇宙の彼方まで飛んでいった。

 

『角度悪かったら自滅してたよ……あれ』

 

 16号はと言えば、何とか核たる頭の部分のみは無事だった。全壊を免れたのは運がいいのか悪いのか。とりあえず、取り返しが付くレベルでよかったとイーヴィは安堵する。

 

「ん? 何処だ、ここは?」

 

 天井も壁も大半が破壊されて広がる外の風景は、地球のそれではなかった。空の色も海の色も近くに見える自然の色も地球のものではなかった。

 

『あ、バレたか。別に隠していたわけでもないけど』

「どういうことだ。説明しろ」

『ちょっと待って。16号回収しにそっち行く』

 

 ほぼ崩れた武舞台の出入り口からイーヴィは現れた。近くに落ちていた16号の頭を拾い上げる。

 

「すまない、イーヴィ」

「いやいや。完全に壊されてないだけ御の字だよ」

 

 ベジータはイラついた様にイーヴィを睨む。

 

「そんなに睨まないでよ。説明するから。お察しの通り、ここは地球じゃないわ。星の名前を聞かれてもわかんないけど」

 

 先ほどのベジータが撃ったファイナルフラッシュの様に星を破壊しかねないような攻撃ができる奴らの戦いを地球でやらせるのは危険なので別の星でやらせる方が安全と結論付けたイーヴィは知的生命体のいない星を見つけて、その星に武舞台を作りワープ装置を取り付けた。いつの間にやったかと問われれば、4年の間にだ。ワープ装置の技術は瞬間移動の体系化に既に成功していたため容易だった。場所も一時期宇宙を旅していたために簡単に見つけられた。

 

「ちなみにこのトーナメントのために8つ武舞台を用意したから、星も8つ用意してあるよ」

「……無駄に規模がでかいな」

 

 地球のみで開かれる大会としては、異常な規模であるのは間違いない。それだけ悟空やベジータの力が常軌を逸しているのだ。普通の人間だったら過剰すぎる処置だが、今回のことを考えたらやっておいて良かったとイーヴィは思うのだった。

 

「さぁ、さっさと戻って続きを始めようか」

 

 この試合は、ベジータの勝利ということで幕を閉じた。ベジータは16号をぶっ壊したことで溜飲が下がったようだった。別にそのつもりもそうしたわけでもないがご機嫌取りをさせられたような気分になってイーヴィは少し気分を害したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 イーヴィはまた自分の部屋へ、ベジータは控室に戻り、次の試合へと進む。

 

『次はラディッツ対コルクね。ほら、武舞台に向かって』

 

 ラディッツは遂に来てしまったかとため息を吐く。

 

「よろしくお願いします。ラディッツさん」

 

 極めて紳士的な態度で接するコルク。しかし、ラディッツはその正体を知っているためになんとも言えない気分になる。姿をフードとコートで隠しているため今のところ誰にもバレていないが知られたら一体どうなることやら。

 

「あ、あぁ」

 

 生返事を返し、コルクはそれで満足したのか武舞台に向かう。それのゆっくり後を追うように別の道から武舞台に向かう。ラディッツは憂鬱な気分を変えることは全くできそうになかった。

 

『ではではー、第四試合開始―!』

 

 ラディッツは仕方なく構える。

 

「おや、やる気なさそうですね」

「勝っても負けても地獄を見そうなんでな」

 

 ラディッツはイーヴィがコルクにどれだけの労力を使ったかを知っている。その強さも理解している。そして何より、イーヴィの性格の悪さを知っている。

 そのためコルクに勝ったとしたら「何故私があれだけ労力をかけたものに勝ったのか」と摂関を受ける。逆にコルクに負けたとしたら「易々と負けることが許されるとでも思っているのか」と摂関を受ける。どちらも考えられる。

 その上、現在想定できるコルクに対する勝ち筋が殺さなくては不可能な点だった。殺しが単に嫌だということもあるが、それを上回るレベルでイーヴィに何されるかわからないというところが怖い。

 それに加えて、単純にコルクと闘うのが嫌でもあった。

 

「ふふふ……ラディッツ、全力で来いよォ!」

 

 コルクは戦闘時には敬語がなくなる。その上、巻き舌がすごくなる。そこはどうでもいいのだが、物凄く好戦的になるのだった。

 

「やる気が出ないと言っているだろうが……」

「そんなことは私の知ったことではない。貴様にそれ以外の選択肢などない」

 

 仕方ないので超サイヤ人となるラディッツ。最初から全力を出さなくては勝負にならない。

 コルクは何処から取り出したのか両手に銃剣(バヨネット)を持ち十字になるように構える。

 

「エ゛ェェイ゛ィメン゛ッッ!」

 

 その声に一瞬気圧されたラディッツに対しその一瞬で距離を詰める。そして、両手の銃剣がラディッツに振り下ろされた。

 

「くっ!」

 

 紙一重で避けるラディッツ。しかし、休むまなく斬りと突きを繰り出すコルク。

 

「さぁ、さぁ、さぁさぁさぁ! どうした! ご自慢の剣を出して来いよ!!」

「言われなくても、出してやらぁ!」

 

 刀を模ったエネルギーの塊を作り出し、それで銃剣を受け止めた。銃剣はそれによって切り裂かれた。

 

「ぬぅ……流石はと言ったところか……伊達にあのお方の傍に居たわけではないということか」

「まぁな。お前もその程度ではないんだろう」

「その通りだ。たかだか剣の一本や二本折った程度で調子に乗って貰っては困る」

 

 コルクが距離を取ったと思ったら、今度は銃剣を指先で挟んで八本持ち、ラディッツに投げつけた。

 

「ちっ」

 

 その全てを斬り落とし、その余波で武舞台や天井、壁も切り裂かれた。

 

「聞きしに勝る切れ味だ。だが、当たらなければ問題ない」

「こっちは致命傷にならない様に気を使ってるんだぜ。その辺も考えて欲しいもんだ」

「私のことを知っているんだ、遠慮することはあるまい」

「それでも、事故ってこともあるだろうが」

「その程度であれば私はそれまでの存在だったというだけだ。そんな弱い私であればあのお方に仕える価値もない」

「……狂信者かよ」

「さもありなん。あの方こそ唯一にして絶対の神。あの方を信じずして何を信じるというのか」

 

 話には聞いていたが、コルク程あいつに忠誠を誓っているものはいない。ここまでくると気味が悪い。

 

「それじゃ、遠慮なしにいくぜ」

「さぁ、来いよ……全力を持って私とあの方を楽しませるのだ!」

「うっせぇんだよ!」

 

 ラディッツが刀を振り回す。次元ごと斬り裂くそれに斬れぬものはない。さらに斬った延長線上をも斬り裂くため半ば飛ぶ斬撃でもある。

 

「ぬるい……ぬるすぎるわ!」

 

 コルクはそれをかすりもせずに避け続ける。

 

「ならば、望み通りに……!」

 

 ラディッツは懐に飛び込まれた。完璧に間合いの内に入られた。

 

「くっ……!」

 

 連続のパンチは重く鋭く、ラディッツに動く隙を与えない。更に、最後の一撃で空へと飛ばす。

 

「天から堕ちよ!」

 

 それを追い、叩きつけるように人一人分程の大きさのエネルギー弾をラディッツに叩きつけた。

 

「うぉおおおおお!」

 

 ラディッツはそのまま武舞台に叩きつけられた。

 

「死んだか……」

 

 白目を向き、仰向けに倒れ伏すラディッツ。

 

「勝手に殺すんじゃねぇよ……」

 

 一瞬、意識が飛んでいたがすぐに起きあがった。

 

「流石だ……流石はサイヤ人! サイヤ人のラディッツ! さぁ、続きを……」

「降参だ」

「……何?」

「これ以上やっても俺に勝ち目はない。だから降参だ」

「そんなことが我らに許されるとでも思っているのかぁ!」

 

 まだ、戦い足りない。まだ、死力を尽くしていない。まだ戦えるというのであれば、不完全燃焼もいいところなのだった。しかし

 

『いいよ、別に』

「我が神!?」

『それなりに面白かったし、ラディッツ最初からやる気なかったみたいだし、無理に続けてもね』

「我らが神がそうおっしゃるのであれば是非もなし」

「おい」

 

 ラディッツは勝手に我らという一括りにされて少し腹が立った。

 

『というわけで第四試合の勝者はコルク!』

 

 コルクはラディッツの傍に寄った。ラディッツは何をされるのかと警戒した。しかし、コルクは手を差し出し「ありがとうございました」と言った。戦闘時からいきなり紳士的態度に戻ったため気持ち悪さを感じたが、とりあえず握手には応えるのだった。

 




コルクをもっと若本っぽくしたかった。この大会でもっと暴れさせる予定なのでその時にでもやってしまおうかと思います。こういう中の人ネタやパロネタが不快だったら今更ながらごめんなさい。でも、自分は楽しいです。

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