外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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悟空と悟飯の戦いを何とか予選より盛り上げたかった結果、考えるのに時間がかかってしまいました。ヤムチャ戦が殊の外熱い感じだったんで、まさか親子対決がそれに劣るわけには……とか思って必死に考えてました。時間をかけた割には微妙かもしれませんが、個人的には面白くなったのではないかと思っています。


50 天下一武術会本戦 その2

『第一試合の勝者は17号! 私的には結構好きな勝ち方だったよ。でも、試合はまだまだあるので次の試合もさっさと始めようか! 第二試合の選手は会場に行ってね』

 

「そんじゃ、いよいよオラたちの番だな」

「はい!」

 

 悟空と悟飯は別の扉を通って、武舞台に上がり向かい合わせとなる。

 

『それじゃ、第二試合開始ぃ―!』

 

 互いに気を高め、構えを取る。

 

「来い、悟飯」

「……行きます」

 

 悟飯は一気に距離を詰めて、蹴りを入れる。が、悟空は難なく受け止める。それを皮切りに常人には見えない速度の攻防が始まる。

 一進一退の攻防であるが、悟空の表情にはまだまだ余裕がある。

 

「どうした、悟飯。そんなもんじゃねぇだろ」

「はぁあああ!」

 

 悟飯は攻撃の速度を上げるが、悟空はそれに難なくついていく。正確には、悟飯に合わせていると言っていい。基礎的な力も技能も悟空は悟飯よりも数段上であった。いつも修行しているものと時々しかできないものでは、それだけの格差があって仕方がないことであった。いくら悟飯の潜在能力が高いと言っても引き出せないのでは意味がない。

 

「ぐっ!」

 

 一瞬の攻防の中で悟飯が大振りの一撃を繰り出そうとしていた。

 悟空はそれに合わせてカウンターをしようと思ったが、その腕は悟空に向かうことはなく地面に向けられた。そのままエネルギー弾が放たれ、爆発を伴って煙幕を引き起こす。

 

「おっ!?」

「でやぁ!」

 

 悟飯は煙幕で隠れた姿が隠れた瞬間に気を消し、しゃがんで悟空に足払いをする。

 

「うおっ!?」

 

 悟空はたまらず体勢を崩した。悟飯は体制を崩したところにアッパーを放つ。

 悟空は吹き飛ばされたが、空中で止まった。

 

「今のは中々よかったぞ、悟飯。でも、さっきので決めるくらい全力で攻撃するべきだったな」

「いえ、僕の攻撃はまだ終わっていませんよ」

「?」

 

 悟飯は、エネルギー弾を放つ。当然、何の変哲もない攻撃であるため悟空は易々といなした。悟空は悟飯の意図が全く読めなかった。

 もう一発、悟飯はエネルギー弾を放った。

 

「何のつもりわかんねぇけど、そんな攻撃じゃっ!?」

 

 悟空は背中にエネルギー弾をくらっていた。悟空は後ろに気を取られたために真正面に来たエネルギー弾もくらってしまった。

 大したエネルギー弾ではなかったが、直撃してしまったために予想以上のダメージを負った。

 

「次は連続でいきます」

「へへっ、よし! 来い!」

 

 悟空は嬉しそうに笑う。

 今度は連続でエネルギー弾を放つ、悟飯。悟空はそれを全てはじき飛ばすが、全て壁にぶつかる前に止まる。それはピッコロの魔空包囲弾を模倣した技だった。ただ模倣するだけに留まらず、悟飯は自分なりの技へと昇華させていた。

 

「はああぁ!」

 

 弾かれた数が、百を超えた辺りで悟飯はその弾かれたエネルギー弾を一気に悟空に向けて放った。

 

「はぁっ!」

 

 悟空は超サイヤ人となり、放たれたエネルギー弾全てに自分のエネルギー弾を当て相殺した。

 

「驚いたぞ。たまに姿が見えねぇと思ったら、ピッコロのところで修業してたんか?」

 

 悟空は実際にピッコロの魔空包囲弾を見たわけではないが、さっきの技はピッコロが使いそうな技だと憶測して聞いた。

 

「はい。お母さんもただ勉強しているだけじゃダメだと思ったみたいで、許可してくれました」

 

 ラディッツにただ勉強させるだけでは、悟飯のストレスになるだろうと息抜きを兼ねて体を動かすことをチチと悟飯に勧めていた。そのアドバイスために悟飯が時折ピッコロのところに行くことを許可されていた。

 

「随分変わったんだなぁ、チチ。オラには、文句ばっかりなのによ」

「お父さん……」

 

 悟飯は悟空のことを尊敬してはいるが、やはりこの修業ばかりというのも問題があると思っていた。道を究めんとする姿は素直にカッコイイのだが、社会的に見れば駄目な大人の代表格と言っても過言ではない。

 

 働きもしないで修業ばかりしていれば、チチの文句も当然なのだが、最早チチはあきらめ半分でもあった。それでも、子ども達に恥じない行動してもらいたいというチチの気遣いでもあるのだが、それが悟空に伝わっている気配はないのであった。今、悟飯は改めてそれを感じた。

 

「僕が勝ったら、ちゃんと働いてくださいね」

「どうしたんだよ、急に?」

「理由があった方が僕も真剣に戦えると思ったので」

「そっか。いいぞ。オラが負けたらちゃんと働く」

「約束ですからね」

「あぁ、約束だ」

 

 悟空は悟飯が真剣に戦えるというのなら、どんな約束もしてもいいと思ったのですぐに了承した。もとより負けるつもりもない。

 悟飯は超サイヤ人となり、悟空と同じ条件にまで持っていく。それでも経験値の差は大きかった。

 

 

 悟飯の攻撃が直撃したのは最初の不意打ちぐらいで、その後、悟空に通じることはなく、ほぼ一方的な勝負にとなっていった。

 

「どうした、悟飯。最初だけじゃねぇか」

「くっ……」

 

 わかっていたことだったが、同じ超サイヤ人でも悟空と悟飯では練度がまるで違った。一瞬の爆発力は悟飯の方が上であるのだが、それ以外の全てで悟空は悟飯のはるか上を行っていた。悟飯はほぼ全力に近い飛ばし方なのに悟空は6割程度と言ったところだ。

 

「そんなんじゃ、オラを働かせることなんてできねぇぞ」

 

 言っていることがクズ発言である。悟空は別に絶対に働きたくないと思っているわけでも、悟飯を怒らせる目的があったわけではないが、その発言が悟飯の逆鱗に触れた。

 悟飯は悟空を働かせるために戦っていたわけではないが、少し身勝手が過ぎる。チチが嘆いているのにかかわらず修業ばかり。ラディッツに指摘されていてもだ。そんなわがままな父親に対して、気にも留めていなかったレベルの不満の積み重なりが悟飯の中で遂に爆発したのであった。

 

「もういい加減にしてください!!」

 

 悟飯はセルの時の様に怒り、超サイヤ人2となった。

 

「勝手なことばかり言って、もうお母さんを困らせないでください!」

 

 悟空は悟飯の言葉にタジタジである。イーヴィはその様子を見て、絶賛爆笑中であった。後に、イーヴィは笑い死ぬかと思ったとぼやくぐらいであった。

 

「いや、でもよ、ここで負けたら働くって約束したんだからよ、いいじゃねぇか」

「良くないです! 勝敗に関係なく働いてください!」

「わ、わかったからよ、早く続きやろうぜ」

 

 悟飯の予想外の怒りに戸惑い驚いたものの悟飯の真の力が見れたことに悟空は喜んだ。これで自分ももっと力を出せると。

 

「そんじゃ、オラも」

 

 悟空も超サイヤ人2となる。あれから更に修業を重ねた悟空は、当時のセルの力を既に超えていた。悟飯はそれに驚くもここで勝たねば悟空はいつまでたっても残念な父親のままになってしまうと地球を守らねばならぬ時並みに覚悟を決めていた。

 イーヴィはその心の内も読めたので尚笑いが止まらなかった。地球を守る覚悟の大きさ≒父親を働かせる覚悟の大きさ、など可笑しいにも程がある。

 

「でやぁっ!」

 

 悟飯の一撃は先ほどよりも重く、受け止めた悟空の腕を痺れさせる。同じ激しい攻防でも先ほどまでとは威力も速度も次元が違う。更に、悟空と悟飯の力関係が悟飯の方が優勢になっていた。悟飯の攻撃が、悟空に通り始めていた。

 

「……っ!」

 

 悟飯の猛攻に防戦一方になりつつある悟空。堪え切れず、一旦距離を取る。

 

「やるなぁ、悟飯。でもよ、まだ先があるんだぜ。超サイヤ人を超えた超サイヤ人をさらに超えた超サイヤ人がよ」

「えっ?」

「まだ、未完成だけど、このままじゃ負けちまうからな……」

 

 悟空は気を溜めるために踏ん張りが効くように構える。

 

「はあああああああああああああ……!!」

 

 悟空が気を溜めると地響きが起きる。地球全体を揺らすような大きな気のうねりだ。イーヴィは思わず「マジかよ……」と感想を漏らす。悟空が超サイヤ人3になれなきゃ困るとは思っていたが、ここで未完成とはいえその前段階に来ているのは素直に驚きだった。

 会場に居る選手たちにも動揺が見える。あいつはどこまで強くなるんだと。

 悟飯も悟空の様子に圧倒され、手が出せずにいた。

 悟空の姿が眼窩上隆起を起こし、髪が少しずつ伸びていく。しかし、途中まで大きく膨れ上がっていた気が不安定に乱れ一瞬の乱高下を繰り返し始めた。その途中で悟空がキッと悟飯を一瞬睨み、悟飯がそれにわずかに怯んだと思ったら瞬時に距離を詰めた悟空がそのまま肘打ちをくらわせ、悟飯はそのまま場外まで吹き飛ばされてしまった。

 悟飯は場外の地面へと叩きつけられ、大きなクレーターができた。

 それで悟空の変身が解けてしまった。

 悟飯は場外負けして、口の中を切って血を流し、先ほどの肘打ちをくらった頬が痣になっていたが、それ以外はいたって無事で意識ははっきりしていた。

 

「わりぃな、悟飯。不意打ちみてぇになっちまってよ」

 

 悟飯は立ち上がり、変身を解き道着の砂埃を払う。

 

「……いえ」

 

 負けてしまったのは、変身に驚いた自分が悪いのだと反省した。ピッコロにもそれで怒られてしまうだろう。一撃だけ耐えれば勝機が十分にあったはずなのにと少し後悔もした。

 

「どうしても安定しねぇんだよな……気を溜めてる途中でバテちまう」

 

 そのせいで、変身の途中で攻撃に切り替えるしか方法がなかったのだった。もっとも、完成したとしても体への負担が大きく、燃費が悪いことには変わりない変身なので今後も悟空が頻繁に使用するかどうかは微妙なところだ。

 

「強くなったな、悟飯」

「はい……ありがとうございました」

「なんだよ、元気ねぇな。負けたのがそんなに悔しかったのか?」

「それもありますけど、お父さんが働いてくれないと思ったら……」

「それなら心配すんなって。ちゃんと働くからよ。さっき約束したじゃねぇか」

 

 悟飯は確かに怒った時に『勝敗に関係なく働いてください』と言い、悟空はそれにわかったと返事をしていた。悟飯は勢いで言っただけで悟空はその勢いに押されて言っただけなので約束としては成立しないのではないかと思っていた。しかし、悟空はそういえば約束していたという理由でチチと結婚したような男なので、約束は守る方である。色々と軽いが、良くも悪くも子どもの時から変わらず素直なのである。若干、大人の悪い部分に影響されている節はあるが……そういう子どもの様な大人なのである。

 

「よ、よかった~……頑張ってくださいね、お父さん!」

「おぅ!」

 

 悟空はラディッツかイーヴィに頼れば何とかなるだろうと皮算用していたが、そこそこ苦労することになるのはまた別の話である。

 




2戦づつやるつもりが1話使ってしまった。別に入れてもよかった気もしますが次入れるとちょっと長くなりそうなのでここで切ってしまいました。


次回は16号対ベジータです。更にラディッツ対オリキャラのコルクもやるかもしれません。

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