外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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ちょっとネタに走り過ぎた感が……投稿するのを躊躇うぐらいに。でも、何言われようが修正する気も特にないのでそのまま投下します。


47 天下一武術会予選 中編

 イーヴィは、ベジータの下手くそな歌を一回聞いて笑った後、次の展開が読めたため別の場所に視線を移す。とりあえず、ピッコロの動きがおかしい。劇場版でいつも思うことだが、何故か悟飯の危機に現れるのがテンプレの中ボスキラーな彼であるが、それまでなにしているんだって話。変な考え方すれば、悟飯のことをストーキングしてベストなタイミングで出て行ってるんじゃないだろうか。

 と、憶測はここまでして観察していると普通に迷路を進んでいた。

 

 

 ピッコロに取って、イーヴィがこの場所を作ったということが問題だった。ピッコロのイーヴィに対する評価は何をしでかすかわからない変人である。命を奪うようなことはしないと思っていたが、あのデモンストレーションである。普通の人間であれば間違いなく死ぬだろう。仲間内なら死なないだろうが、あのイーヴィが自分達に全く効かないような罠だけを設置しておくだろうか。

 

 その憶測は半分正解と言ったところだった。物理的要素で彼らを抑制しておく術など限られてくる。それこそ本当に殺すつもりでやらなければならない。そこまで命がけでお遊びはしたくない。ある程度の危険ならばいいが、綱渡りはしたくない。そこで、他のルールで縛ったのだ。それで、迷路なんてものを作っていたのだ。別に自由に他のルールが使えるならトランプでもじゃんけんでも脱出ゲームでも人狼でもなんでも良かったのだ。ただ、迷路が一番好きなように細工しやすかっただけだった。

 

 しかし、罠と言ってもやはり物理的なものでは時間稼ぎはできても簡単に破られてしまう。だから別ルールで勝負させようと思ったのだ。その一例がカラオケ対決だった。そして、ピッコロの場合は…………

 

 

「よう、久しぶりだな」

「お前は……ラディッツか」

 

 ラディッツが相手だった。

 

「貴様と戦ったのは随分と前に感じるな。あれから色々あったからな……」

 

 ラディッツはピッコロと戦った後のことを思い出していた。ある意味ではサイヤ人としての生き方を曲げられてしまった出来事である。ただ見方を変えればもっと生きやすい生き方になったと言えなくもない。意外と不満ばかりでもないことを思い出し、複雑な想いを抱いていた。

 

「感慨に耽るのもいいが、ここでは門番が課した勝負で戦うことになるのだろう? さっさと説明したらどうだ」

「実は、俺もあまり説明されてなくてな。イーヴィの奴がここで話すとか言っていたぞ」

「何?」

 

 そういえば、質問されていたとき

【場合によっては私がお題を出すことがありますが、基本は門番にお任せしています】

 と答えていた。つまり、これがその場合なのだろう。

 

「おい、イーヴィ」

『呼ばれて飛び出て、ジャジャジャジャーン!』

 

 くしゃみされてなくとも、壺からでなくとも、そんな台詞を言う。

 

『それじゃあ早速お題を伝えるよ。君たちがやる勝負内容は~』

 

 どこからともなくドラムロールが流れる。数秒後にシンバルの音とともに止むと

 

『ナンパ勝負です!!』

 

「…………」

「…………」

 

 ピッコロとラディッツが顔を見合わせた後、イーヴィの方に向きなおす。

 

「「何?!」」

 

『まぁ、でも普通に考えて君らにそんなことできるわけないからVRゲームで頑張ってね』

 

 一応、ラディッツが妻帯者だからとかそんな気遣いもなくはなかったが、人を用意するのが面倒だったことや状況の操作がしづらいことの方が大きな理由だ。

 

 そしてVRゴーグルが二つ、地面から台座と共に出て来た。

 

『それかぶって先にゲームクリアした方の勝ち。何回でも勝負していいけど、制限時間あるから気を付けてね』

 

 ブツっと接続を切った音が反響する。

 

「……仕方あるまい。とりあえず、こいつを被るぞ」

「あぁ、そうするしかないだろうな」

 

 二人は嫌々、それを被るしかなかった。二人が被ると視界が暗転する。が、すぐに視界は浜辺へと変わる。さざ波の音や人々が海水浴を楽しむ姿が見える。室内であるはずなのに太陽の照りつけるような感覚さえ覚える。ただ、頭に被り物をしただけでここまでの臨場感を出すイーヴィの技術力に少し感心する二人。

 そして、肝心のゲーム説明が空中に浮かぶように文字にして現れる。

 

《これから女の子があなたに話しかけてきます。機嫌を損ねない様に、遊びに誘おう! 遊びに誘うことができたらゲームクリア》

 

 これを目の前にしていくらなんでも簡単すぎないかと思う二人。その上、これは現実ではなくゲームだ。恥を考える必要もそこまでない。端から見たら実はもう既に変人にしか見えなかったりするが。

 何はともあれ、二人はゲームに集中する。

 

――ラディッツの場合――

 

 ラディッツの方にボールが飛んできた。ボールを拾うと、緑髪で虎柄のビギニを着た女性がやってくる(飛行している状態で)。

 

「そのボール、こっちに返して欲しいっちゃ」

 

 《選べ》

①「お返しします」

②「どうせなら一緒に遊びませんか」

③「ヒャッハー! 女だー!」

 

 なんなんだ、この選択肢は……普通に考えたら②にするべきなのだろうが……と、ラディッツが思っていると

 

「あっ! ダーリン! 何してるっちゃ!」

 

 女の子は急に電撃を放ち、どこかの男にあたった。そして、その電撃を食らった声はどこかで聞き覚えのある声だった。

 

《GAME OVER》

 

「はぁあああああ!? いきなりゲームオーバーになったぞ!」

『時間切れだね。機嫌を損ねようが損ねまいが、可能性がゼロと判断された時点でゲームオーバーになるから』

「ちなみに、どうすればクリアなったんだ?」

『諸星〇たるならクリアできたかもしれない』

 

 それは女の子のモデルが完璧にラ○ちゃんだからというかそのものです。本当にありがとうございました。

 

「人かよ! というか誰だよ、そいつ」

『いや、できないか』

 

 あれの性格的に考えて機嫌を損ねないとか絶対に無理だね。

 

「できないのかよ!」

 

 ラディッツはゴーグルを外して投げ捨てた。

 

 けれど、ラディッツがそんなことを知る由もなかった。

 

 結論から言おう、このゲームは絶対にクリアできないクソゲーだ。

 

――ピッコロの場合――

 

 ピッコロの方にボールが飛んできた。ボールを拾うと、黒髪の美しい女性がこちらにやって来た。胸に7つの傷を持つ男と一緒に……

 

「そのボールを返してもらえないか?」

 

 その男がボールを返すように求めてくる。

 

《選べ》

①「New year!」

②「何ぃ、聞こえんなぁ!」

③「サラダバー!」

 

 なんなんだ、この選択肢は…… 恋愛などの感覚が全くわからないピッコロでもこの選択肢がおかしいのはわかった。②はまだ理解できるが、①のnew year?③のサラダバーってなんだ? 疑問しか浮かばない。

 

「っ! お前は○ン……! ではないな。○ンはそんな顔ではなかったな……」

 

 急に胸に7つの傷を持つ男が語り始めた。南斗聖拳がどうの、殉星がどうの、同じ女を愛した男がどうの言っていたが、何一つ理解はできなかった。

 

「すまないな。いきなりこんな話をして。お前がどこか○ンに似ているような気がしてな。機会があればまた会おう」

 

 《GAME OVER》

 

「どうしろというんだ!!」

 

 ピッコロはゴーグルを投げ捨てた。

 男に話しかけられて語られたと思ったらゲームオーバーになっていた。誰にも理解できない。イーヴィも作っておいてなんだこれはと思ってしまっていた。そこが笑いどころでもあったが。

 

 これもピッコロに(というか誰でも)クリアできるわけがなかった。

 もはや、ただの嫌がらせである。というより嫌がらせそのものでしかなかった。

 

 

 お互い同じタイミングでゴーグルを投げ捨てており、お互い顔を見合わせる。

 

「その様子だとお前もクリアできなかったみたいだな」

「あぁ……むしろクリアできるのか、これは」

「できないだろうな」

「お前もそう思うか」

「「はぁ」」

 

 互いにクソゲーに振り回されただけの結果となった。

 

『やっぱり、君らには無理だったね』

 

 あんなのクリアできるか! とツッコミたくなる二人。

 

『仕方ないからもう普通に戦ったらいいんじゃないかな。それじゃ』

 

 もう自分は思いっきり楽しんだからどうでもいいやとばかりに投げやりな対応になる。

 

「それなら最初からそうしやがれ!!」

 

 ラディッツの怒鳴り声が、イーヴィに伝わることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、グダグダになってしまったが仕切り直して戦士らしく力試しといこうじゃないか」

「望むところだ」

 

 互いに構えを取り戦闘態勢に入る。互いに四年前より実力を上げている。向かい合った時点で互いにそれを理解した。そして、どちらがより強くなったか……互いにじりじりと距離を詰める。

 

「どうした、かかってこないのか」

「それはこっちのセリフだ」

 

 牽制しあい、攻撃を仕掛けるタイミングを計る。

 

「ずあっ!」

 

 先に攻撃を仕掛けたのはピッコロだった。距離はまだ空いていたが、ピッコロは腕を伸ばすことができる。

 

「しまった……!」

 

 右腕を伸ばして、ラディッツの左腕を掴み、自分の方へと引き寄せる。そして、体制が崩れているところに左の拳叩き込む。しかし、ラディッツは体勢が崩れた状態のまま拳を右手で掴んで止める。そして、これ以上は無意味と放した瞬間に凄まじい攻防が始まった。

 その攻防によって生じた衝撃が地面や壁にひびを入れていく。

 

 

「でやぁ!」

「どぅあ!」

 

 互いの渾身の一撃がぶつかり合い、鍔迫り合いの様に押し合いになる。そのまましばらく硬直状態になっていたが、互いに距離を取る。

 

「時間制限があるんだ。互いに全力でいこうぜ」

「……そうだな。出し惜しみをしていては、いつまでも決着がつかなそうだ」

 

 ピッコロがターバンとマントを外し、気を入れる。そして、ラディッツは超サイヤ人となる。

 

「なぁ、ピッコロよ」

「……なんだ?」

「俺は、イーヴィの奴に感謝しているんだ。あんなふざけたマネをする奴ではあるがな……」

「それがどうした」

 

 急にラディッツがイーヴィの話題を振ってくることに戸惑うピッコロ。

 

「イーヴィが居なければ、多分俺はここまで強くなれなかった」

「それは超サイヤ人のことか?」

「いや、超サイヤ人になるにはきっかけが必要だったかもしれないが、イーヴィがいなくともいつかなれた可能性がある。だが……」

 

 ラディッツが掌に気を籠める。

 

「はああぁぁああ!」

「なんだ……!? この威圧感は……?」

 

 そして、右手には光り輝く刀の様なエネルギーの塊ができていた。

 

「こいつは、イーヴィが居なければ絶対にできなかった技だ」

「気を物質化したのか?」

「そんなところだ」

「確かに使える技かもしれんが、それが感謝するほどのものか?」

「やればわかる。行くぞ、ピッコロよ!」

 

 ラディッツは、飛び掛かりそのまま刀を振り下ろす。

 

「くっ!」

 

 ピッコロはギリギリで横に避けた。刀はそのまま地面を斬りつけた。さらに、斬りつけた延長線上も斬り裂かれた。

 

「こ、これは!」

「こいつがこれの力だ」

「……態と外したな」

「直撃すれば、即死しかねんからな。それは本意ではない」

「舐められたもんだな……」

 

 ピッコロは距離を開け、右手を額に近づけ気を指先に籠める。

 

「あの技か……もう俺にあれは効かんぞ」

「前と同じだと思うなよ。破壊力も速度も以前とは比べ物にならん」

「だが、溜めるのに時間が掛かるのも同じなのだろう?」

「へっ、それはどうかな」

「何っ?」

「魔貫光殺砲!」

 

 不意を突く形でピッコロの魔貫光殺砲が放たれた。だが、ラディッツは超反応で魔貫光殺砲を刀で斬った。

 

「な、なにぃ!?」

 

 斬られた魔貫光殺砲は、真っ二つになってラディッツの後ろの壁の二か所に穴を開けた。更にピッコロの右腕が斬り落とされていた。

 

「これはただの気で形作っただけではない。超高密度に固められているのだ。次元さえも斬り裂く程にな。おかげで……気の消耗が激しいがな」

 

 ラディッツの超サイヤ人が解け、刀も消える。

 

「うおおおおお……!!」

 

 ピッコロは斬り落とされた腕を再生させる。

 

「これで、五分と五分ってところか?」

 

 互いに大きく消耗し、次の一撃で決着が着くことだろう。

 

「……いや、俺の負けだ、ラディッツ。お前、二回ともわざと外しただろう」

「確かにそうだが、これは殺し合いではない。単なる力試しだ。そして、まだ決着は着いていない」

「これ以上やっても結果は見えている。お前は五分と五分と評したが、まだまだ超サイヤ人になるのもさっきの技を使う余力が十分あるだろう。侮辱していると思われても仕方ないぞ」

「そ、そんなつもりは……」

「そんなことはわかっている。しかし、お前はサイヤ人の中で一番地球人らしい気がする。悟空もベジータも闘うことばかりで、直情的で思ったことはそのまま言う。悟飯は気遣いができるが、抜けているところがある。お前は、気遣いすぎて逆に失礼になっている節がある」

 

 地球人に感化され過ぎたのか、元々そういう傾向があったのか、イーヴィが暴走し過ぎているからか、それはわからないがラディッツは傷つけないよう色々と気遣うようになっていた。

 

「その通りかもしれん。俺が逆の立場なら憤慨しただろうし、昔の俺が今の俺を見たら腑抜けていると思ったことだろうな」

「だが、悪い変化だと思っていないのだろう」

「…………そんなこと言えるか」

 

 僅かに残ったサイヤ人としての矜持が、答えることを許さなかったが、認めているも同然の台詞だった。

 




後半部分でシリアス感出していますが、もはや全てがギャグな気もしなくもないです。
次回もネタに走りつつちょっとシリアスな内心が吐露されるような感じでいくつもりです。

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