「おめえの出番だぞ、悟飯!」
↑X↓BLYRAカカロットォ……はっ!つい、条件反射で……というのは冗談。
ついにこの時が来た。
悟空の言葉にみんなが驚いて、ピッコロさんは悟飯じゃセルに敵わないと悟空に激おこなわけだ。悟空が敵わなかったセルに悟飯が勝てるわけがないと。
悟空はそれに対し悟飯は自分たちが思っている以上の力を持っていると反論した。そして、悟空は悟飯に「自分とセルの戦いについていけないと思ったか」と質問すると悟飯は「思わなかった」と答えた。手を抜いているように感じたというのだ。周りの反応は信じられないと言った感じだったが……
悟空は悟飯の背中を押して「平和な世を取り返してやるんだ」と。悟飯はそれに応えてセルと戦うことを決めた。
悟飯はピッコロさんからもらったマントを脱ぎ棄て、岩山を降りる。
悟空がクリリンから仙豆をもらっているところが見えたのですぐに悟空とセルの対角線上近くに移動する。
「セル!」
私は悟空がセルに仙豆を投げたところに飛び込んだ。
「キャッチ!」
セルに渡る前に仙豆を掴み
「アンドリリース!」
悟空の口の中に投げ返してやった。ちゃんと口の中に入って飲み込んだのも確認できた。
セルは、何事か?といった風だった。回復アイテム貰えなくて残念でしょうね。
「な、何すんだよ! イーヴィ!」
「それはこっちの台詞よ。フェアじゃないとか考えてるんでしょうけど、敵を回復させようとする必要はないでしょうが! そんなことするのは、余裕があるときにしなさい!」
「わ、わかったよ……」
「それと、まだ悟飯に言っておくことがあるんじゃないの!」
「で、でもよ……言ったらあんまり意味がねぇんじゃねぇかと思ってよ……」
悟空の狙いは悟飯が怒りをきっかけに本来持っている力を引き出すことだ。怒りは意識させない方が怒りやすいというのはあるかもしれない。感情なんて起こそうとするものではなく起きるものなのだから。それでも、悟空は父親としてそれ以前に人として悟飯に言わなければならないのだ。
「セルを倒せる力を秘めているとはいえ、悟飯はまだ子どもよ。あなたは何も言わず子どもにこの地球の運命を任せるの?」
「……! 悟飯!」
悟空は悟飯の傍へと寄った。
「やはり貴様が戦うのか? 孫悟空」
「違ぇよ。悟飯に言わなきゃならないことがあっただけだ」
「……お父さん?」
「悟飯、オラは……オラは、おめえの真の力が発揮すればセルに絶対勝てると思ってる。ただ、その力が解放されるには怒りが必要だ。怒れ、悟飯。それでセルに勝てる」
「……そう言われても、できませんよ。お父さん……」
「そんなことはねえさ。きっとなんとかなる。悟飯にセルを上回る力が眠っているのは間違いねえんだ」
「わかりました。やります……」
不必要なやり取りのような気もするけど、悟空のお父さんレベルが1上がったのではないかと思いたい。
ただ、怒れって言われても悟飯にはそんなに怒る要素がないし、一般人とか軍人とか殺されてはいるけど、親しい人がいたわけでもない。やはり、仲間が痛めつけられることが怒りの条件になるのかもしれない。原作での16号が破壊されて超サイヤ人2になったのは、怒りを爆発させるきっかけになっただけで、それだけじゃない。仲間がセルジュニアに痛めつけられていたからこそだろう。
でも、私はそれをさせるつもりはない。
悟飯は、気を入れる。悟空にも匹敵しそうな大きな気だ。
「セル! 悟飯と戦う前に一ついいことを教えてあげる」
私は予め言ってしまうことにした。さっきの話も聞こえていただろうけど。
「さっき、悟空が言っていた通り悟飯にはあなたを倒すだけのポテンシャルがあるわ! でも、まだそれを引き出せていない。どうしたらいいか……それは悟飯を怒らせることよ!」
「ふん……何を言い出すかと思えば……だが、参考にさせてもらおう」
セルがニヤリと笑った。
別に私はセルに悟飯を怒らせるように仕向けようと考えているわけじゃない。でも、どうせならそれなりに凝った演出もしたい。正直、これから私がやろうとしていることは物理的には何の問題もないが、倫理的に問題がある。後、展開的の熱さ的な意味でも。そんなことを気にする私じゃないけど、普通に道徳のある考え方をする人が見れば嫌悪感を抱く人は多そうだ。一応はテレビに映っているわけだし、事実はどうであれ悪人然とした姿を見せたくない。でも、誰も(物理的に)あまり傷つかないようにと考えるとどうしても避けては通れなさそうだから諦めている。悪いことするわけじゃないから別にいいよね。
ちなみに、この手段は悟空が超サイヤ人になれなかった時の為に用意していた手段でもある。
セルと悟飯の戦いは、セルが圧倒的だった。と言っても、悟飯もただではやられていない。セルにダメージが通ったような攻撃もあったし、セルは余計に怒らせてみたくなったとやる気になった。フリーザの使っていたデスビームを使って、悟飯の動きを誘導して胴体を両腕で掴む。ベアハッグという絞め技だ。セルのパワーでやれば、背骨も折れるだろう。
悟空はピッコロが悟飯を助けるために飛び出そうとしているのを止めていた。
私はと言えば、セルの真後ろに立っていた。
16号と同じで機械故に気で察することはできないから簡単だった。
「ねえ、悟飯」
「!?」
悟飯を放し、セルは私から距離を取る。
「はあっはあっはあっ……」
悟飯は苦しそうに息をしていた。
「一体、何の用だ」
「正しいことのために戦うことは罪ではない。話し合いなど通用しない相手もいる。精神を怒りのまま自由に開放してやれ」
ほぼ棒読みで、原作で16号が言っていた台詞を言ってみた。
「……何を言っている?」
「言っておきたかっただけよ。悟飯、参考にしてね」
「いいアドバイスだが、私は私のやり方でやっているのだ。貴様は邪魔だ」
セルの容赦の無いエネルギー波によって私の身体はバラバラになってしまった。
「イーヴィさん!」
悟飯が心配そうにというか、声を荒げてくれる。別に問題ないし返事をしておこう。
「何?」
「え?」
悟飯の後ろに私の肉体を構築し、登場してみた。
「何故だ……!? 確かに貴様はバラバラになって、ここに残骸が……それもスペアか!?」
「いいや、これが私本来の身体だよ。それでこれが……」
私は悟飯の頭に手を置き、脳みそを弄る。ホルモンとか記憶とかそういうのだ。そうやって悟飯の怒りを引き出す。
「うわああああああああーっ!!!!」
悟飯の気が大きく膨れ上がり髪が逆立つ。その気の勢いに私は吹き飛ばされそうになりながら耐えた。でも、私の残骸はどこかに吹き飛ばされてしまった。もったいないから後で回収してリサイクルしよう。
「悟飯の本当の力だ」
「もう許さないぞ、お前たち……あれ……?」
私が弄った記憶との齟齬が生じたみたいだ。私の機械の身体が壊された以外は仲間に被害はほとんど出てないからね。
「ようやく真の姿を見せたか……これで面白くなってきたぞ!」
「悟飯、思いっきりやってやりな」
「イーヴィさん、これは一体……?」
「理由はどうあれ、悟飯の眠れる力が目覚めたのさ。もう恐れるものは何もないはずだよ」
「……はい!」
状況は完璧に理解できていなさそうだけど、自分の力は理解できたようだ。セルに向き直り構えを取る。
「生意気なガキだ。まさか、本気で私に勝てると思っているのか?」
「勝てるさ」
「ふん……大きく出たな。では、見せてやるぞ……! このセルの恐ろしい真のパワーを…!!」
セルは気を溜める。フルパワーまで溜めた瞬間に爆風が巻き起こる。あー、私の残骸が段々遠くに飛ばされる……
「どうだ、これが本気になった私だ」
「それがどうした」
「……! くっくっく……」
セルが全速力で悟飯に突撃し、右腕を振り下ろすように悟飯の顔を殴りつけた。悟飯は仰け反るだけで大したダメージはないようだ。セルが左の追撃を放つもさばかれ左のボデーブローがセルの脇腹を襲った。
「あ……ぐうっ……!」
セルは殴られた部分を手で押さえていた。大きなダメージが通っていることが良く分かる。右手で殴られた部分を抑えたまま左の手刀を出すが、容易に避けられアッパーを食らった。吹き飛ばされて受け身を取り、立ち上がるがダメージが足に来ていた。
「ば、馬鹿な……な、なぜ、この私がたった2発のパンチでこ、これほどのダメージを……」
ここまで来れば、そろそろ薬が効いてもいい頃なはずだけど……
「うっ……」
吐き気かな……セルは口を抑えている。どうやら効いていきたようだ。気も弱々しくなっているのがわかる。あと少しで分離しそうだ。
悟飯はゆっくりとセルに近づく。
「ぎ……!! ずああっ!」
悟飯に蹴りを連発して放つがしっかりとガードされ、逆に顔を蹴られて吹き飛ばされた。
セルは起き上がるが、完全にパワー負けしていることに気が付いたようだ。まぁ、諦めるわけもなく飛び上がってかめはめ波の準備を始めた。
「くらえ! 全力のかめはめ波だ! よければ地球が吹っ飛ぶ……! 受けざるをえんぞ!!」
セルの気が大きく膨れ上がった。
「波――――っ!!」
巨大なかめはめ波が地球に悟飯に向かって飛ぶ。地球に当たればセルの言う通り地球は宇宙の塵となるだろう。それでも、悟飯は慌てる様子もない。
「かめはめ……」
悟飯は小さく呟く。
「波―――!!」
一瞬のためでセルより大きなかめはめ波を撃ち、セルのかめはめ波をも飲み込んだ。
「おおおお……!! ぐあああーーーーっ!!」
セルにかめはめ波が直撃した。右腕以外の四肢がもがれ、頭部の一部や羽の様な部分も崩れていた。
「な、なぜだ……なぜあれほどのパワーが奴に……」
そろそろセルがブチ切れる頃だ。
悟空は早く止めをさせと悟飯に伝えるが、悟飯はあんなやつは苦しめてやらなきゃと言っていた。
セルが人類に対してやったことは許されないものであるのは間違いないが、仲間を傷つけられてもいないのにこんなに怒るなんて……って、私が植え付けた記憶のせいか。そうしなくてもこうなっていただろうから別にいいか。セルに自爆させる気もない。
ただ、悟飯って真面目な割にこういう時、大体調子に乗るよね。物語を盛り上げるために必要な要素なのかもしれないけど、マヌケにも程がある。パワーアップした直後はカッコイイのに……
セルは身体を再生させ、「ちくしょう……ちくしょう……!ちくしょぉおおお!!」と叫んだ後にパワーに偏った変身をした。地面に降りてきて「貴様なんかに負けるはずがないんだああ!」と叫びつつ大振りの攻撃で空振る。
悟飯は避けた後に勢いを着けて顔に蹴りをいれた。セルはよろけ、様子がおかしくなっていた。そして、セルは18号を吐き出した。
私はセルの傍に近寄った。
「イーヴィさん?」
悟飯に声をかけられるがあえて無視。
「セル、私は言ったはずよ。私が打った薬は追い込まれた時に効果を発揮するって」
セルは18号を吐き出した後も苦しそうにもがきながら完全体ではなくなっていった。
「あなたの身体は17号と18号を吸収して細胞レベルで融合しているけど、強い衝撃で分離を始める。それがあなたの元々の性質。私が打った薬はそれを強化するものよ。通常なら強固なその肉体によって守られているけどそれを破られた今、それだけでは済まなくなる」
「い、一体何が……!?」
「その前に……さらにもう一発!」
セルにボディに思いっきりパンチを入れる。本来の身体での思いっきりの一撃は、機械の身体のパワーを大きく上回った。そのためにしっかりとダメージも通ったようだ。それは、私に対する記憶や信仰心の強さがある一定以上に高まったことを意味する。
「うごおえぇ……」
セルは、17号を吐き出した。
「そして、セルの肉体を構成するのは様々な生物の細胞。それらも分離を始める。つまり、あなたの身体は細胞レベルでバラバラになる」
「な、なにぃ!? そ、そんなことがあってたまるか!」
「後、10、9、8……」
「……! うおおお!!!」
セルが突っ込んできたので避けて尻尾を掴み、空へと放り投げる。その間もカウントダウンを止めない。
「3、2、1……」
セルに向けてエネルギー波を放っておく
「ボンッ!!」
そのままエネルギー波に飲まれセルの肉片は一片も残らなかった。
ほぼ良いとこ取りというか横取りみたいな感じだけど……
「私の勝ちだ!!」
天に拳を掲げ勝利宣言しておいた。
相変わらず呆気ない終わりで、こんなんでよかったのかなとは思っています。これが実際面白い面白くないは置いておいて、自分が書いてて楽しいで気にしてはいません。反省はしたいと思います。
次回、人造人間編のエピローグをやります。その後はすぐブウ編には行かずオリ編を挟もうかと思っています。